法務転職

弁護士の転職物語⑤|インハウス転職のネガティブ面

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今回はインハウス転職の、ややネガティブな面を指摘したいと思います。

最近はインハウスローヤー(組織内弁護士)の数も急激に増え(自分もその1人だったわけですが)、JILA(ジャイラと読む。日本組織内弁護士協会)の会員も増えて、「インハウス盛り上がってる!」という風潮です。

それはそれで結構なことですし、よくもわるくも何らかの変化は生まれるだろうと思います。

ただ、なぜ現在こういう風に世の中が動いているのかというと、それは残念ながら端的にいって、弁護士の大量発生による弁護士の値崩れです。

要は会社で勤務するときの年収とそんなに変わらなくなったので、企業側としては気軽に、とまではいかなくても、通常の中途採用人材として採用を検討することが可能となったわけです(もちろん私見に過ぎないですが)。

よくインハウスローヤーは、「企業内弁護士」あるいは「組織内弁護士」と訳されます。

しかし、採用側企業の求める人材像が上記のようなものであった場合、実際のところは、「有資格会社員」と呼んだ方が語感的に近いです。

そしてそのような形で弁護士を採用するのであれば、企業になじむ若い世代の方がよい。

だから、急激に増えているのは、60期以降の弁護士ばかりです。
(40期代や50期代のインハウスが急激に増えているという話はとんと聞いたことがない)

なお、給与体系も、「既存の人事体系のなかで評価がなされる(=つまり弁護士であることへの特別扱いはない)」「弁護士会費は企業が出す」というのが相場として概ね出来上がっていますが、このことも「有資格会社員」の語感に合います。

もうひとつ付け加えると、ひとくちにインハウス、というけれども、実際のところはひとくちにはとても言えないほど多種多様であると思われます。

企業によっても違うでしょうし、自治体のインハウスや、任期付公務員として省庁に勤務する場合も、活動の実態は相当に異なるだろうと思います。

60期代の弁護士のなかでも、組織内での存在感はそれぞれ異なるはずです。
(企業の規模、方針、文化や、インハウス自身の能力、意思、根性、周りと調和する能力などによって)

ただ、弁護士が希少価値をもっていた10~20年前のインハウス(=組織内弁護士)と、最近急激に増えている60期代のインハウス(=有資格会社員)は質的に異なるのだろう、ということはいえると思います。

自分はインハウスというと、これまで「裁判(紛争の世界)」がメイン業務であった弁護士が、より身近に、「平時の世界」で、より人々が働きやすく、また暮らしやすい仕組みをつくり、その結果として紛争の未然防止にも役立つということ、いわば弁護士が外科医の機能に加えて、内科医の機能を持つようになるという、新しい弁護士像をイメージしていました。

しかし、残念ながらというか、そういった理念めいたものをみなが持っているからインハウスが増えているというわけではない、というのが実際のところです。

とはいえ10数年後には、変化が起こる可能性はあると思います。それはつまり、既存の人事体系に従って、いま急激に増えたインハウスローヤーたちが部付部長になったり役員になったりしたときです。

このときには、その人たちが旗振り役となって、上記のような動機での採用方針に変化するかもしれません。

それまでは、量的変化はあっても質的変化は訪れない、と思われます。

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