独占禁止法

独占禁止法を勉強しよう|企業結合規制

今回は、独占禁止法を勉強しようということで、企業結合規制について書いてみたいと思う。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

規制の内容

企業結合規制は、競争を制限することとなるような企業の組織変更を規制するものである。

 

会社の株式取得、合併、分割、共同株式移転、事業の譲受けなどによって、競争が実質的に制限されることとなる場合に、こうした企業結合が禁止される。

 

なお、独禁法全体の位置づけから見ると、企業結合は、私的独占に対する規制の補完的・予防的規定といわれる。

 

ともに競争の実質的制限を規制しようとするものだが、私的独占に対する規制は、大企業による市場支配力の形成・維持・強化を問題とする「行為規制」であるのに対し、企業結合規制は、結合による当該市場の構造変化を問題にするという意味で、「構造規制」である。 

 

独禁法が規制する企業結合の類型には、6つの類型(①株式保有、②役員の兼任、③合併、④会社分割、⑤共同株式移転、⑥事業の譲受け等)がある。

 

 

主な法令等

企業結合規制に関する主な法令等は、以下のとおり。

 

 

法律

公取規則

行政解釈

企業結合規制

独占禁止法

➢課徴金減免規則
(「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則」)

➢確約手続規則
(「公正取引委員会の確約手続に関する規則」)

企業結合ガイドライン
(「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」)

 

企業結合ガイドライン(「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」)で、どのような企業結合が問題となるかの考え方が示されている。

 

▽企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針|公正取引委員会HP
https://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/shishin.html

 

 

企業結合規制の類型

独禁法が規制する企業結合の類型には、6つの類型(①株式保有、②役員の兼任、③合併、④会社分割、⑤共同株式移転、⑥事業の譲受け等)がある。

 

①株式保有の制限

会社が、他の会社の株式を取得すること、又は、他の会社の株式を所有することである。

 

第十条 会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない。

 

なぜ「所有」まで規制されていうのかというと、株式取得時には企業結合規制として問題にならない場合でも、その後の状況の変化によっては株式を「所有」していることが規制対象になり得る、ということである。

 

②役員兼任の制限

会社の役員又は従業員が、他の会社の役員の地位を兼ねることである。

 

第十三条 会社の役員又は従業員(継続して会社の業務に従事する者であつて、役員以外の者をいう。以下この条において同じ。)は、他の会社の役員の地位を兼ねることにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該役員の地位を兼ねてはならない。

 

③合併の制限

会社法でいう「合併」の制限である。

 

第十五条 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、合併をしてはならない。
一 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該合併が不公正な取引方法によるものである場合

 

会社法でいう「合併」には、吸収合併新設合併があるが、その両方とも、企業結合規制の対象となっている。合併は「飲み込む」というイメージである。

 

吸収合併

【A会社】
  ↓ 吸収合併
【B会社】

新設合併

 【A会社】【B会社】
新設合併↓   ↓新設合併
   【NEW会社】

 

④会社分割の制限

会社法でいう「会社分割」の制限である。

 

第十五条の二 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同新設分割(会社が他の会社と共同してする新設分割をいう。以下同じ。)をし、又は吸収分割をしてはならない。
一 当該共同新設分割又は当該吸収分割によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該共同新設分割又は当該吸収分割が不公正な取引方法によるものである場合

 

会社法でいう「会社分割」には、①吸収分割と②新設分割(②´共同新設分割も含む)がある。共同新設分割、というのは、新設分割を2社以上で行う場合である。

 

会社分割は「事業の一部を切り出す」というイメージである。

 

ただし、独禁法で企業結合規制の対象となっているのは、①吸収分割と、②´共同新設分割、である。

 

吸収合併 ←企業結合規制の対象となる

【A会社】
a事業とc事業
  ↓ c事業を吸収分割
【B会社】
b事業(+c事業が加わる)

新設合併 ←企業結合規制の対象とならない

【A会社】
a事業とc事業
  ↓ c事業を新設分割
【NEW会社】
c事業

共同新設分割 ←企業結合規制の対象となる

     【A会社】  【B会社】
   a事業とc事業    b事業とd事業
c事業を新設分割↓      ↓d事業を新設分割
        【NEW会社】
        b事業とd事業

 

上記の図で見るとわかるように、共同新設分割と吸収分割は、実質的には部分的な合併であるため、企業結合規制がかかっている、といえる。

 

⑤共同株式移転の制限

共同株式移転というのは、株式移転を2社以上で行う場合のことである。

 

株式移転というのは、新設会社との間で行う株式交換、と思っておけばよいと思う。

 

第十五条の三 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、共同株式移転(会社が他の会社と共同してする株式移転をいう。以下同じ。)をしてはならない。
一 当該共同株式移転によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該共同株式移転が不公正な取引方法によるものである場合

 

▽共同株式移転

   【A会社】 【B会社】
a社株式を移転↓   ↓b社株式を移転
     【NEW会社】


       ⇓ (株式移転後)

 もとa社株主   もとb社株主
      |  |
     【NEW会社】
完全親子会社|  |完全親子会社
  【A会社】  【B会社】

 

上記の図で見るとわかるように、共同株式移転は、持ち株会社が誕生しこれを通じて結合関係が形成されるため、企業結合規制がかかっている、といえる。

 

⑥事業の譲受け等の制限

譲渡会社の事業や固定資産を譲受会社に承継させることである(1~2号)。

 

事業の賃借や、事業の経営の受任、事業上の損益全部を共通にする契約の締結についても(3~5号)、事業の譲受けに準じて扱われている。

 

第十六条 会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該行為をしてはならず、及び不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない。
一 他の会社の事業の全部又は重要部分の譲受け
二 他の会社の事業上の固定資産の全部又は重要部分の譲受け
三 他の会社の事業の全部又は重要部分の賃借
四 他の会社の事業の全部又は重要部分についての経営の受任
五 他の会社と事業上の損益全部を共通にする契約の締結

 

 

「一定の取引分野」

一定の取引分野、というのは、ざっくりいえば、シェアを判断するにはマーケットの範囲を決めないと(市場の範囲を画定しないと)いけない、という話である。

 

そういった”市場の範囲の画定”については、①商品の範囲を画定する、②取引の地域の範囲(地理的範囲)を画定する、という方法で行われる。

 

需要者にとっての代替性、というのは、実質的な値上がりがあったときに、他の商品や地域への乗り換えが起こる可能性の大小、ということである。
(そして、その可能性が小さいということはつまり、独占的事業者が値上げにより利潤を拡大できる=その企業結合によって競争上何らかの影響が及びうる範囲である、ということになる)。

 

▽企業結合ガイドライン(第2の1)

1 一定の取引分野の画定の基本的考え方
 一定の取引分野は,企業結合により競争が制限されることとなるか否かを判断するための範囲を示すものであり,一定の取引の対象となる商品・役務(以下,両者を併せて「商品」という。また,特に商品について記述する場合には「財」,役務について記述する場合には「サービス」という。)の範囲,取引の地域の範囲(以下「地理的範囲」という。)等に関して,基本的には,需要者にとっての代替性という観点から判断される
 また,必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮される
 需要者にとっての代替性をみるに当たっては,ある地域において,ある事業者が,ある商品を独占して供給しているという仮定の下で,当該独占事業者が,利潤最大化を図る目的で,小幅ではあるが実質的であり,かつ一時的ではない価格引上げ(注2)(注3)をした場合に,当該商品及び地域について,需要者が当該商品の購入を他の商品又は地域に振り替える程度を考慮する。他の商品又は地域への振替の程度が小さいために,当該独占事業者が価格引上げにより利潤を拡大できるような場合には,その範囲をもって,当該企業結合によって競争上何らかの影響が及び得る範囲ということとなる。
 供給者にとっての代替性については,当該商品及び地域について,小幅ではあるが実質的であり,かつ一時的ではない価格引上げがあった場合に,他の供給者が,多大な追加的費用やリスクを負うことなく,短期間(1年以内を目途)のうちに,別の商品又は地域から当該商品に製造・販売を転換する可能性の程度を考慮する。そのような転換の可能性の程度が小さいために,当該独占事業者が価格引上げにより利潤を拡大できるような場合には,その範囲をもって,当該企業結合によって競争上何らかの影響が及び得る範囲ということとなる。
 また,第三者にサービスの「場」を提供し,そこに異なる複数の需要者層が存在する多面市場を形成するプラットフォームの場合,基本的に,それぞれの需要者層ごとに一定の取引分野を画定し,後記第4の2(1)キのとおり多面市場の特性を踏まえて企業結合が競争に与える影響について判断する。

 

 

「競争を実質的に制限することとなる」

条文の引用部分で見たとおり、どの規制類型にも、「競争を実質的に制限することとなる」という要件があったが、この要件は、「競争を実質的に制限する」の部分と、「こととなる」の部分とに分かれる。

 

「競争を実質的に制限する」

「競争を実質的に制限する」の考え方は以下のとおり。

 

▽企業結合ガイドライン(第3の1の(1))

(1) 「競争を実質的に制限する」の考え方
 判例(東宝株式会社ほか1名に対する件(昭和28年12月7日東京高等裁判所判決))では,「競争を実質的に制限する」について,次のような考え方が示されている。
ア 株式会社新東宝(以下「新東宝」という。)は,自社の制作する映画の配給について自ら行うこともできたが,東宝株式会社(以下「東宝」という。)との協定により,当該配給をすべて東宝に委託することとし,自らは,映画の制作のみを行っていた。新東宝は,当該協定失効後も引き続き当該協定の内容を実行していたが,昭和24年11月に,右協定の失効を理由として,新東宝の制作した映画は自らこれを配給することを言明したことから,東宝との間に紛争が生じた。この紛争の中で,右の協定が法違反であるとして,公正取引委員会による審判が開始され,公正取引委員会は,昭和26年6月5日の審決において,東宝と新東宝の協定は,法第3条(不当な取引制限)及び第4条第1項第3号(注4)の規定に違反すると認定した。
(注4)法第4条第1項(現行法では,この規定は存在しない。)
   事業者は,共同して左の各号の一に該当する行為をしてはならない。
   第3号 技術,製品,販路又は顧客を制限すること
イ 被審人東宝の審決取消しの訴えに対して,東京高等裁判所は,競争の実質的制限に関し,「競争を実質的に制限するとは,競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことをいう」と判示した。

 

「こととなる」

「こととなる」の考え方は以下のとおり。

 

▽企業結合ガイドライン(第3の1の(2))

(2) 「こととなる」の考え方
 法第4章の各規定では,法第3条又は法第8条の規定と異なり,一定の取引分野における競争を実質的に制限する「こととなる」場合の企業結合を禁止している。この「こととなる」とは,企業結合により,競争の実質的制限が必然ではないが容易に現出し得る状況がもたらされることで足りるとする蓋然性を意味するものである。したがって,法第4章では,企業結合により市場構造が非競争的に変化して,当事会社グループが単独で又は他の会社と協調的行動をとることによって,ある程度自由に価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することができる状態が容易に現出し得るとみられる場合には,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなり,禁止される。

 

企業結合形態別の判断方法

「一定の取引分野」で「競争を実質的に制限することとなる」については、水平型企業結合垂直型企業結合混合型企業結合の3つに分類され、それぞれごとに、判断枠組みや判断要素が整理されている(企業結合ガイドライン)。

 

なお、水平とか垂直というのが独禁法ではよく出てくるが、「水平」というのは競争事業者間のこと、「垂直」というのは取引事業者間のこと、と思っておいてよいと思う。「混合」は、両方が混ざっているということ。

 

▽企業結合ガイドライン(第3の2)

企業結合には様々な形態があるが,
① 水平型企業結合(同一の一定の取引分野において競争関係にある会社間の企業結合をいう。以下同じ。)
② 垂直型企業結合(例えば,メーカーとその商品の販売業者との間の合併など取引段階を異にする会社間の企業結合をいう。以下同じ。)
③ 混合型企業結合(例えば,異業種に属する会社間の合併,一定の取引分野の地理的範囲を異にする会社間の株式保有など水平型企業結合又は垂直型企業結合のいずれにも該当しない企業結合をいう。以下同じ。)
に分類することができる。
 水平型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させるので,競争に与える影響が最も直接的であり,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる可能性は,垂直型企業結合や混合型企業結合に比べ高い。これに対し,垂直型企業結合及び混合型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させないので,水平型企業結合に比べて競争に与える影響は大きくなく,一定の場合を除き,通常,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは考えられない。
 企業結合審査の対象となる企業結合が,水平型企業結合,垂直型企業結合,混合型企業結合のいずれに該当するかによって,当該企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かを判断する際の検討の枠組みや判断要素が異なる。

 

 

水平型企業結合

基本的考え方については以下のとおり。

 

▽企業結合ガイドライン(第4の1)

1 基本的考え方等
 前記のとおり,水平型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させるので,競争に与える影響が最も直接的であり,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合は,水平型企業結合に多い。
 水平型企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるのは,当事会社グループの単独行動による場合と,当事会社グループとその一又は複数の競争者(以下「競争者」という。)が協調的行動をとることによる場合とがあり,個々の事案においては,2つの観点から問題となるか否かが検討される。したがって,例えば,ある企業結合について,単独行動による競争の実質的制限の観点からは問題とならなくても,協調的行動による競争の実質的制限の観点からは問題となる場合がある。

 

垂直型企業結合

基本的考え方については以下のとおり。

 

▽企業結合ガイドライン(第5の1の(1))

(1) 基本的考え方
 前記第3の2のとおり,垂直型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させないので,水平型企業結合に比べて競争に与える影響は大きくなく,市場の閉鎖性・排他性,協調的行動等による競争の実質的制限の問題を生じない限り,通常,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは考えられない。垂直型企業結合についても,単独行動による競争の実質的制限協調的行動による競争の実質的制限の2つの観点から検討される。

 

混合型企業結合

基本的考え方については以下のとおり。

 

▽企業結合ガイドライン(第6の1の(1))

(1) 基本的考え方
 前記第3の2のとおり,混合型企業結合は,一定の取引分野における競争単位の数を減少させないので,水平型企業結合に比べて競争に与える影響は大きくなく,市場の閉鎖性・排他性,潜在的競争の消滅,協調的行動等による競争の実質的制限の問題を生じない限り,通常,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとは考えられない。混合型企業結合についても,単独行動による競争の実質的制限協調的行動による競争の実質的制限の2つの観点から検討される。

 

企業結合審査のフローチャート

企業結合ガイドラインに、判断方法の流れをフローチャートで示したものがある。

 

結び

企業結合規制については以上になります。

 

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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