感覚でわかるシリーズ。今回は、「法律第○○号」って何やねん、です。
契約書でも、法律の名称を書くところでたまに見かけたりしますが、これは何なのか、という話です。
正式名称は「法律番号」
法律第○○号というのは、正式には法律番号といいます。年号もつきますので、例えば「令和△年法律第〇〇号」みたいになります。
これは何かというと、単に「何年の」「何番目に」公布された法律か、というナンバリングをしているだけです。
国会で成立した法律すべてに振られる管理No.のようなものと思っておけばよいです。別に法律の話でなくても、世間一般で、顧客でも案件でも契約書でも、なんでも管理のためにナンバー振っておきますよね。それと同じようなものです。
例えば、「令和5年法律第121号」とあれば、その法律が令和5年の121番目に公布された法律である、という意味になります。
契約書でもたまに見かける表記
きっちりした契約書では、法律の表記も法律番号を含めていて、しっかり書かれていることが多いかと思います。格式の高い契約書、というか。
これは、法律の正式名称とともに、法律の特定に一役買っているわけです。
特定なら正式名称だけでいいじゃん?と思うかもですが、意外にも、改正法などのときは正式名称が同一のことも頻繁にあったりします。
▷参考サイト:法律番号|参議院法制局HP
まあ、契約書に出てくるような法律の場合は、実際のところ法律番号がなくても特定に困ることはないような気もしますが(法律の通称だけで特定としては十分で、どの法律を指しているかわからないなんてことは普通ない)、カッチリした契約書は、法律の表記方法もカッチリしているので、そのようになるわけです。
例えば、契約書に個人情報保護法が出てくる場合、通称のとおり、「個人情報保護法」と書いているだけでも普通は別に困りませんが、正式に書くなら、法律の正式名称も含めて、
…個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(以下「個人情報保護法」という。)…
みたいに書くことになります。
法改正があった場合にはどうなるのか
一部改正の場合には法律番号は変わらない
では、法改正があった場合、法律番号はどうなるでしょうか。
一部改正の場合には、法律番号は変わりません。なので、何度法改正があろうと、ずっと一部改正であれば、何年たとうが法律番号は変わりません。
わかりやすい例でいくと、例えば、建築基準法は、何度も何度も改正されていますが、未だに昭和25年法律第201号です。
法改正としては、一部改正の方が圧倒的に多いです。
一部改正は実際どのようにされているかというと、ある法律1本を改正するために、改正法を1本成立させる、という風になっているケースは比較的少ない気がします。
一部改正で一番多いパターンは、例えば「α」という目的があったときに、その「α」という目的のために、それに関連する複数の法律をまとめて改正する改正法を1本成立させる、というパターンになっています。ちなみに、この改正法にも法律番号がつきます。
例えば「α」という目的に沿って、A法、B法、C法、D法、E法、F法をまとめて改正するための、「αのための法律」(令和△年法律第〇〇号)という改正法を1本成立させます。
この場合、A法から見れば、「αのための法律」という改正法によって、A法の一部が改正されるわけです(B法からF法にとっても同じ)。これが一部改正で多いパターンです。
なので、契約書でも、このニュアンスまで含めて表記しているときは、
…個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号、その後の改正を含む。以下「個人情報保護法」という。)…
みたいに書いていたりします。
ただ、その後の改正を含むと書いていなかったからといって、当初制定の内容に限定されるなんてことにはなりませんので(法律番号はそれで合っているわけだし、また、当事者の合理的意思解釈としても明らかにおかしい)、そこまでナイーブにならなくてもよいと思います。
全部改正の場合には法律番号ごと変わる
これに対して、全部改正の場合には、法律番号ごと変わります。
全部改正というのは、既存の法律の全部を改正するもので、第1条からまるっと全部を新しい条文に書き換えてしまうものです。
全部改正の場合は、実質的には新しい法律を制定するのと変わらないので、法律番号も新しくなるわけです。
例えば、統計法は、旧来の「統計法(昭和22年法律第18号)」から、全部改正の形式で、現行の「統計法(平成19年法律第53号)」となっています。
▽参考サイト
・統計法(昭和22年法律第18号)|日本法令索引
・統計法(平成19年法律第53号)|日本法令索引
ちなみに、廃止制定(新法を新規に制定する形をとりつつ、附則で旧法を廃止する)というパターンもあり、この場合も法律番号が新しく付きますが、細かいので割愛します。
結び
今回は、感覚でわかるシリーズということで、法律番号について見てみました。
ちなみに、政令(施行令)や省令(施行規則)でも同じ仕組みでナンバリングされていきますので(平成△年政令第○○号など)、これらも含めて言うときには法令番号といいます。
契約書の場合、そんなにカッチリ書かなくても実際困ることはほぼ考えられないですが、特に重厚で長大な契約書を作成するときなどは、法律もカッチリ表記していた方が、格式高くて格好良いかと思います(実際そのようになっているものが多いように思います)。
[注記]
感覚でわかるシリーズは専門的・学術的正確さを目指したわけではないので、正確な理解については他の文献等を参照されるか、身近な専門家にご相談ください。
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