法律コラム

コンテンツが「資産」である法律的な理由

昨今の情報発信ブームのなかで、コンテンツは「資産」であると盛んに言われていますが。

ふと、コンテンツが資産である理由というのは、法律・会計的にも一応説明できるような気がしたので、それをちょっと書いてみたいなと思います。

コンテンツは無形固定資産

いくつか会社を転職していると、商標とかのグループ管理体制もいろいろだなあ…と思って、へー、と思いながら仕事をしているのですが。

商標権って、BS上は無形固定資産に計上されてるんですよね。

BSとは、貸借対照表(balance sheet)のこと

そういえば、コンテンツというのも、法律的にいえば著作権だから、商標権と同じく、会計的にいえば無形固定資産になるんだよなあ…とふと思いまして。

そう考えると、「コンテンツが資産になる」というのは、意外と法律・会計的にいっても、表現として合ってるなと(もちろん、巷ではそういう意味で言われているのではないと思いますが。つまり、”人生における財産”的な意味だと思いますが)。

特に作家でもない個人が書くものであっても、法律的にいえば著作権で、会計的にいえば無形固定資産、というのは同じです。

ただ、経済的価値はもちろんモノによるわけなので、性質としては資産であっても、経済的価値はないものがほとんどなわけですけど。

よく引き合いに出される例は、「幼稚園児が書いた似顔絵であっても、創作性の発露があれば著作権は発生する」というものですが、これらには経済的価値は普通つかないので、プライスレスな主観的価値はあっても、時価としてはゼロ円になります。(=経済的価値はゼロ円の著作権)

でもやっぱり、コンテンツが資産であるのはそれが著作権であって無形固定資産だからだ、というのは、経済的価値はさておき、本質的な話としては合っているような気がします。

そう思うと、インデックス投資で積み立てるのも、少しずつ自分の好きなところをコンテンツにしていくのも、似たようなもので、資産をコツコツつくっていくということで、「資産」のイメージと合ってるような気もします。

あえて大げさにいえば、何もないところに自分で土地を作るようなもの、ともいえるわけで、持たざる者がアイデアひとつで何かを作り出していく、という夢のある話だなと。別にテキストでなくても、イラストでも、音楽でも、動画でも、全部そうですし。

まあ普通は、ロゴとかのデザインを外部依頼したときの業務委託料などを商標の取得原価にしている、という程度で、著作権をがっちり資産に計上しているような会社は(そういうコンテンツとかメディアミックスをしているような業界以外では)少ないとは思うので、コンテンツは無形固定資産といっても、現実的には若干こじつけではありますが。

資産として積みあがるけれども、経済的価値はそれぞれ、ということですかね。当然といえば当然なんですけども。

無形固定資産と有形固定資産の違い

無形固定資産であることを、有形固定資産と比較してもう少し考えてみると、無形固定資産は、簡単に複製可能で、簡単に時空も超える、ということなのかなと。

有形固定資産はもちろん有体物のことで、土地でも建物でも車でも設備でも…といったものが有形固定資産なわけですが。

無形固定資産(ネットのコンテンツ)は、すべて情報なため、簡単に複製可能なので、何人にも届けられる。また、ニッチな需要とニッチな供給でも結びつけることができるな、と。

また、有体物というのは運んだり、保管したりしないといけないけれども、無体物にはそういった制限もなく、簡単に時空(時間と空間)を超えることができる。

昔、商法総則・商行為の本などを初めて読んだときには、「運送営業は空間を超えるもので、倉庫営業は時間を超えるものである」という説明をしているものがあって、「なんて壮大な話なんだ!(ちょっと大げさじゃない?)」と思ったものですけど。

むしろ普通に働き出してから意味するところが腑に落ちて、的を得ている表現だなと思ったりします。在庫の取り扱いなんかまさにそういう感じ。

話を戻すと、有体物は、運送や倉庫を使わないと時空を超えられないけど、無形固定資産(ネットのコンテンツ)は、運送してもらわなくても一瞬でどこでも届いてくれるし、倉庫で保管してもらわなくても永遠と残り続けるので、簡単に時空を飛び越えるもの、だなと思います。

巷で耳にする「コンテンツには蓄積性がある」というのも、これと関係する話なのかなと思いますね。

結び

先日の東京オリンピック開会式(7/23)でも、選手入場の際にゲームミュージックが使用されて、日本のBS上に大きなコンテンツ資産があることが改めて示された気がしました。

ということで、巷で言われる「コンテンツは資産」であるということを、試しに法律・会計的な面から書いてみました。

[注記]
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