フリーランス法

フリーランス法|取引適正化に関する遵守事項-発注者がやってはいけない「受領拒否」とは

2024年10月15日

今回は、フリーランス法ということで、発注事業者が守るべきルールのひとつである受領拒否の禁止について見てみたいと思います。

フリーランスとして働いている方の中には、せっかく納品したのに、理由をつけて受け取ってもらえなかったといった理不尽なトラブルを経験したことがある方もいるかもしれません。フリーランス法では、こういった不当な扱いを防ぎ、フリーランスが安心して働ける環境を整備するためのルールが定められています。

取引適正化に関する遵守事項

(義務)
① 取引条件の明示義務
② 期日における報酬支払義務
禁止行為
受領拒否の禁止 ←本記事
② 報酬の減額の禁止
③ 返品の禁止
④ 買いたたきの禁止
⑤ 購入・利用強制の禁止
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑦ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
+ 報復措置の禁止

就業環境整備に関する遵守事項

(義務)
① 募集情報の的確表示
② 育児介護等と業務の両立に対する配慮
③ ハラスメント対策に係る体制整備
④ 中途解除等の事前予告・理由開示

本記事では、フリーランス法における受領拒否の禁止について、その定義、対象となる行為、そして例外となる場合などを解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

受領拒否の禁止とは

フリーランス法において、1か月以上の期間で行われる業務委託(契約の更新により1か月以上継続して行うこととなる場合も含む)を行う特定業務委託事業者(従業員を使用する発注事業者)には、7つの禁止行為が定められています。 その最初のひとつが受領拒否の禁止です。

受領拒否とは、フリーランス(特定受託事業者)に責任がない(責めに帰すべき事由がない)のに、発注した物品や情報成果物の受け取りを拒むことを指します。

▽フリーランス法5条1項1号(※【 】は管理人注)

(特定業務委託事業者の遵守事項)
第五条
 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(第二条第三項第二号【=役務の提供委託】に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。
 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。

【memo】適用される業務委託の範囲

 受領拒否の禁止は、以下の業務委託(①と②)に適用されます。

①物品の製造・加工委託
②情報成果物の作成委託
③役務の提供委託×


 他方、③役務の提供委託(サービスなどの提供)については「受領」という概念がないためこの条項の対象にはなりませんが(上記条文の赤字部分参照)、フリーランスが要した費用を負担せずに発注を一方的に取り消すことは、不当な給付内容の変更(法5条2項2号)という別の禁止行為に該当すると整理されています。

▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問74】

 役務の提供委託においては受領拒否の禁止規定が適用されませんが、特定業務委託事業者の都合による役務の提供委託の一方的な取消しは、本法上問題とならないのでしょうか。

 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに一方的に業務委託を取り消し、特定受託事業者が要した費用を特定業務委託事業者が負担しないことにより特定受託事業者の利益を不当に害したといえる場合には、不当な給付内容の変更として、本法上問題となります。

 ほか、給付の目的物が存在する役務の提供委託において、発注事業者がその目的物を受け取らなかった場合も、不当な給付内容の変更・やり直しの禁止として本法違反になるおそれがあります(解釈ガイドライン 第2-2-⑵-ア参照)。

「受領を拒む」とはどういう行為か

受領を拒む」行為には、単に納期に受け取らないことだけでなく、以下のような行為も原則として含まれるとされています。

  • 発注者の一方的な都合による発注の取り消し(キャンセル)
  • 納期の延期などによって、あらかじめ決めていた納期に納品物を受け取らないこと

【ポイント】正式な発注前の「見込み作業」

 フリーランスの方も気をつけておきたいポイントがあります。

 まだ正式に発注を受けていないけれども、見込みで作業を進めて完成させてしまったという場合、発注者がその受け取りを拒んでも、直ちに本法違反(受領拒否)になるわけではありません。 ただし、実態として正式な業務委託を行っているにもかかわらず、発注書などの書面やメール等(3条通知)を出さずに口頭だけで依頼をしており、フリーランスに作成させた納品物の受け取りを拒むような場合は、発注者は明示義務違反になると同時に、受領拒否として法律上問題になるおそれがあります。

▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問73】

 受注事業者が、正式に業務委託を受ける前に、見込みで物品を製造し又は情報成果物を作成してしまった場合において、発注事業者がその受領を拒むことは、本法上問題となりますか。

 特定業務委託事業者は、まだ業務委託を行っていない場合には、物品又は情報成果物の受領を拒んでも直ちに問題となるわけではありません。ただし、実際には正式な業務委託を行っているにもかかわらず、3条通知を行わずに、口頭で業務委託を行い、特定受託事業者に作成させた給付の受領を拒むことは、3条通知による明示義務違反となるほか、受領拒否として本法上問題となるおそれがあります。

受領拒否が認められるのはどんな場合か(例外)

発注事業者が受領を拒否できるのは、フリーランス側に責任がある場合(責めに帰すべき事由がある場合)に限られ、具体的には以下の2つの場合のみです。

  • フリーランスの給付の内容が委託内容に適合しない場合
  • フリーランスの給付に納期遅れが生じて、そのものが不要になった場合

①委託内容に適合しない場合

1つめは、フリーランスの給付の内容が委託内容と適合しないこと等がある場合です。

ただし、以下のようなケースでは、委託内容と異なるということを理由に受領拒否することは認められません(解釈ガイドライン 第2-2-⑵-ア-(ウ)-①参照)。発注書(3条通知)に委託内容や検査基準が明確に書かれていなかったり、制作途中でフリーランスからの提案を発注者が了承していたのに「やっぱり違う」と後出しで拒否したりすることは認められません。

  • 委託内容が不明確(曖昧な発注):3条通知に委託内容が明確に記載されておらず、又は検査基準が明確でない等のため、フリーランスの給付の内容が委託内容と適合しないことが明らかでない場合
  • 検査基準の恣意的な変更:業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくすることにより、委託内容と適合しないとして、従来の検査基準であれば合格とされたものを不合格とする場合
  • 事後的な承認:取引の過程において、委託内容についてフリーランスが提案し、確認を求めたところ、発注事業者が了承したので、その内容に基づき製造等を行ったにもかかわらず、給付の内容が委託内容と適合しないとする場合

②納期遅れが生じた場合

2つめは、フリーランスの給付が3条通知に記載された納期までに行われなかったため、そのものが不要になった場合です。

ただし、以下のような納期遅れを理由とする受領拒否は認められません(解釈ガイドライン 第2-2-⑵-ア-(ウ)-②参照)。そもそも納期が明確に決まっていなかったり、納期がフリーランスの事情を考慮せずに一方的に決定された無理なものだったりした場合は、拒否することはできません。

  • 納期が不明確(曖昧):3条通知に納期が明確に記載されていない等のため、納期遅れであることが明らかでない場合
  • 納期の一方的決定:納期がフリーランスの事情を考慮せずに一方的に決定されたものである場合

受領拒否の具体的な違反事例

事情が変わったから受け取れないというのは、発注者側の一方的な言い分です。たとえフリーランス側の了解を得ていたとしても、また発注者に違法性の意識がなくても、以下のようなケースは本法違反となります。

  • 売れ行き不振を理由にしたキャンセル
    例:小売店がジュエリーデザイナーにアクセサリーの製作を依頼したが、「売れ行きが不振になりいらなくなった」と言って、納品物の一部を受け取らなかった
  • 取引先(クライアント)の都合による受け取り拒否
    例:システム開発会社がフリーランスのエンジニアにプログラム開発を依頼。納期通りに完成したものの、「クライアントから仕様変更の要望が出たから、今の仕様のプログラムは受け取れない」と拒否した
  • プロジェクトの打ち切り
    例:アニメ制作会社がアニメーターに原画の作成を依頼していたが、アニメの放送自体が打ち切りになり、「原画が不要になったから」という理由で受け取りを拒否した
  • 恣意的な検査基準の変更
    例:あらかじめ定めていた検査基準を業務委託後に勝手に厳しくして、「発注内容と違う」「瑕疵(欠陥)がある」と言い掛かりをつけて受け取りを拒否した
  • 一方的な納期の前倒し
    例:発注した後になって、あらかじめ合意した納期を、フリーランスの事情を考慮せず一方的に短く変更し、「新しい納期までに間に合わなかったから」と受け取りを拒否した

これらはすべて、フリーランス側に責任がない(責めに帰すべき事由がない)ため、受領拒否の禁止に抵触することになります。

結び

フリーランス法における受領拒否の禁止は、一般的に立場の弱いフリーランスを守るためのルールです。

発注事業者は、一度発注した以上、自社の都合や理不尽な理由で受け取りを拒否することはできません。ルールを正しく理解して、対等で適正な取引環境を作っていくことが求められます。

次の記事は、報酬の減額の禁止についてです。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム、公正取引委員会HPまたは厚生労働省HPに遷移します
  • フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文
  • 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
  • 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ
  • 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
  • フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ

参考資料

リンクをクリックすると、公正取引委員会HPに遷移します
  • ガイドブック(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法