法務一般

法務の基礎を勉強しよう|期間の計算

今回は、法務の基礎を勉強しようということで、期間の計算について見てみたいと思います。

座学のときは地味すぎてあんまり真面目にやらない分野ですが、実務では意外と必要になるのが期間の計算方法です。

そんなに難しい話ではないので、一回しっかり見ておいても損はないかと思います。また、一回はしっかりと見ておかないと、意外と頭に入ってこない分野でもあります。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

期間の計算の全体構造

民法の条文

期間の計算についての一般的な方法を規定しているのは、民法138条~143条です(第1編第6章 期間の計算)。

期間の計算がわかりにくいのは、この条文だけを読んでいても、期間の計算方法に関する全体構造がイマイチわからないことです。

なんというか、期間の計算方法に関する「設計思想」みたいなものを、最初に見ておいた方がいいという感じがします。

まず、全体構造を見たうえで、次に、民法の条文はそのうちどこの部分を定めているものなのか?というのを把握していくと、わかりやすいのではと思います。

そこで、以下では、入りとして、全体構造を2つの切り口から見てみます。

全体構造の把握①-将来に向かってカウントor過去に向かってカウント?

期間をカウントする場合には、理屈からいって、①将来に向かってカウントする場合と、②過去に向かってカウントする場合があり得ます。

民法の条文を読んでもいまいち意識しないですが、実は、民法が直接規定しているのは、①将来に向かってカウントする場合の方です。

例えば、民法140条但書は「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まる・・・・・・・・・・・・・・ときは、この限りでない。」という定め方になっており、直接には将来に向かってカウントするのみの書きぶりになっています。

では、②過去に向かってカウントする場合はどうなるのか?というと、この場合にも民法の規定が準用される、というのが判例・通説となっています(後述)。

つまり、②の部分は、実は解釈ということになります。

全体構造の把握②-期間の単位には何があるのか

もうひとつの切り口は、期間をカウントする単位には何があるのか?という点です。

期間の単位を、小さいものから大きいものに並べていくと、

秒、分、時、日、週、月、年

があります。当然のことですが、期間計算の構造を掴むにあたっては意外と重要です。

ここで、期間の計算方法の考え方としては、「秒、分、時」と「日、週、月、年」で大きく区切っている、ということがポイントです。

「秒、分、時」については、自然的計算法により、「日、週、月、年」については、暦法的計算法による、とされています。

▽旧版「注釈民法(5)総則(5)」(川島武宣 編)2頁

期間を計算するには、起算点と満了点とを決めることが必要となる。それらを時、分および秒の単位を用いて正確に決める方法自然的計算法(Naturalkomputation)とよび、日を最小の単位として暦に従って決める方法暦法的計算法(Zivilkomputation)とよぶ。

わが民法は、時間を単位とする期間については自然的計算法を、日、週、月または年を単位とする期間については暦法的計算法を採用している。

まとめ

 ここまでの話をまとめつつ条文を整理してみると、たとえば以下のようになります。

 

将来に向かってカウント

過去に向かってカウント

起算点

満了点

起算点

満了点

秒、分、時を単位とする場合

自然的計算法

139条

明文なし

民法の左記規定を準用

日、週、月、年を単位とする場合

暦法的計算法(143条)

140条

141条
142条

 

以下では、大きく、①将来に向かってカウントする場合、②過去に向かってカウントする場合、の順で見ていきたいと思います。

将来に向かってカウントする場合-民138条~143条

適用範囲(民138条)

(期間の計算の通則)
第百三十八条
 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う

期間の計算に関する民法の規定が、一般的な計算方法であることを示しています。

およそすべての法領域に適用される規定であるということを、本条に目を通して改めて確認しておくのもよいかなと思います。

例外を示す言葉の使い方としては、

  • 「法令」と「裁判上の命令」については「特別の定め
  • 「法律行為」については「別段の定め

という文言になっています。

起算点(民139条、民140条)

期間の起算点について定めているのは、民139条と民140条になります。

秒、分、時を単位とする場合

(期間の起算)
第百三十九条
 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

「時間によって期間を定める」の意味が一瞬よくわからないですが、”時間を単位にする”という意味です(次条の冒頭の読み方も同じ)。

”時間を単位にする”というのはつまり、「」を単位にするということで、1時間とか5時間とか36時間とか、そういうことです。

時間を単位とする期間については自然的計算法を採用する、という趣旨になります(即時から起算する)。

時間より小さい単位であるふん」と「びよう」については、実ははっきり書かれていないことになりますが、本条が適用されるというのが通説です。(つまり解釈)

日、週、月、年を単位とする場合

第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

いわゆる初日不算入の原則というやつで(本文)、この部分が最重要といってもいい位です。

これは何をしているかというと、要するに、初日の端数を切り捨てているわけです。

例えば「契約締結日から2年間」というと、契約を締結するのはその日中のどこかなので、締結時点から考えると初日は丸一日はなく端数になります(ex.午後3時に締結したら残りは0.375日)。当事者間で別段の合意がない限りは、その端数は一日としてカウントしないことにしている、ということです。

初日の端数を切り捨てる計算法を延長的計算法といい、端数であっても初日を1日として計算する方法を短縮的計算法といいますが、民法は前者の延長的計算法を採用しているということになります(前掲・旧版「注釈民法(5)総則(5)」4頁参照)。

ただし、午前0時から始まるときは、端数が出ないので、この場合は例外的に初日を算入するとしているわけです(ただし書)。

例外①

138条にいう「特別の定め」「別段の定め」にも注意が必要です。

初日不算入に対する、法令の「特別の定め」というのは、個別の法律で初日を算入することを規定している場合のことです。

例えば、

「年齢は出生の日よりこれを起算す」(年齢計算に関する法律1条)

とか、

「この法律及び各議院の規則による期間の計算は、当日から起算する」(国会法133条)

といった場合があります。

例外②

上記のような定めを「特別の定め」と言われるのはわかりやすいですが、実は、もうひとつパターンがあります。

それは、

~日から起算して・・・・・・〇日(or週or月or年)

と規定している場合、「その日」を起算日として期間を計算するということです(つまり、初日を算入する)。

これは、法令用語としての、「から」と「から起算して」という用語の意味の違いになります。

うっかりすると読み抜かすので、注意しておいた方がいいかなと思います(※法令で「から起算して」になっているところは、その起算日自体が、何かの「翌日」となっている場合が多いですが)。

例えば、以下のような場合があります。

▽地方公務員法28条の3

(定年による退職の特例)
第二十八条の三 任命権者は、…(略)…その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。

満了点(民141条、民142条)

秒、分、時を単位とする場合

実は、この部分については規定がありません。

しかし、自然的計算法によって満了点を決めるというのが通説です(つまり解釈)。

例えば、

  • 16時45分から「2秒」なら16時45分02秒まで[16:45:00→16:45:02]
  • 16時45分から「2分」なら16時47分まで[16:45:00→16:47:00]
  • 16時45分から「2時間」なら18時45分まで[16:45:00→18:45:00]
  • 16時45分から「2時間30分」なら19時15分まで[16:45:00→19:15:00]

みたいなことです。

まあ、これは日常的な感覚で理解しても間違いないのかなと思います。

日、週、月、年を単位とする場合

日、週、月、年を単位とする場合の満了点は、民法141条、142条に書かれています。

▽民法141条、142条(※【 】は管理人注)

(期間の満了)
第百四十一条
 前条の場合【=日、週、月又は年によって期間を定めたとき】には、期間は、その末日の終了をもって満了する

第百四十二条 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日満了する

書かれているとおり、期間は、末日の終了(24時いっぱい)をもって満了するということです(141条)。

また、期間の末日が日曜日や祝日などであった場合には、末日の翌日に満了する、とされています(142条)。

ただ、「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」という限定がついていることに注意が必要です。

142条は例えば、

日or週or月or年で期間をカウントしたら、末日が11/23だったときに、
  ↓ 原則としては
11/23の24:00で満了するはずだったのが、
  ↓ 例外的に
この日は勤労感謝の日だねということで、11/24の24:00に満了することになる、

ということになります。

暦による計算(民143条)

(暦による期間の計算)
第百四十三条
 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する
 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

これも、けっこう読みにくいというか、意味がわかりづらい条文だと思います。

1項は、たとえば、月を単位としても、月には30日間の月も31日間の月もあったり、年を単位としても、平年(365日間の年)と閏年(366日間の年)があったりするわけですが、月を30日と固定したり、年を365日と固定したりはしない、ということです(=暦に従って計算する)。

つまり、例えば、

  • 1月1日から「1か月」であれば、1月31日24時が満了点となるし、
  • 2月1日から「1か月」であれば、(平年なら)2月28日24時が満了点となるし、
  • 4月1日から「1か月」であれば、4月30日24時が満了点になる、

ということになります。
(※「1月1日から」「2月1日から」「4月1日から」といった表現だと午前0時から始まるため、140条但書が適用され、初日不算入にはならないことに注意)

2項は、上記と異なり、月初などから起算しないとき、たとえば月の途中から「6か月」とかいっても、よくわからない(どこをどうとるのか、30日間でとるのか31日間でとるのか、よくわからない)ので、その場合は、「起算日に応当する日の前日」が満了日になることを示したものになっています。

例えば、

  • 1月15日から「1か月」であれば、2月14日24時が満了点になる

ということになります。

ただ、起算日に応答する日の前日、とされているので、この「起算日」について140条(初日不算入の原則)が適用されることに注意が必要です。

例えば、

“契約を締結した日”から「1か月」で、契約締結日が1月15日だった場合は、
  ↓ 初日不算入により
起算日は1月16日になる
  ↓ ゆえに
2月15日24時が満了点になる

ということになります。

過去に向かってカウントする場合-準用(判例・通説)

過去に向かってカウントする場合にも準用する先例として、大判昭和6年5月2日(民集10巻232頁)があります(※前掲・旧版「注釈民法(5)総則(5)」で引用されています)。

以下、カタカナをひらがなにしたり、旧字体を今の字体にしたりして引用してみました。

ただ、不正確な部分があるかもしれないので、正確には原文をあたってもらえればと思います。

▽大判昭和6年5月2日(民集10巻232頁)

【判決要旨】
商法第百五十二條第一項に依る催告は催告書の株主に到達したる日の翌日より起算し振込期日迄の間に少くとも二週間存するに非ざれば其の効力なきものとす

【参照条文】
商法第百五十二條
株金の振込は二週間前に之を各株主に催告することを要す
※2項以下は略

【事案】
被上告会社(被控訴人、原告)は商法第百五十二條第一項第一項に基き株主たる上告人(控訴人、被告)等に対し大正10年1月27日迄に第二回株金を振込むへき旨の催告を為し其の催告書は大正10年1月13日到達したりと主張し第二回株金未済金三百七十五圓を請求したるに対し上告人は斯かる催告は商法第百五十二條第一項所定の二週間の期間を存せさるを以て無効なりと抗弁したり 原院は右催告を有効と判断し上告人敗訴の判決を言い渡したり
当院は上告を理由ありと為し…(以下略)

【判決理由】の要旨部分(の一部)
仍て按ずるに商法第百五十二條第一項に於て株金の振込は二週間前に之を各株主に催告することを要すると定めたるは株主に振込の準備を為す機会を興ふる催告の日より二週間の経過したる後に振込期日の到来する様余裕を置きて催告すへきことを命せる趣旨に出たるものとす 従て催告書の株主に到達したる日の翌日より起算し振込期日迄の間に少くとも二週間の日數存したる場合に非されは催告は無効たりと云わさるへからす

どういうことかというと、つまり、株金の払込期日が1/27なら、そこまでに2週間の日数を確保しておかないといけない、と言っているわけです。

なので、最も遅くても、1/12中には催告が到達していないといけない、ということになります。

しかし、この事案では、催告の到達日が1/13であったので、催告期間の2週間が確保できておらず、催告が無効と判断された、ということです。

[払込期日 1/27]のギリギリセーフのスケジュール

1/12
催告の到達
1/13
催告期間1日目
1/14
1/15
1/16
1/17
1/18
1/19
催告期間7日目
1/20
1/21
1/22
1/23
1/24
1/25
1/26
催告期間14日目
1/27
払込期日

民法の規定の準用、という観点から見た場合は、

払込期日は1/27
  ↓
払込期日は初日不算入となり(∵払込は日中に行われるので端数として切り捨てられる)、1/26(24時)が2週間の起算点となる
  ↓
1/13(0時)が2週間の満了点となる

ということで、1/12中には催告が到達している必要がある、ということです。

現在でも、「~の〇週間前までに」といった表現は、会社法などでもよく見かけますので(招集通知とか)、知っておいて損はないかと思います。

なお、週でなくても、日、月、年でも同様です。

結び

今回は、法務の基礎を勉強しようということで、期間の計算について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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