消費者契約法

消費者契約法を勉強しよう|免責条項ー債務不履行責任、不法行為責任

著作者:yanalya/出典:Freepik

今回は、消費者契約法を勉強しようということで、免責条項のうち、債務不履行責任または不法行為責任を免責する条項(法8条1項)について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

免責条項の無効

法8条1項は、債務不履行責任または不法行為責任を全部免責する条項を無効とする。

また、一部免責であっても、それが故意または重過失に基づく損害賠償を免責するものである場合には、やはり無効とする。

ただ、免責条項が無効とされたとしても、それで損害賠償が認められるということではない(あくまでも免責条項が無効となっただけ)。

実際にどれだけの損害賠償請求が可能かどうかは、法律上の原則(民法など)に従って判断されることになるので、その要件(債務不履行責任の要件、不法行為責任の要件)を充足するかどうか、にかかってくる。

以下、順に見てみる。

債務不履行による損害賠償責任(法8条1項)

全部免責(1号)

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第八条
 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

1号は、債務不履行責任を全部免責する条項を無効とする。

全部を免除とは、「一切損害賠償責任を負いません」とか「一切責任を負いません」などのように、事業者が損害賠償責任を一切負わないとすることである。ゆえに、一部免責する条項や、立証責任を消費者に転換する条項は、本号には該当しない。

責任の有無・・を決定する権限の付与とは、「~と当社が認めた場合」とか「~と当社が判断する場合」などのように、事業者の決定でその事業者が責任の全部を負わないようにすることを可能にすることである。

一見、全部免責されない場合もあるように見えますが、(客観的な事実に認定に基づいて、法律上の原則に従って判断した場合には責任が発生する場合でも)事業者の一存で全部免責されることを可能にするものなので、単純に全部免責している場合と同様の扱いになっています。

一部免責(2号)

 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

債務不履行責任の一部を免責する条項は、事業者の故意または重過失に基づく損害賠償を免責する場合に限って無効となる(下線部参照)。

逆にいえば、事業者に過失(単純過失)がある場合の損害賠償の一部免責については、本号として無効とはしていない。そのため、有効性について争う場合には、消費者契約法の他の条項(法10条)や民法(公序良俗違反による無効)など他のルールによることになる。

一部を免除とは、「○○円を限度とします」とか「特別損害については責任を負いません」などのように、事業者が損害賠償責任を一定の限度に制限し、一部のみの責任を負うとすることである。

責任の限度・・を決定する権限の付与とは、「~と当社が認めた場合」とか「~と当社が判断する場合」などのように、事業者の決定でその事業者が責任の一部を負わないようにすることを可能にすることである。

一見、一部免責されない場合もあるように見えますが、前述と同様、事業者の一存で一部免責されることを可能にするものなので、単純に一部免責している場合と同様の扱いになっています。

不法行為による損害賠償責任(法8条1項)

全部免責(3号)

 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

3号は、不法行為責任を全部免責する条項を無効とする。

ここでいう「不法行為」とは、民法709条の不法行為責任だけではなく、例えば、

  • 民法715条の使用者責任
  • 民法717条の工作物責任
  • 民法718条の動物占有者等の責任

のほか、

  • 代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害に関する法人の損害賠償責任(一般社団法人法78条等)
  • 商法690条(船舶所有者の船長等に関する賠償責任)
  • 製造物責任法3条(製造物責任)

等が考えられる、とされている(消費者庁「消費者契約法逐条解説」(令和5年9月)132頁参照)。要するに、法的性質が不法行為であるものを指すということである。

また、「消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた」不法行為とは、不法行為責任自体は、契約関係があろうとなかろうと生じるものであるので、本号で扱っているのは、あくまで契約関係にある・・者同士での免責条項の有効性についてであることを明確にしたものである。

memo

 では、契約関係にない・・者(第三者)に対する責任を全部免責する条項を仮に置いていた場合はどうなるかというと、それはもともと無効です。

 事業者が一方的に宣言しただけで、その第三者との間で何の合意も成立していないためです。消費者契約法で無効にするまでもなく、もともとその第三者との間で何の効力も生じていません。

そのほかの条文の建付けは、前述の、債務不履行責任の全部免除の場合と同様である。

全部を免除とは、「一切損害賠償責任を負いません」とか「一切責任を負いません」などのように、事業者が損害賠償責任を一切負わないとすることである。ゆえに、一部免責する条項や、立証責任を消費者に転換する条項は、本号には該当しない。

責任の有無・・を決定する権限の付与とは、「~と当社が認めた場合」とか「~と当社が判断する場合」などのように、事業者の決定でその事業者が責任の全部を負わないようにすることを可能にすることである。

一部免責(4号)

 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

不法行為責任の一部を免責する条項は、事業者の故意または重過失に基づく損害賠償を免責する場合に限って無効となる(下線部参照)。

これも、条文の建付けは、前述の、債務不履行責任の一部免除の場合と同様である。

事業者に過失(単純過失)がある場合の損害賠償の一部免責については、本号として無効とはしていない。そのため、有効性について争う場合には、消費者契約法の他の条項(法10条)や民法(公序良俗違反による無効)など他のルールによることになる。

一部を免除とは、「○○円を限度とします」とか「特別損害については責任を負いません」などのように、事業者が損害賠償責任を一定の限度に制限し、一部のみの責任を負うとすることである。

責任の限度・・を決定する権限の付与とは、「~と当社が認めた場合」とか「~と当社が判断する場合」などのように、事業者の決定でその事業者が責任の一部を負わないようにすることを可能にすることである。

結び

今回は、消費者契約法を勉強しようということで、免責条項のうち、債務不履行責任または不法行為責任を免責する条項(法8条1項)について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

参考文献・主要法令等

参考文献

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主要法令等

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