取適法

取適法解説|適用の基本となる「製造委託」の定義と4つの類型

今回は、取適法ということで、適用対象取引のうち製造委託について見てみたいと思います。

取適法では、立場の格差から濫用が行われがちな5つの取引類型を適用対象として定めており、その一つに製造委託があります。最も基礎的かつ多くの企業に関係する類型といえます。

適用対象となる取引の内容

製造委託 ←本記事
② 修理委託
③ 情報成果物作成委託
④ 役務提供委託
⑤ 特定運送委託

製造委託は旧下請法からある類型ですが、令和7年法改正(取適法)で対象となる物品の定義が一部追加されるなど、再確認すべき点も含まれています。本記事では、取適法における製造委託の定義と、4つの具体的な類型について解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

製造委託とは

取適法における製造委託とは、事業者が他の事業者に対し、給付に係る仕様、内容等を指定して物品等の製造(加工を含む)を委託することを指します。

なお、ここでいう物品等は、旧下請法では動産を指していましたが、取適法では単に有体物とされており、不動産も含まれるようになりました(対象の拡大)。

「委託」の判断基準:仕様の指定

単に既製品(カタログ品や標準品)を購入することは、原則として製造委託には該当しません。しかし、規格品であっても、自社の仕様に合わせて一部加工させたり、自社ブランド名やデザインを指定して製造させたりする場合は委託に該当します。

つまり、物品等の規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランドなどを指定して製造(加工を含む)を依頼することが「委託」です。

契約名称が「売買契約」であっても、実態として仕様を指定して製造させていれば法の適用対象となります

「物品等」の範囲

製造委託の対象物品には、最終製品だけでなく、以下のものが含まれます。

  • 半製品、部品、附属品(取扱説明書やラベル、容器包装等を含む)
  • 原材料
  • 金型、木型その他の物品の成形用の型
  • 工作物保持具治具その他の特殊な工具
    • 下線部は新設

令和7年法改正(取適法)により、従来「金型」として定められていた範囲に加え、「木型その他の物品の成型用の型」と「工作物保持具その他の特殊な工具」が条文上追記されました。これらを専ら製造に用いるものとして委託する場合も、製造委託の対象となります

それぞれの定義は以下のとおりです(取適法運用基準 第2-1-1-⑶参照)

  • 物品:有体物(⇔※旧下請法では「動産をいい、不動産は含まれない」とされていた)
  • 半製品:目的物たる物品の製造過程における中間状態にある製造物
  • 部品:目的物たる物品にそのままの状態で取り付けられ、物品の一部を構成することとなる製造物
  • 附属品:目的物たる物品にそのまま取り付けられたり、目的物たる物品に附属されたりすることによって、その効用を増加させる製造物
  • 原材料:目的物たる物品を作り出すための基になる資材 (原料・材料)
  • 専らこれらの製造に用いる型:目的物たる物品等の外形をかたどった物品であって、これらの製造専用のもの
    • 金型:金属製の型
    • 木型:木製の型
    • その他の物品の成形用の型:金型や木型以外の、例えば、樹脂製の型
  • 専らこれらの製造に用いる特殊な工具:汎用性のない工具であって、目的物たる物品等の製造専用のもの
    • 工作物保持具:いわゆる治具(じぐ)

「製造」「加工」

本法において製造とは、新たな物品を作り出すことだけでなく、加工も含まれます。

  • 製造」:原材料たる物品に工作を加えて新たな物品を作り出すこと(組立、鋳造など)
  • 加工」:原材料たる物品に工作を加えて新たな価値を付加すること(めっき、塗装、プレス、切断など)

したがって、例えば材料を支給して「塗装だけ」「切断だけ」を依頼する場合も、仕様を指定して行う限り製造委託として法の適用対象となります。

製造委託の4つの類型

製造委託は、委託事業者(発注側)の事業内容によって、以下の4つの類型に分類されます。

製造委託の4つの類型

  • 販売目的物品等の製造委託
  • 物品等の製造再委託
  • 修理用部品等の製造委託
  • 自家使用物品等の製造委託

類型1:販売目的物品等の製造委託(販売のための製造委託)

事業者が業として行う販売の目的物(またはその部品・金型等)の製造を委託する場合です。

具体例

  • 自動車メーカーが、販売する自動車の部品製造を部品メーカーに委託する
  • スーパーやコンビニ等の小売業者が、自社のプライベートブランド(PB)商品の製造を食品メーカー等に委託する
  • 出版社が、販売する書籍の印刷を印刷業者に委託する

類型1:販売目的物品等の製造委託

 【委託事業者の顧客】
 販売 ↑
 【委託事業者
    ↓ 製造委託
 【中小受託事業者

類型2:物品等の製造再委託(請け負った製造の再委託)

事業者が業として請け負う製造の目的物(またはその部品・金型等)の製造を委託する場合です。いわゆる”下請けに出す”ケースです。

具体例

  • 精密機器メーカーが、受託製造する機器の部品製造を別の業者に委託する
  • 部品メーカーが、製造を請け負った部品の加工工程の一部(めっき加工等)を別の業者に委託する

類型2:物品等の製造再委託

  【発注者】
製造請負 ↓
  【委託事業者】(=元請)
     ↓ 製造再委託
  【中小受託事業者

類型3:修理用部品等の製造委託(修理に必要な部品等の製造委託)

事業者が業として行う物品の修理に必要な部品や原材料の製造を委託する場合です。

具体例

  • 家電メーカーが、自社製品の修理サービス(業として行う修理)に必要な交換用部品の製造を部品メーカーに委託する

類型3:修理用部品等の製造委託

  【発注者】
修理請負 ↓
  【委託事業者
修理に必要な部品等
     ↓ 製造委託
  【中小受託事業者

類型4:自家使用物品等の製造委託

事業者が、自社で使用・消費する物品を業として製造している場合に、その物品(またはその部品・金型等)の製造を委託する場合です。

具体例

  • 輸送用機器メーカーが、自社工場で使用する専用の搬送機器や工具を自社で製造しているが、その一部の部品製造を外部に委託する
  • 精密機器メーカーが、製品出荷用の梱包材を自社で製造しているが、繁忙期などにその製造を外部に委託する

見慣れない用語であるため「自家使用」の意味がイメージしづらいですが、これは、外部への販売を目的にするのではなく、自社で使用・消費することを指します(自社で使用・消費=「自家使用」)。

もうひとつ注意点として、この類型に該当するのは、自社で「業として」製造している場合です。例えば、製造設備を持っていたり、製造に必要な技術を持った従業員がいたりしても、実際にその物品を業として(反復継続して)製造していない場合は、この類型には該当しません(「その使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合」に該当しない)。

類型4:自家使用物品等の製造委託

 【委託事業者
自社で業として製造している・・・・・・・・・・自家使用・消費の物品
   ↓ 製造委託
 【中小受託事業者

他の例として、例えば、社員が使う名刺(=自家使用物品)の印刷を他社に委託する場合でも、

  • 自社で業として社員が使う名刺の印刷を行っている場合→この類型に該当する
  • 自社で社員が使う名刺の印刷を行っていない場合→この類型に該当しない

という違いがあることになります。

条文の構造

最後に、条文も確認してみます(法2条1項)。

条文を確認してみると、従来「金型」で終わっていたところに続けて、木型や特殊工具が追加されている(下線部)のがわかります。

▽取適法2条1項

(定義)
第二条
 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくは専らこれらの製造に用いる金型、木型その他の物品の成形用の型若しくは工作物保持具その他の特殊な工具又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又は専らこれらの製造に用いる当該型若しくは工具の製造を他の事業者に委託することをいう。

そのままだと読みにくいので、箇条書きにすると、

  • 類型①:販売目的物品等の製造委託 / 類型②:物品等の製造再委託
    事業者が
    業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品
    若しくは
    その半製品、部品、附属品若しくは原材料
    若しくは
    専らこれらの製造に用いる金型、木型その他の物品の成形用の型若しくは工作物保持具その他の特殊な工具又は
  • 類型③:修理用部品等の製造委託
    業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料
    の製造を他の事業者に委託すること及び
  • 類型④:自家使用物品等の製造委託
    事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合に
    その物品
    若しくは
    その半製品、部品、附属品若しくは原材料
    又は
    専らこれらの製造に用いる当該型若しくは工具
    の製造を他の事業者に委託すること

となっています(※【 】は管理人注)。

長くて読みにくいですが、製造委託には4つの類型があることを念頭に置きつつ、「の製造を他の事業者に委託すること」の部分が対句構造になっている点に着目すると、多少マシになります

が、それでもなかなか読めないので、上記のように「事業者が~の製造を他の事業者に委託すること」という文言が共通していることに着目して、表で整理してみます。

製造委託の条文の構造

類型1:
販売目的物品等の製造委託
① 販売の目的物たる物品 の製造を他の事業者に委託すること
② ①の半製品、部品、附属品、原材料
③ ①②の製造に用いる金型、木型、特殊工具
類型2:
物品等の製造再委託
① 請け負う製造の目的物たる物品
② ①の半製品、部品、附属品、原材料
③ ①②の製造に用いる金型、木型、特殊工具
類型3:
修理用部品等の製造委託
修理に必要な部品、原材料
類型4:
自家使用物品等の製造委託
① 自家使用・自家消費する物品で自家製造している場合の物品
② ①の半製品、部品、附属品、原材料
③ ①②の製造に用いる金型、木型、特殊工具

結び

製造委託は、製造業のみならず、PB商品を扱う小売業や、修理業を営む事業者など、幅広い業種に関わる取引類型です。特に令和7年法改正(取適法)に伴い、木型や治具(じぐ)などの製造委託についても条文上明確化された点は、実務上の管理において留意が必要です。

自社の発注が仕様を指定した委託に当たるか、また対象物品が法の定義に含まれるかなどを改めて確認し、適正な取引を行うことが求められます。

次の記事は、修理委託についてです。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

  • 取適法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)
  • 取適法施行令(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」)
  • 4条明示規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」)
  • 7条記録規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」)
  • 遅延利息利率規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の率を定める規則」)
  • 取適法運用基準(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」)
  • 令和7年改正法 説明資料(「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 令和7年10月1日パブコメ(同日付け「「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」)|e-Gov(≫掲載ページ

参考資料

  • 取適法ガイドブック(「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」(公正取引委員会・中小企業庁))
  • 取適法テキスト(「中小受託取引適正化法テキスト」〔令和7年11月版〕(公正取引委員会・中小企業庁))

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