今回は、フリーランス法ということで、取引適正化に関する義務のうち取引条件の明示義務について見てみたいと思います。
フリーランス法における発注事業者の義務には、以下のような種類があります。
【取引適正化に関する義務】
①取引条件の明示義務 ←本記事
②支払期日を定める義務/期日内の支払義務
③7つの禁止行為
【就業環境整備に関する義務】
④募集情報の的確表示
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
⑥ハラスメント対策に係る体制整備
⑦中途解除等の事前予告・理由開示
その中で、本記事は黄色ハイライトを引いた箇所の話です。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
取引条件の明示義務(法3条)
口頭による発注は、発注時の取引条件等が不明確でトラブルの元になりがちです。
そこで、当事者の認識の相違を減らしてトラブルを未然に防止するため、発注事業者は、フリーランスへの発注時に書面等により取引条件を明示しなければならないとされています。
法3条に定められているので、「3条通知」とも呼ばれます(解釈ガイドライン 第2部-第1-1参照)。
▽フリーランス法3条1項
(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、…(略)…。
明示事項
明示事項の内容(公取施行規則1条1項)
では、必要な明示事項から見ていきましょう。基本的な項目は以下のようになっています。
明示事項の基本8項目
- 当事者の名称
- 委託をした日
- 給付・役務の内容
- 給付・役務提供の期日
- 給付・役務提供の場所
- 報酬の額および支払期日
- (検査をする場合は)検査完了日
- (現金以外の方法で支払う場合)支払方法に関すること
これらの明示事項は、公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)に定められています
もう少し詳しく、全ての項目を見ておくと、以下のとおりです。
規則の条文そのものも、一応確認してみます(※多少でも読み易いよう、上記の項目に沿って区切っています)。
▽公取施行規則1条1項(※【 】は管理人注)
再委託の場合の支払期日の特例を利用する場合の明示(同条2項)
また、フリーランス法ならではの独自の明示事項として、再委託の場合の支払期日の特例(法4条3項)を適用しようとする場合の明示事項があります。
発注事業者が別の元請けから受けた仕事をフリーランスに再委託する場合、
- 再委託である旨
- 元委託者の名称等
- 元委託業務の対価の支払期日
を明示することで、例外的に支払期日を延長(元委託支払期日から30日以内)することができます。
▽フリーランス法4条3項
3 前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
この特例に応じた明示事項が、以下のように定められているわけです(公取施行規則)。
▽公取施行規則1条2項
2 特定業務委託事業者は、法第四条第三項の再委託をする場合には、前項各号に掲げる事項のほか、第四条各号に掲げる事項の明示をすることができる。
▽公取施行規則4条
(法第四条第三項の事項)
第四条 法第四条第三項の公正取引委員会規則で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 再委託である旨
二 元委託者の商号、氏名若しくは名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって元委託者を識別できるもの
三 元委託業務の対価の支払期日
代金額が決まらない場合の算定方法による明示(同条3項)
明示事項のうち「報酬の額」(7号)については、具体的な金額を明確に記載することが原則ですが、やむを得ない事情がある場合には、算定方法による報酬の額の明示も認められています。
▽公取施行規則1条3項
3 第一項第七号の報酬の額について、具体的な金額の明示をすることが困難なやむを得ない事情がある場合には、報酬の具体的な金額を定めることとなる算定方法の明示をすることをもって足りる。
「算定方法の明示をすること」
この算定方法での明示は、
- 算定根拠となる事項(変数)が決まれば、具体的な金額が自動的に確定するものでなければならない
- 3条通知とは別に算定方法を明示することも許容されるが、算定方法の明示と3条通知が別のものである場合は、これらの相互の関連性(関連付け)を明記する必要がある
(ex)単価表など、算定方法の記載で引用するものがある場合は、「報酬については、別紙の単価表に基づき算定した金額に、業務に要した交通費、○○費、▲▲費の実費を加えた額となります。」などと明示
とされています(ex はパンフレット 3-①参照)。
また、法令上の根拠があるかは明確でないですが、具体的な金額の確定後は速やかにその金額を明示する必要があるとされています。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑶-キ-(ア)
…この算定方法は、報酬の額の算定根拠となる事項が確定すれば、具体的な金額が自動的に確定するものでなければならず、算定方法の明示と3条通知が別のものである場合においては、これらの相互の関連性を明らかにしておく必要があるほか、報酬の具体的な金額を確定した後、速やかに特定受託事業者に当該金額を明示する必要がある。
「やむを得ない事情」
算定方法での明示が認められる「やむを得ない事情」がある場合としては、例えば以下のものが挙げられています。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑶-キ-(ア)
- 原材料費等が外的な要因により変動し、これらに連動して報酬の額が変動する場合
- プログラム作成委託において、プログラム作成に従事した技術者の技術水準によってあらかじめ定められている時間単価及び実際の作業時間に応じて報酬が支払われる場合
- 一定期間を定めた役務提供であって、当該期間における提供する役務の種類及び量に応じて報酬の額が支払われる場合(ただし、提供する役務の種類及び量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)
継続的取引において共通事項がある場合の明示(同条4項)
また、取引条件の明示は原則として発注の都度必要ですが、フリーランスとの取引は継続的に行われることがあるため、明示事項のうち一定期間共通である事項がある場合(例:支払方法、検査期間等)には、これらの事項をあらかじめ明示することで、発注の都度明示することは不要となります。
つまり、共通事項(個々の業務委託に一定期間共通して適用される事項)についてはあらかじめ別に明示しておき、個々の発注時には明示を省略することもできるということです。
▽公取施行規則1条4項(※【 】は管理人注)
4 第一項から前項までに掲げる事項が一定期間における業務委託について共通であるものとして、あらかじめ、書面の交付又は次条に規定する電磁的方法による提供により示されたときは、当該事項【=共通事項】については、その期間内における業務委託に係る明示は、あらかじめ示されたところによる旨を明らかにすることをもって足りる。
この場合、個々の発注時には、あらかじめ明示した共通事項との関連性(紐づけ)を明らかにする必要があります。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-⑶-コ
コ 共通事項がある場合の明示事項等(本法規則第1条第4項)
業務委託事業者は、原則として業務委託をした都度、3条通知により明示することが必要であるが、共通事項がある場合には、あらかじめ書面の交付又は電磁的方法による提供により共通事項を示したときは、共通事項を業務委託の都度明示することは不要となる。ただし、この場合、3条通知には、あらかじめ明示した共通事項との関連性を記載しなければならない。
また、共通事項の明示に当たっては、当該共通事項が有効である期間も併せて明示する必要がある。例えば、ある共通事項について、新たな共通事項の明示が行われるまでの間は有効とする場合には、その旨を明示する必要がある。
なお、業務委託事業者においては、年に1回、明示済みの共通事項の内容について、自ら確認し、又は社内の購買・外注担当者に周知徹底を図ることが望ましい。
また、上記のように、共通事項の明示にあたっては、その共通事項が有効である期間を明記する必要があります。さらに、発注事業者は、明示した共通事項の内容について定期的に(年に1回)自ら確認する等が望ましいとされています。
その他個別の留意点:給付の内容(3号)と知的財産権の扱い
また、明示事項のうち「給付…の内容」(3号)とは、物品及び情報成果物(役務提供委託の場合は、提供される役務)のことですが、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要があるとされています。
フリーランスに発生する知的財産権を譲渡/許諾させるときは、譲渡/許諾の範囲についても明確に記載する必要があります。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑶-ウ
ウ 特定受託事業者の給付の内容(本法規則第1条第1項第3号)
「給付(法第二条第三項第二号の業務委託の場合は、提供される役務。第六号において同じ。)の内容」とは、業務委託事業者が特定受託事業者に委託した業務が遂行された結果、特定受託事業者から提供されるべき物品及び情報成果物(役務の提供を委託した場合にあっては、特定受託事業者から提供されるべき役務)であり、3条通知において、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要がある。
また、委託に係る業務の遂行過程を通じて、給付に関し、特定受託事業者の知的財産権が発生する場合において、業務委託事業者は、目的物を給付させる(役務の提供委託については、役務を提供させる)とともに、業務委託の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを「給付の内容」とすることがある。この場合は、業務委託事業者は、3条通知の「給付の内容」の一部として、当該知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある。
知的財産権の譲渡/許諾をさせるときは、「報酬の額」(7号)に関しても、譲渡/許諾の対価を織り込んだものでなければなりません。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑶-キ-(イ)
(イ) 知的財産権の譲渡・許諾がある場合
業務委託の目的物たる給付に関し、特定受託事業者の知的財産権が発生する場合において、業務委託事業者が目的物を給付させる(役務の提供委託については、役務を提供させる)とともに、当該知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを含めて業務委託を行う場合には、当該知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を報酬に加える必要がある。
明示方法
3条通知の明示方法としては、
- 1項本文に「原則的な明示方法」
- 1項但書に「例外的な明示方法」
- 2項に「書面交付請求による交付」
が、それぞれ定められています。
原則的な明示方法(法3条1項本文)
原則的な明示方法は、書面または電磁的方法により、明示事項の全てを発注時に明示する、というものです。
▽フリーランス法3条1項本文(※再掲)
(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、…(略)…。
明示事項が網羅されていればよく、特に様式(=書式、フォーマット)の制約はありません。
書面の交付
書面に特に限定はなく、例えば、発注書、契約書などが考えられます。
別の言い方をすると、3条通知のための専用の書面でもいいですし、そうでなくてもいい(明示事項が記載されていれば、発注書や契約書で3条通知と兼ねることはOK)ということです。普通は後者かと思います
受信と同時に書面により出力されるFAXは、書面にあたるとされています(解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑸-ア)。
電磁的方法での提供
電磁的方法での提供には、
- 受信者を特定して電気通信により送信する方法
ex.電子メール、各種のメッセージツール - 明示事項を電磁的に記録したファイルを交付する方法
ex.USBメモリやCD-R等の交付
があります。①は、送信者が受信者を特定して送信できるものに限定されます(インターネット上に開設しているブログやウェブページ等への書き込み等は不可)。
▽公取施行規則2条(※【 】は管理人注)
(法第三条第一項の電磁的方法)
第二条 法第三条第一項の公正取引委員会規則で定める電磁的方法は、次に掲げる方法のいずれかとする。
一 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)により送信する方法【=受信者を特定して電気通信により送信する方法】
二 電磁的記録媒体(電磁的記録に係る記録媒体をいう。)をもって調製するファイルに前条に規定する事項を記録したものを交付する方法【=明示事項を電磁的に記録したファイルを交付する方法】
2 前項各号に掲げる方法は、前条に規定する事項が文字、番号、記号その他の符号で表示される方法でなければならない【=ディスプレイ表示】。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問41】
3条通知を「電磁的方法による提供」により明示する方法とは、具体的にはどのような方法でしょうか。
① 受信者を特定して電気通信により送信する方法
例えば、電子メール、チャットツール、SMSを用いて送信する方法が該当します。SNS、ウェブサイト、アプリケーション等のメッセージ機能を用いて送信する場合も同様です。
明示事項は、メッセージの本文に記載する方法だけではなく、明示事項の掲載されたウェブページのURLをメッセージ上に記載する方法も認められます。また、受信者を特定して電気通信により送信する方法により明示する場合は、特定受託事業者の使用する通信端末機器等によりメッセージを受信したときに到達したものとみなされ、明示したことになります。ウェブメールサービス、クラウドサービス等の場合は、特定受託事業者が3条通知の内容を確認し得る状態となれば明示したことになります。
なお、特にクラウドサービス等を利用する場合は、メッセージが削除されてしまったり、環境が変わって閲覧が不可能になってしまったりする可能性もあるため、業務委託事業者側・特定受託事業者側双方でスクリーンショット機能等を用いた発注内容の保存を行うことが望まれます。
② 明示事項を記録したファイルを交付する方法
例えば、業務委託事業者が明示事項を記載した電子ファイルのデータを保存したUSBメモリやCD-R等を特定受託事業者に交付する方法が該当します。
例外的な明示方法(法3条1項ただし書)
当初明示と補充明示
例外的な明示方法として、当初明示をした後、補充明示をするという方法があります。
つまり、明示事項のうちその内容が定められないことについて正当な理由があって明示しない事項(「未定事項」)がある場合には、
- これら以外の事項を明示(=当初明示)した上で、
- 未定事項の内容が定まった後、直ちにその明示事項を明示(=補充明示)する
というやり方です(法3条1項ただし書)。
▽フリーランス法3条1項ただし書(※【 】は管理人注)
(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第三条 …(略)…。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示【=補充明示】しなければならない。
この場合、当初明示では、
- 未定事項の内容が定められない理由
- 未定事項の内容を定めることとなる予定期日
を明示しなければなりません(※公取施行規則1条1項の12号に規定されています)。
上記①②の事項も含めて委託時に直ちに当初明示をしたうえで、未定事項の内容が定まってから直ちに補充明示をする、というやり方です。
▽公取施行規則1条4項
4 法第三条第一項ただし書の規定に基づき、業務委託をしたときに明示をしない事項(以下「未定事項」という。)がある場合には、未定事項以外の事項のほか、未定事項の内容が定められない理由及び未定事項の内容を定めることとなる予定期日の明示をしなければならない。
また、補充明示の際は、当初明示との関連性が明らかになるようにする必要があります。
▽公取施行規則1条5項(※【 】は管理人注)
5 法第三条第一項ただし書の規定に基づき、特定受託事業者に対し未定事項の明示〔=補充明示〕をするときは、当初の明示との関連性を確認することができるようにしなければならない。
内容が当初定められないことにつき正当な理由
では「正当な理由がある」とはどのようなものか?というと、発注時点ではその明示事項の内容について決定することができないと客観的に認められる場合、とされています。
単なる自己判断(手抜き、先送り、安易な判断etc)ではなく、その内容を定めることができないと客観的に認められるような場合である必要があります。
例えば、ソフトウェアの作成でエンドユーザーの求める仕様が確定していないため発注時点では正確に委託内容を決められないとか、コンテンツの制作において発注時には具体的な番組内容まで確定できず、報酬額を決められない、といったケースがあります。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑶-ケ-(ア)
(ア) その内容が定められないことにつき正当な理由があるもの
未定事項であるとして明示を要しない事項とは、その内容が定められないことにつき正当な理由があるものをいう。その内容が定められない正当な理由があるとは、業務委託の性質上、業務委託をした時点では当該事項の内容について決定することができないと客観的に認められる理由がある場合をいう。業務委託事業者は、業務委託をした時点で、明示事項の内容について決定できるにもかかわらず、これを決定せず、これらの事項の内容を3条通知により明示しないことは認められない。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問40】
3条通知において業務委託時に明示を要しない「その内容が定められないことにつき正当な理由がある」とは、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。
「その内容が定められないことにつき正当な理由がある」とは、取引の性質上、業務委託をした時点では明示事項の内容を決定することができないと客観的に認められる理由がある場合であり、例えば、次のような場合がこれに該当します。
・ ソフトウェアの作成委託において、業務委託時では最終ユーザーが求める仕様が確定しておらず、特定受託事業者に対する正確な委託内容を決定することができないため、「特定受託事業者の給付の内容」を定められない場合
・ 放送番組の作成委託において、タイトル、放送時間、コンセプトについては決まっているが、業務委託時には、放送番組の具体的な内容については決定できず、「報酬の額」が定められない場合
なお、報酬の額に関して、算定方法による明示が可能な場合は、報酬の額につき「その内容が定められないことにつき正当な理由がある」とはいえず、算定方法による明示をする必要があります。
▽解釈ガイドライン 第2部-第1-1-⑶-ケ-(ア)
なお、報酬の額として具体的な金額を定めることとなる算定方法を3条通知により明示することが可能である場合には、報酬の額についてその内容が定められないことにつき正当な理由があるとはいえず、3条通知により算定方法を明示する必要がある。詳細は前記キ(ア)参照。
電磁的方法の場合の注意点:書面交付請求による交付(法3条2項)
電磁的方法で明示した場合でも、後からフリーランスが書面の交付を求めてきたときは、発注事業者は、遅滞なく書面を交付する必要があります(法3条2項本文)。例えば、SNSのサービス終了によって明示の内容が確認できないために、フリーランスが書面の交付を請求したケースなどが考えられます。
ただし、フリーランスの保護に支障を生ずることがない場合には、必ずしも書面を交付する必要はないとされています(ただし書)。
▽フリーランス法3条2項
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
保護に支障を生ずることがない場合とは、以下のようなケースです(公取施行規則3条2項)。
- フリーランスからの求め:フリーランスから電磁的方法による提供を希望する旨の申出があった場合
- ネット上の定型約款:インターネットを通じた定型約款による契約で、その内容をいつでもフリーランスが閲覧できる状態にある場合
- 書面の再交付:既に書面の交付がされていた場合
▽公取施行規則3条2項
2 法第三条第二項ただし書の公正取引委員会規則で定める場合は、次のいずれかに該当する場合(第一号又は第二号に該当する場合において、第二条第一項第一号に掲げる方法による明示がされた後に、特定受託事業者がその責めに帰すべき事由がないのに、第一条第一項から第三項までに掲げる事項を閲覧することができなくなったときを除く。)とする。
一 特定受託事業者からの電磁的方法による提供の求めに応じて、明示をした場合
二 業務委託事業者により作成された定型約款(民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百四十八条の二第一項に規定する定型約款をいう。)を内容とする業務委託が次のいずれにも該当する場合
イ インターネットのみを利用する方法により締結された契約に係るものであること。
ロ 当該定型約款がインターネットを利用して特定受託事業者が閲覧することができる状態に置かれていること。
三 既に法第三条第一項又は第二項の規定に基づく書面の交付をしている場合
取適法の明示義務(4条明示)との関係
取適法との関係が気になるところですが、ルールとしては基本的に、両法が併行して走っています。
なので、フリーランス法の適用があるときはフリーランス法に、取適法の適用があるときは取適法に、両法の適用があるときは両法に、対応する必要があります。
3条通知については、取適法の4条明示のルールと重なる部分が多く、3条通知と4条明示を兼ねる運用も可能ですが、完全に重なっているわけではないので、注意が必要です。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問33】
本法及び取適法の両法が適用される発注を行う場合には、発注事業者は受注事業者に対して本法の3条通知と取適法の4条明示両方を作成し示さなければならないのでしょうか。
発注事業者は、本法及び取適法の両法が適用される発注を行う場合、受注事業者に対して、同一の書面や電子メール等において、両法が定める記載事項を併せて一括で示すことが可能です。
なお、この場合には、本法と取適法のいずれかのみに基づく記載事項があるときは、その事項も記載する必要があることに留意が必要です。
※ 本法及び取適法における明示(記載)事項については、問36 を御参照ください。
つまり、明示事項については、
- 3条通知には、手形の交付による支払いを行う場合の明示事項と、支払期日を定める義務につき再委託の場合の特例を用いる場合の明示事項がある(取適法の4条明示にはない)
- 4条明示には、原材料等の有償支給に関する明示事項がある(フリーランス法の3条通知にはない)
といった違いがあります。
フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問36】が明示事項の相違点を直接取り上げたQ&Aとなっており、参考になります
👉取適法の4条明示(発注内容等の明示)についての詳細記事はこちら
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取適法解説|トラブル防止の鉄則「発注内容等の明示義務」(4条明示)の基本ガイド
続きを見る
結び
今回は、フリーランス法ということで、取引適正化に関する義務のうち取引条件の明示義務について見てみました。
最後に、本義務の適用場面を確認しておきます。以下の表の黄色ハイライト部分になります(要するに、本義務に関しては全ての場面に適用あり)。
フリーランス法の義務と適用場面
| 適用対象主体⇒ (業務委託事業者) |
特定業務委託事業者以外 | 特定業務委託事業者 | |||
| 1か月未満 | 1か月以上 | 6か月以上 | |||
| 取引適正化に関する義務 | ①取引条件の明示 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| ②報酬支払期日の設定/期日内の支払い | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| ③7つの禁止行為 | 〇 | 〇 | |||
| 就業環境整備に関する義務 | ④募集情報の的確表示 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| ⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮 | 〇 | ||||
| ⑥ハラスメント対策に係る体制整備 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| ⑦中途解除等の事前予告・理由開示 | 〇 | ||||
(※)上記のほか、報復措置の禁止は、取引適正化の義務につき業務委託事業者に適用(法6条3項)、就業環境整備の義務につき特定業務委託事業者に適用(法17条3項)
次の記事は、期日における報酬支払義務についてです。
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フリーランス法 - 法律ファンライフ
houritsushoku.com
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
- フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文)
- 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
- 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ)
- 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
- フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ)
参考資料
- フリーランス法パンフレット(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ)
- 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ)
参考文献
- フリーランス・事業者間取引適正化等法(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室)
- 実務逐条解説 フリーランス・事業者間取引適正化等法(那須勇太、益原大亮 編著)
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