タイトルほど本記事は大した話ではないんですけど、今日見たツイートのなかで印象的なものがあったので、ちょっと書き残しておきたいと思います。
大学レベルの数学・物理を扱うYouTube動画で勉強して、9歳の少年が数学検定1級に合格したという、びっくりのニュースです。
YouTubeで勉強して数学検定1級に9歳で合格した少年
今話されてた「数学検定1級に9歳で最年少合格した少年に会ってきた話」
— 徳力 基彦(tokuriki) (@tokuriki) September 3, 2020
問題集とか教科書とか一切使わず、「全部YouTubeを見て勉強した」んだとか。
凄い、すさまじい。
我が家も息子たちのYouTube禁止にしてる場合じゃないな。:https://t.co/luW7JmZvQn #noteフェス
この少年が特殊な才能の持ち主なのだろうとは思いますけど、この「ヨビノリ」の動画が起爆剤になってるのは間違いないでしょうし。親御さんが本とかを買い与えるだけでは起こり得なかったのでは、と思います。
これを見て、こんなことが起こるなら、司法試験とかも同様のことができるだろうし(ロースクールよ…😭)、いわゆる「ノウハウ」という情報は、相当深い層までオープンになってきていて、そのうち「囲い込みが難しくなる」という状態にまでいくのでは…という気がしました。
Googleのミッション
で、このニュースを見て何故か、ふと、Googleのミッションって凄いな…という、ちょっと違う方向に頭が動きまして(感覚がズレているw)。
何というか、この少年もさることながら、「こういう状況を生み出したGoogleってすげえな…」と思いまして。
Googleのミッションは「世界中の情報を整理する」というもので、ネットに出てきた情報は、検索アルゴリズムで、整理しているんですよね(デジタル素人の浅い知識ですがw)。
しかし、「そもそもネットに出てこない情報」は「整理」しようがない…。
それでどうしたか?というと、広告フィーという「対価」を用意して、ネットにノウハウという情報が出やすくなるようにしたのでは?という気がしたわけです。ここに広告ビジネスを持ってくるとビジネスモデルとしてハマるし、ミッションにも沿っていますし。
実際、相対だけでは入手困難だった情報が、以前と比べると簡単に手に入るようになっているわけで。自分でいっても、YouTube見ながらやったらWordPressへブログ引越までいけたし…。冒頭のニュースも、きっとそういう一例だ、と思います。レベル感が違うけど(笑)。
※動画の制作者の方々が、報酬を目当てにしているという意味ではないです。使命感とか楽しさとか、いくつかのモチベーションが組み合わさっているだろうと思います。
公開の代償としての独占権の付与(特許法の思想)
ちなみに、この「対価を用意することによって情報を出してもらう」という発想は、法律の世界にすでに存在します。特許法です。特許法の思想を一言でいうと、「公開の代償としての独占権の付与」になります。
どういうことか??を若干説明すると、以下のような感じです。
特許権というのは、「凄い発明(=新規性ある高度な発明)に独占権を与える」ことですが、「凄い発明」をしたときに、人はどうやってそれを守ろうとするか?
法律とかのルールが何もないとき、この「凄い発明」を守る方法はひとつだけ、それは「秘密にすること」です。
ここでいつも出てくる有名な例は、コカ・コーラです。その製法は完全に秘密になっていて、同社の極く一部の人間を除いて、誰も知らない。外部には長いこと漏れたことがない。秘密にすることによって、発明の利益は、自らのみが享受できる。
ただ、世の中の「凄い発明」が全部、秘密にされてしまったら、産業が発展しない。基本的に、知的な資産というのは、(著作権法も同様なんですけど)先人や他人のつくった発明や創作に触発され、あるいはそれを土台にして、更に新しい発明・創作性をのせていくことで、産業や文化が発展していく、という発想をもっています。
だから、「囲い込み」をするばかりでは、社会の発展が阻害される。なので、社会としては「公開してほしい」。でも、何の対価もなしでは、当然誰も出さない。
そこで、「公開してくれたら法律で独占権を付与しますよ」ということで、特許権を与えているわけです。公開したうえで、もし勝手に使っている人がいたら、差止請求や損害賠償請求ができるし、まっとうに使おうとする人がいたら、ライセンスビジネスができるようにします、という形で。
これが「公開の代償としての独占権付与」という特許法の基本思想です。
秘密にするという方法は、成功すれば事実上独占できるのに対して、漏洩したときに弱い(民法とか不競法とかの一般法でしか戦えない)ので、秘密にして守るか、公開したうえで法律的に独占権を得るかは、政策的な判断の問題なわけです。
話を戻すと
それで、冒頭の話に戻ると、いま「ビジネス系」とか「教育系」とかのYouTubeに溢れているのは、「発明」ではないけどいわゆる「ノウハウ」という情報で、ここで行われていることは、特許法と同じような発想があるのではと感じるわけです。
つまり、YouTuberに「公開の対価」としての広告フィーを付与して、「ノウハウ」という情報を出してもらって、Googleが整理しようとしている、ように見えます。もちろん、対価は金銭であって独占権とかではないとか、違いはありますけど。
飽和気味とかレッドオーシャンとか言われつつも、大きな流れとしては残る(=流行のあとは定番化する)と思うし、たぶん、今後もどんどん「情報の囲い込み」はしにくくなっていくのでは?と感じます。
もちろん、インサイダー情報や、(公も私も)本当の権力者だけがもつ真にコアな情報とかは出てこないんでしょうけど、かなり深い層にあった情報が「広告フィー」という形の「対価」によってネットに吸い上げられている、ような気がしました。
結び
だいぶ昔に「ザ・ワールド・イズ・フラット」という本がありましたけど、たしかに世界はどんどん平坦になっているのでは。もちろん相対的に、という話で、完全に平坦になることはないとは思いますけど。
それすら打破しようとするんだろうな、という気もします。なんかアメリカのエリートたちって、発想のレベルがちょっと違いますもんね。
YouTubeにノウハウ動画が溢れている背景には、特許法の思想と似たような、Googleの(ミッションの実現に向けた)作戦があったりして、という話でした。
[注記]
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