今回は、特定商取引法を勉強しようということで、通信販売における最終確認画面の表示義務などについて見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
最終確認画面の表示方法
特商法は、通信販売において、事業者の定めた様式等に基づいて申込みが行われることを「特定申込み」と定義して、申込時の表示規制(表示義務と誤認表示の禁止)を定めています(法12条の6)。
申込時の表示規制は、
- 従来型の通信販売の場合(カタログ・チラシ等を利用した通信販売)
→申込書面 - インターネットを利用した通信販売
→最終確認画面
を適用対象としていますが、本記事は、②に関する部分を取り上げたものになります。
まず最終確認画面とは何かについて確認したあと、表示方法、表示事項の順に、内容を見てみます。
最終確認画面
最終確認画面とは、
インターネットを利用した通信販売において、消費者がその画面内に設けられている申込みボタン等をクリックすることにより契約の申込みが完了することとなる画面
とされています(逐条解説 第12条の6解説1-⑵)。
タイトルの有無や内容、形式などは関係なく、チャットやSNS等を利用して申込みを行う場合も含まれます(申込段階表示ガイドラインⅠ-1-⑴-②-脚注2)。
また、契約の申込内容の確認画面の後に、クレジットカード情報等の決済に必要な情報の入力等の手続のみ別の画面に遷移して行い、決済事業者による承認が完了した段階で契約の申込みが完了するような仕様の場合もありますが、このような場合には、当該遷移をする前の、契約の申込内容の確認画面が最終確認画面にあたるとされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-1-⑴-②-脚注3)。
適用対象の書きぶり
細かい話になりますが、厳密にいうと、規定の書きぶりとしては、適用対象は”最終確認画面”ではなく、”特定申込みに係る手続が表示される映像面”となっています。
これは、広告や注文内容等の入力から注文内容の確認までが(画面の遷移を経ることなく)スクロールによって一連の画面として表示されるような場合もあるので、このような場合には、最終確認に相当する表示部分を適用対象に含めるためです(最終確認画面というより、最終確認表示部分という感じになる場合もあるということ)。
▽申込段階表示ガイドラインⅠ-1-⑴-②-脚注1
ただし、広告や注文内容等の入力から注文内容の確認までが、画面の遷移を経ることなくスクロールによって一連の画面として表示されるような場合には、最終的な注文内容の確認に該当する表示部分が「特定申込みに係る…手続が表示される映像面」に当たる。
表示方法
最終確認画面は、従来型の通信販売(カタログ・チラシ等を利用した通信販売)と異なり、スペース上の制約は少ないことなどから、原則として表示事項を網羅的に表示することが望ましいとされています。
また、最終確認画面にはタイトルに「注文内容の最終確認」と付すなど、契約の申込み前の最終画面であることが消費者において明確に視認できるような標記を行うことが望ましいとされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-1-⑴-②参照)。
参照方式も可能
上記のように、表示事項は最終確認画面に網羅的に表示するのが原則ですが、参照方式も認められています。
これは、消費者が使用するデバイスによって画面の大きさなどは異なったり、あるいは、モール型のECサイトでは複数の異なる販売業者からまとめて購入する場合もあり、業者により異なることもある販売条件等を全て表示するとなると、かえって消費者にわかりづらくなる場合もあり得るためです。
そこで、消費者が明確に認識できることを前提として、最終確認画面に参照の対象となる表示事項及び参照箇所又は参照方法を明示した上で、広告部分(いわゆる特商法表記。法11条)の該当箇所等を参照する形式とすることは妨げられない、とされています。
▽申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑴-②
インターネット通販における最終確認画面については、購入する商品の支払総額を計算して表示するなど、消費者の入力内容に応じて表示内容を出力することが可能であり、また、画面のスクロールが可能であるため、はがきなどの書面に比してスペース上の制約は少ないことから、原則として表示事項を網羅的に表示することが望ましい。他方、消費者が閲覧する際に用いる媒体により画面の大きさ及び表示形式が異なるという点や、例えば、複数の販売業者が販売する商品をまとめて購入することが可能なモール型のインターネット通販サイト等においては、商品ごとに販売条件等が異なる可能性があるという点などに鑑みると、表示事項に係る全ての説明を最終確認画面上に表示すると、かえって消費者に分かりづらくなる場合も想定される。このような事情に鑑みて、消費者が明確に認識できることを前提として、最終確認画面に参照の対象となる表示事項及びその参照箇所又は参照方法を明示した上で、広告部分の該当箇所等を参照する形式とすることは妨げられない。
具体的には、
- 最終確認画面において消費者が明確に認識できるようなリンク表示や参照方法に係る表示をし、かつ、
- 1. リンク先や参照ページに当該事項を明確に表示すること
もしくは
2. クリックにより表示される別ウィンドウ等に詳細を表示すること
などが考えられます(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-③④等参照)。
上記1. のように広告(いわゆる特商法表記。法11条)をリンク・参照させる形式を用いる場合には、消費者が参照先のページで必要事項を容易に認識できるように表示していなければなりません(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑴-②-脚注6)。
また、参照することとした広告上の該当箇所は、最終確認画面の一部をなすものとして申込時表示規制(法12条の6)が適用されます(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑴-②-脚注5参照)。
要するにその部分は、「特商法表記」と「申込時表示事項」の、両方の性質を持つことになるということです
最終確認画面の表示事項(法12条の6第1項)
①分量(1号)
ここでいう「分量」とは、物理的な数量のことだけでなく、商品や役務の態様に応じた、数量、回数、期間などを指します。
これらを、消費者が認識しやすい形式で表示する必要があるとされています。
具体的には、
- 定期購入契約の場合
→引き渡される商品の各回の分量、 総分量、引渡しの回数 - サブスクリプションの場合
→役務の提供期間
→期間内に利用可能な回数が定められている場合はその内容も - 無期限の契約である場合
→無期限である旨
→また、一定期間を区切った分量(ex. 1年単位の総分量など)を目安として明示することが望ましい - 自動更新のある契約である場合
→自動更新である旨
とされています。
また、同一商品で内容量等の異なるものを販売しているときは、消費者がそれらを明確に区別できるよう、例えば商品名に「5個入り」「500ml」などと併記するなど、何らかの表示を行うことが適切とされています。
ガイドラインも確認してみます。
▽申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-①
また、定期購入契約においては、各回に引き渡す商品の数量等のほか、当該契約に基づいて引き渡される商品の総分量が把握できるよう、引渡しの回数も表示する必要がある。例えば、5か月分の定期購入契約であるにもかかわらず、1か月分の分量のみを表示していた場合には、分量を正しく表示していないこととなる。初回と2回目以降の商品の内容量が異なる場合等には、各回の分量が明確に把握できるように表示しなければならない。加えて、いわゆるサブスクリプションの場合についても、役務の提供期間や、期間内に利用可能な回数が定められている場合にはその内容を表示しなければならない。
さらに、消費者が解約を申し出るまで定期的に商品の引渡しがなされる無期限の契約や無期限のサブスクリプションの場合には、その旨を明確に表示する必要があり、また、この場合には、あくまでも目安にすぎないことを明確にした上で、1年単位の総分量など、一定期間を区切った分量を目安として明示することが望ましい。同様に、自動更新のある契約である場合には、その旨も加えて表示する必要がある。
実質的に定期購入契約の場合
なお、形式上、契約締結手続や決済手続が複数回に分かれているような場合であっても、複数回ないし長期間の商品引渡しを受けることをあらかじめ約しているといえるような場合には、同様の解釈・考え方があてはまるとされています。
▽申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-①-脚注7
なお、申込書面及び最終確認画面においては、分量の表示が義務付けられていることから、仮に形式上契約締結手続や決済手続が複数回に分かれているような場合であっても、契約を更新しない場合に違約金その他の不利益が発生するような場合や、消費者から解約通知がない限り自動的に更新される場合には、複数回ないし長期間の商品引渡しを受けることをあらかじめ約しているということであり、その実態に即した分量の表示を行い、その上で、分量の表示に即した販売価格等を表示する必要がある。
②販売価格・役務の対価(2号→法11条1号)
これは、購入する商品やサービスの価格(販売価格または役務の対価)のことです。消費税を含んだ価格を意味すると解されています。
販売価格に送料が含まれない場合は、販売価格と商品の送料の両方を表示する必要があります(▷参考記事はこちら:特商法表記)。
さらに、インターネット通販における最終確認画面については、消費者の入力内容に応じて表示内容を出力することが可能であることから、複数の商品を購入する場合には、個々の商品の販売価格のほか、支払総額についても表示するとともに、送料は実際に消費者が支払うこととなる金額を表示する必要があるとされています。
ただし、やむを得ず申込みの段階において販売価格や送料を確定することが困難な場合など、特段の事情がある場合に限り、例外的に、販売価格等の表示に代えて、その確定後に連絡する旨などを表示することは可とされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-②-脚注9)
また、
- 定期購入契約の場合
→各回の代金、消費者が支払うこととなる代金の総額 - サブスクリプションの場合
→無償契約から有償契約に自動で移行するような場合には、その移行時期と、支払うこととなる金額 - 無期限の契約である場合
→一定期間を区切った支払総額(ex. 1年単位の支払額など)を目安として明示するのが望ましい
とされています。
▽申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-②
また、定期購入契約においては、各回の代金のほか、消費者が支払うこととなる代金の総額を明確に表示しなければならない。各回の代金については、例えば、初回と2回目以降の代金が異なるような場合には、初回の代金と対比して2回目以降の代金も明確に表示しなければならない。サブスクリプションにおいて見受けられるような、無償又は割引価格で利用できる期間を経て当該期間経過後に有償又は通常価格の契約内容に自動的に移行するような場合には、有償契約又は通常価格への移行時期及びその支払うこととなる金額が明確に把握できるようにあらかじめ表示する必要がある。
さらに、消費者が解約を申し出るまで定期的に商品の引渡しがなされる無期限の契約や無期限のサブスクリプションの場合には、あくまでも目安にすぎないことを明確にした上で、1年単位の支払額など、一定期間を区切った支払総額を目安として明示するなど、消費者が容易に認識できるように表示しておくことが望ましい。
③支払時期及び支払方法(2号→法11条2号)
これは、代金の支払時期と支払方法のことです。「支払の時期」は、商品等を購入する場合に代金を支払う時期のこと、「支払の方法」は、銀行振込、クレジット、代金引換、現地決済等の支払方法の別のことです。
基本的に、最終確認画面上に特商法表記(法第11条)の表示方法と同様に表示する必要がありますが、参照方式は可能です。
定期購入契約
定期購入契約においては、各回の代金の支払時期についても同様に明確に表示する必要があるとされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-③)。
④引渡時期・移転時期・提供時期(2号→法11条3号)
これは、事業者側の履行時期、つまり買ったモノやサービスが提供される時期のことです。例えば、「商品の引渡時期」は、注文を受けた後、商品が手元に届く時期を指します。
基本的に、最終確認画面上に特商法表記(法第11条)の表示方法と同様に表示する必要がありますが、参照方式は可能です。
定期購入契約
また、定期購入契約においては、各回の商品の引渡時期についても同様に明確に表示する必要があるとされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-④)。
⑤申込みの期間がある場合、その旨とその内容(2号→法11条4号)
これは、申込みに有効期限がある場合には、その期限を表示しなければならないというものです。
有効期限が書かれていないので申し込んだものの、有効期限を過ぎており購入できなかったといったトラブルを防ぐ趣旨です。また、期間経過後に購入できなくなると消費者に誤認させるような不当な表示等を防止する観点から、申込期間を設けている場合には正しく表示することが求められます。
そのため、その表示にあたっては、申込みの期間に関する定めがある旨とその具体的な期間が消費者にとって明確に認識できるようにする必要があるとされており、例えば「今だけ」など具体的な期間が特定できないような表示では、表示したことにはなりません(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-⑤)。
ちなみに、このあたりまでの話は、特商法表記での考え方と全く同様です(逐条解説 第11条解説3-⑷参照)
最終確認画面における具体的な表示方法としては、例えば、
- 商品名欄等において商品名に分かりやすく併記する方法
ex. 「商品名 特選おせち 三段重【お申込み期間は12月27日まで】」など - バナー表示を置く方法
ex. 「期間限定商品 詳細はバナーをクリック」などのバナー - 消費者が明確に認識できるようなリンク先や参照ページ、クリックにより表示される別ウィンドウ等に詳細を記載する方法
での表示を行うことが考えられるとされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-⑤、【画面例4-1】、【画面例4-2】参照)。
⑥申込みの撤回又は解除に関する事項(2号→法11条5号)
これは、申込みの撤回等についての特約、つまり返品やキャンセルに関する特約の有無や内容のことです(特に売買契約の場合を指して「返品特約」という言い方をしますが、そういうイメージ)。
つまり、商品やサービスに特に問題がないケース(事業者に契約違反がない)において、返品やキャンセルが可能か否か、可能であればその内容を表示するということです。
契約の申込みの撤回又は解除に関して、その条件、方法、効果等について表示する必要があります。
売買契約の場合には、 申込みの撤回等を認めるか否か、その際の条件は何か、送料の負担の有無等を明示することが必要です(特商法ガイドの通販広告表示事項解説編など参照)。
役務提供契約の場合には、
- 1回の役務提供を行う契約であれば、申込みの撤回の可否やその方法等
- 複数回又は一定期間の役務提供を行う契約であれば、契約途中の解約に係る方法等
をわかりやすく表示しなければなりません(逐条解説 第11条解説3-⑸参照)。
つまり、基本的に、最終確認画面上に特商法表記(法11条)の表示方法と同様に表示する必要がありますが、参照方式は可能です。
定期購入契約
また、定期購入契約においては、
- 解約の申出に期限がある場合には、その申出期限
- 解約時に違約金その他の不利益が生ずる契約内容である場合には、その旨及び内容
も表示事項に含まれるとされています。
解約方法を特定の手段に限定する場合
なお、解約に関するトラブルの状況に鑑みれば、解約方法を特定の手段に限定している場合、例えば、
- 消費者が想定しないような解約方法の限定
ex. 電話した上でメッセージアプリを操作、追加の個人情報提出 - 解約受付を特定の時間帯に限定
- 消費者が申込みをした際の手段に照らして、当該消費者が容易に手続を行うことができると考えられる手段での解約連絡を受け付けない
などの場合には、特に消費者が明確に認識できるよう、リンク表示等に委ねるのではなく、最終確認画面において明確に表示が必要とされています(申込段階表示ガイドラインⅠ-2-⑵-⑥)。
ちなみに、ここまでの話は特商法表記での考え方とほぼ同様ですが、上記の「解約方法を特定の手段に限定する場合」に関しては、特商法表記では、”特に明確に認識できるように表示する必要がある”とされており(逐条解説 第11条解説3-⑷参照)、申込時表示事項では、”リンク等による参照方式での表示が適切でない事項”として解説されています
結び
今回は、特定商取引法を勉強しようということで、申込時の表示規制(法12条の6)のうち最終確認画面の表示義務などについて見てみました。
申込時の表示規制の全体像については、以下の関連記事にくわしく書いています。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
特定商取引法に関するその他の記事
主要法令等・参考文献
主要法令等
参考サイト・関連団体
- 特定商取引法ガイド(※消費者庁の特設サイト)
- 財団法人日本産業協会(※特商法の申出制度に関する指定法人)
参考文献
- 逐条解説(「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)」)(消費者庁)
- 詳解 特定商取引法の理論と実務〔第5版〕(圓山茂夫)
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