下請法

下請法を勉強しよう|違反行為に対する措置等

今回は、下請法を勉強しようということで、下請法の違反行為に対する措置等について書いてみたいと思う。

 

まず、違反行為がないかどうかの調査、次に、違反行為に対する措置、最後に、違反行為や調査忌避に対する罰則である。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

調査(報告徴収、立入検査)

調査の方法

調査の方法としては、報告徴収立入検査が下請法に規定されているが(9条)、実際は、任意の書類提出任意の実地調査がある。

 

任意の書類提出は、実務上最も多く行われているもので、事業者から任意に書類等の写しの提出を受けて調査する。要するに書類調査である。これは下請法に基づく調査権限を発動したものではない。任意の実地調査も同様である。

 

報告徴収は、下請法に基づく調査権限を発動するもので(9条)、つまり報告命令である。報告の懈怠や虚偽の報告は、下請法により刑罰の対象となる(11条。後述)。

 

立入検査も、下請法に基づく調査権限を発動するもので(9条)、事業者の事務所・事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査することである。これも、立入検査の拒否、妨害や忌避は、下請法により刑罰の対象となる(11条。後述)。

 

行政機関の調査権限

報告徴収と立入検査の要件は、行政機関ごとに若干違っており、以下のとおりである。

〇公正取引委員会
→取引を公正ならしめるため必要があると認めるとき

〇中小企業庁長官
→下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認めるとき

〇各事業の主務大臣(例:運送なら国土交通省、テレビ放送なら総務省)
→中小企業庁長官の6条の規定による調査に協力するため特に必要があると認めるとき

 

(報告及び検査)
第九条 公正取引委員会は、親事業者の下請事業者に対する製造委託等に関する取引(以下単に「取引」という。)を公正ならしめるため必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 中小企業庁長官は下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 親事業者又は下請事業者の営む事業を所管する主務大臣は中小企業庁長官の第六条の規定による調査に協力するため特に必要があると認めるときは、所管事業を営む親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員にこれらの者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

 

適正手続

適正手続の確保に関する規定は、以下のとおり。

 

(報告及び検査)
第九条
4 前三項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書携帯し、関係人に提示しなければならない。
5 第一項から第三項までの規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない

 

 

違反行為に対する措置(勧告、公表等)

違反行為に対する措置としては、勧告公表指導(行政指導)がある。

 

勧告、公表

勧告については、以下のとおり定められている。

 

4条1項と2項は、親事業者に課せられる11の禁止事項であり、本条はその違反についての勧告を定めている。

 

(勧告)
第七条 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第一号第二号又は第七号に掲げる行為をしていると認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその下請事業者の給付を受領しその下請代金若しくはその下請代金及び第四条の二の規定による遅延利息を支払い、又はその不利益な取扱いをやめるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。
2 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第三号から第六号までに掲げる行為をしたと認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその減じた額を支払いその下請事業者の給付に係る物を再び引き取りその下請代金の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。
3 公正取引委員会は、親事業者について第四条第二項各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその下請事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。

 

公表に関しては、規定はない。平成15年改正以前は、「公正取引委員会は、前3項の規定による勧告をした場合において親事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表するものとする。」(改正前・下請法7条4項)との規定があったが、これが削除され、勧告の時点で必要に応じ公表できるよう改正された。

 

その結果、勧告した場合には、原則として親事業者名を含む事件の概要が公表されている

 

▽下請法勧告一覧|公正取引委員会HP
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukekankoku/index.html

 

つまり、勧告を受ける側から見たとき、勧告を受けることのインパクトというのは、勧告を受けた事実が公表されることである、といえる。

 

▽講習会テキスト(1の(6)のイ)

 公正取引委員会は,違反親事業者に対して違反行為の是正やその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。勧告した場合は原則として事業者名,違反事実の概要,勧告の概要等を公表することとしている。

 

独占禁止法上の措置との関係

勧告に従った場合

親事業者が勧告に従った場合には、違反行為について独占禁止法上の措置がとられないという法的効果が生じる(8条)。

 

(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律との関係)
第八条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二十条及び第二十条の六の規定は、公正取引委員会が前条第一項から第三項までの規定による勧告をした場合において、親事業者がその勧告に従つたときに限り、親事業者のその勧告に係る行為については、適用しない。

 

勧告に従わなかった場合

親事業者が勧告に従わなかった場合でも、下請法上、罰則や過料等の規定はない

 

ではどうするのか?というと、下請法違反の行為は、優越的地位の濫用として独占禁止法上の不公正な取引方法に該当し得ることから、独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が行われることがある。

 

▽講習会テキスト(1の(6)のイ)

 親事業者が公正取引委員会の勧告に従わない場合には,独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が行われることがある。

 

つまり、勧告・公表についてまとめると、以下のような感じ。

勧告される=公表される
 ∟勧告に従う
  →独禁法上の措置はとられない
 ∟勧告に従わない
  →独禁法上の措置がとられる可能性がある

 

指導(行政指導)

勧告は法律上の措置であるが、原則として公表を伴う運用であるし、勧告に従ったときには独占禁止法上の措置はとれないという法的効果が生じるものであり、それなりに慎重に調査・事実認定を行う必要がある。

 

しかし、実際には様々な違反被疑事件があることから、多数の事件は指導で処理されている(=すべての違反被疑事件について勧告で処理するのは現実的でない)。

 

つまり、勧告に至らない程度のものは、指導(行政指導)で処理されている。

 

 

罰則(50万円以下の罰金)

罰則は両罰規定であり、以下のような場合は、代表者・行為者(担当者)個人が罰せられるほか、会社(法人)も罰せられることになる(50 万円以下の罰金)。

① 3条書面の交付義務違反
② 5条書類の作成及び保存義務違反
③ 報告徴収に対する報告拒否、虚偽報告
④ 立入検査の拒否、妨害、忌避

 

(罰則)
第十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定による書面を交付しなかつたとき。
二 第五条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。

第十一条 第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

 

 

結び

下請法の違反行為に対する措置等については以上になります。

 

下請法の勉強記事は、本記事で終了です。

 

▽前の記事

下請法を勉強しよう|親事業者の禁止行為ー4条2項のグループ

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なお、下請法に関する記事は、以下のページにまとめています。

下請法 - 法律ファンライフ
下請法 - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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