独占禁止法

独占禁止法を勉強しよう|不公正な取引方法ー不当拘束

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今回は、独占禁止法を勉強しようということで、不公正な取引方法のうち不当拘束について書いてみたいと思う。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線は管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務道場」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

不当拘束

不当拘束は、独禁法2条9項6号ニに代表されるグループである。

 

六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

 

不当拘束には、①再販売価格維持行為(法2条9項4号イ・ロ)、②排他条件付取引(一般指定11項)、③拘束条件付取引(一般指定12項)の3つがある。

 

   

法律

告示

不当拘束

①再販売価格維持行為

法2条9項4号イ・ロ

②排他条件付取引

法2条9項6号ニ→

一般指定11項

③拘束条件付取引

同上→

一般指定12項

 

売り手が、「買い手の再販売価格」を拘束するのが、①再販売価格維持行為。

 

売り手若しくは買い手又はその双方が、「取引の相手方」を拘束するのが②排他的条件付取引、③「それ以外の取引条件」を拘束するのが拘束条件付取引、である。

 

 

主な法令等

不当拘束に関する主な法令等を表にすると、以下のとおり。

 

類型

法令

告示

行政解釈

不当拘束

独占禁止法等

一般指定
(「不公正な取引方法」S57告15)

流通・取引慣行ガイドライン
(「流通・取引慣行に関する独占禁止法の指針」)

 

不当拘束に関しては、流通・取引慣行ガイドラインに解釈が細かく解説されている。

 

第1部「取引先事業者の事業活動に対する制限」が、概ね、不当拘束に対応する(※あくまでも「概ね」)。第1部の目次を表にすると、こんな感じ。

 

第1部 取引先事業者の事業活動に対する制限

管理人の理解・コメント

(総論)

1 対象範囲

 

2 垂直的制限行為が競争に及ぼす影響についての基本的な考え方

不当拘束全般における公正競争阻害性についての解釈

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準

第1 再販売価格維持行為

1 考え方

再販売価格維持行為の解釈

2 再販売価格の拘束

3 流通調査

第2 非価格制限行為

1 考え方

 

2 自己の競争者との取引等の制限

排他条件付取引の解釈

3 販売地域に関する制限

拘束条件付取引の解釈

4 流通業者の取引先に関する制限

5 選択的流通

6 小売業者の販売方法に関する制限

7 抱き合わせ販売

 

第3 リベートの供与

1 考え方

リベートが排他条件付取引、拘束条件付取引等に抵触するケースについて

2 独占禁止法上問題となる場合

 

ガイドラインでは、”垂直的制限行為には、再販売価格維持行為と、取引先事業者の取扱商品、販売地域、取引先等の制限を行う行為(「非価格制限行為」)がある”とされ、「再販売価格維持行為」「非価格制限行為」という分け方がされている。

 

ちなみに、競争関係にある事業者間の取引制限のことを水平的取引制限(価格カルテルや共同の取引拒絶など)といい、取引関係にある事業者間の取引制限のことを垂直的取引制限(再販売価格維持行為、排他条件付取引、拘束条件付取引、抱き合わせ販売など)という。

 

 

再販売価格維持行為

規制内容・類型

再販売価格維持行為は、法定類型である。

 

▽法定類型(法2条9項4号イ・ロ)


四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

 

イは直接の再販売価格維持行為、ロは間接の再販売価格維持行為、といわれる。

 

例えば、「直接」というのは、メーカーが小売業者の販売価格を定めてその価格で販売するよう拘束するような場合、「間接」というのは、卸業者をして小売業者に対しそのように拘束させるような場合、である。

 

再販売価格維持行為

直接の再販売価格維持行為

法2条9項4号イ

間接の再販売価格維持行為

法2条9項4号ロ

 

指定した価格で販売しない小売業者等に経済上の不利益を課したり、出荷を停止したりするなどして小売業者等に自社の商品を指定した価格で販売させることは、最も重要な競争手段といえる価格を拘束するため、原則として違法となる。

 

希望小売価格を参考価格として示したり、流通調査を行うといったことは問題ないが、拘束性がある場合は違法となる。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第1の1、3)

第1 再販売価格維持行為
1 考え方
(1) 事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定することは、事業者の事業活動において最も基本的な事項であり、かつ、これによって事業者間の競争と消費者の選択が確保される。
 事業者がマーケティングの一環として、又は流通業者の要請を受けて、流通業者の販売価格を拘束する場合には、流通業者間の価格競争を減少・消滅させることになることから、このような行為は原則として不公正な取引方法として違法となる。
(2) 事業者が設定する希望小売価格や建値は、流通業者に対し単なる参考として示されているものである限りは、それ自体は問題となるものではない。しかし、参考価格として単に通知するだけにとどまらず、その価格を守らせるなど、事業者が流通業者の販売価格を拘束する場合には、上記(1)の行為に該当し、原則として違法となる(注4)
(注4) 事業者が希望小売価格等を設定する場合においては、再販売価格を拘束すること(再販売価格の拘束に当たるかどうかについては、下記2において述べる考え方に基づき判断される。)にならなければ、通常問題となるものではない。
 なお、希望小売価格等を流通業者に通知する場合には、「正価」、「定価」といった表示や金額のみの表示ではなく、「参考価格」、「メーカー希望小売価格」といった非拘束的な用語を用いるとともに、通知文書等において、希望小売価格等はあくまでも参考であること、流通業者の販売価格はそれぞれの流通業者が自主的に決めるべきものであることを明示することが、独占禁止法違反行為の未然防止の観点から望ましい。

3 流通調査
 事業者が単に自社の商品を取り扱う流通業者の実際の販売価格、販売先等の調査(「流通調査」)を行うことは、当該事業者の示した価格で販売しない場合に当該流通業者に対して出荷停止等の経済上の不利益を課す、又は課す旨を通知・示唆する等の流通業者の販売価格に関する制限を伴うものでない限り、通常、問題とはならない。

 

 

行為要件

直接の再販売価格維持行為

「相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束する」ことである。

 

「拘束」というのは、契約等による制限だけではなく、何らかの手段により制限の実効性が確保されているかどうか、で判断される。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第1の2の(3)~(5))

2 再販売価格の拘束
(3) 再販売価格の拘束の有無は、事業者の何らかの人為的手段によって、流通業者が当該事業者の示した価格で販売することについての実効性が確保されていると認められるかどうかで判断される。
 次のような場合には、「流通業者が事業者の示した価格で販売することについての実効性が確保されている」と判断される。
① 例えば次のように、文書によるか口頭によるかを問わず、事業者と流通業者との間の合意によって、当該事業者の示した価格で販売するようにさせている場合
a 事業者の示した価格で販売することが文書又は口頭による契約において定められている場合
b 事業者の示した価格で販売することについて流通業者に同意書を提出させる場合
c 事業者の示した価格で販売することを取引の条件として提示し、条件を受諾した流通業者とのみ取引する場合
d 事業者の示した価格で販売し、売れ残った商品は値引き販売せず、当該事業者が買い戻すことを取引の条件とする場合
(具体例)(略)
② 例えば次のように、事業者の示した価格で販売しない場合に経済上の不利益を課し、又は課すことを示唆する等、何らかの人為的手段を用いることによって、当該価格で販売するようにさせている場合
a 事業者の示した価格で販売しない場合に出荷停止等の経済上の不利益(出荷量の削減、出荷価格の引上げ、リベートの削減、他の製品の供給拒絶等を含む。以下同じ。)を課す場合、又は課す旨を流通業者に対し通知・示唆する場合
b 事業者の示した価格で販売する場合にリベート等の経済上の利益(出荷価格の引下げ、他の製品の供給等を含む。以下同じ。)を供与する場合、又は供与する旨を流通業者に対し通知・示唆する場合
c 事業者の示した価格で販売しているかどうかを調べるため、販売価格の報告徴収、店頭でのパトロール、派遣店員による価格監視、帳簿等の書類閲覧等の行為を行うことによって事業者の示した価格で販売するようにさせている場合
d 商品に秘密番号を付すなどによって、安売りを行っている流通業者への流通ルートを突き止め、当該流通業者に販売した流通業者に対し、安売り業者に販売しないように要請することによって事業者の示した価格で販売するようにさせている場合
e 安売りを行っている流通業者の商品を買い上げ、当該商品を当該流通業者又はその仕入先である流通業者に対して買い取らせ、又は買上げ費用を請求することによって事業者の示した価格で販売するようにさせている場合
f 安売りを行っている流通業者に対し、安売りについてのその他の流通業者の苦情を取り次ぎ、安売りを行わないように要請することによって事業者の示した価格で販売するようにさせている場合
(4)(略)
(5) 上記(3)において、事業者が流通業者に対し示す価格には、確定した価格のほか、例えば次のような価格も含まれる。
a 希望小売価格の○%引き以内の価格
b 一定の範囲内の価格(□円以上△円以下)
c 事業者の事前の承認を得た価格
d 近隣店の価格を下回らない価格
e 一定の価格を下回って販売した場合には警告を行うなどにより、事業者が流通業者に対し暗に下限として示す価格

 

価格の指示があっても、行為要件に該当しない場合は、以下のとおり。直接の取引先事業者が単なる取次ぎであるような場合などである。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第1の2の(7))

2 再販売価格の拘束
(7) なお、次のような場合であって、事業者の直接の取引先事業者が単なる取次ぎとして機能しており、実質的にみて当該事業者が販売していると認められる場合には、当該事業者が当該取引先事業者に対して価格を指示しても、通常、違法とはならない。
① 委託販売の場合であって、受託者は、受託商品の保管、代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど、当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合
② メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し、納入価格が決定される取引において、卸売業者に対し、その価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合であって、当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い、その履行に対する手数料分を受け取ることとなっている場合など、実質的にみて当該メーカーが販売していると認められる場合
(具体例)(略)

 

 

間接の再販売価格維持行為

「相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させる」ことである。

 

行為要件の考え方は、直接の再販売価格拘束行為の場合と同じである。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第1の2の(6))

2 再販売価格の拘束
(6) 上記(3)、(4)及び(5)の考え方は、事業者が直接の取引先事業者に(例えばメーカーが卸売業者に)対して行う場合のみならず、事業者が間接の取引先事業者に(例えばメーカーが小売業者や二次卸等に)対し、直接の取引先事業者を通じて、あるいは自ら直接に、その販売価格を拘束する場合にも当てはまる(独占禁止法第2条第9項第4号、一般指定2項又は4項)。

 

 

効果要件(公正競争阻害性)

正当な理由がないのに

再販売価格維持行為は、最も重要な競争手段といえる価格を拘束するもので、行為自体が類型的に公正競争阻害性を有するものといえる。

 

ゆえに、行為要件に該当すれば原則として公正競争阻害性があるといえるので、「正当な理由がないのに」との文言が使用されている。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第1の2の(1))

2 再販売価格の拘束
(1) 事業者が流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束))(注5)。すなわち、再販売価格の拘束は、流通業者間の価格競争を減少・消滅させることになることから、通常、競争阻害効果が大きく、原則として公正な競争を阻害するおそれのある行為である。このため、独占禁止法においては、事業者が、流通業者に対して、「正当な理由」がないのに再販売価格の拘束を行うことは、不公正な取引方法として違法となると規定されている。換言すれば、再販売価格の拘束が行われる場合であっても、「正当な理由」がある場合には例外的に違法とはならない。
(注5) 役務の提供価格を拘束する場合には、一般指定12項(拘束条件付取引)に該当する。基本的な考え方は独占禁止法第2条第9項第4号に該当する場合と同様である。

 

なので、違法性を争う側で、「正当な理由」を主張する必要がある。つまり、競争促進効果である。

 

(↓上記の続き)
(2) 「正当な理由」は、事業者による自社商品の再販売価格の拘束によって実際に競争促進効果が生じてブランド間競争が促進され、それによって当該商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られ、当該競争促進効果が、再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである場合において、必要な範囲及び必要な期間に限り、認められる。
 例えば、事業者が再販売価格の拘束を行った場合に、当該再販売価格の拘束によって前記第1部の3(3)アに示されるような、いわゆる「フリーライダー問題」の解消等を通じ、実際に競争促進効果が生じてブランド間競争が促進され、それによって当該商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られ、当該競争促進効果が、当該再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものである場合には、「正当な理由」があると認められる。

 

上記ではフリーライド問題が抜粋されているが、ガイドラインで示されている競争促進効果の全体像は以下のとおり(なお、他の不当拘束の類型の話も一緒に書かれていることに留意)。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
(3) 垂直的制限行為によって生じ得る競争促進効果
 垂直的制限行為によって、新商品の販売が促進される新規参入が容易になる品質やサービスが向上するなどの場合には、競争促進的な効果が認められ得る。この典型例としては、次のような場合がある。

ア 流通業者は、他の流通業者がある事業者の商品について販売前に実施する販売促進活動によって需要が喚起されている場合、自ら販売促進活動を行うことなく当該商品を販売することができる。このような場合に、いずれの流通業者も、自ら費用をかけて積極的な販売促進活動を行わなくなり、本来であれば当該商品を購入したであろう消費者が購入しない状況に至ることがあり得る。このような状態は、「フリーライダー問題」と称されている。フリーライダー問題が起きやすい条件の一つは、消費者の商品に対する情報が限られていることである。例えば、新商品や消費者からみて使用方法等が技術的に複雑な商品では、消費者の持つ情報は不足し、需要を喚起するためには、流通業者による当該商品についての情報提供や販売促進活動が十分に行われる必要がある。さらに、消費者が、販売促進活動を実施する流通業者から対象商品を購入せずに、販売促進活動を実施していない他の流通業者から購入することによる購入費用節約の効果が大きいことも必要である。この効果は、通常、当該商品が相当程度高額である場合に大きくなる。このような条件が満たされ、フリーライダー問題が現実に起こるために、購入に必要な情報が消費者に十分提供されなくなる結果、商品の供給が十分になされなくなるような高度の蓋然性があるときに、当該事業者が、一定の地域を一流通業者のみに割り当てることなどが、フリーライダー問題を解消するために有効となり得る。ただし、このような制限に競争促進効果があると認められるのは、当該流通業者が実施する販売促進活動が当該商品に関する情報を十分に有していない多数の新規顧客の利益につながり、当該制限がない場合に比べ購入量が増大することが期待できるなどの場合に限られる。また、そうした販売促進活動が、当該商品に特有のものであり、かつ、販売促進活動に要する費用が回収不能なもの(いわゆる埋没費用)であることが必要である。

イ 事業者が、自社の新商品について高品質であるとの評判を確保する上で、高品質な商品を取り扱うという評判を有している小売業者に限定して当該新商品を供給することが、販売戦略上重要といえる場合がある。このような場合において、当該事業者が流通業者の販売先を当該小売業者に限定することが、当該新商品について高品質であるとの評判を確保する上で有効となり得る。

ウ 事業者が新商品を発売するために、専用設備の設置等の特有の投資を流通業者に求めることがある。このとき、他の流通業者がそのような投資を行わずに当該新商品を販売することができるとなると、投資を行った流通業者が当該投資を回収できず、結果として、そのような投資が行われなくなることがある。このような場合において、当該事業者が、一定の地域を一流通業者のみに割り当てることが、特有の投資を流通業者に求める上で有効となり得る。

エ 部品メーカーが、完成品メーカーの求める特定の要求を満たす部品を製造するための専用機械や設備の設置等の特有の投資を行う必要がある場合には、当該部品メーカーが当該完成品メーカーに対し、一定数量の当該部品の購入を義務付けることなどが、特有の投資を行う上で有効となり得る。

オ 事業者が、自社商品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を高めるために、当該商品の販売に係るサービスの統一性やサービスの質の標準化を図ろうとする場合がある。このような場合において、当該事業者が、流通業者の販売先を一定の水準を満たしている者に限定したり、小売業者の販売方法等を制限したりすることが、当該商品の顧客に対する信頼を高める上で有効となり得る。

 

 

排他条件付取引

規制の内容・類型

排他条件付取引は、告示類型である。

 

▽告示類型(一般指定11項)

(排他条件付取引)
11 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

 

自己と競争関係にある事業者と取引しないことを条件として取引をすること、である。

 

自社が供給する商品のみを取り扱い、競合関係にある商品を取り扱わないことを条件として取引を行うなどして、不当に競争相手の取引の機会や流通経路を奪ったり、新規参入を妨げるおそれがある場合は、違法となる。

 

 

行為要件

排他条件付取引の3類型

「相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引」することである。

 

誰が排他条件を付けるのかで、以下の3類型がある。

排他的供給取引
売り手が排他条件を付ける。
売り手の競争者から商品役務の供給を受けないという条件を、買い手に対して付ける。
例)専売店制、リベートの一部(占有率リベート、塁審率リベート)など

排他的受入取引
買い手が排他条件を付ける。
買い手の競争者に商品役務を供給しないという条件を、売り手に対して付ける。
例)一手販売契約、完成品メーカーと部品メーカーの間の専属下請契約など

相互排他条件付取引
売り手と買い手が互いに排他条件を付ける。
例)一地域一販売店制など

 

判断方法

拘束の判断方法は再販売価格維持行為と同様で、契約等で制限している場合だけでなく、何らかの手段によって制限の実効性が確保されているかどうかで判断される。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の1の(2))

第2 非価格制限行為
1 考え方
(2) 事業者が非価格制限行為を行っているかどうかについては、前記第1の2で述べた再販売価格についての拘束と同様、事業者が取引先事業者に対し契約等で制限している場合だけでなく、事業者の要請に従わない取引先事業者に対し経済上の不利益を課すなど何らかの人為的手段を用いることによって制限の実効性が確保されている場合にも、制限行為が行われていると判断される。

 

具体的には、流通・取引慣行ガイドラインで、次のように書かれている。
(※原文は一般指定2項、11項、12項があわせて書かれているが、以下は11項に関するものだけ残した抜粋)

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の2の(1))

第2 非価格制限行為
2 自己の競争者との取引等の制限
(1) 取引先事業者に対する自己の競争者との取引や競争品の取扱いに関する制限
イ 市場における有力な事業者が、例えば次のように、取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者(注6)の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為…(略)…を行うことにより、市場閉鎖効果が生じる場合には、当該行為は不公正な取引方法に該当し、違法となる(略)
① 市場における有力な原材料メーカーが、完成品メーカーに対し、自己以外の原材料メーカーと取引する場合には原材料の供給を打ち切る旨通知し、又は示唆して、自己以外の原材料メーカーとは取引しないよう要請すること(一般指定11項)
② 市場における有力な完成品メーカーが、有力な部品メーカーに対し、自己の競争者である完成品メーカーには部品を販売せず、又は部品の販売を制限するよう要請し、その旨の同意を取り付けること(一般指定11項又は12項)
③ 市場における有力なメーカーが、流通業者に対し、取引の条件として自社商品のみの取扱いを義務付けること(一般指定11項)
④~⑥ (略)
(注6) 「自己と密接な関係にある事業者」とは、自己と共通の利害関係を有する事業者をいい、これに該当するか否かは、株式所有関係、役員兼任・派遣関係、同一のいわゆる企業集団に属しているか否か、取引関係、融資関係等を総合的に考慮して個別具体的に判断される。以下において同じ。

 

①は原材料メーカーによる原材料の排他的供給取引、②は完成品メーカーによる部品の排他的受入取引、③はメーカーによる自社商品の排他的供給取引である。

 

 

効果要件(公正競争阻害性)

「不当に」「競争者の取引の機会を減少させるおそれ」

排他条件付取引は、行為要件に該当するだけでは公正競争阻害性があるとはいえないので、別途「不当」といえることが必要となる。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の2の(1)のア)

第2 非価格制限行為
2 自己の競争者との取引等の制限
(1) 取引先事業者に対する自己の競争者との取引や競争品の取扱いに関する制限
ア 事業者は、例えば、マーケティングの一環として、取引先事業者に対し、自己の競争者との取引等の制限を行うことがあり、これらについては経営上の利点も指摘される。しかし、このような制限を行う事業者の市場における地位等によっては、このような制限が、既存の競争者の事業活動を阻害したり、参入障壁を高めたりするような状況をもたらす可能性がある

 

「不当に」にあたるかどうかは、主に、市場閉鎖効果が生じる場合かどうかによって判断される。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の2)

第2 非価格制限行為
2 自己の競争者との取引等の制限
(略)なお、「市場閉鎖効果が生じる場合」に当たるかどうかについては、前記第1部の3(1)及び(2)アにおいて述べた考え方に基づき判断される。例えば、このような制限を行う事業者の商品が強いブランド力を有している場合競争者の供給余力が総じて小さい場合には、そうでない場合と比較して、取引先事業者にとって当該事業者から商品の供給を受けることがより重要となり、当該制限の実効性が高まることから、市場閉鎖効果が生じる可能性が高くなる。また、制限の期間が長期間にわたるほど制限の相手方の数が多いほど競争者にとって制限の相手方との取引が重要であるほど、そうでない場合と比較して、市場閉鎖効果が生じる可能性が高くなる。複数の事業者がそれぞれ並行的にこのような制限を行う場合には、一事業者のみが制限を行う場合と比べ市場全体として市場閉鎖効果が生じる可能性が高くなる。

 

「市場閉鎖効果が生じる場合」について詳しく述べられているのは、以下の部分である。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
(2) 公正な競争を阻害するおそれ
ア 市場閉鎖効果が生じる場合
 「市場閉鎖効果が生じる場合」とは、非価格制限行為により、新規参入者や既存の競争者にとって、代替的な取引先を容易に確保することができなくなり、事業活動に要する費用が引き上げられる、新規参入や新商品開発等の意欲が損なわれるといった、新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいう。
 「市場閉鎖効果が生じる場合」に当たるかどうかは、上記 (1)の適法・違法性判断基準の考え方に従って判断することになる。例えば、このような制限を行う事業者の市場における地位が高いほど、そうでない場合と比較して、市場閉鎖効果が生じる可能性が高くなる。また、この判断に当たっては、他の事業者の行動も考慮の対象となる。例えば、複数の事業者がそれぞれ並行的にこのような制限を行う場合には、一事業者のみが行う場合と比べ市場全体として市場閉鎖効果が生じる可能性が高くなる。
 なお、「市場閉鎖効果が生じる場合」に当たるかどうかの判断において、非価格制限行為により、具体的に上記のような状態が発生することを要するものではない。

 

「上記 (1)の適法・違法性判断基準の考え方」というのは以下のとおりで、①~⑥の考慮要素が示されている。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
(1) 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準についての考え方
 垂直的制限行為は、上記2のとおり、競争に様々な影響を及ぼすものであるが、公正な競争を阻害するおそれがある場合に、不公正な取引方法として禁止されることとなる。垂直的制限行為に公正な競争を阻害するおそれがあるかどうかの判断に当たっては、具体的行為や取引の対象・地域・態様等に応じて、当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討した上で、次の事項を総合的に考慮して判断することとなる。
 なお、この判断に当たっては、垂直的制限行為によって生じ得るブランド間競争やブランド内競争の減少・消滅といった競争を阻害する効果に加え、競争を促進する効果(下記(3)参照)も考慮する。また、競争を阻害する効果及び競争を促進する効果を考慮する際は、各取引段階における潜在的競争者への影響も踏まえる必要がある。
① ブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)
② ブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商品を取り扱っている流通業者等の業態等)
③ 垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位(市場シェア、順位、ブランド力等)
④ 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)
⑤ 垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位
 各事項の重要性は個別具体的な事例ごとに異なり、垂直的制限行為を行う事業者の事業内容等に応じて、各事項の内容も検討する必要がある。例えば、プラットフォーム事業者が行う垂直的制限行為による競争への影響については、プラットフォーム事業者間の競争の状況や、ネットワーク効果(注3)等を踏まえたプラットフォーム事業者の市場における地位等を考慮する必要がある。

 

実際上、排他条件付取引で最も重要な考慮要素は、「市場における有力な事業者」かどうかである。当該市場のシェアが20%を超えることが一応の目安となるとされている。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
(4) 市場における有力な事業者
 垂直的制限行為には、「市場における有力な事業者」によって当該行為が行われた場合に不公正な取引方法として違法となるおそれがあるものがある。後記第2の2(自己の競争者との取引等の制限)の各行為類型、同3(3)(厳格な地域制限)及び同7(抱き合わせ販売)がこれに当たる。
 「市場における有力な事業者」と認められるかどうかについては、当該市場(制限の対象となる商品と機能・効用が同様であり、地理的条件、取引先との関係等から相互に競争関係にある商品の市場をいい、基本的には、需要者にとっての代替性という観点から判断されるが、必要に応じて供給者にとっての代替性という観点も考慮される。)におけるシェアが20%を超えることが一応の目安となる。ただし、この目安を超えたのみで、その事業者の行為が違法とされるものではなく、当該行為によって「市場閉鎖効果が生じる場合」又は「価格維持効果が生じる場合」に違法となる。
 市場におけるシェアが20%以下である事業者や新規参入者がこれらの行為を行う場合には、通常、公正な競争を阻害するおそれはなく、違法とはならない。

 

正当な理由

市場の閉鎖効果がある程度認められる場合であっても、例えば以下のような、正当な理由がある場合には違法とならない。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の2の(1)のウ)

2 自己の競争者との取引等の制限
(1) 取引先事業者に対する自己の競争者との取引や競争品の取扱いに関する制限
ウ 一方、例えば、次のように、自己の競争者との取引や競争品の取扱いに関する制限について独占禁止法上正当と認められる理由がある場合には、違法とはならない。
① 完成品メーカーが部品メーカーに対し、原材料を支給して部品を製造させている場合に、その原材料を使用して製造した部品を自己にのみ販売させること
② 完成品メーカーが部品メーカーに対し、ノウハウ(産業上の技術に係るものをいい、秘密性のないものを除く。)を供与して部品を製造させている場合で、そのノウハウの秘密を保持し、又はその流用を防止するために必要であると認められるときに自己にのみ販売させること

 

 

拘束条件付取引

規制の内容・類型

拘束条件付取引は、告示類型である。

 

▽告示類型(一般指定12項)

(拘束条件付取引)
12 法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

 

再販売価格維持行為と排他条件付取引以外の、拘束条件付取引を対象とする。

 

取引相手の事業活動を不当に拘束するような条件を付けての取引を違法とするものである。例えば、テリトリー制によって販売地域を制限したり、安売表示を禁じたりして、販売地域や販売方法などを不当に拘束するような場合などがある。

 

 

行為要件

「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて」取引することである。

 

拘束条件には、例えば、以下のようなものがある。

〇地域制限(テリトリー制)
〇取引先に関する制限
〇販売方法の制限
〇表示方法の制限

 

地域制限(テリトリー制)

地域制限というのは、メーカーが自己の商品の販売業者の営業地域を制限する制度(テリトリー制)のことであるが、流通・取引慣行ガイドラインは、4類型に分けて違法性の判断基準を示している。

①責任地域性
②販売拠点性(ロケーション制)
③厳格な地域制限
④地域外顧客への受動的販売の制限

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の3の(1))

3 販売地域に関する制限
(1) 事業者は、例えば、マーケティングの一環として、流通業者に対し、販売地域に関し次のような制限を課すことがある。
① 事業者が流通業者に対して、一定の地域を主たる責任地域として定め、当該地域内において、積極的な販売活動を行うことを義務付けること(主たる責任地域を設定するのみであって、下記③又は④に当たらないもの。以下「責任地域制」という。)
② 事業者が流通業者に対して、店舗等の販売拠点の設置場所を一定地域内に限定したり、販売拠点の設置場所を指定すること(販売拠点を制限するのみであって、下記③又は④に当たらないもの。以下「販売拠点制」という。)
③ 事業者が流通業者に対して、一定の地域を割り当て、地域外での販売を制限すること(以下「厳格な地域制限」という。)
④ 事業者が流通業者に対して、一定の地域を割り当て、地域外の顧客からの求めに応じた販売を制限すること(以下「地域外顧客への受動的販売の制限」という。)

 

責任地域性と販売拠点性(ロケーション制)については、原則として違法とはならないとされている。

 

(↓上記の続き)
(2) 責任地域制及び販売拠点制
 事業者が商品の効率的な販売拠点の構築やアフターサービス体制の確保等のため、流通業者に対して責任地域制や販売拠点制を採ることは、厳格な地域制限又は地域外顧客への受動的販売の制限に該当しない限り、通常、これによって価格維持効果が生じることはなく、違法とはならない
 例えば、インターネットを利用した販売において、事業者が流通業者に対し、一定の地域や顧客を対象として、当該流通業者のウェブサイト又は第三者(プラットフォーム事業者等)のウェブサイト上に広告を掲載させたり、メールマガジンを配信させたりするなど、当該一定の地域や顧客を対象として積極的な販売活動を行うことを義務付けることは、通常違法とはならない。しかし、当該一定の地域や顧客以外の地域や顧客を対象とした販売を制限するなど、厳格な地域制限又は地域外顧客への受動的販売の制限に該当する場合には、下記(3)又は(4)において述べる考え方に基づき判断される。

 

③厳格な地域制限と④地域外顧客への受動的販売の制限については、原則として違法とされている。

 

(↓上記の続き)
(3) 厳格な地域制限
 市場における有力な事業者が流通業者に対し厳格な地域制限を行い、これによって価格維持効果が生じる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項(拘束条件付取引))(注7)。
 なお、「価格維持効果が生じる場合」に当たるかどうかについては、前記第1部の3(1)及び(2)イにおいて述べた考え方に基づき判断される。例えば、市場が寡占的であったり、ブランドごとの製品差別化が進んでいて、ブランド間競争が十分に機能しにくい状況の下で、市場における有力な事業者によって厳格な地域制限が行われると、当該ブランドの商品を巡る価格競争が阻害され、価格維持効果が生じることとなる。また、複数の事業者がそれぞれ並行的にこのような制限を行う場合には、一事業者のみが行う場合と比べ市場全体として価格維持効果が生じる可能性が高くなる。
(注7) 新商品のテスト販売や地域土産品の販売に当たり販売地域を限定する場合は、通常、これによって価格維持効果が生じることはなく、違法とはならない。

(4) 地域外顧客への受動的販売の制限
 事業者が流通業者に対し地域外顧客への受動的販売の制限を行い、これによって価格維持効果が生じる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項)。
 地域外顧客への受動的販売の制限は、厳格な地域制限と比較して、地域外の顧客からの求めに応じた販売をも制限している分、ブランド内競争を制限する効果が大きい。
 例えば、インターネットを利用した販売において、流通業者のウェブサイトを見た顧客が当該流通業者に注文し、その結果販売につながった場合、これは受動的販売に当たる。メールマガジンを受信するなど、当該流通業者からの情報を継続して受け取ることとした顧客が、当該情報を見て当該流通業者に注文し、その結果販売につながった場合も同様である。このような場合において、事業者が流通業者に対し一定の地域を割り当て、顧客の配送先情報等から当該顧客の住所が地域外であることが判明した場合、当該顧客とのインターネットを利用した取引を停止させることは、地域外顧客への受動的販売の制限に当たり、これによって価格維持効果が生じる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

 

価格維持効果というのは、効果要件(公正競争阻害性)に関するものなので、後述。

 

 

取引先に関する制限

メーカーが卸売業者に対しその販売先である小売業者が特定の卸売業者としか取引できないようにしたり(帳合取引の義務付け)、販売業者が商品を横流しをしないようにしたり(仲間取引の禁止)することである。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の4)

4 流通業者の取引先に関する制限
(1) 事業者は、流通業者に対しその取引先を特定の事業者に制限し、販売活動を行わせることがある。例えば
① 事業者が卸売業者に対して、その販売先である小売業者を特定させ、小売業者が特定の卸売業者としか取引できないようにすること(以下「帳合取引の義務付け」という。)
② 事業者が流通業者に対して、商品の横流しをしないよう指示すること(以下「仲間取引の禁止」という。)
③ 事業者が卸売業者に対して、安売りを行う小売業者への販売を禁止すること
等が挙げられる。

(2) 帳合取引の義務付け
 事業者が流通業者に対し帳合取引の義務付けを行い、これによって価格維持効果が生じる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項(拘束条件付取引))。
 帳合取引の義務付けは、卸売業者に対して、取引先として一定の小売業者を割り当て、他の卸売業者の帳合先となっている小売業者から取引の申出があっても、その申出に応じてはならないこととなり、これは、流通業者に対し割り当てられた地域外の顧客の求めに応じた販売を制限するのと同様の行為である。このため、「価格維持効果が生じる場合」に当たるかどうかについては、上記3(4)「地域外顧客への受動的販売の制限」において述べた考え方と同様である。

(3) 仲間取引の禁止
 仲間取引の禁止は、取引の基本となる取引先の選定に制限を課すものであるから、その制限の形態に照らして販売段階での競争制限に結び付く可能性があり、これによって価格維持効果が生じる場合には、不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項)。
 なお、仲間取引の禁止が、下記(4)の安売り業者への販売禁止のために行われる場合には、通常、価格競争を阻害するおそれがあり、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項)。

(4) 安売り業者への販売禁止
 事業者が卸売業者に対して、安売りを行うことを理由(注8)に小売業者へ販売しないようにさせることは、事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定するという事業者の事業活動において最も基本的な事項に関与する行為であるため、前記第1「再販売価格維持行為」において述べた考え方に準じて、通常、価格競争を阻害するおそれがあり、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶)又は12項)。
 なお、事業者が従来から直接取引している流通業者に対して、安売りを行うことを理由(注8)に出荷停止を行うことも、通常、価格競争を阻害するおそれがあり、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定2項)。
(注8) 「安売りを行うことを理由」にしているかどうかは、他の流通業者に対する対応、関連する事情等の取引の実態から客観的に判断される。

 

価格維持効果というのは、効果要件(公正競争阻害性)に関するものなので、後述。

 

販売方法の制限

商品の説明、宅配、品質管理の条件、専用の販売コーナーの設置など。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の6)

6 小売業者の販売方法に関する制限
(1) 小売業者の販売方法に関する制限として、具体的には、事業者が小売業者に対して、
① 商品の説明販売を指示すること
② 商品の宅配を指示すること
③ 商品の品質管理の条件を指示すること
④ 自社商品専用の販売コーナーや棚場を設けることを指示すること
等が挙げられる。
(2) 事業者が小売業者に対して、販売方法(販売価格、販売地域及び販売先に関するものを除く。)を制限することは、商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持等、当該商品の適切な販売のためのそれなりの合理的な理由が認められ、かつ、他の小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合には、それ自体は独占禁止法上問題となるものではない
(具体例)(略)
 しかし,事業者が小売業者の販売方法に関する制限を手段として,小売業者の販売価格,競争品の取扱い,販売地域,取引先等についての制限を行っている場合(注9)には,前記第1及び第2の2から4において述べた考え方に従って違法性の有無が判断される(独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束),一般指定11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))。
(注9) 例えば,当該制限事項を遵守しない小売業者のうち,安売りを行う小売業者に対してのみ,当該制限事項を遵守しないことを理由に出荷停止等を行う場合には,通常,販売方法の制限を手段として販売価格について制限を行っていると判断される。

 

表示方法の制限

表示方法の制限については以下のとおり。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン(第2の6)

6 小売業者の販売方法に関する制限
(3) また、販売方法の一つである広告・表示の方法について、次のような制限を行うことは、事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定するという事業者の事業活動において最も基本的な事項に関与する行為であるため、前記第1「再販売価格維持行為」において述べた考え方に準じて、通常、価格競争が阻害されるおそれがあり、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定12項)。
① 事業者が小売業者に対して、店頭、チラシ等で表示する価格について制限し、又は価格を明示した広告を行うことを禁止すること
② 事業者が自己の取引先である雑誌、新聞等の広告媒体に対して、安売り広告や価格を明示した広告の掲載を拒否させること

 

 

効果要件(公正競争阻害性)

不当に

「不当に」との文言が使われている。

 

「市場閉鎖効果が生じる場合」かどうかや「価格維持効果が生じる場合」かどうか等によって判断される。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
(2) 公正な競争を阻害するおそれ
 (略)非価格制限行為の中には、①行為類型のみから違法と判断されるのではなく、個々のケースに応じて、当該行為を行う事業者の市場における地位等から、「市場閉鎖効果が生じる場合」や、「価格維持効果が生じる場合」といった公正な競争を阻害するおそれがある場合に当たるか否かが判断されるもの及び②通常、価格競争を阻害するおそれがあり、当該行為を行う事業者の市場における地位を問わず、原則として公正な競争を阻害するおそれがあると判断されるものがある。
 なお、複数の非価格制限行為が同時に行われている場合や再販売価格維持行為も併せて行われている場合に、ある非価格制限行為に公正な競争を阻害するおそれがあるかどうかを判断するに当たっては、同時に行われている他の非価格制限行為又は再販売価格維持行為による影響を踏まえて判断されることもある。

 

「価格維持効果が生じる場合」について、詳しくは以下のとおり。

 

▽流通・取引慣行ガイドライン

3 垂直的制限行為に係る適法・違法性判断基準
(2) 公正な競争を阻害するおそれ
イ 価格維持効果が生じる場合
 「価格維持効果が生じる場合」とは、非価格制限行為により、当該行為の相手方とその競争者間の競争が妨げられ、当該行為の相手方がその意思で価格をある程度自由に左右し、当該商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいう。
 「価格維持効果が生じる場合」に当たるかどうかは、上記(1)の適法・違法性判断基準の考え方に従って判断することになる。例えば、市場が寡占的であったり、ブランドごとの製品差別化が進んでいて、ブランド間競争が十分に機能しにくい状況の下で、市場における有力な事業者によって厳格な地域制限(後記第2の3(3)参照)が行われると、当該ブランドの商品を巡る価格競争が阻害され、価格維持効果が生じることとなる。また、この判断に当たっては、他の事業者の行動も考慮の対象となる。例えば、複数の事業者がそれぞれ並行的にこのような制限を行う場合には、一事業者のみが行う場合と比べ市場全体として価格維持効果が生じる可能性が高くなる。
 なお、「価格維持効果が生じる場合」に当たるかどうかの判断において、非価格制限行為により、具体的に上記のような状態が発生することを要するものではない。

 

 

結び

不公正な取引方法のうち不当拘束については以上になります。

 

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。初心者(=過去の自分)がなるだけ早く新しい環境に適応できるようにとの気持ちで書いております(ゆえに、ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれておりませんので、あしからずご了承ください)。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご留意ください。

 

 

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