取適法

取適法解説|事業者の規模の判断基準「資本金基準」を理解

今回は、取適法ということで、事業者の規模に係る要件の判断基準、すなわち資本金基準について見てみたいと思います。

簡単にいうと、資本金が大きい会社から資本金が小さい会社(または個人)への発注が規制の対象となりますが、その線引きには3億円ラインと5千万円ラインの2つのグループが存在します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

資本金基準

取適法では、資本金の大小を”優越的地位”の判断基準としていて、資本金の額が、委託事業者と中小受託事業者を画する基準となっています。

ざっくり結論をいうと、境目になっている金額には、

  • 3億円(3億円の前後で分ける)
  • 5000万円(5000万円の前後で分ける)
  • 1000万円(1000万円の前後で分ける)

の3つがあります。

一般的に「3億円基準」と「5000万円基準」の2つのグループがあると言われますが、それぞれのグループ内では1000万円の前後でも分かれていますので、境目になっている金額自体は3つあります

「委託事業者」「中小受託事業者」の定義(法2条8項・9項)

これらの基準は取適法のどこに書かれているかというと、法2条に定められている「委託事業者」と「中小受託事業者」の定義の中で出てきます。

「委託事業者」の定義(取適法2条8項)

 この法律で「委託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一~六 (略)

「中小受託事業者」の定義(同条9項

 この法律で「中小受託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者であつて、前項第一号に規定する委託事業者から製造委託等を受けるもの
二~六 (略)

中小受託事業者の定義は、上記1号のように「前項第〇号に規定する委託事業者から…委託を受けるもの」という書き方になっており(他の号も同様)、8項と9項の間で、それぞれの号が対になっています。

つまり、以下のようになっています。

「委託事業者」(法2条8項)「中小受託事業者」(法2条9項)備考
1号(資本金3億円超)1号(資本金3億円以下)3億円の前後
2号(資本金1000万円超~3億円以下)2号(資本金1000万円以下)1000万円の前後
3号(資本金5000万円超)3号(資本金5000万円以下)5000万円の前後
4号(資本金1000万円超~5000万円以下)4号(資本金1000万円以下)1000万円の前後

あれ?なんか重複してない?と一瞬思うかもしれませんが、委託する業務の内容によって、1号・2号のグループと、3号・4号のグループの、大きく2つに分かれているため、重複はしないようになっています。

以下、順に中身を見てみます。

1号・2号のグループ:3億円基準

1号・2号のグループの「委託事業者」は、以下のとおりです。

これは、いわゆる「3億円基準」にあたるグループになりますが(3億円の前後で分かれる)、1000万円の前後でも分かれています。

▽取適法2条8項1号・2号(※【 】は管理人注)

 この法律で「委託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
1号:3億円の前後で分かれる
 資本金の額又は出資の総額が三億円を超える法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者に対し製造委託等情報成果物作成委託及び役務提供委託にあつては、それぞれ政令で定める情報成果物及び役務に係るものに限る。次号及び第五号並びに次項第一号、第二号及び第五号において同じ。)をするもの
2号:1000万円の前後で分かれる
 資本金の額又は出資の総額が千万円を超え三億円以下の法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者に対し製造委託等をするもの

ちょっと読みにくいので箇条書きにすると、

【1号】

  • 資本金の額が3億円を超える事業者であって、
  • 資本金の額が3億円以下の事業者に対し、
  • 製造委託等情報成果物作成委託及び役務提供委託政令に定めるものに限る)をするもの

【2号】

  • 資本金の額が1000万円を超え3億円以下の事業者であって、
  • 資本金の額が1000万円以下の事業者に対し、
  • 製造委託等情報成果物作成委託及び役務提供委託政令に定めるものに限る)をするもの

のようになっています。(※「個人」の部分については端折っています)

政令で定めるものというのは、情報成果物についてはプログラム、役務については運送物品の倉庫における保管情報処理のことです(施行令1条)。

▽取適法施行令

 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和三十一年法律第百二十号)第二条第八項第一号の政令で定める情報成果物プログラムとし、同号の政令で定める役務は次に掲げるものとする。
 運送
 物品の倉庫における保管
 情報処理

対応する「中小受託事業者」は、以下のとおりです。

▽取適法2条9項1号・2号(※【 】は管理人注)

 この法律で「中小受託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
1号:3億円の前後で分かれる
 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者であつて、前項第一号に規定する委託事業者から製造委託等を受けるもの
2号:1000万円の前後で分かれる
 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第二号に規定する委託事業者から製造委託等を受けるもの

3号・4号のグループ:5千万円基準

3号・4号のグループの「委託事業者」は、以下のとおりです。

これは、いわゆる「5千万円基準」にあたるグループになりますが(5千万円の前後で分かれる)、1千万円の前後でも分かれています。

▽取適法2条8項3号・4号(※【 】は管理人注)

 この法律で「委託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
3号:5000万円の前後で分かれる
 資本金の額又は出資の総額が五千万円を超える法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が五千万円以下の法人たる事業者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託(それぞれ第一号の政令で定める情報成果物又は役務に係るものを除く。次号及び第六号並びに次項第三号、第四号及び第六号において同じ。)をするもの
4号:1000万円の前後で分かれる
 資本金の額又は出資の総額が千万円を超え五千万円以下の法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をするもの

これもちょっと読みにくいので、箇条書きにすると、

【3号】

  • 資本金の額が5000万円を超える事業者であって、
  • 資本金の額が5000万円以下の事業者に対し、
  • 情報成果物作成委託又は役務提供委託政令に定めるものを除く)をするもの

【4号】

  • 資本金の額が1000万円を超え5000万円以下の事業者であって、
  • 資本金の額が1000万円以下の事業者に対し、
  • 情報成果物作成委託又は役務提供委託政令に定めるものを除く)をするもの

のようになっています。(※「個人」の部分については端折っています)

政令で定めるものというのは、先ほど見たものと同じです。

対応する「中小受託事業者」は、以下のとおりです。

▽取適法2条8項3号・4号(※【 】は管理人注)

 この法律で「中小受託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
3号:5000万円の前後で分かれる
 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が五千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第三号に規定する委託事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの
4号:1000万円の前後で分かれる
 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第四号に規定する委託事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの

適用範囲まとめ

以上の条文は、原文の確認のために見てみましたが、正味な話、文字だけだとイマイチ何のことかよくわからない感じが残るところです。

そこで、表にしてみると、以下のようになっています。表の見方は、号ごとに左から右に読んでいく感じです。

取適法の適用範囲:資本金基準×取引の内容

資本金区分 取引の内容
委託事業者 中小受託事業者 ①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託 ⑤特定運送委託
プログラムの作成 左記以外 運送・物品の倉庫保管・情報処理 左記以外
1号 3億円超 3億円以下    
2号 1000万円超〜3億円以下 1000万円以下    
3号 5000万円超 5000万円以下          
4号 1000万円超~5000万円以下 1000万円以下          

このようにしてみると、

  • 1号・2号のグループと、3号・4号のグループとで、委託する業務の内容が違っていること
  • 金額の境目には、3億円、5000万円、1000万円の3つがあること

が視覚的に見えるかと思います。

令和7年法改正:従業員基準の追加

また、令和7年改正(取適法)により、事業者の規模に係る要件につき、上記の資本金基準に加えて、従業員基準(=従業員数の大小)が追加されました。

取適法の適用範囲を上記の表と同じ要領でまとめてみると、以下のようになっています(赤字の部分が従業員基準の追加)。

中小受託法の適用範囲:資本金基準(従業員基準)×取引の内容

資本金区分/従業員基準 取引の内容
委託事業者 中小受託事業者 ①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託 ⑤特定運送委託
プログラムの作成 左記以外 運送・物品の倉庫保管・情報処理 左記以外
1号 3億円超 3億円以下    
2号 1000万円超〜3億円以下 1000万円以下    
5号 300人超 300人以下    
3号 5000万円超 5000万円以下          
4号 1000万円超~5000万円以下 1000万円以下          
6号 100人超 100人以下          

条文も一応確認してみます。先ほど見た資本金基準と同じように、号と号が対になるようになっています。

▽取適法2条8項・9項(それぞれの5号と6号を抜粋)

 この法律で「委託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 常時使用する従業員の数が三百人を超える法人たる事業者(国及び政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、常時使用する従業員の数が三百人以下の個人又は法人たる事業者に対し製造委託等をするもの(第一号又は第二号に該当する者がそれぞれ次項第一号又は第二号に該当する者に対し製造委託等をする場合を除く。)
 常時使用する従業員の数が百人を超える法人たる事業者(国及び政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、常時使用する従業員の数が百人以下の個人又は法人たる事業者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をするもの(第三号又は第四号に該当する者がそれぞれ次項第三号又は第四号に該当する者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をする場合を除く。)

 この法律で「中小受託事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 常時使用する従業員の数が三百人以下の個人又は法人たる事業者であつて、前項第五号に規定する委託事業者から製造委託等を受けるもの
 常時使用する従業員の数が百人以下の個人又は法人たる事業者であつて、前項第六号に規定する委託事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの

★どちらの5号も、「製造委託等」に含まれる情報成果物作成委託又は役務提供委託は、政令で定める情報成果物又は役務に係るものに限られています(8項1号括弧書き参照)
★どちらの6号も、「情報成果物作成委託又は役務提供委託」からは、政令で定める情報成果物又は役務に係るものは除かれています(8項3号括弧書き参照)

結び

今回は、取適法ということで、事業者の規模に係る適用要件のうち資本金区分について見てみました。

なお、事業者の規模に係る要件の全体像(資本金基準+従業員基準)については、以下の記事で解説しています。

あわせて読みたい
取適法解説|事業者の規模に関する要件「資本金基準」「従業員基準」とトンネル規制を横断解説

続きを見る

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

  • 取適法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)
  • 取適法施行令(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」)
  • 4条明示規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」)
  • 7条記録規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」)
  • 遅延利息利率規則(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の率を定める規則」)
  • 取適法運用基準(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」)
  • 令和7年改正法 説明資料(「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」の成立について)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 令和7年10月1日パブコメ(同日付け「「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」)|e-Gov(≫掲載ページ

参考資料

  • 取適法ガイドブック(「中小受託取引適正化法ガイドブック 下請法は取適法へ」(公正取引委員会・中小企業庁))
  • 取適法テキスト(「中小受託取引適正化法テキスト」〔令和7年11月版〕(公正取引委員会・中小企業庁))

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