開示制度

開示制度|会社法に基づく開示-決算公告

今回は、開示制度ということで、会社法に基づく開示のうち決算公告について見てみたいと思います。

これは決算情報の開示のことで、時期的には、上場会社でいうところのいわば継続開示にあたります。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

決算公告(法440条1項)

株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、決算の公告をしなければならないとされています(会社法440条1項)。

公告というのは、広く一般に知らせること(公衆に告知すること)、といった意味です。

公告する決算の内容は、貸借対照表(B/S)ですが、大会社(資本金が5億円以上または負債が200億円以上)では貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)です。

▽会社法440条1項

(計算書類の公告)
第四百四十条
 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない

ここでいう法務省令は会社計算規則に定められており、個別注記表に表示した注記を公告にも記載しなければならないなどとされています。

▽会社法施行規則116条6号

第百十六条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定めるべき事項(事業報告及びその附属明細書に係るものを除く。)は、会社計算規則の定めるところによる。
 法第四百四十条第一項及び第三項

 ↓ 会社計算規則136条1項・2項

第百三十六条 株式会社が法第四百四十条第一項の規定による公告(同条第三項の規定による措置を含む。以下この項において同じ。)をする場合には、次に掲げる事項を当該公告において明らかにしなければならない。この場合において、第一号から第七号までに掲げる事項は、当該事業年度に係る個別注記表に表示した注記に限るものとする。
一 継続企業の前提に関する注記
二 重要な会計方針に係る事項に関する注記
三 貸借対照表に関する注記
四 税効果会計に関する注記
五 関連当事者との取引に関する注記
六 一株当たり情報に関する注記
七 重要な後発事象に関する注記
八 当期純損益金額
 株式会社が法第四百四十条第一項の規定により損益計算書の公告をする場合における前項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号から第七号までに」とする。

決算公告の目的

 決算公告は、会社法に基づく決算情報の開示といえますが、法律上の決算情報の開示としては、ほかにも、上場会社などに関して、金商法に基づく決算情報の開示があります(継続開示)。

 金商法に基づく開示が、投資家の投資判断(ひいては資本市場での価格形成)に資するための情報開示であるのに対し、会社法に基づく開示は、主として株主と債権者に対する情報開示になります。

 会社法でいう株主ももちろん投資者ではありますが、会社法の開示は、投資判断に資するためというよりは、会社の所有者としての株主に対する報告と、議決権行使に必要な情報の提供という側面が強くなっています。

要旨による公告(2項)

会社の公告の方法には、

  • 官報公告
  • 新聞公告
  • 電子公告

の3種類がありますが(会社法939条1項)、①の官報公告か、②の新聞公告を公告方法としている会社は、決算公告は要旨の公告で足りるとされています。

▽会社法440条2項(※【 】は管理人注)

 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法【=官報公告又は新聞公告】である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる

では③の電子公告を公告方法としている会社は?というと、特に何も言及されていないので、先ほど見た内容(1項)のとおり全部の掲載が必要になります(要旨では足りない)。

これは要するに、①の官報公告や②の新聞公告では、費用や掲載スペースの関係から要旨の掲載で足りるとしているわけです。

大会社では、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)のそれぞれの要旨になりますので(「前項に規定する・・・・・・・貸借対照表」という書きぶり)、まとめると、

  • 官報公告の場合 →B/S要旨(大会社ではB/SとP/Lの要旨)で足りる
  • 新聞公告の場合 →B/S要旨(大会社ではB/SとP/Lの要旨)で足りる
  • 電子公告の場合 →B/S(大会社ではB/SとP/L)

ということになります。

要旨の記載方法

 要旨の記載方法は、会社計算規則の、第6編「計算書類の公告等」の第2章「計算書類の要旨の公告」に定められています。

▽会社計算規則137条(※【 】は管理人注)

第百三十七条 法第四百四十条第二項の規定により貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨を公告する場合における貸借対照表の要旨及び損益計算書の要旨については、この章【=第二章 計算書類の要旨の公告の定めるところによる

公告の種類については、以下の関連記事にくわしく書いています。

▽関連記事

法務の基礎を勉強しよう|公告の種類

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電磁的方法による決算開示(3項)

官報公告か新聞公告を公告方法としている会社でも、決算公告については、実質的に電子公告と同じ手段をとれるようになっています。

電子公告そのものではない・・・・・・・・・・・・のに同じ内容なので紛らわしいですが、要するに、普段は官報公告か新聞公告によっている会社でも、決算についてだけは電子公告と同じことができるようにしている、という感じです。

つまりインターネットによる情報提供措置であり、具体的に想定されているのは、会社のウェブサイトに掲載する方法です。

開示期間は5年で、電子公告による決算公告の公告期間が5年(会社法940条1項3号)であるのと同じです。

▽会社法440条3項

 前項の株式会社【=公告方法が官報公告または新聞公告である株式会社】は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。

 ↓ 会社法施行規則116条6号

第百十六条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定めるべき事項(事業報告及びその附属明細書に係るものを除く。)は、会社計算規則の定めるところによる。
 法第四百四十条第一項及び第三項

 ↓ 会社計算規則147条

(貸借対照表等の電磁的方法による公開の方法)
第百四十七条
 法第四百四十条第三項の規定による措置は、会社法施行規則第二百二十二条第一項第一号ロに掲げる方法のうち、インターネットに接続された自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。)を使用する方法によって行わなければならない。

開示期間中継続して開示していることの調査義務については定められておらず、電子公告の場合でも、決算公告に関しては電子公告調査は不要となっていますので(会社法941条括弧書き参照)、この点でも違いはありません。

登記事項

 また、電磁的方法による情報提供のために必要な事項として、開示ページのURLが登記事項となっています(会社法911条3項26号→規則220条1項1号)。これも電子公告の場合と同じです。

▽会社法911条3項26号(※【 】は管理人注)

 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない
二十六 第四百四十条第三項の規定による措置【=電磁的方法による決算開示】をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの

 ↓ 会社法施行規則220条1項1号1号(※【 】は管理人注)

第二百二十条 次の各号に掲げる規定に規定する法務省令で定めるものは、当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合【=要するにURL】であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるものとする。
一 法第九百十一条第三項第二十六号 法第四百四十条第三項の規定による措置【=電磁的方法による決算開示

ちなみに、法では27号、規則では2号に、電子公告の場合についての定めがあります。

有報提出会社に対する適用除外(4項)

金商法に基づき有価証券報告書を提出する会社の場合は、決算公告は不要とされています。

これは、上場会社などでは金商法により有価証券報告書の提出が義務づけられていて、会社法上の決算公告よりも詳しい情報が開示されるので、公告を不要としているわけです。

会社法と金商法という二重の開示制度の調整(簡素化)の一環といえます。

▽会社法440条4項

 金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない

▽金商法24条1項1号(※【 】は管理人注、「…」は適宜省略)

(有価証券報告書の提出)
第二十四条
 有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券(特定有価証券を除く。次の各号を除き、以下この条において同じ。)が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、内国会社にあつては当該事業年度経過後三月以内(やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合には、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内)…に、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、…(略)…。
 金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く。)【=上場有価証券

結び

今回は、開示制度ということで、会社法に基づく開示のうち決算公告について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

主要法令等

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【金商法に基づく開示(法定開示)】

【取引所規則に基づく開示(適時開示)】

  • 上場規程(「有価証券上場規程」(東京証券取引所))
  • 上場規則(「有価証券上場規程施行規則」(東京証券取引所))
  • 実務要領(「適時開示に関する実務要領」)
  • 作成要領(「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」)

【会社法に基づく開示】

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