先日、元でんぱ組.incの最上もがさんが妊娠を発表されてましたね。ニュースによれば、結婚する予定はないということでした。
理由はわからないですし、管理人自身は是とか非とかの感想はないですが、これからこういう選択をする男女も増えていくんだろうなぁと思いました。
実際のところ、結婚の法的な意味っていうところでいうと、実は、法定相続権を発生させること以外にさほど大きな意味はないんですよね。(←私見です)
結婚の社会的意味は普遍的になくなることはないと思うんですけど、価値観が多様化するなかにあって、結婚の社会的意味にこだわらない人が増えてくると、あとは法的な意味合いになると思うんですよね。
けど、それにも大した意味がない、となると、あれ?じゃあそういう価値観の場合は結婚しなくてもいいんでないの?という人もけっこう出てくるのではないかなと。
ということで、今回は、結婚をシステム的に見たときの意味について、法的なところを書いてみたいと思います。
なお、デリケートな話題かなとも思うので、気になる方はブラウザバックしていただければと。
結婚の社会的意味
まず、結婚の社会的意味っていうのは、人によって様々ですよね。
永遠の愛を誓う、家同士の結びつき、いろいろあると思います。で、どれも間違っていない。
あと、何でもそうですけど「カタチが欲しい」っていうのはあるのではと思います。
”永遠の愛を誓う”、”ずっと一緒にいよう”、”2人で添い遂げる”、といった気持ちにカタチを与えるのは、結婚制度が最もハマるといえると思います(結婚制度「だけ」と言ってる訳ではないです)。
LGBTの方たちにパートナー関係の証明書を発行する自治体などがあるのも、結婚というカタチがこのケースでは(現行の法制度では)付与できないため、別のカタチをつくったものだともいえます。
こういった事は他にもあって、例えば社内ルールを作ったときに規程にしておくといったことも、「カタチにしておく」ことの一種かもしれませんし。
(まあ、これは別途の法的な意味がありますが(就業規則と明確にリンクさせるとかの))
他にも、「感謝の気持ちはタダじゃダメ」と言ったりしますけど、これは”ありがとう”と伝えるだけでもいいんですけど、それをカタチにすること、プレゼントに感謝の気持ちを込めて相手に渡すこと、それが1つの意味のある行為とされているわけで。
この場合、プレゼントというのは、感謝の気持ちを込める、メディア(媒介)としての役割を果たしていて、感謝の気持ちにカタチを与えていると思うんですよね。お中元とかお歳暮とかもそうだし。
ということで、”永遠の愛を誓う””添い遂げる”といったことのカタチが、結婚制度だということはいえると思います。
が、こういった社会的意味といったところを、結婚について(価値観的に)あまり感じない人は、あまり気にならないのだろうと思います。
結婚の法的意味
決定的に違うのは、法定相続権の発生
では、結婚の法的な意味というのは何か?
結婚の法的な意味の決定的なところは、結論から言ってしまうと、法定相続権の発生です。(←私見です)
結婚の法的な効果を大きく分けると3グループあって、①夫婦としての地位に関するもの、②夫婦財産制、③法定相続権の発生、です。
が、①の夫婦としての地位に関するものは、それを目指して結婚するというような内容ではない気がしますし、②の夫婦財産関係っていうのも、ぶっちゃけそんなに意味はないともいえます。
ですので、実際のところ、③の法定相続権の発生以外に、結婚の法的な意味はあんまりないのです。(←私見です)
ちなみに、結婚することの主な法的効果をざっと見てみると、以下のような感じです。
- 親族法的意味
- ①夫婦としての地位に関するもの
- 夫婦同氏の原則(民750条)
- 同居協力扶助義務(民752条)
- 貞操義務(民770Ⅰなどの解釈上)
- 成年擬制(民753条)
- ②夫婦財産制
- 夫婦別産制(民762条Ⅰ)
- 婚姻費用分担義務(民760条)
- 日常家事債務の連帯責任(民761条)
- ①夫婦としての地位に関するもの
- 相続法的意味
- ③配偶者相続権(民890条)
結婚しないと相続でどうなる?
結婚すると、配偶者としての法定相続権が確固たる地位として発生しますが、結婚しないと(つまり内縁関係やパートナー関係のままでいると)、相続権はないです。これは解釈とかで動かないです。
内縁関係やパートナー関係の場合、何もしなければ、遺産は基本的に何も承継されません。法定相続権がないからです。
なので、遺産を承継させようと思うと、結婚していない場合は、遺言によって遺贈するという形をとるのが基本になります(※特別縁故者とかもあり得ますが、要件が厳しく手続もややこしいです)。
が、遺贈を受ける地位も、法定相続人に遺留分というのが保障されている関係上、配偶者相続人としての地位よりは弱いといえます。
結婚すると、配偶者としての法定相続権(配偶者相続権といいます)が発生します。
配偶者相続権は、常に法定相続人となることや、法定相続分の割合が高い点で、法定相続権のなかでも最も強力な地位であるといえます。血族相続人がいない場合は、全部相続します。
【法定相続人と法定相続分】
配偶者相続人 |
血族相続人 | |||
子 |
直系尊属 |
兄弟姉妹 | ||
配偶者+子の場合 |
1 |
1 | ||
配偶者+直系尊属の場合 |
2 |
1 | ||
配偶者+兄弟姉妹の場合 |
3 |
1 |
(※)表の中の数字は、比率
(※)子や直系尊属や兄弟姉妹が複数いる場合は、数字の比率のなかで等分で相続
ケースで考える
たとえば、パートナー関係の男女で、親がいて、子はいない、といったケースで、男性が死亡した場合を考えてみます。
【Case】
父ーー母 父ーー母
| |
[男性]ーーーー[女性]
結婚している場合
この場合、結婚していたら、女性には配偶者相続権がありますので、
女性(配偶者):男性の父母(直系尊属)=2:1
という割合で、法定相続することになります。
法定相続分を超えて、女性に全財産を相続させる旨の遺言をすることもできます。
が、男性の父母には遺留分(この場合、遺産の6分の1)があるので、それを行使された場合、相続させる旨の遺言はその分減殺され、遺産の6分の5までが女性に相続させることのできる最大限になります。
何もしていない場合
結婚していなくて、遺言も何もしていなければ、女性は男性の遺産から何も承継できません。
文字どおり、ゼロです。
結婚していないが、遺言はしている場合
結婚していなくて、遺言で遺贈していれば、女性はその分の遺贈を受けることができます。
が、男性の父母には遺留分(この場合、遺産の3分の1)があるため、それを行使された場合、遺贈はその分減殺され、遺産の3分の2までが遺贈を残せる最大限になります。
小括
というわけで、結婚した場合には、相続時に、配偶者相続権の強さが如実に現れることがわかると思います。
夫婦財産関係って何?
あと、結婚すると、夫婦の財産関係については、夫婦別産制というのがとられています(厳密にいえば、法定夫婦財産制の場合)。
婚姻中でも、相互の財産は別々、つまり、夫名義の財産は夫の財産、妻名義の財産は妻の財産、ということです。
婚姻中は、名義によって、別々の財産とされるということです。なので、実質的には夫婦共同で築いた財産(=夫婦共同財産)であっても、夫婦共同財産というのは、婚姻継続中は、潜在的にのみにしか存在しないわけです。
(例)家事分担で貢献していても、夫名義の不動産は婚姻中は夫の財産でしかない
夫婦共同財産であることが顕在化するのは、お別れするときです。
別れには、「死別」と「離別」(=離婚)という2つがあるわけですが、法的には、「死別」の場合は、夫婦共同財産を相続で承継させる、「離別」の場合は、夫婦共同財産を財産分与によって分け合うという形で、財産を承継させていくわけです。
離別(=離婚)のときは、夫名義や妻名義といった名義にかかわらず、婚姻中に形成された財産は夫婦共同で形成した共同財産とみて、財産分与されます。このときに、実質は共同財産であることが顕在化しているものといえます。
ただ、上記のような夫婦財産制の話はどれも、結婚するとかしないとかの話でいくと、「…で?」って感じなのかなと。
それだから結婚する、という感じはしないような気がしますし(むしろ財産分与のときにモメるので、若干マイナスという面すら感じなくもない)。
結び
ということで、結論をまとめてしまうとどうかというと、結婚という制度について社会的な意味をそんなに感じなくて、相続権の発生に関してそんなに興味がない人であれば、結婚をする意味は、実はそんなにないともいえます。(←私見です)
あくまでも「冷めた目線で見ると」というひとつの見方でしかないですけど(汗)。理屈で整理していくと、たぶんそういうことになるんじゃないかなと。
そして、そういう風に理解・整理している人は、おそらく無理して結婚しようとしなくなるでしょうし、そういうことも増えていくんじゃないかなぁと思います。
もちろん、結婚する人は今までもこれからもいると思いますし、当然いいと思いますし。
ただ、結婚しないという選択をする男女は、時代相対的には増えていくんじゃないかな、という呟きでした。
※なお、本記事の「法的」という意味には、社会保険や税金のことは含まれていません
[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。