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ファンド法務|デットとエクイティ

今回は、ファンド法務ということで、デットとエクイティの違いについて見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

デットとエクイティ

デット

デット(debt)というのは、金融機関からの借入金や社債のように、返済義務のある負債のことです。

資金調達する側からみると、将来の元本と金利の支払いが義務づけられるものです。

投資する側(銀行など)からすれば、元利金が確定しているもの(あらかじめ決められた期日に約定された利率の利子と元本を受け取る権利を有する)であり、別の言い方をすれば、元本保証のあるものになります。

【デットのイメージ】

  • 資金調達側からみると →返済義務のあるもの
  • 投資側からみると →元利金が確定しているもの(元本保証あり)

デット性の資金を拠出するのは要するに銀行などですが、デット性資金の貸し手は「レンダー」と呼ばれます。”貸す”は英語でlendで、”貸し手”なのでレンダー(lender)です。

平たくいえば、お金を借りること、ローン、借入金、という意味です。

「デット」とか「レンダー」とか横文字になっているので何だか気圧されそうになりますが、特別な意味はなく、単に英語を使っているだけです。debt(=負債、債務、借金)、lender(=貸し手)です。

雑感

 ただ、業界用語というのはどこでもそうだと思いますが、多少慣れてくると、それなりに意味がジャストフィットしていることが感じられるようになるという面もあるように思います。

 「デット」という用語でいうと、デットとエクイティの違いがファイナンスの根本(入口かつ出口、スタートでありゴールである、みたいな感じ)になっているので、デットとエクイティという用語を常に対になるようにして使っているからです。

 そうすると、そういうニュアンスとして、ただの借入金のことを「デット」と呼んでいるのもそれなりに意味があるんだな、みたいに思うようになります(管理人はそんな感じ)。

SPCを使って行うプロジェクトファイナンスやアセットファイナンスでは、デット性の資金調達としては、ノンリコースローンが典型的に利用されます(▷参考記事はこちら)。

エクイティ

エクイティ(equity)というのは、株式や出資持分のように、返済義務のない資本のことです。

具体的には、総資産から負債を差し引いた資本を指し、株式会社の発行する株式や合同会社の社員持分、あるいは匿名組合・任意組合への出資などが該当します。

資金調達する側からみると、返済義務はないですが、得られた収益(利益、キャッシュフロー)を配当や分配金の形で配分することが予定されているものであり、投資する側からみると、元利金が確定していないものつまり元本保証のないものになります。

【エクイティのイメージ】

  • 資金調達側からみると →返済義務はないが、利益の配当・分配が予定されている
  • 投資側からみると →元利金が確定していない(元本保証なし)

こうしてみると、エクイティの方は投資する側としては損なような気もしてしまいますが、もちろんそういうことではなく、投資対象の価値が上がれば、価値の上がったエクイティを売却して売却益(キャピタルゲイン)を得ることもできますし、その間、投資対象が配当を出せれば配当(インカムゲイン)を得ることもできます。

他方、元本保証はないので(投資対象の価値は下がることもある。デットでは元本の返済が約束されているのとは異なる)、大きく損をすることもあります。

要するに、同じくお金を出しているといっても、法的な意味が違っていて、デットのようにお金を貸しているのではなく、会社そのものを持っている、会社の持分(いわば会社の所有権、のようなもの)を持っている、ということになります。

デットとエクイティの違い

このように、デットとエクイティの基本的な違いは、元本保証があるかないかです。

返済義務のあるなしというのも、結局、このことを資金調達側からみたときの話といえます。

有り体にいえば、よく言われることですが、デットはローリスク・ローリターンの投資、エクイティはハイリスク・ハイリターンの投資、というイメージになっています。

デットとエクイティを貸借対照表(以下B/S)でイメージすると、こういう感じです。

B/Sの右上(負債の部)がデット性の資金調達、右下(純資産の部)がエクイティ性の資金調達になります。

こういうふうにB/Sで入る場所が違うということがわかっていれば、デットとエクイティの違いをビジュアル的に頭に入れておくことができます。

優先劣後構造とウォーターフォール

デットとエクイティ間の優先劣後構造

デットとエクイティの基本的な違いは元本保証があるかないかですが、これは、会計上の仕組みとしては、

  • デットを提供したレンダーがまず優先して元利金の支払いという形で収益分配を受け、
  • エクイティ投資家はその残余について分配を受ける

という形になっています。

収益(利益、キャッシュフロー)についても、残余財産の分配についても、エクイティはデットに劣後します。

これは、デットとエクイティの間には優先劣後構造があることを意味します。

別の言い方をすると、デット性資金を提供するレンダーから見ると、エクイティ部分の存在は信用補完としての意味を持つ、というような言い方もされます。

ここでいう信用補完というのは、収益性の悪化のような一定の事象が発生したときに投資家が一定以上の損失を被らない手だてのことで、要するに予想通りにキャッシュフローが発生しなかったときに、まずはエクイティ部分から先にやられていくということです。

リスクをまず劣後部分が吸収することで優先部分への支払いが確保されるという意味で、劣後部分の存在が、優先部分にとっての”信用補完”になっているというニュアンスです。

デットの中・エクイティの中での優先劣後構造

さらに、デットの中、エクイティの中でも、優先劣後構造を設けることもあります。

例えば、デットの中で優先劣後構造を設ける場合は、返済の優先順位が高い「シニアローン」と返済の優先順位が低い「メザニンローン」という優先劣後構造を設けることがあります。

メザニン(mezzanine)とは、中二階(ちゅうにかい)という意味の英語で、ここでは、シニアローンとエクイティの中間という意味で使われています。

また、エクイティの中でも、通常のエクイティより優先して配当を受ける優先エクイティを設けることもあります。これも、いわば逆側からですが、デットと通常のエクイティの中間に位置するので、メザニンと呼ばれることがあります。

このように投資対象をリスクの程度により異なる部分に切り分けていくことを、トランチングといったりします。

これにより、いろいろな投資家のそれぞれのリスク許容度に応じた、多様な資金調達方法を作り出すことができます。

ウォーターフォール(Waterfall)

デットとエクイティの優先劣後構造に関して出てくる用語として、ウォーターフォールWaterfall)というのがあります。

これは、SPCにおいて対象資産から生み出されたキャッシュを、どの費用・債務から優先的に充当するかという優先劣後関係のことです。

▷参考リンク:金融用語集|日本政策投資銀行(DBJ)HP
★「ウォーターフォール(Waterfall)」の欄を参照

ウォーターフォールは、デットとエクイティだけの話ではないですが、概ね、

対象資産に関する諸々の管理費用などの支払い
  ↓
デット性資金への支払い(金利の支払い)
  ↓
エクイティ性資金への支払い(分配金の支払い)

という順にキャッシュが流れていくことを指しています。

水が高きから低きに流れ、その逆は決してないように、キャッシュフローも優先順位の高いものから流れていき、そこを満たして溢れた分だけが次の劣後順位の資金に流れ込む、というイメージです。

レバレッジとLTV

デットとエクイティに関してもうひとつよく出てくる用語は、LTVLoan to Value:資産負債比率)かと思います。

最近「Life Time Value」(顧客生涯価値を指すマーケティング用語)という意味での「LTV」も目にすることがありますが、そっちのLTVではないです。

”レバレッジをかける”といいますが、これは、デットの比率(借入比率)が高いほどエクイティの利回りが上昇することを指しています。つまり、LTVが高いほどエクイティにレバレッジがかかる、ということになります。

SPCでの基本的な仕組みを若干説明すると、エクイティの利回りは、

  • 対象資産の利回りと借入金利の差(イールドギャップ
    ★「イールドギャップ」は通常は投資利回りと10年国債の長期金利などリスクフリーレートとの差をいいますが、SPCではよく①のように使われます
  • 調達資金のうちに占めるデットの比率(LTV

の2つによって決まってきます。

対象資産から生ずる収益の利回りよりも借入金利の方が低ければ(通常はそう)、対象資産の利回りと借入金利の差が、エクイティ投資家に分配されることになります。なので、対象資産から生ずる収益の利回りよりも低い金利で、かつなるだけ低い金利で借り入れることによって、エクイティの利回りが上昇します(①)。

また、LTVが高い(=自己資金であるエクイティが少ない)ほど、エクイティの利回りが上昇します(②)。エクイティ部分の比率が少ない分、ギュッと濃くなってるみたいなイメージですね。

しかし、もちろん良い事ばかりではなく、LTVを大きくすればするほど、収入の減少や借入金利の上昇(変動金利で借り入れた場合)によって、デフォルト(債務不履行)になるリスクも増大することになります。

有り体にいうと、借金の割合を多くしすぎると返済できなくなるリスクもある、エクイティ投資家の被る損失・・がより大きくなるリスクもあるということです。

結び

今回は、ファンド法務ということで、デットとエクイティの違いやウォーターフォールなどについて見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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