契約の一般条項

【実務向け】契約書の一般条項(ボイラープレート)マニュアル~リスク管理から紛争解決まで

ビジネスで契約書を取り交わすとき、後ろの方に書かれている細かい条項を「いつもの定型文だな」と読み飛ばしていませんか?

契約書の審査(リーガルチェック)において、取引の核心となるビジネス条件(目的物、金額、納期など)にばかり目が行き、契約書の後半に並ぶ一般条項の確認がおろそかになっているかもしれません。

一般条項(ボイラープレート条項)は、どんな契約にも共通して定められる定型的なルールですが、いざトラブルが発生した際、自社を守る重要な条項群です。ここを見落とすと、想定外の損害賠償を負ったり、契約を解除できずに不利益を被ったりするリスクがあります。

本ページは、法務担当者が契約書審査で必ずチェックする一般条項について、その意味や実務上の留意点、背後にある民法等の法的原則を体系的にまとめた記事です。実務における辞書として、あるいは自社の雛形を見直す際のチェックリストとしてご活用ください。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

一般条項(ボイラープレート条項)とは

一般条項とは、契約書の一番最後の方に置かれる一連の規定群のことです。多くの契約書にほぼ同じような定型文言で記載されるため、定型条項とも呼ばれます。

英語では、ボイラープレート条項(Boilerplate clause)と呼ばれることもあります。このユニークな名前の由来には諸説あり、「ボイラーに使う厚手の鋼板のように丈夫で長年劣化しないもの」の例えからきたという説や、19世紀末のアメリカで新聞の共通ニュースなどを輪転機用のプレートに刻印して地方の新聞社に送っていたビジネスに由来するという説などがあります。

一般条項は定型的な文言が多いため、当事者間での実質的な交渉の対象になりにくい(軽視されがちな)ものもあります。しかし、この規定の趣旨や意味を正しく理解していないと、後になって思わぬ落とし穴にはまる危険性もありますので、油断は禁物です。

代表的な一般条項

それでは、具体的にどのような条項が一般条項に該当するのでしょうか。代表的なものをいくつかピックアップしてご紹介します。

なお、グルーピングの名称は、管理人が便宜上つけているものになります

リスク管理条項(トラブル発生時のルール)

契約違反(債務不履行)や予期せぬ事態が発生した際、どちらが、どのように責任を負うのか(または免れるのか)を定める条項群です。自社のビジネスモデルにおいて、どの程度のリスクまで許容できるかをコントロールするための重要項目となります。

  • 損害賠償条項
    損害賠償の範囲(通常損害か特別損害か、上限額の設定など)をどう規定するかを解説します。
  • 解除条項
    どのような事由が生じれば、相手方の同意なく一方的に契約を終わらせることができるか(無催告解除・催告解除)の設計について解説します。
  • 期限の利益喪失条項
    相手方の信用不安が生じた際、分割払いや後払いの猶予(期限の利益)を奪い、直ちに全額請求を可能にするための条項です。
     
  • 契約不適合責任条項(旧:瑕疵担保責任)
    納品物やサービスが契約内容と適合しない場合、追完請求、代金減額、解除、損害賠償の各手段をどのように制限・拡張するかの実務を解説します。
  • 不可抗力条項(Force Majeure)
    天災地変、戦争、暴動、テロ、通信回線の事故など、当事者の力ではどうしようもない(責めに帰すことができない)不可抗力によって契約が履行できなくなった場合に、免責を確保するための要件と書き方を解説します。
     
  • 危険負担条項
    目的物の引き渡し前に、不可抗力によって目的物が滅失・毀損した場合、どちらがその損失(代金の支払い義務など)を負担するのかを定めます。

定型条項

契約の前提条件や、契約終了後の扱い、紛争解決の手段など、いわば”ゲームのルール”を整えるための条項群です。一見すると退屈な定型文に見えますが、M&Aの際や訴訟に発展した際などにその存在感が出てきます。

契約運営・管理に関する条項

  • 譲渡禁止条項
    相手方の事前の承諾がない限り、契約上の地位や権利義務を第三者に譲渡したり、担保に入れたりすることを禁止する条項です。契約上の地位や権利義務を、勝手に第三者へ譲渡させないためのロック機能です。
     
  • チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)
    相手方の株主構成や経営権に重大な変更(買収など)があった場合、契約を解除できる権利を留保するなどの対処を定める条項です。
     
  • 秘密保持条項
    取引を通じて知り得た情報の目的外利用や漏洩を防ぐルールです(※別途NDAを締結する場合の優先関係についても注意が必要です)。
     
  • 個人情報保護条項
    主に業務に伴い個人情報の委託が発生する場合に、個人情報保護法に基づく適切な取扱いなどを義務付ける条項です。
     
  • 反社排除条項
    相手方が反社会的勢力であることが判明した際、無催告で直ちに契約を解除するためのコンプライアンス上必須の条項です。
     
  • 有効期間条項(および自動更新)
    契約の始期と終期、更新の条件(自動更新か合意更新か)、ならびに契約終了後も効力を存続させる条項(残存条項)の定め方です。
     
  • 分離可能性条項(Severability)
    契約の一部が法令違反等で無効と判断されても、他の条項の有効性には影響を与えない(連鎖的に無効にならない)ことを確認する条項です。一部の無効を理由にして、相手方から「契約全体が無効だ」と主張されるのを防ぐ役割があります。
     
  • 完全合意条項(および変更条項)(Entire Agreement)
    この契約書が当事者間の最終かつ完全な合意であり、過去の口頭約束やメールでのやり取りをすべて上書き(排除)することを示す条項です。

紛争解決条項

万が一、当事者間での話し合いで解決できず、法的手続に移行せざるを得なくなった場合のルール等(戦う土俵)を事前に決めておきます。

  • 準拠法条項
    どの国・地域の法律に従ってこの契約を解釈するのかを指定します(国際法務では特に重要です)。
     
  • 管轄条項(専属的合意管轄)
    裁判になった場合、どこの裁判所で争うかを第一審に限定して指定します。自社から遠方の裁判所を指定されると多大なコストになる場合があります。
     
  • 誠実協議条項
    契約書に定めのない事項や疑義が生じた場合、まずは誠実に話し合って解決しようという、ある種日本独自の契約文化を反映した条項です。

その他(実務上の明確化)

その他、いくつかの細かい事項を明確化するための条項が置かれる場合があります。

  • 通知方法条項
    契約の解除や更新拒絶など、重要な意思表示を行う場合を含めた有効な通知手段(通知の宛先、書面・メール等)を限定・定義します。
     
  • 書面定義条項
    電子契約なども普及する中、契約書内で用いられる「書面」という言葉に電磁的記録(PDFやメール)を含むかどうかの解釈のブレを防ぎます。
     
  • 公租公課条項
    税金や取引に伴って発生する公的な費用をどちらがどのような割合で負担するのかを明確にします。

結び

一般条項は、一見するとどれも同じような定型文に見えるかもしれません。しかし、いざトラブルが起きたときには、これらの条項が自社を守ることもあれば、逆に不利な状況に追い込まれる原因になることもあります。

特に力関係が上の企業が提示する相手方ドラフトでは、一見定型的に見えて、実は相手方にのみ有利な(自社の首を絞める)一般条項が紛れ込んでいることも少なくありません。契約書にサインする前には、”ただの定型文”と侮らず、しっかりと内容をチェックするようにしましょう。

本記事をブックマークしていただき、日々の契約書審査や、自社の契約書フォーマットを改訂する際の確認リストとしてぜひご活用ください。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等・参考文献

主要法令等

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民法(債権関係)改正の資料

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