開示制度

開示制度|適時開示-決定事実に関する開示

今回は、開示制度ということで、適時開示(取引所規則に基づく開示)のうち決定事実に関する開示について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

決定事実の開示時期

決定事実とは、会社が決定した重要事実のことで、決定後直ちに開示することとされています(上場規程402条、403条)。

実務上、遅くとも決定した日のうちには開示しなければなりません。実際の時刻としては、その日の取引時間の終了後(引け後)に開示されることも多いかと思います(適時開示ガイドブック第1編第2章2-⑴-④)。

ここでいう「決定」該当性については、会社法上の機関(取締役会など)での決定であるなど形式的な・・・・側面にとらわれることなく、実態的に・・・・判断すべきとされ、業務執行を実質的に判断する機関において事実上決定した段階で開示をすることが必要、とされています(適時開示ガイドブック第1編第2章2-⑴-①参照)。

実務上のニュアンスは以下のとおりです。

▽適時開示ガイドブック第1編第2章2-⑴-①

 実務上は、株主総会決議事項及び取締役会決議事項は取締役会決議後直ちに、社長が決定権限を有する事項は社長による決定後直ちに適時開示を行うことが多いと考えられますが、これら以外の機関又は役職者が当該業務の執行を事実上決定していることが明らかな場合には、その決議又は決定時点における開示が求められます。株主総会決議事項についても、通常は、株主総会決議後ではなく、取締役会による付議の決議後直ちに適時開示を行う必要がある点に留意してください。

決定後というのは一般に役会(取締役会)決定後のことが多いかと思いますが、経営会議、戦略会議、執行役員会議など、会社法上のものではない会議体も会社にはたくさんあります。

決定事実の種類

上場会社の決定事実と子会社の決定事実

決定事実には、上場会社における決定事実のほか、子会社における決定事実もあります。

前者は上場規程402条1号に、後者は上場規程403条1号に定められています。

▽上場規程402条1号

(会社情報の開示)
第402条

 上場会社は、次の各号のいずれかに該当する場合(施行規則で定める基準に該当するものその他の投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものと当取引所が認めるものを除く。)は、施行規則で定めるところにより、直ちにその内容を開示しなければならない
(1) 上場会社の業務執行を決定する機関が、次のaからarまでに掲げる事項のいずれかを行うことについての決定をした場合(当該決定に係る事項を行わないことを決定した場合を含む。)
a~ar (略)

▽上場規程403条1号

(子会社等の情報の開示)
第403条

 上場会社は、その子会社等が次の各号のいずれかに該当する場合(第1号に掲げる事項及び第2号に掲げる事実にあっては施行規則で定める基準に該当するものその他の投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものと当取引所が認めるものを、第3号aに定める法第166条第2項第5号に掲げる事項及び第3号bに定める法第166条第2項第6号に掲げる事実にあっては投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして取引規制府令で定める基準に該当するものを除く。)は、施行規則で定めるところにより、直ちにその内容を開示しなければならない
(1) 上場会社の子会社等の業務執行を決定する機関が、当該子会社等について次のaからsまでに掲げる事項のいずれかを行うことについての決定をした場合(当該決定に係る事項を行わないことを決定した場合を含む。)
a~s (略)

「子会社等」の定義

 「子会社等」の定義は、上場規程402条1号qの括弧書きに定められており、

法第166条第5項に規定する子会社をいい、上場外国会社(当取引所が必要と認める者に限る。)にあっては、その子会社、関連会社その他の当取引所が必要と認める者をいう。

とされています。法は金融商品取引法のことで、法166条はインサイダー取引規制を定めた条文です。

 そして、法第166条第5項に規定する子会社というのは、要するに、有価証券報告書や半期報告書など上場会社の直近の法定開示書類において、その上場会社の企業集団(金商法5条1項2号)に属する会社として記載されている会社のことです。

▽参考:企業集団の定義(金商法5条1項2号の抜粋)

企業集団(当該会社及び当該会社が他の会社の議決権の過半数を所有していることその他の当該会社と密接な関係を有する者として内閣府令で定める要件に該当する者(内閣府令で定める会社その他の団体に限る。)の集団をいう。以下同じ。)…

それぞれの決定事実

それぞれの決定事実は、以下のようになります。上場会社の決定事実と子会社の決定事実で、対応するものが対になるように並べています(※内容は適宜要約しています)。

【決定事実】

上場会社における決定事実子会社における決定事実
a 株式、自己株式、新株予約権を引き受ける者の募集又は株式、新株予約権の売出し
b 発行登録及び需要状況調査の開始
c 資本金の額の減少
d 資本準備金又は利益準備金の額の減少
e 自己株式の取得
f 株式無償割当て又は新株予約権無償割当て
fの2 新株予約権無償割当てに係る発行登録又は需要状況調査の開始
g 株式の分割又は併合
h 剰余金の配当
i 株式交換a 株式交換
j 株式移転b 株式移転
jの2 株式交付bの2 株式交付
k 合併c 合併
l 会社分割d 会社分割
m 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受けe 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
n 解散(合併による解散を除く)f 解散(合併による解散を除く)
o 新製品又は新技術の企業化g 新製品又は新技術の企業化
p 業務上の提携又は業務上の提携の解消h 業務上の提携又は業務上の提携の解消
q 子会社等の異動i 孫会社の異動
r 固定資産の譲渡又は取得j 固定資産の譲渡又は取得
s リースによる固定資産の賃貸借k リースによる固定資産の賃貸借
t 事業の全部又は一部の休止又は廃止l 事業の全部又は一部の休止又は廃止
u 上場廃止の申請
v 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てm 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立て
w 新たな事業の開始(新商品の販売又は新たな役務の提供の企業化を含む)n 新たな事業の開始(新商品の販売又は新たな役務の提供の企業化を含む)
x 公開買付け又は自己株式の公開買付けo 公開買付け又は自己株式の公開買付け
y 公開買付けに関する意見表明等
aa 代表取締役又は代表執行役の異動
ab 人員削減等の合理化
ac 商号又は名称の変更p 商号又は名称の変更
ad 単元株式数の変更又は単元株式数の定めの廃止若しくは新設
ae 事業年度の末日の変更
af 預金保険法第74条第5項の規定による申出q 預金保険法第74条第5項の規定による申出
ag 特定調停法に基づく特定調停手続による調停の申立てr 特定調停法に基づく特定調停手続による調停の申立て
ah 繰上償還又は社債権者集会の招集その他上場債券に関する権利に係る重要な事項
ai 普通出資の総口数の増加を伴う事項
aj 公認会計士等の異動
ak 継続企業の前提に関する事項の注記
akの2 有価証券報告書又は半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書の提出
al 株式事務代行機関への委託の取りやめ
am 内部統制に開示すべき重要な不備がある旨又は内部統制の評価結果を表明できない旨を記載する内部統制報告書の提出
an 定款の変更
ao 上場無議決権株式、上場議決権付株式(複数の種類の議決権付株式を発行している会社が発行するものに限る)又は上場優先株等(子会社連動配当株を除く)に係る株式の内容その他のスキームの変更
ap 全部取得条項付種類株式の全部の取得
aq 株式等売渡請求に係る承認又は不承認
ar その他会社の運営、業務、財産又は上場有価証券に関する重要な事実(※)s その他子会社等の運営、業務、財産に関する重要な事実

(※)買収への対応方針(導入、発動、変更又は廃止)も、この包括条項に該当するものとして開示が必要とされています(適時開示ガイドブック第2編第1章39-⑴)

▷参考リンク:適時開示が求められる会社情報|日本取引所グループHP

包括条項

 決定事実のうち最後はどちらも「〇〇から○○までに掲げる事実のほか、…(略)…重要な事項であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」という定め方になっており、包括条項とかバスケット条項とか呼ばれます。

 つまり、個別列挙されていないものについても、投資判断に重大な影響を与えるものについては網をかけるための条項です。

個別列挙して具体性を確保しつつ、そこから漏れるものや当初想定し難かったものを包括条項で拾うという建付けは、よくある一般的な定め方です。インサイダー取引規制上の重要事実も、そのような定め方になっています。

 「投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす」かどうかは、決定事実の内容、その影響等を踏まえて、実質的に判断することが求められるとされており、開示の目安もいくつか示されています(適時開示ガイドブック第2編第1章39-⑴)。

▽参考リンク
その他上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項|日本取引所グループHP

結び

今回は、開示制度ということで、適時開示のうち決定事実に関する開示について見てみました。

適時開示は取引所規則に基づく開示であり、TDnetTimely Disclosure network:「適時開示情報伝達システム」)の閲覧サイトである「適時開示情報閲覧サービス」で見ることができます。

▽参考リンク

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

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【金商法に基づく開示(法定開示)】

  • 金商法(「金融商品取引法」)
  • 金商法施行令(「金融商品取引法施行令」)
  • 定義府令(「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」)
  • 企業開示府令(「企業内容等の開示に関する内閣府令」)
  • 保有開示府令(「株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令」)
  • 公開買付府令(「発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」)
  • 発行者公開買付府令(「発行者による上場株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」)
  • 財務諸表規則(「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」)
  • 連結財務諸表規則(「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」)
  • 監査証明府令(「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」)

【取引所規則に基づく開示(適時開示)】

  • 上場規程(「有価証券上場規程」(東京証券取引所))
  • 上場規則(「有価証券上場規程施行規則」(東京証券取引所))
  • 実務要領(「適時開示に関する実務要領」)
  • 作成要領(「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」)

【会社法に基づく開示】

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