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ファンド法務|投資ビークルの種類

今回は、ファンド法務ということで、投資ビークルの種類について見てみたいと思います。

いろいろなビークルがあって混乱しがちな部分ですが、大まかに分類しておくと意外とすんなり頭に入ります。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

投資ビークルの種類

投資ビークルというのは、投資ファンドを組成するときにその中心となるものです。

投資ファンドは投資家から資金を集めてプールし、それを専門家(ファンドマネージャー)が運用する仕組みですが、この受け皿となるのが投資ビークルです。

基本的なイメージとしては、貸借対照表(以下B/S)を思い浮かべるとわかりやすいと思います。B/Sの左側(借方)では対象資産の格納が、右側(貸方)では資金調達つまりファイナンスが行われます。

さらに、ファイナンスには大きく、

  • デット性のもの(Debt=負債。つまり返済義務のあるもの)
  • エクイティ性のもの(Equity=資本。つまり出資であり返済義務のないもの)

があり、B/Sの右上(負債の部)にはデット性の資金が、右下(純資産の部)にはエクイティ性の資金が入ります。

B/Sでイメージすると、こういう感じです。

対象資産は、キャッシュフローを生む資産(アセット)であればある意味なんでもよく、例えば、商業用不動産ローン債権(利息を生む)を格納すればCMBSに、株式(配当を生む)を格納すれば株式投信に、不動産等(賃料を生む)を格納すれば不動産小口化商品やREITになります。航空機リースなんてものもあります。

「ビークル」って?

 ビークルというのは英語の「Vehicle」であり、乗り物とか媒体といった意味になります。

 対象資産(B/Sの左側)から生み出されるキャッシュフローを投資家(B/Sの右側)に運ぶことから、乗り物とか媒体という意味で「Vehicle」と呼ばれています。

 あるいは、対象資産の保有主体となり資金調達を図るための便宜上の入れ物であることから「」とか、”投資家にキャッシュフローを導く管”という意味で「導管体Conduit)」とも呼ばれます。

日常的に使う言葉で一番近いのは”ペーパーカンパニー”かなと思いますが、ただの資産管理会社などとは違って、倒産隔離や二重課税の回避などいくつか特殊な要素を備えたものを指しますので、日常感覚でぴったりくるものは中々ないかもしれません。

このように、特別な目的のための乗り物とか媒体といった意味で、投資ビークルはSPVSpecial Purpose Vehicle)と呼ばれます。

投資ビークルには様々なものがありますが、どれも何らかの意味で元の保有者から財産を分離できる性質を持つものといえます。

ざっと分類すると、法人格を有するSPV(=会社型SPV)と法人格を有しないSPV(=信託や組合といった契約型SPV)に分けることができ、以下のようになります。

【投資ビークルの種類】

  • 会社型SPV(SPC)
  • 契約型SPV
    • 信託型
    • 組合型

以下、順に見てみます。

会社型SPV(SPC)

会社型SPVは、法人格を有するSPVです。

上記のような特別の目的のために設立される会社(Company)なので、会社型SPVは、SPCSpecial Purpose Company)と呼ばれます。

SPCはそれ自体独立した法人格なので、当然、対象資産を元の保有者から移転してSPCに格納しておくことができます。

別の法人格であることをビークル(器)に利用しているわけです。

極端な話をすれば、コンビニであんパンを買うのと一緒です(あんパンの所有権はコンビニから客に移転する)。

一般法に基づくスキーム

一般に会社といえば、会社法上の会社です。

会社法上の会社には、株式会社合名会社合資会社合同会社の4つがありますが、このうち、出資者の有限責任が認められているのは株式会社と合同会社になりますので、SPCとして利用されるのは、この2つになります。無限責任のところに出資する投資家は普通はいないからです。

ただし、株式会社は、会社更生法の適用を受ける(=別除権と違って、担保権であっても更生手続によらないで権利を行使することが基本的に許されない仕組みになっている)ことなどから、SPCとしての利用は避けられることも多いといわれています。全く使われていないというわけではないですが。

そのため、要するに、SPCの多くは合同会社ということになります。

特別法を用いたスキーム

そのほか、SPVを組成する目的に特化した特別法として、資産流動化法や投資法人法があります。

資産流動化法では特定目的会社が、投資法人法では投資法人が、それぞれSPCとして定められています。

ややこしい略語:SPCとTMK

 先ほど見たように、特目的会社はSPCSpecial Purpose Company)でしたが、これと区別するために、資産流動化法上の特目的会社はTMKTokutei Mokuteki Kaisha)と表記されます。

 そのまま英語にしちゃうと、特定目的会社もSPCになっちゃうからですね(結局、”Special(/or Specific?)Purpose Company”になる)。

 横文字ばかりで、しかも英語だったり日本語だったりでややこしいですが…。

ちなみに、資産流動化法と投資法人法の違いは、流動化型と運用型の違いです。

ざっくりいうと、流動化型は対象資産が最初から特定されているケース(対象資産の入れ替えが想定されていない)、運用型は対象資産の入れ替えが想定されているケース(いわゆるポートフォリオをつくっていくイメージ)になります。

契約型SPV

契約型SPVは、法人格を有しないSPVです。

法人格はないものの、やはり元の保有者から何らかの意味で対象資産を分離できる性質をもっています。

契約型SPVに用いる契約としては、信託契約と組合契約があります。

信託型

信託型は、信託契約を用いたSPVです。

信託(Trust)とは、ある財産の所有者が「委託者」となってその財産を「受託者」に信託し、受託者が信託の目的に従って信託財産を管理し、その利益を「受益者」が受け取る仕組みです(委託者と受益者は同一でもよい=自益信託)。

この信託を、委託者と受託者の契約によって行うのが信託契約です。

▽信託法3条1号:信託契約

(信託の方法)
第三条
 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法

信託型は、この信託財産に独立性が認められること信託財産の独立性)を利用して、信託財産をSPVに仕立てています。

信託がなされると、信託財産は委託者から受益者に移転し、信託財産は受託者に帰属します。ゆえに、委託者の債権者は信託財産に直接かかっていくことができなくなります。

他方、信託財産は、受託者固有の財産からも区別して管理されることになり(信託法34条)、また、受託者の債権者は信託財産にかかっていけず(23条)、受託者の倒産時も破産財団に組み込まれません(25条)ので、受託者の財産とも区別された存在となります。

このようにして、委託者からも受託者からも独立した財産となることをSPVに利用しているわけです。

▽信託法34条1項:分別管理義務

(分別管理義務)
第三十四条
 受託者は、信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。ただし、分別して管理する方法について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一~三 (略)

▽信託法23条1項、25条1項:信託財産の独立性

(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)
第二十三条
 信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない

(信託財産と受託者の破産手続等との関係等)
第二十五条
 受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、破産財団に属しない

信託がSPVに利用されるのは、通常、特別法に基づく信託であり、資産流動化法による特定目的信託(SPT(Special Purpose Trust)と呼ばれます)、投資法人法による投資信託などがあります。

組合型

組合型は、組合契約を用いたSPVです。

民法上の組合は、一般に任意組合と呼ばれます。

▽民法667条1項

(組合契約)
第六百六十七条
 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。

組合型は、組合自体に法人格はないものの、組合員の財産とは別に組合財産が観念されるという性質をビークル(器)に利用しています。

組合財産は共同事業目的を達成するためのものなので、組合員の個人財産からは別に管理される必要があります。

そのため、組合財産は組合員の共有とされてはいるものの(民法668条)、

  • 組合員は持分処分や分割請求が禁止される(民法676条)
  • (持分処分ができないのだから)組合員の債権者が組合財産に対して差押え等をすることも認められていない(民法677条)

など一定の団体的拘束を受ける、一般に合有と呼ばれる共有形態になっています(脱退時以外は潜在的な持分にとどまる)。

▽民法668条

(組合財産の共有)
第六百六十八条
 各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。

▽民法676条、677条

(組合員の持分の処分及び組合財産の分割)
第六百七十六条
 組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない
 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない
 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない

(組合財産に対する組合員の債権者の権利の行使の禁止)
第六百七十七条
 組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない

このようにして、組合財産は組合員の財産とは区別されることを、SPVに利用しているわけです。

とはいっても、任意組合に出資をするというのは要するに組合員になることですが、組合員は無限責任となっているので、SPVには一般には不向きとされます(無限責任のところに出資する投資家は普通はいない)。

そこで、この点を有限責任に修正できるようにした特別法があり、このような特別法を用いたスキームとして、投資事業有限責任組合契約法(LPS法)による投資事業有限責任組合などがあります。

といっても、特別法では対象資産が制限されるなどの事情もあるため、民法上の任意組合が全く使われていないというわけではないです。

まとめ

要するに、会社型SPVは「法人の財産」という形で、契約型SPVのうち信託型は「信託財産」という形で、組合型は「組合財産」という形で、それぞれビークル(器)をつくることができる、ということです。

別の言い方をすると、信託にしろ組合にしろ、委託者の財産や受託者の財産、組合員の財産といった財産とは別の財産を観念することができるので、これがあたかも別の法人の財産であるかのように機能しているという感じです(別の括りの財産をつくることができる)。信託契約や組合契約のそういう性質を利用しているわけです。

本記事で見たものを表にしてみると、以下のようになります。

【SPVの種類】

  一般法スキーム 特別法スキーム
会社型SPV(SPC) 合同会社(GK)、株式会社(KK)など 特定目的会社(TMK)、投資法人など
契約型SPV 信託型 一般の信託 特定目的信託(SPT)、投資信託など
組合型 民法上の任意組合 投資事業有限責任組合(LPS)など

結び

今回は、ファンド法務ということで、投資ビークルの種類について見てみました。

なお、SPVという言葉自体は、流動化型ビークルでも運用型ビークルでも使われる言葉なので、本記事の冒頭の”投資ファンドを組成するときに中心となるもの~”という説明などは、厳密には正確なものではないです。

ただ、流動化の業務ってあまり一般的ではないかなと思いますので、本記事はファンド(運用型)寄りの目線から書いています。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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