今回は、特定商取引法を勉強しようということで、通信販売規制における「通信販売」と「広告」の定義を見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
通信販売に関する規制
通信販売に関する規制は、消費者が契約するかどうかを選択するための情報が広告だけに限られることから、広告規制が中心になっています。
例えば、普段ネットで買物するときにもよく見かける「特定商取引法に基づく表記」(法11条)の義務は、
(通信販売についての広告)
第十一条 販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、…(略)…。
のように、「通信販売」をする場合において、商品の販売条件等について「広告をする」ときに、義務がかかってきます(誇大広告の禁止(法12条)も同じ言い回し)。
なので、これらはつまり、通信販売の広告規制が適用される範囲のことになります。
「通信販売」の定義
通信販売の要件
まず、特定商取引法でいう「通信販売」というのは何なのかについて見てみます。
通信販売の基本的な要件は、以下の5要件となっています(法2条2項)。
通信販売の要件 | 文言の内容 |
---|---|
①当事者 | 販売業者又は役務提供業者が、購入者等に対し |
②申込手段 | 郵便その他の省令で定める方法により |
③対象 | 商品・指定権利・役務に関して |
④行為 | 申込みを受けて行う取引 |
⑤適用除外 | (a)電話勧誘販売に該当しないこと |
(b)法26条の適用除外規定に該当しないこと |
ポイントとなるのは②の申込手段で、これが通信手段なので、「通信販売」と呼ぶわけです。
肌感覚的なイメージでいえば、
・紙媒体ならカタログや広告(チラシなど)を見て、
・Web媒体ならホームページやメールを見て、
申込書を郵送・FAXしたり、電話やホームページなどで申込みをしたりする、そういった遠隔地間の取引という感じです。
なお、実際には消費者が広告を見て申し込むことが多いと思われるものの、消費者が広告を見ることは要件とされていません
条文も確認してみます。
▽法2条2項
2 この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
申込手段の種類
要件②の申込手段における「主務省令で定める方法」というのは、規則2条のことで、
- 郵便、信書便
- 電話機、FAX機等の通信機器または情報処理の用に供する機器
- 電報
- 預金または貯金の口座に対する払込み
が列挙されており、遠隔地にいる者の間で契約の意思表示が行われる手段が定められています。
今日最も通信販売で利用されているであろうパソコンやスマホは、②の「情報処理の用に供する機器」にあたります。
④のように、「払込み」も、払込みをもって申込みの手段とするということで、これも通信手段による申込手段になっています(言われてみれば当然ですが、意外と盲点かも)。
▽規則2条
(郵便等)
第二条 法第二条第二項の主務省令で定める方法は、次の各号に掲げるものとする。
一 郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便
二 電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器又は情報処理の用に供する機器を利用する方法
三 電報
四 預金又は貯金の口座に対する払込み
「広告」の定義
続いて、通信販売広告というときの「広告」(=通信販売をする場合の広告)について確認します。
何についての広告か
何について広告をするのかというと、先ほど見たように商品の販売条件等についての広告なので(法11条)、要するに、
”どんなもの(商品、サービス)”を、”いくらで(値段その他の条件)”売るのか
という広告です(当然といえば当然の話ですが)。
そして、それが通信手段による申込みを受けて取引を行おうとするものであることが明らかであれば、通信販売広告に該当することになります。
具体的なケースとしては、
- 広告に通信販売を行う旨が明確に表示されている場合に限らず、
- 商品とともに送料、口座番号等が表示されている場合
(※この場合、送料と口座番号等が表示されているので、振込みという通信手段によって申込みが可能となる) - 明らかに店舗での購入が不可能な商品である場合
などの場合が、通信販売広告にあたるとされています。
他方、
- 商品のイメージ広告等
は、一般的な意味では”広告”と言われますが、ここでいう通信販売広告にはあたりません。
広告媒体
広告の表示媒体としては何でもよく、
- 新聞、雑誌等
- カタログ等のダイレクトメール
- テレビ放映
- 折り込みチラシ
- インターネット(もちろんスマホも)のホームページ、オークションサイト
- 電子メール
- SNS
等があるとされます。
まとめ
これらは、文言でいうと、「通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするとき」(法11条、12条)の解釈問題になります。
▽逐条解説〔令和5年6月1日時点版〕第11条-1-⑴|特定商取引法ガイド(≫掲載ページ)
⑴ 「通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするとき」
この規定は、通信販売の「販売条件等の広告」をする場合の規定であり、販売業者等がその広告に基づき通信手段により申込みを受ける意思が明らかであり、かつ、消費者がその表示により購入の申込みをすることができるものであれば、ここにいう「広告」に該当する。したがって、広告に通信販売を行う旨が明確に表示されている場合が通信販売広告に該当するほか、例えば、送料、口座番号等を表示している販売広告や明らかに店舗での購入が不可能な商品の販売広告は、ここでいう通信販売広告となる。他方、当該商品のイメージ広告等は、ここでいう通信販売広告には該当しない。
また、広告の方法の如何は問わない。したがって、新聞、雑誌等に掲載される広告のみならず、カタログ等のダイレクトメール、テレビ放映、折込みちらし、インターネット上のホームページ(インターネット・オークションサイトを含む。以下同じ。)、電子メール、SNS等において表示される広告も含まれる。
結び
今回は、特定商取引法を勉強しようということで、通信販売規制における「通信販売」と「広告」の定義について見てみました。
消費者庁の「特定商取引法ガイド」の通信販売広告についての説明ページが全体的に充実しておりまた読みやすく、参考になります。
▽参考サイト
-
通信販売広告について|通信販売|特定商取引法ガイド
www.no-trouble.caa.go.jp
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
特定商取引法に関するその他の記事
主要法令等・参考文献
主要法令等
参考サイト・関連団体
- 特定商取引法ガイド(※消費者庁の特設サイト)
- 財団法人日本産業協会(※特商法の申出制度に関する指定法人)
参考文献
- 逐条解説(「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)」)(消費者庁)
- 詳解 特定商取引法の理論と実務〔第5版〕(圓山茂夫)
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