独占禁止法

独占禁止法を勉強しよう|不公正な取引方法ー地位の不当利用

今回は、独占禁止法を勉強しようということで、不公正な取引方法のうち地位の不当利用(=優越的地位の濫用)について書いてみたいと思う。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

地位の不当利用

地位の不当利用(=優越的地位の濫用)には、法定類型告示類型がある。

 

法定類型(2条9項5号)には、①取引に関係ない商品・役務の購入(購入要請)、②金銭役務・経済上の利益提供(利益提供要請)、③取引条件の不利益変更、の3つがある。

 

告示類型(一般指定13項)は、④取引の相手方に対する不当干渉である。

 

   

法律(2条9項)

告示

優越的地位の濫用

①購入要請

5号イ

 

②利益提供要請

5号ロ

 

③取引条件の不利益変更

5号ハ

 

④取引の相手方に対する不当干渉

(6号ホ→)

一般指定13項

 

条文で見ると、以下のとおり。

 

▽法定類型(2条9項5号イ~ハ)

第二条
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務購入させること。
 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益提供させること。
 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

 

▽告示類型(6号ホ→一般指定13項)

六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
ホ 自己の取引上の地位不当に利用して相手方と取引すること。

(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。

 

主な法令等

優越的地位の濫用に関する主な法令等は、以下のとおり。

 

 

法令

告示

行政解釈

解説

優越的地位の濫用

独占禁止法等

一般指定
(「不公正な取引方法」)

優越的地位濫用ガイドライン
(「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」)

<特定の業種に関するもの>
➢「『大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法』の運用基準」
➢「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」
➢「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」

➢優越的地位濫用ガイドブック
(「優越的地位の濫用~知っておきたい取引ルール~」)

 

優越的地位の濫用に関しては、優越的地位濫用ガイドラインに解釈が細かく解説されている。

 

目次を表にすると、こんな感じ。目次を見るだけでも、だいたいの構造がわかる。

 

はじめに

   

第1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方

   

第2 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方

 

(1) 乙の甲に対する取引依存度

 

(2) 甲の市場における地位

 

(3) 乙にとっての取引先変更の可能性

 

(4) その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実

第3 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方

   

第4 優越的地位の濫用となる行為類型

1 独占禁止法第2条第9項第5号イ(購入・利用強制)

 

2 独占禁止法第2条第9項第5号ロ

(1) 協賛金等の負担の要請

(2) 従業員等の派遣の要請

(3) その他経済上の利益の提供の要請

3 独占禁止法第2条第9項第5号ハ

(1) 受領拒否

(2) 返品

(3) 支払遅延

(4) 減額

(5) その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等

 

 

行為要件

優越的地位の利用(5号柱書)

五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ~ハ (略)

 

「優越的地位の利用」の基本的な考え方としては、絶対的優越ではなく、相対的優越で足りるとされている。

 

▽優越的地位濫用ガイドライン(第2の1)

1 取引の一方の当事者(甲)が他方の当事者(乙)に対し,取引上の地位が優越しているというためには,市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位である必要はなく,取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りると解される。甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。

 

判断要素としては、①乙の甲に対する取引依存度、②甲の市場における地位、③乙にとっての取引先変更の可能性、④その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実、が挙げられており、これらを総合的に考慮して、優越的地位の利用が判断される。

 

各要素の簡潔な内容は、以下のとおり。

 

▽優越的地位濫用ガイドライン(第2の2の(1)~(4))

(1) 乙の甲に対する取引依存度
 乙の甲に対する取引依存度とは,一般に,乙が甲に商品又は役務を供給する取引の場合には,乙の甲に対する売上高を乙全体の売上高で除して算出される。

(2) 甲の市場における地位
 甲の市場における地位としては,甲の市場におけるシェアの大きさ,その順位等が考慮される。

(3) 乙にとっての取引先変更の可能性
 乙にとっての取引先変更の可能性としては,他の事業者との取引開始や取引拡大の可能性,甲との取引に関連して行った投資等が考慮される。

(4) その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実
 その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実としては,甲との取引の額,甲の今後の成長可能性,取引の対象となる商品又は役務を取り扱うことの重要性,甲と取引することによる乙の信用の確保,甲と乙の事業規模の相違等が考慮される。

 

購入要請(5号イ)

イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務購入させること。

 

「当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務」には、自己の指定する事業者が供給する商品又は役務も含まれる。

 

「購入させる」には、事実上、購入を余儀なくさせていると認められる場合も含まれる。つまり、実質的判断である。

 

判断基準は、以下のとおり。

 

▽優越的地位濫用ガイドライン(第4の1の(1)(2))

(1) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務の購入を要請する場合であって,当該取引の相手方が,それが事業遂行上必要としない商品若しくは役務であり,又はその購入を希望していないときであったとしても,今後の取引に与える影響を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。

(2) 他方,取引の相手方に対し,特定の仕様を指示して商品の製造又は役務の提供を発注する際に,当該商品若しくは役務の内容を均質にするため又はその改善を図るため必要があるなど合理的な必要性から,当該取引の相手方に対して当該商品の製造に必要な原材料や当該役務の提供に必要な設備を購入させる場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

 

 

利益提供要請(5号ロ)

ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

 

「経済上の利益」提供とは、協賛金、協力金等の名目のいかんを問わず行われる金銭の提供作業への労務の提供等をいう。

 

何を提供させようとするかによって、①協賛金等の負担の要請(=”お金を出せ”)、②従業員等の派遣の要請(=”人(労力)を出せ”)、③その他経済上の利益の提供の要請の3つに分けて解説されている。

 

判断基準は、以下のとおり。

 

▽優越的地位濫用ガイドライン(第4の2の(1)~(3))

(1) 協賛金等の負担の要請
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,協賛金等の名目による金銭の負担を要請する場合であって,当該協賛金等の負担額及びその算出根拠,使途等について,当該取引の相手方との間で明確になっておらず,当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や,当該取引の相手方が得る直接の利益(注9)等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり,当該取引の相手方に不利益を与えることとなる場合(注10)には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。

イ 事業者が,催事,広告等を行うに当たり,取引の相手方に対し,その費用の一部として協賛金等の負担を要請することがある。このような要請は,流通業者によって行われることが多いが,流通業者が商品の納入業者に協賛金等の負担を要請する場合には,当該費用を負担することが納入商品の販売促進につながるなど当該納入業者にとっても直接の利益となることがある。協賛金等が,それを負担することによって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして,取引の相手方の自由な意思により提供される場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

(2) 従業員等の派遣の要請 
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,従業員等(注11)の派遣を要請する場合であって,どのような場合に,どのような条件で従業員等を派遣するかについて,当該取引の相手方との間で明確になっておらず,当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や,従業員等の派遣を通じて当該取引の相手方が得る直接の利益(注12)等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり,当該取引の相手方に不利益を与えることとなる場合(注13)には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。取引の相手方に対し,従業員等の派遣に代えて,これに相当する人件費を負担させる場合も,これと同様である。

イ メーカーや卸売業者が百貨店,スーパー等の小売業者からの要請を受け,自己が製造した商品又は自己が納入した商品の販売等のためにその従業員等を派遣する場合がある。こうした従業員等の派遣は,メーカーや卸売業者にとって消費者ニーズの動向を直接把握できる,小売業者にとって専門的な商品知識の不足が補われる等の利点を有している場合がある。従業員等の派遣が,それによって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして,取引の相手方の自由な意思により行われる場合 には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。また,従業員等の派遣の条件についてあらかじめ当該取引の相手方と合意(注14)し,かつ,派遣のために通常必要な費用を自己が負担する場合も,これと同様である。 

(3) その他経済上の利益の提供の要請
ア 協賛金等の負担の要請や従業員等の派遣の要請以外であっても,取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,取引の相手方に対し,発注内容に含まれていない,金型(木型その他金型に類するものを含む。以下同じ。)等の設計図面,特許権等の知的財産権,従業員等の派遣以外の役務提供その他経済上の利益の無償提供を要請する場合であって,当該取引の相手方が今後の取引に与える影響を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注 15)。 

イ 一方,前記アに列記した経済上の利益が無償で提供される場合であっても,当該経済上の利益が,ある商品の販売に付随して当然に提供されるものであって,当該商品の価格にそもそも反映されているようなときは,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

 

 

取引条件の不利益変更(5号ハ)

ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じその他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

 

ガイドラインでは、①受領拒否、②返品、③支払遅延、④減額、⑤その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等の5つに分けて解説されている。

 

判断基準は、以下のとおり。

 

▽優越的地位濫用ガイドライン(第4の3の(1)~(5))

(1) 受領拒否
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方から商品を購入する契約をした後において,正当な理由がないのに,当該商品の全部又は一部の受領を拒む場合(注16)であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注17)。

イ 他方,①当該取引の相手方から購入した商品に瑕疵がある場合,注文した商品と異なる商品が納入された場合,納期に間に合わなかったために販売目的が達成できなかった場合等,当該取引の相手方側の責めに帰すべき事由がある場合,②商品の購入に当たって当該取引の相手方との合意により受領しない場合の条件を定め,その条件に従って受領しない場合(注18),③あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て(注19),かつ,商品の受領を拒むことによって当該取引の相手方に通常生ずべき損失(注20)を負担する場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

(2) 返品
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,当該取引 の相手方から受領した商品を返品する場合であって,どのような場合に,どのような条件で返品するかについて,当該取引の相手方との間で明確になっておらず,当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合,その他正当な理由がないのに,当該取引の相手方から受領した商品を返品する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。

イ 他方,①当該取引の相手方から購入した商品に瑕疵がある場合,注文した商品と異なる商品が納入された場合,納期に間に合わなかったために販売目的が達成できなかった場合等,当該取引の相手方側の責めに帰すべき事由により,当該商品を受領した日から相当の期間内に,当該事由を勘案して相当と認められる数量の範囲内(注21)で返品する場合,②商品の購入に当たって当該取引の相手方との合意により返品の条件を定め,その条件に従って返品する場合(注22),③あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て,かつ,商品の返品によって当該取引の相手方に通常生ずべき損失を自己が負担する場合,④当該取引の相手方から商品の返品を受けたい旨の申出があり,かつ,当該取引の相手方が当該商品を処分することが当該取引の相手方の直接の利益(注23)となる場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

(3) 支払遅延
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,契約で定めた支払期日に対価を支払わない場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。 また,契約で定めた支払期日より遅れて対価を支払う場合だけでなく,取引上の地位が優越している事業者が,一方的に対価の支払期日を遅く設定する場合や,支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも,当該取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなりやすく,優越的地位の濫用として問題となりやすい。

イ 他方,あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て,かつ,対価の支払の遅延によって当該取引の相手方に通常生ずべき損失を自己が負担する場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

(4) 減額
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,商品又は役務を購入した後にお いて,正当な理由がないのに,契約で定めた対価を減額する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。 契約で定めた対価を変更することなく,商品又は役務の仕様を変更するなど対価を実質的に減額する場合も,これと同様である。

イ 他方,①当該取引の相手方から購入した商品又は提供された役務に瑕疵がある場合,注文内容と異なる商品が納入され又は役務が提供された場合,納期に間に合わなかったために販売目的が達成できなかった場合等,当該取引の相手方側の責めに帰すべき事由により,当該商品が納入され又は当該役務が提供された日から相当の期間内に,当該事由を勘案して相当と認められる金額の範囲内(注24)で対価を減額する場合,②対価を減額するための要請が対価に係る交渉の一環として行われ,その額が需給関係を反映したものであると認められる場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず,優越的地位の濫用の問題とはならない。

(5) その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等
 前記第4の1,第4の2及び第4の3(1)から(4)までの行為類型に該当しない場合であっても,取引上の地位が優越している事業者が,取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する場合には,優越的地位の濫用として問題となる。

 

その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等としては、取引の対価の一方的決定やり直しの要請その他当該取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることなどが挙げられている(優越的地位濫用ガイドライン)。

 

 

不当干渉(一般指定13項)

(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。

 

告示類型は、取引行為ではない点で法定類型とは異質であるが、優越的地位を利用して相手会社の役員選任について不当干渉することを禁じるものである。

 

効果要件(公正競争阻害性)

取引上の地位が優越していること自体は、取引の実態として現実にあり得ることであり、それ自体を違法とするものではない。

 

そこで、「正常な商慣習に照らして不当に」との文言が使われている。

 

ただ、優越的地位の「濫」用と呼ばれるとおり、優越的地位の濫用という行為類型においては、行為要件自体が優越的地位を利用して不合理な行為を受け入れさせているものといえるので(=行為要件自体が不当性を含んでいる)、行為要件に該当すれば、通常は公正競争阻害性についても推認されるといえる。

 

言い換えると、濫用(=地位の相対的優越を利用して不合理を受け入れさせる)の判断と、公正競争阻害性の判断は、重なる部分が多いということである。

 

 

下請法の規制

優越的地位の濫用については、これらの行為をより迅速かつ効果的に規制しようとする別の法律として、下請法(「下請代金支払遅延等防止法」)がある。

 

下請法は、独占禁止法の補完法とか補助立法といわれていて、どういうところが”より迅速かつ効果的な規制”なのかというと、

〇資本金に一定以上の差がある親事業者をいわば定型的に「優越的地位」にあるとみて、
〇かつ、濫用が行われがちな取引類型を括り出して適用対象にし、
〇書面の交付義務など、親事業者のより細やかな義務や禁止行為を規定した、

という感じである(管理人の理解)。

 

独占禁止法の補完法であることについて、下請法の講習会テキストに、以下のようなわかりやすい解説がある。

 

▽講習会テキスト(1の(1))

1 下請代金支払遅延等防止法の内容
(1) 本法制定の趣旨
 下請取引における下請代金の支払遅延等の行為は,独占禁止法の不公正な取引方法のうち優越的地位の濫用行為に該当し,同法第19 条の規定に違反するおそれがある行為であるが,同法により規制する場合は,当該行為が「取引上優越した地位を利用したものかどうか」,「不当に不利益なものかどうか」を個別に認定する必要がある。この認定には,相当の期間を要し問題解決の時機を逸するおそれがある上,親事業者と下請事業者との継続的取引関係をむしろ悪化させる要因となる場合もあり,結果として下請事業者の利益にならないことも考えられる。
 また,下請取引の性格上,下請事業者が親事業者の違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に申告することは,余り期待できない
 したがって,下請事業者の利益を確保するためには,独占禁止法の違反事件処理手続とは別の簡易な手続が必要であるとの考えから,下請代金支払遅延等防止法(以下「本法」という。)が,昭和 31 年に独占禁止法の補完法として制定された。
 すなわち,本法は,適用対象を明確にし,違反行為の類型を具体的に法定するとともに,独占禁止法に比較して簡易な手続を規定し,迅速かつ効果的に下請事業者の保護を図ろうとするものである。

 

下請法の規制の内容については、以下の別記事のとおり。

 

▽(参考記事)下請法を勉強しよう|規制の仕組み

下請法を勉強しよう|規制の仕組み【全体像】

続きを見る

 

 

結び

不公正な取引方法のうち、優越的地位の濫用については以上になります。

 

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独占禁止法を勉強しよう|不公正な取引方法ー取引妨害・内部干渉

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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