今回は、契約の一般条項ということで、誠実協議条項について見てみたいと思います。
※「契約の一般条項」というのは、ここでは、いろんな契約に共通してみられる条項、という意味で使っています
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
誠実協議条項とは
誠実協議条項とは、契約書に書かれていない事態が起きたり、条文の解釈で揉めたりした場合に、当事者間で誠意をもって話し合い(協議)で解決する旨を約束する条項のことです。
国内取引においては、契約書の最後の方にお決まりのように規定されることが多い条項です。たとえば以下のような文言でシンプルに定められます。
本契約に定めのない事項、又は本契約に定める事項に関する疑義については、誠意をもって協議の上、これを解決するものとする。
誠実協議条項の意義
なぜこの条項を入れるのか
わざわざ契約書に書かなくても、問題が起きたら話し合うのが普通では?という面はあります。
ただ、この条項をあえて規定することには、トラブルが起きても、いきなり裁判(訴訟)や仲裁といった強硬手段に出るのではなく、まずは誠実に協議しましょうという義務を課すという意味合いがあります(といっても、通常は努力義務あるいは訓示規定と解されますが)。
これにより、当事者間の信頼関係を維持しやすくなり、結果的に無駄な訴訟費用や時間的なコストの発生を回避できるという事実上の意義(そうなればよいという期待)で、定型的に設けられているものです。
法的意義は乏しい
一見すると平和的でよい条項ですが、実務上はこの条項の法的意義は乏しいとされていますので、一応注意が必要です。
というのは、この条項はあくまで誠実に協議する義務を定めたものに過ぎませんので、協議さえすればよいからです。ある程度の話し合いがあれば(そして普通はある)、最終的な合意(解決)に至らなかったとしても、誠実協議自体は果たしたということになります。
また、普通は努力義務・訓示規定的な意味合いと捉えられていますので、仮に何も協議せずいきなり提訴したとしても(現実にもしばしばあります)、それを「誠実協議義務違反」として取り上げて何か主張するということは実際上困難と思われます
そのため、誠実協議条項があるからといって、「とりあえず協議で」とするのはただの問題の先送りですので、一応注意しましょう(そこまで字面どおり受け取る人はいないと思いますが)。
つまり、契約交渉でお互いの意見が対立したときに、「ここは誠実協議条項があるから、とりあえず曖昧にしておいて、後で揉めたら話し合って決めよう」と考えるのは危険です。いざ疑義が生じた際、お互いが自分に有利な解釈を主張して譲らなければ、結局は合意に至らず紛争に発展します。
実務上の留意点
このように、契約書を作成したりチェックしたりする際は、誠実協議条項の存在に甘えないようにというところです。
誠実協議条項があるからといって曖昧な条項を残してよい理由にはならないため、疑義が生じることが予想される事項については、あらかじめ契約書に明確に定めておくことが適切なやり方です。
結び
誠実協議条項は、日本のビジネス文化を反映したような性格の規定ですが(一般的な言葉でいえば紳士協定)、実際の紛争解決において大きな意味があるわけではありません。
いざとなれば話し合えばなんとかなるとは思わず、契約内容はできる限り具体的に取り決めるように意識しましょう。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
民法(債権関係)改正の資料
- 部会資料1~88-2(民法(債権関係)部会資料)(法務省HP)
- 中間試案補足説明(「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明」)(法務省HP)
- 中間試案パブコメ(部会資料71)(平成25年12月27日付意見募集の結果)(e-Govパブコメ)
- 要綱(「民法(債権関係)の改正に関する要綱」)(法務省HP)
- 民法の一部を改正する法律案(国会提出法案)(法務省HP)
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省HP)
参考文献
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