独占禁止法

独占禁止法を勉強しよう|不公正な取引方法ー差別的取扱い

今回は、独占禁止法を勉強しようということで、不公正な取引方法のうち、「差別的取扱い」といわれるものについて、書いてみたいと思う。

 

「差別的取扱い」といわれる行為類型は、

〇共同の取引拒絶
〇単独の取引拒絶
〇差別対価
〇(対価以外の)差別的取扱い
〇事業者団体による差別的取扱い

という感じである。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

 

共同の取引拒絶

行為要件

共同の取引拒絶には、法定類型と告示類型の両方がある。

 

ざっくりいえば、自己と競争関係にある他の事業者(「競争者」)と共同して、供給すること又は供給を受けることを拒絶するものである。

 

法定類型は、「供給すること」の拒絶であり、告示類型は、「供給を受けること」の拒絶になっている。それぞれに、直接の取引拒絶と、間接の取引拒絶がある。

 

大きくいうと、こういう感じ。

 

共同の取引拒絶

 ∟供給することの拒絶(法定類型)

   ∟直接の取引拒絶

   ∟間接の取引拒絶

 ∟供給を受けることの拒絶(告示類型)

   ∟直接の取引拒絶

   ∟間接の取引拒絶

 

続けて、条文を引きながら、行為要件を眺めてみる。

 

▽法定類型(法2条9項1号)

9 
一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

 

イが直接の取引制限、ロが間接の取引制限である。

 

間接の取引制限というのは何が間接なのかというと、間にもう一事業者入っているということである。つまり、通常は”卸業者”をイメージすればよく、メーカーが卸業者に対して、小売業者への供給を拒絶させる、ということだと思えばいいと思う(ひとまずは)。

 

▽告示類型(一般指定1項)

(共同の取引拒絶)

1 正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

一 ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

二 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

 

1号が直接の取引制限、2号が間接の取引制限である。法定類型と異なり、「供給を受けること」の拒絶になっている(下線部分)。

 

 

行為要件の解説

「共同して」とは、取引拒絶について、競争者間に了解又は共通の意思が形成されることをいう。

 

「競争者」とは、法には定義がないが、上記のように告示に定めがあり、自己と競争関係にある他の事業者のことをいう。

 

 

効果要件(公正競争阻害性)

では、これらの行為のどこに公正競争阻害性があるのか?

 

それは、競争者が共同して特定の事業者を市場から排除しようとする点である。共同の取引拒絶は、「共同ボイコット」「集団ボイコット」ともいわれ、拒絶された者は、ほかに取引の相手方を見つけることができなくなってしまい、市場から排除されるおそれがある。

 

行為自体が類型的に公正競争阻害性を有するといえるため、行為要件に該当することが認定されれば、原則として公正競争阻害性があるといえる。

 

ゆえに、「正当な理由がないのに」との文言が使用されている。

 

 

単独の取引拒絶

行為要件

単独の取引拒絶は、告示類型である。

 

▽告示類型(一般指定2項)

(その他の取引拒絶)

2 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

 

共同の取引拒絶と違うのは、主に以下の2点である。

 

①「共同して」という文言がないので、単独でなされる(見出しからして当然だが汗)。

 

②それから、一見するとわからないが、共同の取引拒絶で「共同」するのは、「競争者」(=自己と競争関係にある他の事業者)に限られているので、競争関係にない事業者(たとえば取引先の事業者)と共同して取引拒絶する場合も、この2項にあたる。

 

その意味では、「単独の取引拒絶」というよりは、「その他の取引拒絶」とネーミングしておいた方がいいかもしれない(頭の中では)。

 

 

効果要件(公正競争阻害性)

では、この行為のどこに公正競争阻害性があるのか?

 

「共同して」の取引拒絶ではないので、拒絶された者は、探せば他にも取引先を探すことができる。また、拒絶する方も、単独で拒絶する分には、基本的には契約の自由(相手方選択の自由)の範疇であるはずである。

 

なので、行為自体は中立的であり、通常の取引行為として適法に行われることもあるものといえる。行為要件に該当するというだけでは、公正競争阻害性があるとはいえないため、別途、公正競争阻害性があることが認定される必要がある。

 

ゆえに、「不当に」との文言が使用されている。

 

 

差別対価

行為要件

差別対価には、法定類型と告示類型がある。

 

▽法定類型(法2条9項2号)

9 

二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

 

▽告示類型(一般指定3項)

(差別対価)

3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「法」という。)第二条第九項第二号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。

 

法定類型と告示類型とでどこが違っているのか?というと、主に以下の2点である。

 

①法定類型では、「継続して」と「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」という要件が入っている。これは、法定類型は課徴金の対象となるところ、要件を加重したものといえる。

 

②告示類型では、「供給を受けること」も入っている点。つまり、告示類型では、買い手側(需要者側)による差別対価も行為類型に入っている。

 

たとえば、広範囲で影響力をもつ買い手(需要者)が、新規の買い手側参入者が現れた地域だけ、他の地域より買値を高くして、当該新規参入を阻もうとするような感じ。

 

 

行為要件の解説

文言にもあるように、差別対価の類型には、地域又は相手方による差別がある。

 

①地域による差別対価

同一の商品・役務について、地域によって異なる対価を設定すること。

 

②相手方による差別対価

同一の商品・役務について、複数の取引先がある場合に、そのうちの特定の者との取引のみ異なる対価を設定すること。

 

 

効果要件(公正競争阻害性)

では、これら行為のどこに公正競争阻害性があるのか?

 

たとえば、地域的な”差別”でいえば、地域によって市場価格が異なる場合はあるので、それぞれの市場価格に対応する価格に調整することはありうる。また、相手方による”差別”でいえば、大量に購入してくれる得意先には値引きするとか、系列店には安い価格で供給するなど、異なる価格をつけることはありうる。

 

このように、行為自体は中立的であり、通常の取引行為として適法に行われることもあるものといえる。行為要件に該当するというだけでは、公正競争阻害性があるとはいえないため、別途、公正競争阻害性があることが認定される必要がある。

 

ゆえに、「不当に」との文言が使用されている。

 

 

差別的取扱い

差別的取扱いは、告示類型である。

 

「対価」の差別については、上記のとおり「差別対価」で扱われているので、対価を除く取引条件における差別的取扱いのことをいう。

 

▽告示類型(一般指定4項)

(取引条件等の差別取扱い)

4 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。

 

「取引の条件」とは、たとえば、代金決済方法とか、取引保証金、割戻金(リベート)の一部等のこと。これらについて実質的に異なる取引条件にすることをいう。

 

公正競争阻害性については、差別対価と同様に考えることができる。

 

参考

 リベートとは、支払代金の一部を買い手に払戻すこと(割戻し)をいう。

 大まかにいうと、値引きと見られるものは「差別対価」、それ以外のものは「差別的取扱い」の問題、という振り分けになる。つまり、商品1単位当たりの対価に還元できるかどうかである。

① 数量リベート

 取引の数量に対応して支払われるリベート。単位当たりに支払われる金額が同じなので、値引きと見ることができる。

② 累進的リベート

 数量リベートの一種であるが、取引の数量が増えれば、より大きなリベートを供与するもの。単位当たりに支払われる金額が違ってくるので、値引きと見ることはできない。

③ 占有率リベート

 当該商品に関する取引量の全体に占める自社商品の割合が増えれば、より大きなリベートを供与するというもの。単位当たりに支払われる金額が違ってくるので、値引きと見ることはできない。

④ バックマージン

 販売した商品の価格を一定期間後に値下げし、その差額を販売先に返却すること。

 

 

事業者団体における差別的取扱い等

事業者団体における差別的取扱い等は、告示類型である。

 

▽告示類型(一般指定5項)

(事業者団体における差別取扱い等)

5 事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。

 

「事業者団体」は、法2条2項で定義されている。

第二条 

2 この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。

一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団

二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団

三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

 

たとえば、農業協同組合などの協同組合とか、税理士会や弁護士会などの資格を有する者で構成される団体などがある。

 

ちなみに、事業者団体に関する独禁法の規制には、以下の8条があるが、この一般指定5項は、事業者団体が事業者として活動している場合の問題である。

第八条 事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。

一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。

二 第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。

三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。

四 構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。

五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。

 

 

結び

不公正な取引方法のうち、「差別的取扱い」といわれるものについては以上になります。

 

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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