今回は、フリーランス法ということで、発注事業者が守るべきルールのひとつである募集条件の的確表示について見てみたいと思います。
フリーランスとして仕事を探す中で、クラウドソーシングで好条件の仕事を見つけて応募したのに実際の報酬は違ったとか、業務委託の募集だと思って行ったら実は雇用契約のアルバイトだったなど、募集要項と実際の条件が違ってガッカリしたような経験もあるかもしれません。フリーランス法では、こういった募集段階でのトラブルを防ぐためのルールが定められています。
本記事は、フリーランスが働きやすい環境をつくるための就業環境整備に関する遵守義務(厚労省所管)のひとつめである、募集情報の的確表示について解説します。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
募集情報の的確表示とは
フリーランス法における募集情報の的確表示とは、従業員を使用する発注事業者(特定業務委託事業者)が、広告等によってフリーランスを広く募集する場合に守らなければならないルールのことです。
広告等に実際と異なる条件が書かれていると、それを見たフリーランスがトラブルに巻き込まれたり、本来ならもっと良い別の仕事を受けられたはずの機会を失ってしまったりします。これを防ぐのがこのルールの目的です。
▽フリーランス法12条
(募集情報の的確な表示)
第十二条 特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
2 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
対象となる募集情報の範囲(厚労指針 第2-1)
業務委託に係るフリーランスの「募集」とは、業務委託をしようとする者が、フリーランスとして業務を受託しようとする者を、広告等により広く勧誘することを指します(厚労指針 第2-1-⑵参照)。
また、自ら募集する場合だけでなく、他の事業者に委託して募集する場合も含みます。
このように、的確表示の対象となる「募集」の意味は、広く捉えられています
情報の提供方法:「広告等」
的確表示の対象となる募集の方法としては、新聞や雑誌の広告だけでなく、自社のホームページ、テレビ・ラジオ放送、クラウドソーシングサイトなどのプラットフォームも含まれます。
さらに、電子メールやSNSのメッセージ機能を使って、複数人に一斉送信して募集をかける場合も対象になります(BCCでの一斉送信も含まれます)。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問86】
事前に収集したメールアドレスにBCCで募集情報を一斉に送信して募集を行う場合は、募集情報の的確表示義務の対象となるのでしょうか。
事前に収集したメールアドレスにBCCで募集情報を一斉に送信して募集を行う場合など、形式的には1人の特定受託事業者に対して送信したメールであるように見える場合であっても、実質的に特定業務委託事業者から複数の宛先に送信しており、広く募集しているといえる場合には、募集情報の的確表示義務を遵守する必要があります。
ただし、特定の1人のフリーランスを指名して仕事を直接打診する場合(1対1の関係での依頼)は、その後の交渉で条件の確認ができるため、このルールの対象外となります(フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問85】参照)。
これらを定めているのは、厚労省の施行規則になります。併せて、指針も確認してみます。
▽フリーランス法厚労規則1条
(法第十二条第一項の厚生労働省令で定める方法)
第一条 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第十二条第一項の厚生労働省令で定める方法は、書面の交付の方法、ファクシミリを利用してする送信の方法若しくは電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下「電子メール等」という。)の送信の方法又は著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第八号に規定する放送、同項第九号の二に規定する有線放送若しくは同項第九号の五イに規定する自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法その他これらに類する方法とする。
▽厚労指針 第2-1-⑶
⑶ 的確表示の対象となる募集情報の提供方法は、①新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、②文書の掲出又は頒布、③書面の交付、④ファクシミリ、⑤電子メール等、⑥著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第8号に規定する放送、同項第9号の2に規定する有線放送又は同項第9号の5イに規定する自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法その他これらに類する方法である。なお、⑤について、「電子メール等」とは「電子メールその他のその受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」をいい、「その他のその受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」とは、具体的には SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)等のメッセージ機能等を利用した電気通信が該当すること。⑥について、テレビやラジオ、インターネット上のオンデマンド放送や自社のホームページ、クラウドソーシングサービス等が提供されるデジタルプラットフォーム等が該当する。
情報の具体的内容:「就業に関する事項」
的確表示の対象となる募集情報の具体的内容としては、以下のような項目が定められています。
これらを定めている根拠法令は、政令(施行令2条)になります。指針も確認してみます。
▽フリーランス法施行令2条
(法第十二条第一項の政令で定める事項)
第二条 法第十二条第一項の政令で定める事項は、次のとおりとする。
一 業務の内容
二 業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項
三 報酬に関する事項
四 契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項
五 特定受託事業者の募集を行う者に関する事項
▽厚労指針 第2-1-⑷
⑷ 的確表示の対象となる募集情報(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第2条)の具体的な内容としては、例えば、次に掲げるものがある。
・ 「業務の内容」に関する事項とは、業務委託において求められる成果物の内容又は役務提供の内容、業務に必要な能力又は資格、検収基準、不良品の取扱いに関する定め、成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲、違約金に関する定め(中途解除の場合を除く。)等をいう。
・ 「業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項」とは、業務を遂行する際に想定される場所、納期、期間、時間等をいう。
・ 「報酬に関する事項」とは、報酬の額(算定方法を含む。)、支払期日、支払方法、交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む。)、成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価等をいう。
・ 「契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項」とは、契約の解除事由、中途解除の際の費用・違約金に関する定め等をいう。
・ 「特定受託事業者の募集を行う者に関する事項」とは、特定業務委託事業者となる者の名称や業績等をいう。
的確表示義務の内容は何か:発注者が守るべき3つのポイント
発注事業者は、募集情報を出す際には、募集情報の的確表示として、以下の3つの義務を守らなければなりません。
①虚偽の表示の禁止(厚労指針 第2-2)
意図的に、実際の条件とは違う虚偽の情報を表示することは法律違反です(法12条1項)。
- 実際の報酬額よりも高い金額をわざと書いて募集する
- 実際には業務委託を行う予定のないダミーの募集を出す
②誤解を生じさせる表示の禁止(厚労指針 第2-3)
発注者に騙すような意図がなくても、見た人が客観的に誤解してしまうような書き方はNGです(法12条1項)。
- 本当は業務委託の募集なのに、雇用される労働者の募集であるかのように混同させる書き方をする
- 実際の業務内容とは全く違う、カッコいい職種名・業種名を使う
最近、インターネット上で犯罪実行者の募集(いわゆる闇バイト)が問題になっていますが、これと通常の募集が混同されないよう、募集情報には必ず以下の6項目を記載する必要があります(必須6項目)。これを欠くと、誤解を生じさせる表示として法律違反になってしまいます。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問90】
特定受託事業者を募集するに当たって、募集情報の中で特定の事項を明示しなければ、本法第12条の的確表示義務違反となるのでしょうか。
本法第12条の的確表示義務は、広告等により特定受託事業者の募集を行うに当たって、的確表示の対象となる募集情報の事項を提供する場合に虚偽の表示や誤解を生じさせる表示の禁止等を求めるものです。
今般、インターネット等で犯罪実行者の募集(いわゆる「闇バイト」の募集)が行われる事案が見られ、その中には、通常の募集情報と誤解を生じさせるような広告等も見受けられる状況が発生しています。これを踏まえ、募集情報の中でも、①特定受託事業者の募集を行う者の氏名又は名称、②住所(所在地)、③連絡先、④業務の内容、⑤業務に従事する場所、⑥報酬(以下「募集を行う者の氏名・名称等」という。)を欠くものについては「誤解を生じさせる表示」に該当するものとして、本法第12条違反となります。
…(以下略…)
③正確かつ最新の表示の義務(厚労指針 第2-4)
募集情報は出しっぱなしにしてはいけません。「正確かつ最新」にしておく必要があります(法12条2項)。
募集を終了したり条件が変わったりした場合は、速やかに募集情報の提供を終了・変更すること、募集に際してはいつの時点の情報かを明記することが必要です(厚労指針 第2-4参照)。
クラウドソーシングなど他の事業者に募集を委託している場合
先ほど見たように、的確表示の対象となる「募集」には、自ら募集する場合だけでなく、他の事業者に委託して募集する場合も含みます。
そのため、他の事業者を利用している場合(例えばクラウドソーシングなどのプラットフォームを利用して募集している場合)は、発注事業者は、プラットフォーム側に対して必要な対応を依頼するとともに、実際に対応がなされたか確認する必要があります。
つまり、ここまで見てきたような、虚偽あるいは誤解を生じさせる表示があったときは訂正を依頼すること、また、正確かつ最新の表示のため、募集が終了・変更したときは掲載を止める旨や内容を変更する旨を依頼すること、かつこれらの実施を確認することです。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問87】
募集情報のプラットフォームを運営する他の事業者に対して募集を委託する場合は、的確表示義務の対象となるのでしょうか。
…(略)…。
そのため、特定業務委託事業者が、他の事業者に広告等による募集を委託した場合であって他の事業者が虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしていることを認識した場合、他の事業者に対し、情報の訂正を依頼するとともに、他の事業者が情報の訂正をしたかどうか確認を行わなければなりません。
また、特定受託事業者の募集を終了する場合又は募集の内容を変更する場合には、他の事業者に対して当該情報の提供を終了するよう依頼し、又は当該情報の内容を変更するよう依頼するとともに、他の事業者が当該情報の提供を終了し、又は当該情報の内容を変更したかどうか確認を行わなければなりません。
募集情報には何を載せるべきなのか:望ましい措置
ここまで見てきたように、的確表示義務の内容は、虚偽・誤解を生じさせる表示をしてはならない、正確かつ最新の表示内容を維持しなければならない、というもので、「こういう募集情報を記載しなければならない」という規律ではありません。
そのため、募集情報には何を載せるべきなのかという点については、先ほど見た必須6項目は記載しなければならないとして、それ以外については、お互いの認識のズレ(ミスマッチ)を防ぐために記載することが望ましい、という整理になっています。
▽厚労指針 第2-5
5 特定業務委託事業者が、広告等により、募集情報を提供するときに望ましい措置
特定業務委託事業者が広告等により特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、当事者間の募集情報に関する認識の齟齬を可能な限りなくすことで、当該募集情報に適する特定受託事業者が応募しやすくなり、業務委託後の取引上のトラブルを未然に防ぐことができることから、1⑷の「的確表示の対象となる募集情報」に掲げている事項を可能な限り含めて提供することが望ましいこと。
あわせて、募集に応じた者に対しても1⑷に掲げている事項を明示するとともに、当該事項を変更する場合には変更内容を明示することが望ましいこと。
結び
フリーランス法における募集情報の的確表示は、フリーランスが安心して仕事選びをするための入り口となるルールです。発注事業者は、とりあえず人を集めたいからといって、実際の条件より良く見せかけたり、古い情報を放置したりしてはいけません。
フリーランス側としては、仕事を探すときは、必須項目がしっかり書かれているかや条件が明確かをチェックし、自分に合った良い取引先を見つけていくことが大事になります。
次の記事は、育児介護等と業務の両立に対する配慮についてです。
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フリーランス法|フリーランスの育児・介護等をサポート「育児介護等との両立への配慮義務」とは
続きを見る
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文)
- 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
- 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ)
- 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
- フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ)
参考資料
参考文献
- フリーランス・事業者間取引適正化等法(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室)
- 実務逐条解説 フリーランス・事業者間取引適正化等法(那須勇太、益原大亮 編著)
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