フリーランス法

フリーランス法|"ついでにこれもタダでお願い"はNG!発注者が守るべき「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」とは

2024年10月30日

今回は、フリーランス法ということで、発注事業者が守るべきルールのひとつである不当な経済上の利益の提供要請の禁止について見てみたいと思います。

フリーランスとして働いていると、運送だけのはずなのになぜか荷積みまでタダでやらされたとか、会社の決算対策だからと協賛金を求められたなど、当初の契約にはなかったサービスや金銭の負担を「お付き合いだから」「ついでだから」と求められた経験があるかもしれません。フリーランス法では、こういったタダ働きや不当な負担からフリーランスを守るためのルールが定められています。

取引適正化に関する遵守事項

(義務)
① 取引条件の明示義務
② 期日における報酬支払義務
禁止行為
① 受領拒否の禁止
② 報酬の減額の禁止
③ 返品の禁止
④ 買いたたきの禁止
⑤ 購入・利用強制の禁止
不当な経済上の利益の提供要請の禁止 ←本記事
⑦ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
+ 報復措置の禁止

就業環境整備に関する遵守事項

(義務)
① 募集情報の的確表示
② 育児介護等と業務の両立に対する配慮
③ ハラスメント対策に係る体制整備
④ 中途解除等の事前予告・理由開示

本記事では、どのような行為が規制対象となるのか、その定義と具体的な違反類型などについて解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

不当な経済上の利益の提供要請の禁止とは

フリーランス法において、1か月以上の期間で行われる業務委託(契約の更新により1か月以上継続して行う場合も含む)を行う特定業務委託事業者(従業員を使用する発注事業者)には、7つの禁止行為が定められています。

そのひとつである不当な経済上の利益の提供要請の禁止とは、発注事業者が自己のために、フリーランスに金銭や役務(サービス)、その他の経済上の利益を提供させることによって、フリーランスの利益を不当に害することを指します。

「経済上の利益」というと難しく聞こえますが、要するに、協賛金や協力金などの名目でのお金の提供や、本来の報酬には含まれていないタダ働き(労務の提供)などのことです。

▽フリーランス法5条2項1号

 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない
一 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益提供させること。

ここでいう「自己のために」とは、発注事業者のためにという意味ですが、例えば発注事業者の子会社に経済上の利益を提供させることにより、間接的に発注事業者の利益となる場合も含まれます。

「(金銭・役務その他の)経済上の利益」

経済上の利益」とは、報酬の支払いとは独立して提供させる金銭や労務などを指します。名目が協賛金や協力金であっても、実質的に経済的価値のあるものであれば対象となります。

金銭」は、協賛金、決算対策など名目を問わず、「役務」も、従業員派遣、お手伝いなど名目を問いません。「経済上の利益」には、例えば知的財産権など、財産の無償譲渡が含まれます。

▽解釈ガイドライン〔令和7年10月1日版〕 第2-2-⑵-カ-(ア)

(ア) 金銭、役務その他の経済上の利益
 「金銭、役務その他の経済上の利益」とは、協賛金、協力金等の名目を問わず、報酬の支払とは独立して行われる金銭の提供、作業への労務の提供等を含むものである。

「提供させる」

提供させる」は強制性を表す要件ですが、これは経済上の利益の提供がフリーランスの自由な判断によるものとはいえないということであり、事実上、フリーランスが経済上の利益を提供せざるを得ない(不利益を負担せざるを得ない)場合は、本号に該当します。

そのため、以下のような態様の提供要請は、本号に違反するおそれがあります(解釈ガイドライン 第2-2-⑵-カ-(エ)参照)。

  • 担当者による要請:購買・外注担当者など、取引に影響を及ぼす立場の者が要請すること
  • 目標設定(ノルマ):フリーランスごとに目標額や目標量を定めて要請すること
  • 不利益の示唆:提供に応じなければ、今後の取引で不利益な取扱い(発注減など)をする旨を示唆すること
  • 執拗な要請:フリーランスが提供しないと意思表示したにもかかわらず(または明らかに提供する意思がないのに)、重ねて要請すること

知的財産権の無償譲渡・許諾等

また、お金やタダ働きだけでなく、知的財産権(著作権など)の不当な扱いもこのルールに違反するおそれがあります。

例えば、イラストやプログラムなどを作成した場合、それを作ったフリーランスに知的財産権が発生することがあります。このとき、発注者が業務委託の目的を達成するために必要な範囲を超えて、無償で著作権を譲渡させたり、利用を許諾させたりすることは、不当な経済上の利益の提供要請に該当します。

また、フリーランスが著作権を持っている成果物について、発注者が勝手に二次利用をしておきながら収益を配分しなかったり、配分割合を一方的に決めたりすることもNGとなります。

簡単にいうと、知的財産権の”タダ取り”にも注意する必要がある、ということです

▽解釈ガイドライン〔令和7年10月1日版〕 第2-2-⑵-カ-(ウ)

(ウ) 知的財産権の譲渡・許諾等が発生する場合
 業務委託の目的物たる給付に関し、特定受託事業者の知的財産権が発生する場合がある。このような場合に、特定業務委託事業者が特定受託事業者に発生した知的財産権を、業務委託の目的たる使用の範囲を超えて無償で譲渡・許諾させることは、不当な経済上の利益の提供要請に該当する。また、物品の製造を委託する場合において、業務委託時に特定受託事業者の給付の内容になかった知的財産権やノウハウが含まれる技術資料無償で提供させるなどして特定受託事業者の利益を不当に害する場合も、不当な経済上の利益の提供要請に該当する。
 また、例えば、特定業務委託事業者が、特定受託事業者が知的財産権を有する情報成果物について、収益を特定受託事業者に配分しない、収益の配分割合を一方的に定める、特定受託事業者による二次利用を制限するなどして特定受託事業者の利益を不当に害する場合も、不当な経済上の利益の提供要請に該当する。

▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問81】

 業務委託の成果物に知的財産権が発生する場合、特定業務委託事業者が、当該知的財産権についての取扱いを一方的に定めることは、本法上問題となりますか。

 特定業務委託事業者は、給付の目的物とともに、成果物に関する権利の譲渡・許諾を受けたいなどの場合は、業務委託の際に「給付の内容」の一部として、権利の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要があります。また、この場合には当該権利の譲渡・許諾に係る対価を報酬に加える必要があり、当該権利の対価について特定受託事業者と協議することなく一方的に通常支払われる対価より低い額を定めた場合には、買いたたきとして本法上問題となるおそれがあります。
 また、特定業務委託事業者が、知的財産権は特定受託事業者にあるにもかかわらず対価を支払わずに成果物の二次利用を行うことなどによって、特定受託事業者の利益を不当に害する場合には、不当な経済上の利益の提供要請として本法上問題となるおそれがあります。

「不当に害する」

すべての提供要請が禁止されるわけではありません。以下の要件を満たす場合は、問題とならないケースもあります(「利益を不当に害する」とはいえない)。

「不当に害する」の判断基準

  • フリーランスの直接の利益になる場合
    :その提供が販売促進につながるなど、フリーランス自身にメリットがあり、かつ自由な意思に基づいて提供する場合
  • フリーランスの直接の利益があるとはいえないまたは明確でない場合

つまり、違反しないといえるためには、フリーランスにとって直接の利益となる(=提供することによる利益が提供することによる不利益を上回る)ことが明確である必要があります。例えば、そのフリーランスが納入した商品の・・・・・・・・・・・・・・販売促進につながるなど、それがフリーランスの直接の利益となり、かつ自由意思による場合などです。

逆に、直接の利益があるとはいえない場合やそれが明確でない場合は、「利益を不当に害する」ものとして本号に該当することになります。

▽解釈ガイドライン〔令和7年10月1日版〕 第2-2-⑵-カ-(イ)

(イ) 特定受託事業者の利益を不当に害する
 特定受託事業者が「経済上の利益」を提供することが業務委託を受けた物品の販売促進につながるなど、直接の利益になる経済上の利益を提供することにより実際に生じる利益が不利益を上回るもので、将来の取引が有利になるというような間接的な利益を含まない。)ものとして自由な意思により提供する場合には、特定受託事業者の利益を不当に害するものであるとはいえない
 しかし、特定業務委託事業者の決算対策等を理由とした協賛金の要請等、特定受託事業者の直接の利益とならない場合には、特定受託事業者の利益を不当に害するものとして問題となる。また、特定受託事業者が「経済上の利益」を提供することと、特定受託事業者の利益との関係を特定業務委託事業者が明確にしないで提供させる場合(負担額及び算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない場合や、虚偽の数字を示して提供させる場合を含む。)にも、特定受託事業者の利益を不当に害するものとして問題となる。

結び

フリーランス法における不当な経済上の利益の提供要請の禁止は、フリーランスが契約外のタダ働きや理不尽な金銭負担を強いられるのを防ぐためのルールです。

発注事業者は、今まで無料でやってくれていたからとか、今後の取引のためにお願いしたいといった理由で、フリーランスに不当な負担を押し付けることはできません。 フリーランス側としては、依頼に違和感があったら契約内容とこのルールを照らし合わせるなどして、健全な取引関係を築いていく一助とすることができます。

次の記事は、不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止についてです。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

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  • フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文
  • 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
  • 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ
  • 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
  • フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ

参考資料

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  • ガイドブック(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法