広告法務 法律コラム

感覚でわかるNo.1表示|法務チェックでよくある3つのやり取り

感覚でわかるシリーズ。今回はNo.1表示の広告ルールについて。

No.1表示というのは、「No.1」「第1位」「トップ」「日本一」などと強調する広告表示のことです。要するに、ランク付けを利用して、他の事業者との比較上、自社商品やサービスの優良性・有利性を示そうとするものですね。ランクってわかりやすいので、日常生活でもよく見かけます。

2008年(平成20年)6月13日に当時の公正取引委員会から「No.1表示に関する実態調査報告書」(以下「実態調査報告書」)が出ていて、ここでNo.1表示に関する景表法上の解釈・考え方が示されています。

なので、一番に参照すべき基本的な資料というのはこれになるんですが、いきなり細かい話をするのもとっつきにくいと思うので、感覚的にわかりやすい話をしてみたいと思います。

法務チェックの際によくあるやり取り

法務チェック・広告チェックの際に、No.1表示についてやり取りする内容というのは、けっこうどこの会社でも似ているように思います(管理人の個人的感覚)。広告宣伝部がガッチリあるような会社は別ですが、どこも同じようなやり取りがされているような気がします。

個人的には、よくあるやり取りって3つぐらいかなと思っていて、その話で、だいたい感覚的なことはわかるので、その話をしてみたいと思います。

①とりあえず法務チェックよろしく

1つめのパターンは、とりあえず法務チェックよろしく、というものです。

No.1表示の広告ルールって、要するにひとことでいうと、合理的な根拠が必要、ということなんですよね。

なので、チェックで見る広告、クリエイティブ、プレスリリースとかですけど、そのなかにNo.1表示と思しきものがあったときには、「合理的な根拠が必要ですが、大丈夫ですか?」という指摘というか、コメントを一応することになります(厳密にいうと、No.1表示に限らず最上級表現全般でするやり取り)。

まるっと何も言わずに投げられるだけのときは、わかってやっているのかどうなのか、見る側としてはわからないからですね。

②調査会社に頼んだらいいってことですか?

2つめのパターンは、調査会社に頼んだらいいということですか?というものです。

これは担当の人がもともと調査が必要と知っているとか、知らなかったけどコメントしたらそういう流れの会話になった、みたいなときですね。

これは、そうといえばそうなんですが、ポイントは合理的な根拠があるかどうかなので、調査したらなんでもOKというわけではないので、ちゃんとした調査会社に頼みましょう、みたいな話をします。つまり、結論ありきの恣意的な調査だと合理的な根拠にならない、ということですね。

③自社調べでもいいんですか?

3つめのパターンは、自社調べでもいいんですか?というものです。

これは、自社調べ自体は別に禁じられてはいません。合理的な根拠かどうかが問題だからです。でも、本当に大丈夫ですか?みたいな話をします。

実態調査報告書でも、「自社調べの場合には、客観的なものとはいえない独自の基準で調査が行われることが多いと考えられ、景品表示法上も問題となりやすい」といった記述があります。実態調査報告書からも、自社調べについては慎重な態度が読み取れる、といってよいと思います(▷参考記事はこちら)。

というわけで、「No.1表示」に限らず、広告ルールに関して担当者がどの程度精通しているかは、会社により人によりそれぞれ、という感じですが、全然把握していない人でも、法務的なチェックをしておく必要があるとか、景品表示法っていう法律があるらしい、ということは知っている、というのがベースラインであるように思います(管理人の個人的感覚)。

でも、やっぱり、広告をつくる段階から、No.1表示には広告ルールがあるとか、基本的なルールはこういう内容だというのは知っておいた方がいいと思うんですよね。

ということで、次に、基本的な内容をざっとおさらいしてみたいと思います。

No.1表示の広告ルール

実態調査報告書によると、No.1表示が不当表示とならないための判断基準として、次の2点が挙げられています。

一点目は、「No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること」です。

何の調査もせずに「No.1!」とか表示するのはもちろんNGですし、また、「客観的な」とわざわざつけているのは、結論ありきの恣意的な調査をしてもそれは合理的な根拠にはなりませんよ、ということですね。

二点目は、「調査結果を正確かつ適正に引用していること」です。

これは、調査自体は客観的に行われていても、調査結果を歪曲する場合があるということですね。

都合のよいつまみ食いをしているとか、得られた調査結果を超えた表示をしているとか、表示が調査を適切に引用したものになっていないということです。

客観的な調査

ではまず一点目の「客観的な調査」から見てみると、「客観的な調査」というのは、その分野で一般的に認められた方法、または、社会通念上妥当な方法とされています。

これだけだとちょっとイメージがわかないので、客観的な調査といえない場合というのがどういうものなのかを見てみると、「顧客満足度No.1」といったNo.1表示を例に、

(a) 調査対象者が関係者であったり恣意的に選定されているなど無作為に抽出されていない
(b) 調査対象者の数が統計的に不十分
(c) 調査項目が恣意的に設定されている

といった場合が挙げられています。

正確かつ適正な引用

次に二点目の「正確かつ適正な引用」ですが、「正確かつ適切な引用」は、4つのポイントに分けて解説されています。

1つめは、どういう商品やサービスの範囲でNo.1なのかという「商品等の範囲」、2つめは、どの範囲のエリアでNo.1といっているのかという「地理的範囲」、3つめは、いつの調査に基づいてNo.1と言っているのかという「調査期間と時点」、4つめは、No.1表示の根拠となった調査の出典、です。

常識ベースで考えても、まあそうかなという内容かと思いますが、このように、「正確かつ適正な引用」には、「商品等の範囲」「地理的範囲」「調査期間と時点」「調査の出典」という4つのポイントがあります。

これらを、調査の事実に即して明瞭に表示すること、とされています。

まとめと若干の補足

最後にまとめると、要するに、No.1表示には広告ルールがあるということですね。ひとことでいうと、合理的な根拠に基づいていますか?ということです。

ちなみに、適用される法律は、景品表示法5条になります。景品表示法5条は、不当な表示の禁止を定めています。実態調査報告書は、ここの一般的なルールをNo.1表示について考えてみたときの具体的な判断基準を示している、ということになります。

No.1表示が不当表示に該当しないための判断基準としては、「客観的調査」と「正確かつ適正な引用」の2点が挙げられています。そして、正確かつ適正な引用のポイントは、「商品等の範囲」「地理的範囲」「調査期間と時点」「調査の出典」の4つです。

ということで、今回は、No.1表示の広告ルールについて、チェックの際によくあるやり取り3つを見ながら、基本的なところをざっとおさらいしてみました。

[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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