フリーランス法 取適法

【取適法 vs フリーランス法】どっちが適用される?適用要件の違いから義務・禁止事項までを徹底比較

2024年11月27日

今回は、取適法とフリーランス法の横断比較をしてみたいと思います。

取適法とフリーランス法ですが、日々の業務にあてはめてみると、「結局、今の取引にはどっちの法律が適用されるのか?」「なんだか似たようなルールが多くて、頭が混乱する…」と迷ってしまうこともありますよね。

そこで、本記事では、誰が対象になるのか(対象事業者)、どんな仕事があてはまるのか(取引の内容)、そして発注側が守るべきルールまで、2つの法律の違いを、パッと見て理解できるように一覧でまとめました。

チェックすべきポイントをカテゴリごとに整理していますので、発注側(クライアント)も受注側(中小事業者orフリーランス)も、ご自身の状況と照らし合わせながら確認してみてくださいね。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

適用要件の比較

事業者要件の比較

まず、法律が適用される前提となる事業者に関する要件(どんな事業者が対象になるか)からです。

取適法フリーランス法
発注事業者委託事業者
A:3億円超(300人超)or 1千万円超(300人超)
B:5千万円超(100人超)or 1千万円超(100人超)
特定業務委託事業者」(or「業務委託事業者」)
受注事業者中小受託事業者
A:3億円以下(300人以下)or 1千万円以下(300人以下)
B:5千万円以下(100人以下)or 1千万円以下(100人以下)
特定受託事業者」(フリーランス)

表の詳しい内容は別途確認するとして(比較のため簡略化しています)、パッと見でわかるように、最大の違いは事業者の規模に関する要件(資本金基準・従業員基準)の有無です。取適法と違って、フリーランス法では事業者の規模は関係ありません。

事業者の規模要件による一番わかりやすい違いとしては、

  • 取適法:発注者が資本金1千万円以下(かつ100人以下)の法人だと発動しない
  • フリーランス法:発注者の資本金は関係なく、受注者が従業員を使っていないフリーランスであれば、発注者が小さな会社でも、個人事業主であっても広く適用される

という点がありますが、このような場合に限らず、両法とも併行して機能しますので(重複して適用されることもある)、どちらもチェックする習慣をつけておくことが必要になります。

両法の適用を見逃さないようにするには、

資本金基準⇒②従業員基準⇒③受託事業者がフリーランスか(一人でやっているか)

というような順序で、適用があるかどうかの全体的なアタリを考える癖をつけておくのがよいと思います(※縛りはありませんが、この順番で考えるのが自然と思います)。

取引の内容の比較

次に、適用対象となる取引の内容(類型)の比較です。

取適法フリーランス法
取引の内容(類型)① 製造委託
② 修理委託
③ 情報成果物作成委託
④ 役務提供委託
⑤ 特定運送委託
① 物品の製造・加工委託
② 情報成果物の作成委託
③ 役務の提供委託

カテゴライズの違い

まず、対象となる取引をどう分類(カテゴライズ)しているかという点で、少し違いがあります。

パッと見で思うことは、フリーランス法には「修理委託」という類型がないことですが、対象外になったわけではなく、フリーランス法では機械や物品の修理も③役務(サービス)の提供委託の中に含まれると整理されています。

また、フリーランス法には「特定運送委託」という類型もありませんが、運送も役務なので、運送委託一般も③役務(サービス)の提供委託の中に含まれます。

これらは形式的な違いですが、実質的な違いとして気をつけたいのは以下の2点です。

違い①:自社で使うモノやサービス(自家使用)の扱い

取適法が適用される取引は、発注事業者がお客さんに販売・提供するものの委託がメインですが、発注者が自社で使うためのものであっても対象になるケース(自家使用の類型)があります。しかし、これは、発注者自身が社内で業として製造・作成・修理等を行っているものを外注する場合、という条件つきとなっています。

さらに、役務(サービス)に関しては、発注者が自社で使うためのサービス(自家利用)を外注する場合は、そもそも対象外となっています。

取適法では対象外になってしまう例:自社で製造していない製造機械の部品作成を外注する、自社の社員向けの研修講師をお願いする、自社オフィスの清掃を頼むなど

一方、フリーランス法では、事業者が「その事業のために」委託するものであれば(フリーランス法2条3項参照)、発注者自身が利用するサービス(自家利用役務)であっても、また、モノの製造など自家使用で取適法のような「業として」という条件を満たさなくても、すべて法律の対象になります。

フリーランス法で守られる例:自社の社内システムの構築をフリーランスのエンジニアに依頼する、自社の社員向けの研修講師をお願いするなど(事業に関するB to Bの依頼であれば幅広くカバー)

要するに、フリーランス法では「自家〇〇」もまるっと含まれる(除外や限定がない)ということです。

違い②:建設工事が対象になるかどうか

取適法では、建設業法における建設工事は適用対象外とされています(建設業法という別の法律で規制されるため)。

これに対して、フリーランス法では、業種や業界の限定がありません。例えば、一人親方などのフリーランスに建設工事を委託する場合も、フリーランス法における役務の提供委託として適用対象となります。

👉 役務提供委託の中身の違いを詳しく解説した個別記事はこちら

守るべきルール(義務と禁止事項)の比較

最後に、適用の効果である義務と禁止事項の違いです。一覧は以下のとおりです。

取適法フリーランス法
義務① 発注内容等の明示義務(4条明示)
② 取引記録の作成・保存義務(7条記録)
③ 支払期日を定める義務
④ 遅延利息の支払義務
取引適正化
① 取引条件の明示(3条通知)
② 期日における報酬支払義務
就業環境の整備
① 募集情報の的確表示
② 育児介護等と業務の両立に対する配慮
③ ハラスメント対策に係る体制整備
④ 中途解除等の事前予告・理由開示
禁止事項① 受領拒否の禁止
② 代金の支払遅延の禁止
③ 代金の減額の禁止
④ 返品の禁止
⑤ 買いたたきの禁止
⑥ 購入・利用強制の禁止
⑦ 報復措置の禁止
⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
⑨ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑩ 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止
⑪ 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
取引適正化】(7つの禁止行為)
① 受領拒否の禁止
② 報酬の減額の禁止
③ 返品の禁止
④ 買いたたきの禁止
⑤ 購入・利用強制の禁止
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
⑦ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
+ 報復措置の禁止

カテゴライズの違い

ここでも、義務と禁止事項をどう分類(カテゴライズ)しているかという点で、少し違いがあります。

取適法で新設された「協議拒否の禁止」は、取適法にはありますが、フリーランス法にはありません(もっとも、フリーランス法で協議プロセスが全く無視されるということではなく、買いたたきの禁止の該当性判断の一要素として扱われるという点は共通です)。

また、実質的に同じような禁止事項であるにもかかわらず、フリーランス法においては、「支払遅延の禁止」は義務(期日における報酬支払義務)、「報復措置の禁止」は申出制度の一部というふうに、禁止行為とは別の枠組みとして整理されています。理由は以下のようなものと考えられます。

「1か月以上」という期間要件の縛りを避けるため(支払遅延のケース)

フリーランス法では、発注事業者(特定業務委託事業者)が守るべきルールのうち、法5条に定められた7つの禁止行為(報酬の減額、買いたたき等)は、「1か月以上」の期間行う業務委託にのみ適用されるという制限があります。

もし、報酬の「支払遅延の禁止」をこの法5条の禁止行為の中にラインナップしてしまうと、1か月未満の単発の仕事(例えば1日だけの仕事)では、支払いを遅延しても第5条の禁止行為違反にならないという大きな抜け穴ができてしまいます。

そのため、期日における報酬の支払については1か月以上という期間の縛りを受けないよう、法4条で義務(期日における報酬支払義務)として規定し、期間にかかわらず単発の仕事を含むすべての業務委託に対して適用されるように整理されたと考えられます。

「就業環境の整備」を含めた法律全体の構造に対応するため(報復措置のケース)

取適法は、取引の適正化(お金や契約のルール)のみを対象としていますが、フリーランス法は、取引の適正化(第2章)に加えて、就業環境の整備(第3章)という2本目の柱を持っています。

行政機関への申出(通報)は、報酬の減額などの取引トラブルだけでなく、ハラスメントや育児介護の配慮義務違反といった就業環境のトラブルに対しても行うことができます。したがって、申出に対する「報復措置の禁止」(不利益な取扱いの禁止)を、法5条つまり取引適正化に関する禁止行為の中だけに規定してしまうと、第3章の就業環境に関する申出への報復をカバーできなくなってしまいます。

そのため、報復措置については特定の禁止行為としてまとめるのではなく、
・取引の適正化に関する申出の条文(法6条)の第3項
・就業環境の整備に関する申出の条文(法17条)の第3項
というように、それぞれの章の「申出制度」とセットになるように別枠で規定し、法律全体で隙間なくフリーランスを保護するよう整理がなされたと考えられます。

義務の比較

就業環境の整備に関する義務の有無

これは見るとすぐわかりますが、決定的な違いは「就業環境の整備」に関するルールの有無です。

取適法は、あくまで事業者間(B to B)の取引を公正にし、下請事業者(中小受託事業者)の利益を保護することを目的とした法律です。そのため、報酬の支払い遅延や不当な減額を防ぐといった取引の適正化(お金や契約)に関する義務のみが定められています。

これに対し、フリーランス法は、個人として働くフリーランスと発注事業者との間にある交渉力や情報収集力の格差に着目して作られていますので、取引の適正化だけでなく、フリーランスが健康で安全に、安定して働き続けられるための就業環境の整備に関する義務が新たに設けられているのが特徴です。

共通する義務「取引条件の明示」にも違いがある

発注事業者が仕事を依頼する際、取引条件を明示しなければならないというルールは、取適法(4条明示)にもフリーランス法(3条通知)にも共通して存在します。口約束によるトラブルを防ぐための基本的な規律です。

しかし、明示すべき内容(記載事項)を比べてみると、両者には微妙な違いもあります。

取適法では、企業間の取引において下請事業者が不当な不利益を受けないよう、支払手段に関するルールが厳格です。たとえば、報酬(下請代金)の支払いに手形を交付すること自体が「支払遅延」に該当するとして禁止されていますので、手形に関する記載事項はありません。また、ファクタリング方式等の支払いに関する金融機関の名称や支払期日など、細かい記載事項が求められています。

これに対して、フリーランス法でも、手形や電子記録債権など現金以外の方法で支払う場合には、その満期や支払期日などを明示する必要があります。また、フリーランス法ならではの独自の明示事項として、再委託の場合の支払期日の特例を適用しようとする場合の記載事項があります。

発注事業者が別の元請けから受けた仕事をフリーランスに再委託する場合に、「再委託である旨」「元委託者の名称等」「元委託業務の対価の支払期日」を明示することで、例外的に支払期日を延長(元委託支払期日から30日以内)できるというルールに対応したものです。

この再委託の際の支払期日に関する規定は、発注事業者の規模の違いから、フリーランス法にのみ設けられています。つまり、資本金1千万円(または従業員100人)を超える法人が発注側となる取適法とは異なり、フリーランス法での発注側には小規模な事業者や個人事業主も多数含まれるため、再委託構造における発注側事業者の資金繰り悪化やフリーランスへの発注控えを防ぐ目的があります

【ポイント】一括明示の方法

 取適法(法4条)とフリーランス法(法3条)の両法が適用される発注を行う場合、発注事業者は、受注事業者に対して両法が定める記載事項を併せて、同一の書面や電子メール等において一括で示すことが可能です。ただ、取適法とフリーランス法のいずれかのみに基づく記載事項がある場合、その事項も記載する必要がありますので(記載事項の網羅)、留意が必要です。

禁止事項の比較

禁止事項については、先ほど見たカテゴライズの違いのほか、禁止行為が発動する条件や、支払方法の厳しさに違いがあります。

禁止行為が発動する「期間の条件」が違う

2つの法律を比較する上で、発注者もフリーランスも知っておかなければならないのが、この期間の条件です。

取適法の場合、契約期間の長さは関係ありません(法律の対象となる取引であれば、単発の仕事であってもすべての禁止行為のルールが適用されます)。これに対して、フリーランス法では、7つの禁止行為(受領拒否、減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な利益の提供要請、不当なやり直し)は、「1か月以上」の期間で行われる業務委託にのみ適用されるという制限があります。

「えっ、じゃあ1か月未満の単発の仕事なら買いたたきをしてもいいの?」と思うかもしれませんが、独占禁止法の優越的地位の濫用として問題になる可能性は十分にあります。また、たとえば2週間の単発契約であっても、更新を繰り返してトータルで1か月以上続くことになれば、フリーランス法の禁止行為の対象になりますので、発注事業者は、短期間だから大丈夫と油断してはいけません

手形での支払いに対する厳しさが違う

報酬の支払い手段についても、2つの法律で温度差があります。

取適法が適用される取引においては、ルールの厳格化が進んでおり、手形の交付による製造委託等代金の支払いが禁止されています(支払遅延に含めて整理されている)。

これに対して、フリーランス法では、報酬の支払いはできる限り金銭(現金振込など)で行うべきとされていますが、手形を交付すること自体が直ちに違法(禁止行為)になるわけではありません。ただし、手形などの現金以外の手段で支払う場合は、フリーランスが容易に現金化できるなど利益が害されない方法でなければならず、ガイドラインでも手形で報酬を支払うことは望ましくないとされています。

▽フリーランス法の解釈ガイドライン 第1部-5

 なお、報酬の支払は、できる限り金銭(金融機関口座へ振り込む方法を含む。)によるものとする。報酬を金銭以外の方法で支払う場合には、当該支払方法が、特定受託事業者が報酬を容易に現金化することが可能である等特定受託事業者の利益が害されない方法でなければならない。また、報酬の支払について、手形を交付すること並びに金銭及び手形以外の手段であって当該報酬の支払期日までに当該報酬の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用することは、望ましくない

結び

両法はよく似ていますが、取適法は旧下請法由来であるのに対して(下請取引の保護が目的)、フリーランス法は、フリーランス(従業員を使用しない個人事業主、一人社長等)の保護を目的として制定されており、また少し異なる視点からまとめられているため、微妙な違いもあります。

違反時にはフリーランス法が優先して執行されるとされていますが、適用自体は両法とも併行して機能していますので、日々の業務ではどちらにも留意が必要です。取引条件の明示や適用範囲には類似点や相違点があるため、発注事業者は両法の要件を考慮して適切な取引を行う必要があります。

特に法律では”似ているが微妙に違う”ものが一番わかりにくいともいえますので、そのような場合に本記事が何かのお役に立てば幸いです。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

フリーランス法

フリーランス法|取引適正化に関する義務-期日における報酬支払義務

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主要法令等

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  • フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ

参考資料

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  • フリーランス法パンフレット(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法, 取適法