法律コラム 消費者法

感覚でわかる規約づくり|免責条項の無効って結局どうなってんの?

2024年11月11日

感覚でわかるシリーズ。

今回は、規約づくりと消費者契約法について。

規約づくりと消費者契約法(免責条項の無効)

消費者契約(B to C)の規約をつくるとき、事業者になるだけ有利な内容を考えるとしても、あんまり都合のいいことばかり書きすぎると何らかの法令に抵触することがあるので、気をつけないとなー、というのが頭にあるものです。

その代表例が消費者契約法で、なかでも免責条項の無効を定める法8条は、重要といっていいでしょう。

しかし、長いんですよねこれが。

▽消費者契約法8条

ぱっと見、どこに何が書いているのかわからないんですよね。

そこで本記事では、ポイントを絞って感覚的にわかるような話にしてみたいと思います。

免責条項の無効に関する規律は、結局のところ、以下4つのポイントに絞れます。

  • 全部免責は無効
  • 一部免責は故意又は重過失の場合は無効、それ以外の場合は有効
  • 一部免責を有効に定めるには免責範囲を明記しなければならない
  • 一部免責は有効といっても、一般条項(法10条)による無効はあるので、限度はある

①全部免責は無効(1項1号・3号)

まず、全部免責はNGです。

無効になります。これは、1項の「1号」と「3号」に書いています。

「1号」は、債務不履行に関して、「3号」は、不法行為に関して、事業者の損害賠償責任を全部免責する条項は無効であると書いています。

したがって、全部免責を規約に定めることはできません。

②一部免責は故意又は重過失の場合は無効、それ以外の場合は有効(1項2号・4号)

次に、一部免責は、故意又は重過失の場合を除き、有効です。

別の言い方をすると、一部免責は、

故意又は重過失の場合は無効、
それ以外の場合は有効、

となっているので、②の場合、つまり重過失を除く過失(=軽過失)による場合に関しては、一部免責が可能です。

これは、1項の「2号」と「4号」に書いています。

したがって、このように免責範囲(免責される場面)を区切ったうえで、一部免責を規約に定めることができます。

なお、1項は、長くて何を書いているかわかりにくいですが、内容的には、

債務不履行に基づく損害賠償の免責条項全部免責の無効(1号
一部免責の無効(2号)※故意又は重過失の場合
不法行為に基づく損害賠償の免責条項全部免責の無効(3号
一部免責の無効(4号)※故意又は重過失の場合

のように、ロジカルに並んでいます。

1項全体について、くわしくは以下の関連記事に書いています。

▽関連記事

消費者契約法を勉強しよう|免責条項ー債務不履行責任、不法行為責任

続きを見る

③一部免責を有効に定めるには免責範囲を明記しなければならない(3項)

上記のように、一部免責は免責範囲を区切った上で定めることが可能ですが、この免責範囲を規約に明記する必要があります。

なぜかというと、令和4年改正により、一部免責を有効に定めるには形式要件が課されるようになったからです。

いわゆるサルベージ条項の無効を定める3項です。

3項は、一部免責は、事業者が軽過失の場合に限り有効であることを明確に記載していない場合は無効とする、と書いています(免責範囲が不明確な条項の無効)。

なので、よく見られるタイプの一部免責条項では、例えば

「軽過失がある場合に限り…」

「故意又は重過失がある場合を除き…」

といった表現で、免責範囲を明らかにしておく必要があります。

▽関連記事

消費者契約法を勉強しよう|サルベージ条項の無効

続きを見る

④一部免責は有効といっても限度はある(法10条)

このようにして一部免責を定めることができるといっても、内容的な限度はあります。

なぜかというと、一般条項(法10条)による無効はあり得るからです。

法10条は、不当条項の無効に関するいわゆるバスケット条項(一般条項)であり、消費者に一方的に不利な条項は無効とする旨が書かれています。

例えば、極端な話、

「全部免責は無効?じゃあ99%免責で!それなら一部免責だからいいでしょ?」

というのはだめで、同じく無効になる(という可能性が極めて高い)、ということです。

ただ、たしかに99%免責であっても一部免責ではあるので、適用法条としては、全部免責の無効を定める8条1項1号・3号ではなく、消費者に一方的に不利な条項の無効を定める10条の問題になるでしょう。

▽消費者契約法10条

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条
 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする

補足:契約不適合における免責無効の除外(2項)

なお、契約不適合責任の場合、消費者契約において追完請求等が可能であれば、消費者にも救済手段が残されているので、免責条項の無効を適用しない旨が書かれています(2項)。

なので、こういった場合には、全部免責を定めることも可能です。

▽関連記事

消費者契約法を勉強しよう|免責条項-契約不適合責任

続きを見る

ただ、あまり規約をつくるとき一般に気になることではないように思うので(管理人の個人的感覚)、上記の4つのポイントには含めていません。

結び

ということで、規約をつくるとき一般に気にしておくべきポイントは、

①全部免責は不可
②一部免責は、故意又は重過失の場合を除けば可能
③一部免責するなら、故意又は重過失の場合を除くことを明記すべし
④一部免責は可能といっても、限度はある(一般条項の適用は受ける)

の4つになるかと思います。これだと感覚的にも頭に馴染みやすいのではないかと。

その状態で、長めの解説や条文を見ると、多少ラクに見れるのではないかと思います。

以上、感覚でわかるシリーズでした。

[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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