独占禁止法

独占禁止法を勉強しよう|不当な取引制限

今回は、独占禁止法を勉強しようということで、不当な取引制限について書いてみたいと思う。

 

ではさっそく。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。

 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

 

不当な取引制限の禁止(カルテル)

規制の内容・類型

規制の内容

基本的な条文は、不当な取引制限の禁止を定める3条と、その定義を定める2条6項である。

 

第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

 

第二条
6 この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

 

これの何が反競争的なのかというと、形式的に複数の(2以上の)事業者がいても、競争を制限する合意をしてしまえば、事実上競争者が存在しなくなる、ということである。

 

平たくいうと、「デキレース」のことである(と思う。管理人の個人的理解)。かけっこでいうと、複数の競争者がいても、全員で手をつないでみんなでゴールしましょう、とか、今回のレースは、Aくん3位、Bくん1位、Cくん4位、Dくん2位でいきましょう、と決めてる、みたいな感じ。

 

 

規制の類型

では、「不当な取引制限」には、どんな類型があるか?

 

条文では、文言に「対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等」とあるように、価格制限数量制限技術制限製品制限設備制限取引先制限が例示されている。

 

取引条件を制限する行為の代表例としては、価格カルテル、数量カルテル、入札談合などがある。カルテルとは、競争事業者間で、相互に事業活動を拘束し競争を制限する協定や合意のことをいう。

 

価格カルテル

複数の事業者による価格を制限する行為(=取引条件のうち価格を制限する)。

 

同じ価格で販売しましょうとか、同じ額だけ引き上げるとか、幅を決めるとか、いろいろな態様がありうる。

 

数量カルテル

複数の事業者による生産数量や出荷数量を制限する行為(=取引条件のうち数量を制限する)。

 

数量を制限すれば、商品の需給をコントロールすることが可能になってしまう。普通は、売り手ー買い手の間での交渉・取引によって需給のバランスが図られるが、数量カルテルは、売り手同士(または買い手同士)の合意で需給をコントロールしてしまう。

 

入札談合

競争入札において、入札に参加する事業者があらかじめ受注者を決め、その者が自らの入札価格を決め、他者はそれに協力するという合意(=取引条件のうち取引先取引価格を制限する)。

 

入札制度は、価格競争の結果、基本的には価格が最も低い者が落札(→受注)できるという制度である。しかし、入札談合されてしまうと、制度自体が成り立たなくなる。

 

参考

「官製談合」とは?

 入札談合のうち、発注者である国や自治体などの職員等が関与して行われる場合のこと。 

 入札談合は、入札参加者同士が競争を制限する合意をすることだが、発注側である国や自治体の職員等も関与して行われることがあり、これを官製談合という。

 独禁法だけでは発注者も含めて規制するのが難しかったため、官製談合防止法という法律が別に制定された(正式名称は「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」)。

 

 

行為要件

「他の事業者と共同して」(共同行為)

複数の事業者が共同すること。明示の合意も、黙示の合意も含む。意思の連絡が必要であり、他の事業者の行為を認識しているだけでは足りないとされる。

 

競争者同士が共同することなく、他社と同じ行為をすることを「意識的平行行為」というが、これは、意思の連絡なく同じ行動をとる場合であり、ここでいう共同行為にはあたらない(違法行為ではない)。

 

「相互にその事業活動を拘束し、又は遂行する」(相互拘束)

合意の内容に従った行為をとることを相互に保証し合うこと。本来、自由に取引条件を決めて事業活動を行うはずであるが、カルテルのような取引条件に関する取決めがされたときは、これに従うことになる。

 

 

効果要件

「一定の取引分野」

行為要件を満たす行為が競争を実質的に制限するかどうかを判断するための前提として必要な要件である。要するに、市場の占有率を判断するには、市場の範囲を決める必要があるということ。

 

「競争を実質的に制限」

競争の実質的制限は、市場支配力の形成・維持・強化のことである。共同行為・相互拘束が認められることに加えて、別途、この効果要件が認められる必要がある。市場占有率が高いほど、普通は合意の実効性が高くなるから、競争の実質的制限と認められやすくなる(一般的には50%以上)。

 

参考

ハードコア・カルテルと非ハードコア・カルテル

 通常、競争制限以外の目的効果を持たない共同行為を「ハードコア・カルテル」といい、それ以外の共同行為を「非ハードコア・カルテル」という。要するに、ハードコア・カルテルの方が、競争制限性が強い。

 独禁法のモデルとなったアメリカの反トラスト法では、ハードコア・カルテルは「当然違法の原則」(本質的に競争制限的性格を有することから個別具体的に反競争的効果の立証を要せず違法とする)、非ハードコア・カルテルは「合意の原則」(それ以外の行為についてかは関連市場を画定したうえで個別具体的に反競争的効果と競争促進的効果を比較衡量して違法か否かを判断する)によるとされるが、日本では、講学上の分類にとどまる。

 

 

「公共の利益に反して」

保護法益である自由競争経済秩序の維持と、合意により得られる利益との比較衡量により判断される。

 

行為要件と効果要件が認められれば「公共の利益に反する」ことは事実上推定され、違反行為を争う側で合意により得られる利益を明らかにする必要がある。合意により得られる利益としては、事業活動における合理性、経済合理性、競争促進性などが主張される。そして、上記2つの利益(太字部分)を比較して検討がされることになる。

 

 

事業者団体の活動規制

定義

事業者団体とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2以上の事業者の結合体または連合体である。

 

法2条2項に定義がある。

 

第二条 
2 この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

 

事業者は基本的にはそれぞれが独立した主体として事業活動を行うが、事業者共通の利益のために団体を組織し活動することが必要なこともある。そのような団体組織は認められるが、団体としての意思決定が構成事業者に対して拘束的に働くため、独禁法の趣旨に反するような競争制限が発生するリスクがある。そのため、以下のような行為規制などが定められている。

 

 

行為規制

行為規制は、法8条に規定されている。1号~5号まであるが、どれも事業者団体としての行為であることが前提である。

 

第八条 事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。

 

独自の行為規制というよりは、以下のように、独禁法の他の部分で規定されている行為規制とパラレルになっている感じのものが多い。

 

1号→私的独占・不当な取引制限の禁止(3条)に対応
2号→不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定等の禁止(6条)に対応
3号→これは事業者団体に固有の規制
4号→1号、2号、5号で捕捉できないような不当な制限を規制
5号→不公正な取引方法の禁止(19条)に対応

 

 

結び

不当な取引制限については以上になります。

 

>次の記事

独占禁止法を勉強しよう|不公正な取引方法ー全体像

続きを見る

前の記事<

独占禁止法を勉強しよう|私的独占

続きを見る

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

-独占禁止法