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「多数意見」「反対意見」ってどういう意味?

著作者:Freepik

法律系のニュースを見ていると、ネットニュースとかでも、「多数意見」とか「反対意見」などでこういう内容が書かれている、という部分を目にすることがあるかと思います。

今回は、これ何なの?っていう話をしてみたいと思います。

最高裁判所の意見の種類

最高裁判所の意見っていうのは、大きく分けて、「多数意見」と「個別意見」の2つに分かれます。

多数意見

多数意見」っていうのは、裁判体全体の結論で、いわゆる判決主文でこうこうとか、判決の理由でこうこうって書いているもの、裁判の本体みたいな感じですね。

それが「多数意見」、結論のところです。それと理由ですね。

他の「何々意見」っていうのは、全部「個別意見」と言いまして、裁判官個人の意見を述べているっていうものになります。

個別意見

個別意見」っていうのは、「補足意見」と「意見」と「反対意見」っていう3つがあります。ここが分かりにくいんですが。

補足意見

順番に見ていくと、「補足意見」っていうのは、結論も理由も「多数意見」と一緒、というものです。

基本的には全面的に賛成なので、”プラスアルファとして、こういう意見があります”っていうことで、まさに「補足意見」っていう感じです。結論も理由も多数意見と一緒です、っていうことです。

意見

意見」っていうのが、結論は一緒だけど、理由が違います、っていうものになります。

それを「意見」と呼ぶっていう、ここが語感的によく分かんないので、そういう意味だということを思い浮かべづらいと思うんですが、そういうものなんです。

ネットニュースとかで「意見」が取り上げられてるのって、あんまり見たことがないので、知らなくても特に支障ないっていう感じもしますが。

結論が一緒(「多数意見」と一緒)なんだけど、理由は違います、これが「意見」ですね。

反対意見

最後の「反対意見」っていうのは、これは分かりやすくて、結論が違うし、結論が違うから、当然、根拠・理由も違います。そういうものになります。

こんなふうに、「個別意見」っていうのは、3種類あります。

結論も理由も一緒です、プラスアルファでちょっとこういうこと言いたいです、っていうのが「補足意見」。

2つ目が「意見」で、結論は一緒ですけど、理由が違います、っていうのが「意見」。

「反対意見」っていうのは、結論が違います、当然、理由も違います、っていうものになります。

リツイートの法的責任に関する事例を例に

例えば、というところで、以前にリツイート最高裁判決(最判令和2年7月21日)っていうのがあったんですが、それを例に、「多数意見」とか「反対意見」のことをちょっと見てみたいと思います。

これ、どういう事例だったかというと、写真を無断掲載していた元ツイートがあって、それをリツイートした人の法的責任はどうなるか?っていうのが争点になった事例だったんですね。

これがどうなったかというと、結論としては、著作者人格権の侵害になります、というふうに判断されました。

▽最判令和2年7月21日(発信者情報開示請求事件)|裁判例検索(裁判所HP)

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

www.courts.go.jp

氏名表示権と同一性保持権

これをもうちょっと説明しますと、ツイッターに載せた時に、写真がトリミングされましたよね、自動的に。

元の写真には名前が入ってたみたいなんですが、ちょうどそのトリミングで、タイムラインに流れてくる時にはその氏名が見えない状態になっていた、ということです。

著作者人格権の中には3つあって、氏名を表示するかしないかというのを決める権利という意味で、「氏名表示権」というのがあるんです。あと勝手に改変されない権利という意味で、「同一性保持権」というのがあります。

元のツイートも、当然、著作者人格権侵害になっているんですが、リツイートした人も、結局同じ画像を流すことになってしまうので、著作者人格権の中の「氏名表示権」と「同一性保権」を侵害しています、というのが結論だったんですよね。これが「多数意見」だったと。

それに、林裁判官っていう最高裁判官の「反対意見」がついていたんですね。私は違うと思いますと。

これを著作者人格権侵害というべきではありません、というふうに、結論が違う、当然理由も違う、という、個別意見があったんですよね。

林裁判官の反対意見

割と世間の感覚的には、林裁判官の「反対意見」が言っていることの方が馴染むというか、感覚的には近い感じだったので、当時、ネットニュースとかツイッターとかでもよく取り上げられていた印象がありました。

ちなみに反対意見の中身は、結論としては、著作者人格権の侵害には当たらないと考えるべきですと。

なぜかというと、あれは、勝手にトリミングされると。ツイッターの仕様でそうなっていたので。リツイートはもちろん、リツイートする人が操作をしてやってるんですが、結局、それはどうしようもないでしょということですね。リツイートする人からすると。

システム上そうなっているんだから、これはリツイートした人の行ったトリミングーつまり氏名表示が隠れちゃったり、写真の枠(枠というか、周りの部分)がトリミングされちゃうことですがーと考えるべきではありません、そういう「行為をした人」だというふうに法的に評価するべきではありません、っていう理屈だったんですね(侵害主体性の議論)。

著作者人格権侵害とリツイート

なんでそういうふうな考え方をするかというと、元ツイートが著作者人格権侵害というか、無断投稿かどうかなんてわかんないんだから、そのリツイートも著作者人格権侵害になるって言っちゃったら、怖すぎてリツイートできんでしょ、っていうことですね。

そういう理屈というか、ここは価値判断みたいな感じですが、そういうことを指摘していて。世間的には、特にツイート、ツイッターをよくしてる人からすると、そうだよねと思うだろうと思います。

調べようが実際ないですからね。元のツイートを見て、雰囲気でなんかこれやばそうとか、これは大丈夫そうとか、それぐらいしか実際問題としてはできないわけで、基本的にリツイートをもう躊躇せざるを得ないところがあると。本記事ではこの判例の解説をしたいわけじゃないので、これ以上は控えますが。

要は、「反対意見」っていうのはそういう感じで、「多数意見」と結論が違うことを言ってるんですよ、っていうものですね。

結び

リツイート最高裁判決については、たくさん解説などが出ていまして、リツイート最高裁判決とかでググったら、いっぱい出てきますので、よかったら見てみてください。

管理人も当ブログにレビュー記事みたいなものを書いているので、参考にリンクを貼っておきます。

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