フリーランス法

フリーランス法|フリーランスの育児・介護等をサポート「育児介護等との両立への配慮義務」とは

2024年11月7日

今回は、フリーランス法ということで、発注事業者が守るべきルールのひとつである育児介護等と業務の両立に対する配慮について見てみたいと思います。

子どもの急病でどうしても今日だけ納期を延ばしてほしい、親の介護があるから週に1回はオンラインでの打ち合わせにしたい…。しかし、組織に属さないフリーランスにとって、妊娠・出産・育児・介護と仕事の両立は大きな壁になりがちです。フリーランス法では、こうした状況を踏まえ、フリーランスが安心して働き続けられるようにするためのルールが定められています。

就業環境整備に関する遵守事項

義務
① 募集情報の的確表示
育児介護等と業務の両立に対する配慮 ←本記事
③ ハラスメント対策に係る体制整備
④ 中途解除等の事前予告・理由開示

本記事では、発注者(特定業務委託事業者)はどのような対応をしなければならないのかなどを、具体的に解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

育児介護等への配慮義務とは(法13条)

育児介護等への配慮義務とは、発注事業者(従業員を使用する特定業務委託事業者)は、フリーランスから育児や介護などと業務を両立するための配慮をしてほしいとの申出があった場合、その状況に応じた必要な配慮をしなければならないというルールです。

対象となるのは、6か月以上の期間で行う継続的業務委託(契約の更新によって6か月以上継続する場合も含む)です。 なお、6か月未満の業務委託であっても、配慮を行うよう努力する義務(努力義務)があります。

▽フリーランス法13条

(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)
第十三条
 特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条及び第十六条第一項において「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が妊娠、出産若しくは育児又は介護(以下この条において「育児介護等」という。)と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない
 特定業務委託事業者は、その行う継続的業務委託以外の業務委託の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が育児介護等と両立しつつ当該業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をするよう努めなければならない

育児介護等の内容(厚労指針 第3-1)

ここでいう「育児介護等」(法13条1項)には、以下の内容が含まれます。

  • 妊娠・出産
  • 育児:小学校就学の始期に達するまでの子を養育すること
  • 介護:ケガや病気などで2週間以上常時介護が必要な家族(配偶者、父母、子、祖父母など)の介護その他の世話

なお、現在進行形で育児や介護をしている方だけでなく、もうすぐ出産する予定があるといった具体的な予定があるフリーランスも申出の対象になります。

▽厚労指針 第3-1-⑹

⑹ 法第13条の規定に基づき育児介護等に対する配慮の申出ができる者は、特定業務委託事業者と業務委託に係る契約を締結している特定受託事業者であって育児介護等と両立しつつ業務に従事する特定受託事業者であるが、現に育児介護等を行う者でなくとも、育児介護等を行う具体的な予定のある者も含まれる

配慮義務の内容は何か:3つのステップ(厚労指針 第3-2)

フリーランスから配慮の申出があった場合、発注事業者は以下のステップで対応する必要があります(厚労指針 第3-2-⑴参照)。

①申出の内容等の把握

まずは、フリーランスがどんな配慮を求めているのか、育児や介護の状況を話し合って把握します。

このとき、個人のプライバシーに関わる情報も含まれるため、情報を共有する範囲は必要最低限に留めるなどの配慮が必要です。

もちろん、申出を無視するのはNGです

②配慮の内容や選択肢の検討

希望された配慮を実施できるか、あるいは別の方法で対応できないかなど、取り得る選択肢を社内で検討します。

検討すらしないのも配慮義務違反になります

③配慮の実施(できない場合は「理由の説明」)

具体的な配慮の内容が決まったら、速やかにフリーランスに伝えて実施します。もちろん、業務の性質上どうしても希望通りの配慮ができない場合もありますが、その場合は、なぜ実施できないのかという理由を、書面やメール等でわかりやすく説明しなければなりません。

理由を説明せずにただ「できない」と突っぱねるのもNGです

配慮の実施は個別の状況によって異なりますが、具体例として、以下のような対応が挙げられます。

  • スケジュールの調整
    例:妊婦健診がある日は、打ち合わせの時間をずらす
  • 事前ルールの決定
    例:つわりで急に作業ができなくなる場合に備えて、あらかじめ対応方法(連絡フローや納期の扱いなど)を決めておく
  • 納品方法の変更
    例:出産のために一時的に実家に帰省するため、対面での手渡し納品から、宅配便や郵送での納品に切り替える
  • 納期の変更
    例:子どもの急病で作業時間が取れなくなったため、納期を数日だけ延期する
  • 就業場所の変更
    例:家族の介護のため、特定の曜日だけは現場ではなくオンラインでの業務に切り替える

フリーランスの方からの一方的な要望ではなく、お互いに業務を円滑に進めるための歩み寄りが大切といえます。

【ポイント】望ましい措置:申出しやすい環境の整備

 育児介護等に対する配慮が円滑に行われるようにするためには、速やかにこれらのステップが開始されるよう、フリーランスが申出をしやすい環境を整備しておくことが重要です。具体例として、以下1・2のような育児介護等への理解促進に努めることが望ましいとされています(厚労指針 第3-2-⑴-二参照)。

  1. 配慮の申出が可能であることや、配慮を申し出る際の窓口・担当者、配慮の申出を行う場合の手続等を周知すること
  2. 育児介護等に否定的な言動が頻繁に行われるといった配慮の申出を行いにくい状況がある場合にはそれを解消するための取組を行うこと

望ましくない取扱い(厚労指針 第3-3)

しかし、配慮をお願いできる制度があっても、フリーランスの側としては、申し出たら嫌な顔をされたり、仕事を減らされたりするのではないかと不安に思うかもしれません。

そこで、厚労指針では、フリーランスからの配慮の申出や実際に配慮を受けたことを理由として、発注事業者がフリーランスに対して不当な扱いをすることを防ぐため、大きく分けて以下の2つの行為を望ましくない取扱いとして示しています(厚労指針 第3-3参照)。

①申出の阻害

フリーランスが配慮を申し出ようとしたときに、それを諦めさせるような対応をすることです。

  • わざと手続きを面倒にする
    配慮の申出をするだけなのに、膨大な書類の提出を求めるなど、フリーランスにとって過重な負担となるような手続をわざと設ける
  • ためらわせるような発言をする
    発注事業者の役員や社員が、そんな申出をしたら周りに迷惑がかかるなどと言って、申出をためらわせるようなプレッシャーをかける

②申出や配慮を理由とした不利益な取扱い

フリーランスが配慮を申し出たことや実際に配慮を受けたことを理由として、発注事業者が嫌がらせやペナルティを課すことです。

不利益な取扱いとなる行為の例としては、

  • 契約の解除を行うこと
  • 報酬を支払わない、又は減額すること
  • 給付の内容(仕事内容)を変更させたり、納品後にやり直しをさせたりすること
  • 取引の数量(発注量)を減らすこと
  • 取引を停止すること
  • 就業環境を害すること(嫌がらせなど)

が挙げられています。

  • 契約解除
    例:介護のために特定の曜日・時間は業務が難しいと配慮の申出があったが、別の曜日・時間なら業務が可能で契約目的も達成できるのに、配慮を申し出たことを理由に契約を打ち切った
  • 不当な減額
    例:出産に関する配慮(時短稼働など)を受けたフリーランスに対し、現に作業を行わなかった(減った)業務量”以上”の分まで、過剰に報酬を減額した
  • 嫌がらせ
    例:育児や介護の配慮を受けたフリーランスに対して、発注者の社員が繰り返し嫌味を言うなどの嫌がらせを行い、仕事の継続に悪影響を生じさせた

不利益な取扱いとして報酬の支払期日までに報酬を支払わなかった場合や、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずること等があった場合には、別途、取引適正化に関する遵守事項(期日までの支払義務や報酬の減額禁止)に抵触する場合もあります。

不利益な取扱いとならない正当な対応との違い

なお、発注者側としては、労働時間が減ったのに満額払わなければならないのかとか、あるいは配慮の結果仕事が回らなくなったらどうするのかと疑問に思うかもしれません。

しかし、不利益な取扱い該当性については、申出をしたことまたは配慮を受けたこととの間に因果関係がある行為であることを要するとされているため(厚労指針 第3-3-ロ参照)、実際に減った仕事の分を調整することや話し合いの結果として契約を見直すことは問題ありません。ここでNGとされているのは、配慮を求めたことへのペナルティとして理不尽な扱いをすることです。

不利益な取扱いに該当しない例

  • 実際に減った分の減額
    育児のために今までより短い時間で業務を行うことになった場合、就業時間の短縮によって実際に減少した業務量に相当する分の報酬を減額する
  • 発注量の削減
    配慮の申出を受けてお互いに話し合った結果、フリーランス側が従来の数量の納品はできないとわかったため、その納品できない分の取引数量を減らす
  • やむを得ない契約解除
    妊娠による体調変化でイベントに出演できなくなったから日を変えてほしいと申出があったが、日程変更が困難で当初の契約目的がどうしても達成できないため、話し合った上で契約を解除する

結び

フリーランス法における育児介護等と業務の両立に対する配慮義務は、フリーランスがライフイベントに直面しても、キャリアを諦めずに働き続けられる社会を作っていくためのルールです。

発注事業者には、日頃からフリーランスが相談しやすい環境を作っておくこと、申出があったらどうすれば両立できるか一緒に考える姿勢が求められます。お互いに事情を理解し合い、柔軟な取引関係を築いていくことが望まれます。

次の記事は、ハラスメント対策に係る体制整備についてです。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

リンクをクリックすると、法令データ提供システム、公正取引委員会HPまたは厚生労働省HPに遷移します
  • フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文
  • 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
  • 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
  • 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ
  • 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ
  • フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
  • フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ

参考資料

リンクをクリックすると、公正取引委員会HPに遷移します
  • ガイドブック(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ
  • 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ

参考文献

-フリーランス法