今回は、独占禁止法を勉強しようということで、不公正な取引方法のうち取引妨害、内部干渉について見てみたいと思います。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
取引妨害・内部干渉のグループ
取引妨害・内部干渉は、告示類型のみとなっています。
①競争者に対する取引妨害(一般指定14項)と②競争会社に対する内部干渉(一般指定15項)があります。どちらも、競争相手に対するものです。
全体像は以下のとおりです。
「取引妨害・内部干渉」のグループ(6号ヘ参照)
行為類型 | 細分類 | 法定類型 (法2条9項) | 告示類型 (一般指定) | 公正競争阻害性 |
---|---|---|---|---|
取引妨害 | 競争者に対する取引妨害 | (6号へ→) | 14項 | 不当に |
内部干渉 | 競争会社に対する内部干渉 | (6号へ→) | 15項 | 不当に |
▽法2条9項6号へ
六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。
取引妨害(一般指定14項)
取引妨害は、告示類型です。
競争相手の取引を直接的に妨害するものといえます。
▽告示類型(一般指定14項)
(競争者に対する取引妨害)
14 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
行為要件
行為の内容は、競争関係にある事業者とその取引先との取引を妨害することです。
行為の方法は、
- 契約の成立の阻止
- 契約の不履行の誘引
が例示されたうえで、いかなる方法をもってするかを問わないとされており、極めて広い行為形態がカバーされ得ます。
効果要件(公正競争阻害性)
効果要件は、「不当に」取引を妨害することとされています(公正競争阻害性)。
内部干渉(一般指定15項)
内部干渉も、告示類型です。
競争相手が会社であるときに、会社内部でのかく乱を図るものといえます。
▽告示類型(一般指定15項)
(競争会社に対する内部干渉)
15 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。
行為要件
行為の相手方は、国内の競争会社の株主又は役員となっています。
行為の内容は、競争会社に不利益な行為をするように、誘引し、そそのかし、又は強制することです。
行為の方法は、
- 株主権の行使
- 株式の譲渡
- 秘密の漏えい
が例示されたうえで、いかなる方法をもってするかを問わないとされており、極めて広い行為形態がカバーされ得ます。
効果要件(公正競争阻害性)
効果要件は、不利益行為を「不当に」誘引し、そそのかし、又は強制することとされています(公正競争阻害性)。
結び
今回は、独占禁止法を勉強しようということで、不公正な取引方法のうち取引妨害、内部干渉について見てみました。
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独占禁止法を勉強しよう|企業結合規制
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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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主要法令等・参考文献
主要法令等
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- 独占禁止法(≫法律情報/英文)
- 排除型私的独占ガイドライン(「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」)|公取委HP
- 一般指定(「不公正な取引方法」(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号))|公取委HP
- 新聞特殊指定(「新聞業における特定の不公正な取引方法」(平成11年7月21日公正取引委員会告示第9号))|公取委HP
- 物流特殊指定(「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(平成16年3月8日公正取引委員会告示第1号))|公取委HP
- 大規模小売業告示(「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」(平成17年5月13日公正取引委員会告示第11号))|公取委HP
- 不当廉売ガイドライン(「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」)|公取委HP
- 流通・取引慣行ガイドライン(「流通・取引慣行に関する独占禁止法の指針」)|公取委HP
- 優越的地位濫用ガイドライン(「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」)|公取委HP
- 役務委託優越的地位濫用ガイドライン(「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」)|公取委HP
- 意見聴取規則(「公正取引委員会の意見聴取に関する規則」)
- 審査規則(「公正取引委員会の審査に関する規則」)
- 審査手続指針(「独占禁止法審査手続に関する指針」)|公取委HP
- 独禁法Q&A(「よくある質問コーナー(独占禁止法)」)|公取委HP
【企業結合規制関連】
- 届出等規則(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条から第十六条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則」)
- 企業結合ガイドライン(「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」)|公取委HP
- 企業結合手続対応方針(「企業結合審査の手続に関する対応方針」)|公取委HP
【違反に対する措置(エンフォースメント)関連】
参考文献
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- 独占禁止法〔第5版〕(菅久修一 編著、品川武、伊永大輔、鈴木健太 著)
- 注釈 独占禁止法(根岸哲 編)
- 優越的地位濫用ガイドブック(「優越的地位の濫用 ~知っておきたい取引ルール~」(公正取引委員会))|公取委HP(≫掲載ページ)
- 優越的地位の濫用規制に関する講習|公取委HP
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