今回は、フリーランス法ということで、適用対象となる業務委託の類型について見てみたいと思います。
当ブログでは、具体的にどんな取引(仕事)がフリーランス法の対象になるのかについて、業務委託の類型と業務委託の期間の2つに分けて詳しく解説しています。本記事では、まずは前者の、業務委託の類型から解説していきます。
自分の受けているこの仕事がフリーランス法の対象になるのかなと気になっている方は、ぜひチェックしてみてください。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
前提:対象となるのはBtoBの業務委託
どんな仕事が対象になるかを見る前に、まずは大前提を押さえておきましょう。
フリーランス法が適用されるのは、事業者がその事業のために他の事業者に業務を委託する取引(いわゆるBtoB取引)です。ここでいう委託とは、発注者がフリーランスに対して、給付の仕様や内容などを指定して依頼することを指します。
そして、フリーランス法では、この業務委託を大きく、
- 物品の製造・加工委託
- 情報成果物の作成委託
- 役務の提供委託
の3つの類型に分けています。
▽フリーランス法2条3項
3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
一~二 (略)
それぞれの類型にどんな仕事があてはまるのか、具体的に見ていきましょう。
業務委託の類型
物品の製造・加工委託
1つ目は、物品の製造・加工委託であり、 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む)を委託することをいいます。
つまり、発注事業者が、規格、品質、性能、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、フリーランスに物品の製造や加工を依頼することを指します。
- 「物品」:動産のことです。家や土地などの不動産は対象に含まれません
- 「製造」:原材料に一定の工作を加えて、新たな物品を作り出すことです
- 「加工」:原材料に一定の工作を加えて、価値を付加することです
条文なども確認してみます。
▽フリーランス法2条3項1号(※「…」は管理人が適宜省略)
一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)…を委託すること。
▽解釈ガイドライン〔令和7年10月1日版〕第1部-1-⑵-ア
(ア) 物品
「物品」とは、動産をいい、不動産は含まれない。
(イ) 製造
「製造」とは、原材料たる物品に一定の工作を加えて新たな物品を作り出すことをいう。
(ウ) 加工
「加工」とは、原材料たる物品に一定の工作を加えることによって、一定の価値を付加することをいう。
(エ) 委託
物品の製造(加工を含む。以下同じ。)における「委託」とは、事業者が他の事業者に、給付に係る仕様、内容等を指定して物品の製造を依頼することをいう。
なお、「委託」に該当するかどうかは、取引の実態に基づき判断するものであり、契約の形態は問わない。
情報成果物の作成委託
2つ目は、情報成果物作成委託であり、事業者がその事業のために他の事業者にソフトウェア、映像コンテンツ、デザインなどの作成を委託することをいいます。
つまり、発注事業者が、テーマやコンセプト、仕様などを指定して、フリーランスに情報成果物の作成を依頼することを指します。
▽フリーランス法2条3項1号(※「…」は管理人が適宜省略)
一 事業者がその事業のために他の事業者に…情報成果物の作成を委託すること。
ここでいう情報成果物とは、形のないデジタルデータやコンテンツなどのことです。具体的には以下のようなものがあてはまります。
▽フリーランス法2条4項
4 前項第一号の「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。
一 プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)
二 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
三 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの
4号の「政令で定めるもの」は、現時点で定められているものはありません
役務の提供委託
3つ目は、役務の提供委託であり、事業者がその事業のために他の事業者に運送、コンサルタント、営業、演奏、セラピーなどいわゆるサービス全般について役務の提供を委託することをいいます。
つまり、発注事業者が、役務(サービス)の内容などを指定して、フリーランスに役務の提供を依頼することを指します。
これには、例えば、運送(配達)、経営コンサルタント、イベントの司会(ナレーター)、俳優やミュージシャンの実演、店舗での接客、家事代行など、非常に幅広い仕事が含まれます。
▽フリーランス法2条3項2号
二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。
取適法との対比
取適法との対比でいうと、フリーランス法の役務提供委託には、物品を修理することも含まれます(※取適法では「修理委託」という別の類型)。
▽フリーランス法Q&A〔令和8年1月1日版〕【問25】
取適法上の「修理委託」は本法の業務委託に含まれるのでしょうか。
取適法では、物品の修理の委託を「修理委託」、役務の提供の委託を「役務提供委託」と、それぞれ定義しています。
本法では、取適法のように修理委託と役務提供委託を分けて定義せず、修理委託における修理も役務提供の一つと整理しています。そのため、取適法上の「修理委託」は「役務の提供」の委託の一つとして、本法の業務委託に含まれます。
また、取適法の役務提供委託では、自ら用いる役務(自家利用役務)は対象外ですが、フリーランス法の役務提供委託では、自ら用いる役務も含まれます。例えば、自社の社員向けの研修講師をフリーランスに依頼するといったケースです。
▽解釈ガイドライン〔令和7年10月1日版〕第1部-1-⑵-ウ-(ア)
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)第2条第4項の「提供の目的たる役務」とは、委託事業者が他者に提供する役務のことをいい、委託事業者が自ら用いる役務は含まれない。一方、本法第2条第3項第2号における「役務」は、「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」と定めているとおり、委託事業者が他者に提供する役務に限らず、委託事業者が自ら用いる役務を含むものである。
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同じ「役務提供委託」でも中身が違う?取適法とフリーランス法を横断比較
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結び
フリーランス法の適用対象となる業務委託は、大きく分けて以下の3つです。
- 物品の製造・加工委託(オリジナルグッズの作成、部品の製造など)
- 情報成果物の作成委託(システム開発、デザイン、動画制作、ライティングなど)
- 役務の提供委託(運送、コンサルティング、司会、修理など)
フリーランス法は業種や業界の限定がないのが特徴です。フリーランスの方が受けている仕事も、BtoBの取引であれば、この3つのどれかにあてはまる可能性が高いのではないでしょうか。
さて、どんな取引が対象になるかがわかったところで、次の記事では後編として業務委託の期間について解説します。フリーランス法では、この取引の期間の長さによって、発注者が守るべきルールの範囲が変わってきます。ぜひ次の解説もチェックしてみてください。
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フリーランス法 - 法律ファンライフ
houritsushoku.com
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
- フリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)(≫法律情報/英文)
- 施行令(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」)
- 公取施行規則(「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労施行規則(「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」)
- 厚労指針(「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(令和6年厚生労働省告示第212号))|厚労省HP(≫掲載ページ)
- 解釈ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- 執行ガイドライン(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」)|公取委HP(≫掲載ページ)
- フリーランス法Q&A(「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」)|公取委HP
- フリーランス環境ガイドライン(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)|公取委HP(≫掲載ページ)
参考資料
- フリーランス法パンフレット(「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ)
- 説明資料(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料」〔令和6年11月1日施行〕)(≫掲載ページ)
参考文献
- フリーランス・事業者間取引適正化等法(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室)
- 実務逐条解説 フリーランス・事業者間取引適正化等法(那須勇太、益原大亮 編著)
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