インターネット 法律コラム

情報発信メディアでよく見る「○○大学」の名称使用と知っておくべき法律

著作者:creativeart/出典:Freepik

YouTubeとか見てると、自分のメディアの名称に「〇〇大学」ってつけてる方がけっこう多いですよね。

これ、実は関連する法律があるんですが、ご存じでしょうか。簡単な記事にしてみました。

「〇〇大学」という名称の動画

最近よく見かけますよね。
人気Youtuberの方々の「○○大学」という名称の動画。
(○○○◇◇◇◇さんとか、△△△☆☆☆さんとか。自分もよく見てます。ほぼ付けっ放しで笑)

こういった「○○大学」っていう名称を使うにあたって、一応気にしておくべき法律があるのですが、それは何でしょうか?

それは、学校教育法の135条1項です。

第十二章 雑則
第百三十五条 専修学校、各種学校その他第一条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない
(※読み易いように、関係ある文言を太字にしています)

第一条に掲げるもの、というのは、大学を含む学校のことです。

要するに、「学校教育法上の大学」でない「教育施設」は、「大学」という名称を用いてはならない、ということになります。

なぜこういう規制があるのかというと、この名称を見た人に、”ここは、学校教育法上の学校(=学校教育法上の設置認可を受けた学校)なんだな”、という誤認を生じさせるおそれがあるからです。

じゃあアカンのか?

じゃあ最近動画でよく見る「○○大学」はアカンの!?と思うかもしれませんが、「教育施設」でなければOKなので、まあ大丈夫でしょう(もちろんケースバイケースですが)。

ただ、「教育施設」にあたると実はアウトなのだ、ということは、一応知っておいた方がよいと思います。

なぜかというと、ここでいう「教育施設」にあたるかは、公的なものか私的なものかとは関係がなく、例えば私塾的なものも含まれるからです。つまり、私的なものだからという観点で、「教育施設」でない、と整理しておくのは、早計だということです。

たとえば、司法試験予備校の大手で「伊藤塾」がありますが、このような人的・物的設備を備えたところがもしも「伊藤大学」と名乗ると、それはアウトになる可能性が高いでしょう(教育施設たり得るから)。

いち個人でも、YouTubeのように、巨大プラットフォーマーの力を使えば、個人が冠番組を持てる時代なので(=少なくともコンテンツ上は大手予備校と同じようなことが出来てしまう)、今後議論になる可能性もゼロではない…と思います。

教育施設、にあたるとしたら、ダメなんだよな~、ということをわかって運用していれば、リスク管理し易いでしょう(知っていなければ、どうしようもない)。

ちなみに、違反した場合のペナルティは、10万円以下の罰金です(※れっきとした刑事罰です)。

第十三章 罰則
第百四十六条 第百三十五条の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。

商標取得の際にはじかれることもある

学校教育法上はまあ大丈夫だと思いますが、そのほか、商標をとろうと思ったときにはじかれることもあります。

例えば、「出版大学」という商標をとろうとして、知財高裁まで争ったが、とれなかった事例などがあります。

▽知財高裁平成23年5月17日(平成23年(行ケ)第10003号)

「原告が主張するところによっても,原告は教育施設を擁するものではないから,「大学」という名称を用いても直ちに学校教育法135条1項の規定に違反するとはいえないかもしれない。しかしそうだとしても,学校教育法に基づいて設置された大学を表示するものと誤認されるおそれのある本願商標をその指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」の役務に使用することになれば,これに接した需要者に対し,役務の提供主体があたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのように誤認を生じさせることになり,教育施設である「学校」の設置基準を法定した上で,この基準を満たした教育施設にのみその基本的性格を表示する学校の名称を使用させることによって,学校教育制度についての信頼を維持しようとする学校教育法135条1項の趣旨ないし公的要請に反し,学校教育制度に対する社会的信頼を害することになるというべきである。
 したがって,本願商標は公の秩序を害するおそれがある商標というべきであり,本願商標が商標法4条1項7号に該当するとした審決の認定,判断に誤りはない。」

学校教育法135条1項の趣旨も、文章中でわかりやすく触れられてますね。再掲しておきます。

(趣旨)

教育施設である「学校」の設置基準を法定した上で,この基準を満たした教育施設にのみその基本的性格を表示する学校の名称を使用させることによって,学校教育制度についての信頼を維持しようとする(もの)

なお、この事例のなかで、学校教育法に触れるかどうかの判断はされていません(商標の裁判手続であって、学校教育法上どうなのか自体は審理の対象でないため)。

結び

「◯◯学園」とか「◯◯アカデミー」とかの名称もたまに目にしますが、これだとこういった心配はないですね。

実際に運営されている人気YouTuberの方々は、既に検討のうえで使用されているのだと思いますが、日常的に目にする動画にも、実は法律的な話が隠れている、という話でした。

[注記]
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