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契約の一般条項|自社の情報を守る「秘密保持条項」のポイント

今回は、契約の一般条項ということで、秘密保持条項について見てみたいと思います。

契約書の中で必ずと言っていいほど見かける秘密保持条項ですが、いつもひな型をそのまま使っているけどこれって本当に必要なのか、どこをチェックすればいいのか等と疑問に思っている方もいるかもしれません。本記事では、そんな秘密保持条項のポイントを解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

秘密保持条項とは

秘密保持条項とは、その名の通りですが、自己が開示する秘密情報について相手方に目的外使用や第三者開示の禁止などを課すことによって、秘密情報を守るための条項です。いわゆる守秘条項です。

ビジネスの取引(一般の取引、業務提携、共同開発、M&Aなど何でも)を進めるうえで、相手に自社の重要な技術やノウハウ、顧客データなどを開示することがありますが、もしその情報が第三者に漏れたり、勝手にライバル事業に使われたりしたら、当然ですが自社の競争力や信用に大きなダメージを受けます。それを防ぐのが一番の目的です。

契約書に何も定めなかった場合の法律上の原則(法律上の保護)としては、民法による保護や、不正競争防止法による保護(営業秘密に係る不正行為)が考えられます。しかし、その保護範囲(要件と効果)は広狭あるものの、基本的に広くないため、契約書で秘密情報としてしっかり管理する旨を取り決めしておくことが重要になります。

また、不正競争防止法で保護される「営業秘密」(法2条6項)に該当させるためには、秘密として管理されていること(秘密管理性)という要件を満たしている必要があり、これを充足させるための一要素としてという意味もあります

秘密保持条項の記載内容

秘密保持条項の記載内容の考え方は、基本的に秘密保持契約書(NDA)と変わりません。

NDAは取引に入る前の検討段階を、契約書の秘密保持条項は取引の実行段階を守備範囲としていることが多いという、場面の違いはあります

ただ、どのようにコンパクトにひとつの条項として畳むかが、実際上の難しさです。NDAの記載要素を参考に基本的なポイントは押さえつつ、縮めた表現をとったり、取捨選択したりしているというのが実情ではないかと思います。

秘密情報の定義と除外

秘密情報の定義

まずは、秘密情報とはどこからどこまでなのかという範囲を決めます。何を秘密情報とするかという、秘密情報の定義です。

当然ですが、情報を開示する側は、なるだけ漏れがないように知った情報すべてを秘密にしてくれと広く設定したがりますし、逆に、情報を受け取る側からすれば、全部秘密にされたら管理が大変すぎるから「秘密」と明記されたものだけにしてくれと、範囲を狭くしたがります。

広くとる場合には、いくつかの例示を挙げたあとで、業務上の一切の情報、とする場合が多いかと思います。協議・交渉の存在と内容、契約の存在と内容、などを含める場合もあります。

限定する場合には、手法はさまざまあり得ますが、普通は上記のように、秘密である旨の明示を要すると定める方法が多いかと思います。口頭で開示した場合には、開示後〇日以内に書面または電磁的方法により秘密である旨の明示をすることも記載します。

ほかには、情報のカテゴリーや媒体を指定したり、特許のクレーム(権利の範囲)のように細かく条件を書いて特定するなど考えられますが、両者が納得する形で範囲を決める必要があります。

秘密情報からの除外

上記定義に形式的に該当するとしても、秘密情報という性質上、これは秘密情報から除外しようという例外ルールを定めます。一般的には以下のような情報が除外されます。

  • 開示時点で、既に公知であった情報
  • 開示時点で、既に受領当事者が保有していた情報
  • 開示された後に、受領当事者の責めに帰すべき事由によらずに公知となった情報
  • 正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報
  • 開示された情報とは無関係に受領当事者が独自に開発した情報

秘密情報の範囲に含まれないものや、秘密情報から除外されるものに関しては、以下で述べるどの義務からも対象外となります(そもそも「秘密情報」に該当しないため)。

秘密保持義務の内容と例外

義務の内容

情報の受領当事者が守るべき主なルールは、

  • 目的外使用の禁止:契約した業務以外の目的で、勝手に情報を自社のビジネスなどに流用してはダメ
  • 第三者への開示・漏洩の禁止:開示当事者の事前の書面等による承諾を得た場合を除いて、社外の人には教えてはダメ

の2つです。

このほか、複製の禁止(むやみにコピーを作るのも原則禁止)を記載することもあります。

ただ、複製の禁止は厳しすぎると現実的ではないように思いますので、(事前承諾を得た場合を除き)本契約の目的に必要な範囲を超えて複製してはならない、ぐらいにしておくのが穏当だろうと思います

第三者への開示禁止の例外

ただし、第三者への開示禁止については、実際上の必要性から、大きく分けて概ね2種類の例外を設けることが多く、

  • 法令や裁判所の命令により開示が義務づけられる場合
  • 会社の役職員弁護士・公認会計士などの専門家のほか、ケースに応じて、グループ会社やファイナンシャル・アドバイザーなどといった一定範囲での第三者

には、事前承諾なく開示することができるとするのが通常です。

①については、法令や裁判所の命令のほか、行政機関や金融商品取引所の規則に基づくものを含める例もあります。また、事後速やかに開示した旨を通知することを併せて記載することが多いです(通知のタイミングについては、可能であれば事前にあるいはやむを得ない場合には事後に、といった内容にする例もあります)。

②については、法律上守秘義務がある専門家以外については、本条に定める義務と同等の義務を遵守させること、第三者の義務違反についても受領当事者が責任を負うことを併せて記載します(つまり、法律上であれ契約上であれ、守秘義務を負った状態にするということ)。

安全管理措置と事故時の対応

また、秘密情報の管理体制について記載する場合もあります。

善良なる管理者の注意義務をもって秘密を管理すること、安全管理のための合理的な措置(あるいはもっとキツい表現をとることもある)といった総論的な内容のほか、

  • 秘密の取扱い状況についての報告義務(開示当事者の求めに応じ、あるいは定期的に)
  • 必要と認めるときは、相手の情報管理体制(遵守状況)について立入り検査できる旨

が定められることもあります。

立入り検査は、受領当事者から通常は難色が示されますので、元々かなり立場の格差があるか、あるいは、事前の通知・承諾を要することや立入り検査時のルールなどの条件すり合わせのうえで規定されることが多いかと思います

また、事故時の対応(開示当事者への通知、指示に従うこと、損害拡大防止義務など)を定めることもあります。

秘密情報の返還・廃棄

契約終了時には、開示当事者の指示に従い、資料の原本やコピーなど秘密情報をすべて返還・廃棄する旨を定めます。

細かいところでは、法令で保管が要求される場合や社内規則上保管が必要な場合(議事録の資料となっている場合など)は除外する旨の調整をする場合もあります(そこまできちんとやっている契約担当者は多くはない印象ですが)

さらに、いわゆる廃棄証明を提出する義務が定められる場合もあります。

違反に対する措置

相手が秘密を漏らしたり、勝手に使ったりした場合は、損害賠償請求や差止請求をすることが考えられます。

損害賠償請求については、特に違反に対する措置として書かなくても採り得る一般的な方法である一方で、実際には「相手が漏らしたこと」や「それによっていくら損害が出たのか」を立証するのはかなり困難を伴う場合が多いと考えられ、どの程度の実効性があるかは微妙な面もあります。

差止請求については、民法上の保護としては基本的に認められないこと、不正競争防止法には救済手段として定めはあるものの、営業秘密該当性や不正競争行為(営業秘密に係る不正行為)などの要件立証があることから、一般的な救済手段として持っておきたいときには秘密保持条項で定めておくことが必要です。

存続期間

契約が終わったからといって、次の日に情報をバラされては困りますので、本条は契約終了後も〇年間は効力を有すると定めておくことが多いです。

期間を無制限にするか、3年・5年などの期限を設けるかは、その情報がどれくらい重要か、どれくらいで古くなる情報(陳腐化するか)によって調整します。通常は3年程度が多いかと思います。

結び

秘密保持条項と一口に言っても、自分たちが情報を出す側なのか受け取る側なのか(あるいはどちらの割合が多いのか)によって、有利になる書き方が異なります。

ただのお決まりの文章と思わず、どんな情報を守りたいのか、どこまでなら管理できるのかを考えて、自社にフィットした内容になるように心がけるのがオススメです。

なお、秘密保持契約書(NDA)については、以下のカテゴリーでくわしく解説しています。

NDA - 法律ファンライフ
NDA - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等・参考文献

主要法令等

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民法(債権関係)改正の資料

リンクをクリックすると、e-Govのページまたは法務省HPに遷移します

参考文献image

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