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交渉の原則は「押して引く」こと|それはなぜ?意外と気付かないポイント

今回は、交渉の原則というのを書いてみたいと思います。若干殺伐とした話かもしれないので、気になる方はブラウザバックしていただければと。

 

なお、ここでいう「交渉」っていうのは、どこかに話をまとめたいという気持ちがある場合のことで、最後まで一歩も動かず突っ張ると決めている場合は、ここでいう交渉ではないです(それは闘争であり、基本的には裁判です)。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

交渉の絶対原則

さて、交渉の絶対原則は、「押して引く」ことです。

 

押すだけではダメです。破談になるからです。
引くだけではダメです。損するだけだからです。
引いてから押してはダメです。やはり破談になるからです。(相手からしたら「何?こいつ急にキレだした」みたいな感じになる)

 

交渉というのは、力強く突っ張る大胆さと、表面だけ凍った湖の両岸から薄氷を踏みながら握手する地点までソロリソロリと歩いていくような繊細さと、その両方が出たり引っ込んだりしながら進んでいくものだと思います。(←私見です)

 

というわけで、交渉の絶対原則は「押して引く」ことです。

 

まあ、これ自体はよく見聞きする話かなと思います。

 

なぜ「押して引く」なのか?

では、なぜ「押して引く」なのか?

 

それは、最初に提示した条件が、常に最良のものになるからです。ここは考えてみれば当然のことなのですが、意外と気づかないところなので、ポイントです。
(これは、外部弁護士として受任しているときも、会社法務側で訴訟管理や紛争対応として検討するときも、必要な視点だと思います)

 

最初に提示した条件は、そこから悪くなる事はあっても良くなる事は絶対にありません

 

とりあえずこの辺でいいか、という条件を出しておいて、相手と行ったり来たりしているうちになんとなく最初の条件より良くなったということは、論理的に考えてありえないと言ってよいです(相手の立場から考えて)。

 

最初に100万円を請求していて、相手と交渉している間にいつの間にか140万円になった、といったことは絶対にありません。

 

また、逆に請求を受ける側からしても、最初「20万円までなら解決金として支払います」と言っていて、交渉しているうちにいつの間にか支払いしなくてよくなった、ということも絶対にありません。

 

最初に提示した条件は、そこより悪くなる事しかありません。だから最初の条件提示は、常にこちら側の最良条件になります。そこを踏まえて、最初の条件をバシッと出さなければなりません。

 

相手も心得ている人であれば当然そうしてくるので、そこで負けていたら不利にしかなりません。

 

お互いそういう風だとわかっている人が、徐々に徐々にジリジリと条件を緩めていって、最後、妥協できる点に達することができれば、そこで話し合いでまとまってふう一息ついた、という感じになるのが、典型的な条件交渉かなと思います。

 

そのプロセスは、表面だけ凍っている水の上を歩いているみたいな感じで、急にグイっと踏み込むとバリっと割れます。
(割れてもいいと思っているケースというか、破談になってもいいという腹づもりがあるなら、それはそれでいいんですが)

 

自己に最大限に有利な内容を最初に出すというのは、請求を受ける側でも一緒です。だからほとんどの場合、請求を受ける側は、「当方に法的責任はありません」と言うのが普通の対応になります。そこから徐々に道義的な意味合いとして、「これこれ部分は譲歩できます」みたいなことを出していくという感じですかね。

 

そこに法的責任があるという前提だと、どうしても責任が伸びやすくなるので(また、交渉が決裂して裁判になった場合に不利に援用される可能性が高い)、あくまでも法的責任がないというところから理屈をつけて引っ張る必要があるわけです。

 

押して引くといっても、バナナの叩き売りではないので、単純に勢いで押したり引いたり、真ん中で叩き割ったりしてるわけではなく、あくまでロジックがあります。自分側の原理原則をどこに置くかということをはっきりしておいた上で、いろいろ理由をつけて伸び縮みさせるような感じですかね。

 

また、伸び縮みさせられる距離にも自分側の原理原則に応じて限界があるものだと思います(双方に)。別の表現をすると、筋論(すじろん)ってやつですかね。

 

 

腹が据わっている方が強い

一方、相手に対して強気で出るという事とは別に、話し合いでどうしてもまとめたいといった内情があれば、どうしても交渉事としては弱くなります。

 

上記で言ったことと矛盾しそうですが、最終的には破談になっても良いという風に腹をくくっている人(目が据わっている人?)の方が、交渉では強いです。

 

話し合いでまとめたい場合、話が壊れることを恐れると、相手の交渉打ち切りに対して敏感にならざるを得ないので、どうしても手前で止まらざるをえなくなるからです。

 

ということでまとめると、交渉のポイントは2つ、①押して引くこと、②いざとなったらとことん突っ張ってやる(裁判でも何でもやってやる)と腹が据わっている側の方が、その手前の段階である交渉でも強いこと、ですかね。

 

腹が据わっていないというのは、仕方のないことですが、なにかしらの弱いところがあるということで、たとえば、個人事件でいえば周囲や同居の家族に絶対に知られたくないとか、企業法務の方でいえば、担当者が内心めんどくさいのでさっさと会社のお金で払って終わりにしたいと思っているといった場合です。

 

仕方のないことですし、それも含めて対応を考えるしかないんですけどね。

 

 

結び

まぁ考えてみれば当然のことですが、基本のことですし、社会生活の中でも何かの時に役立つことも含まれているかもしれないかなと思って書いてみました。

 

余談ですけど、トランプさんなんか典型的ですよね。一発目がドカンて感じで、超ド派手ですよね。

 

いかにもビジネス、ディールという感じで、たぶんすごい頭のいい人なんだろうなと思います(キャラクターが賛否両論というか、ちょっとアレなのでしょうが)。

 

[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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