フリーランス法

【保存版】フリーランス法のガイドマップ~全体像・対象者・ルールを総まとめ

2024年11月25日

今回は、フリーランス法ということで、フリーランス法の全体像について見てみたいと思います。

法律ではなんでもそうですが、様々なルールについて個別に取り上げても、「結局、全体としてどんな法律なのか?」「自分の場合はどのルールがあてはまるのか?」と迷ってしまうこともありますよね。

そこで本記事では、これさえ読めば法律の全体像がパッと掴めるという、フリーランス法の総まとめを解説しています。この記事をベースに、さらに詳しく知りたいポイントはそれぞれの詳細解説記事(という想定)で深掘りしてもらえればと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

フリーランス法とは(法律の2本柱)

2024年(令和6年)11月1日に施行されたフリーランス法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスが安心して安定的に働ける環境を作るための法律です。

発注者とフリーランスの間には、どうしても交渉力や情報収集力に格差が生まれやすくなります。そこで本法は、大きく分けて以下の2本柱でフリーランスを守るルールを定めています。

  • 取引の適正化:報酬の未払いや不当な減額など、契約やお金にまつわるトラブルを防ぐ
  • 就業環境の整備:ハラスメントや育児・介護との両立など、働きやすい環境を整える

「誰」の「どんな取引」に適用?~法律の適用範囲~

適用対象となる事業者(誰と誰の間の取引なのか)

フリーランス法は、消費者からの依頼(B to C)には適用されず、事業者がその事業のために他の事業者に委託する取引(B to B取引)に適用されます。

そして、法律の対象となる当事者は以下のように定義されています。

  • ルールで守られる側:フリーランス(特定受託事業者)
    従業員(※)を使用せず、自分一人(法人の場合は役員一人)で事業を行っている人が対象です。副業で行っている会社員も対象になります
    (※週20時間以上かつ31日以上雇用される見込みの労働者のこと)
  • ルールを守る側:発注事業者
    発注者は従業員を使用しているかどうかで2つに分かれます
    • 業務委託事業者:フリーランスに仕事を発注するすべての事業者(従業員ゼロのフリーランスも含む)
    • 特定業務委託事業者:従業員を使用している企業や個人事業主。この事業者に、法律のすべての義務や禁止行為が適用されます

適用対象となる取引の内容と業務委託の期間

フリーランス法は、適用対象となる取引の内容を大きく、

  • 物品の製造・加工委託
  • 情報成果物の作成委託
  • 役務の提供委託

の3つの類型に分け、法律の適用範囲を画しています。

また、フリーランス法は、以下のように、業務委託の期間が長くなるほど発注者が守るべきルールが追加されていくという段階的な仕組みになっています。

レベル1:期間に関係なくすべての業務委託に適用レベル2:1か月以上の業務委託に適用レベル3:6か月以上の業務委託に適用
取引適正化に関するルール取引条件の明示義務(書面やメール等で条件を伝える)
期日における報酬支払義務(納品から60日以内に支払う)
7つの禁止行為
(①受領拒否の禁止、②報酬の減額の禁止、③返品の禁止、④買いたたきの禁止、⑤購入・利用強制の禁止、⑥不当な経済上の利益の提供要請の禁止、⑦不当な給付内容の変更・やり直しの禁止)
就業環境整備に関するルール募集情報の的確表示義務(ウソの求人を出さない)
ハラスメント対策に係る体制整備義務(相談窓口を作るなど)
育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(※6か月未満の場合は努力義務)
中途解除等の事前予告・理由開示義務(契約を打ち切るなら30日前までに予告する)

まとめ

以上のように、本法の適用範囲は、適用対象となる事業者と取引の掛け合わせで決まります。

フリーランス法の適用範囲
適用対象となる事業者 × 適用対象となる取引(取引の内容 × 業務委託期間)

👉 適用範囲についての詳しい解説は、以下の詳細記事をチェック!

フリーランス法|適用範囲の全体像~適用対象となる「事業者」と「取引の内容」を横断解説

続きを見る

どんなルールが課される?~義務と禁止行為~

業務委託期間に応じたレベルごとに概観しましたが、冒頭で触れたように、ルールの内容自体は、

  • 取引の適正化
  • 就業環境の整備

の2本柱となっています。そこで、以下では改めて、この2つの分類に沿って中身を見ておきます。

取引の適正化に関するルール

取引の適正化に関するルール(公正取引委員会、中小企業庁所管)は、以下のようになっています。なお、7つの禁止行為については、たとえフリーランス側が合意していても違法になる点に注意が必要です。

  • 取引条件の明示義務(法3条)
    発注時に、仕事内容や報酬額、支払期日などを書面やメール、チャット等で明示する義務です(※これだけは、発注側が従業員ゼロのフリーランスであっても守らなければなりません)
  • 期日における報酬支払義務(法4条)
    納品物を受領した日(役務提供を受けた日)から数えて「60日以内」のできる限り短い期間内に報酬を支払う義務です
  • 7つの禁止行為(法5条)
    1. 受領拒否:正当な理由なく納品物の受け取りを拒否すること
    2. 報酬の減額:後から一方的に報酬を減らすこと
    3. 返品:受け取った後に正当な理由なく返品すること
    4. 買いたたき:相場より著しく低い報酬を不当に定めること
    5. 購入・利用強制:指定する商品やサービスを強制的に買わせること
    6. 不当な経済上の利益の提供要請:協賛金やタダ働きを不当に要請すること
    7. 不当な給付内容の変更・やり直し:費用を負担せずに、発注者の都合でやり直しをさせること

👉 取引適正化のための義務についての詳細解説はこちら

👉 「7つの禁止行為」の具体的なNG事例は、詳細記事でしっかり確認!

フリーランス法|発注者が守るべき「7つの禁止行為」を解説

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就業環境の整備に関するルール

就業環境の整備に関するルール(厚生労働省所管)は、以下のようになっています。

  • 募集情報の的確表示義務(法12条)
    広告等でフリーランスを募集する際、ウソの表示や誤解を招く表示を禁止しています
  • 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(法13条)
    フリーランスからの申出に応じて、妊娠・出産・育児・介護と仕事を両立できるよう、必要な配慮(納期の調整やオンライン化など)をしなければなりません(※6か月未満の場合は努力義務となります)
  • ハラスメント対策に係る体制整備義務(法14条)
    セクハラ、マタハラ、パワハラを防ぐための相談窓口の設置や迅速な対応を義務づけています
  • 中途解除等の事前予告・理由開示義務(法16条)
    契約を途中で打ち切ったり、更新しないと決めたりした場合は、原則として少なくとも30日前までに予告しなければなりません。また、理由を聞かれたら開示する義務もあります

👉 「就業環境の整備」に関する4つのルールについての詳しい解説はこちら

フリーランス法|働きやすさを守る!「就業環境整備」に関する4つのルールまとめ

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もしルール違反があったら?~行政の対応とペナルティ~

発注事業者がこれらの法律に違反した場合、フリーランスは泣き寝入りする必要はありません。所管の行政機関(公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省)に対して、申出(通報や相談)をすることができます。

  • 申出を受けた行政機関は、事実確認のための立入検査や報告徴収を行い、発注者に対して指導や勧告、命令を出します
  • 命令に違反したり、検査を拒否したりした場合には、50万円以下の罰金という厳しいペナルティが科せられます(法人にも適用される両罰規定あり)
  • 行政に相談したことを理由に、発注者が報復(契約解除など)をすることは法律で禁じられています(報復措置の禁止

また、トラブルに悩んだときは、弁護士に無料で相談できる公的な窓口「フリーランス・トラブル110番」を活用するといった選択肢もあります。

👉 違反するとどうなる?詳しい内容は個別記事をご覧ください

フリーランス法|ルール違反はどうなる?違反への措置~独禁法・取適法との関係も解説

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結び

フリーランス法は、取適法のように資本金・従業員数といった事業者規模の大小とは関係なく、フリーランスを直接にターゲットとして適用対象としており、フリーランスの働き方を根本から適正化するための画期的なルールです。

フリーランス側にとっては、自分が関わっている仕事がどのレベル(期間)にあてはまり、どのルールで守られているのか、この全体像を頭に入れておくことで、トラブルを未然に防ぎ、安心してビジネスを進めるのに役立ちます。

それぞれのルールのより詳しい内容や、これは違反になるのだろうかといった具体的な疑問については、ぜひ個別解説記事を順番にチェックしてみてください。

フリーランス法 - 法律ファンライフ
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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同じ「役務提供委託」でも中身が違う?取適法とフリーランス法を横断比較

主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム、公正取引委員会HPまたは厚生労働省HPに遷移します
  • フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文
  • 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
  • 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ
  • 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
  • フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ

参考資料

リンクをクリックすると、公正取引委員会HPに遷移します
  • フリーランス法パンフレット(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法