法務一般

法務の基礎を勉強しよう|会社公告の種類

今回は、法務の基礎を勉強しようということで、会社公告の種類について見てみたいと思います。

会社の公告は、会社法の「第七編 雑則」 >「第五章 公告」という章に定められています。座学のときは地味すぎてあんまり真面目にやらない分野ですが、実務では意外と身近で必要になってきます。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

会社公告の種類(会社法939条1項)

公告というのは、一般的な意味としては、広く一般に告げ知らせること(公衆に告知すること)、といった意味になります。

会社の公告方法については、会社法939条1項に定められており、

  • 官報公告
  • 新聞公告
  • 電子公告

の3種類があります。

▽会社法939条1項

(会社の公告方法)
第九百三十九条
 会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる
 官報に掲載する方法
 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
 電子公告

「定款で定めることができる・・・」と書かれているように、会社の公告方法は、定款に記載するかどうかは自由ですが、決めておくなら定款に記載しておかないと有効にならない事項(いわゆる定款の相対的記載事項)となっています。

官報公告(1号)

官報公告は、公告方法のうち、

 官報に掲載する方法

のことです(1号)。

官報販売所に申し込んで行います。

▽参考リンク
官報公告トップページ|全国官報販売協同組合
申し込み・お問い合わせ一覧|全国官報販売協同組合

定款で公告方法に関する定めをしなかったときは、公告の方法は、自動的にこの官報公告とされます(会社法939条4項)。

▽会社法939条4項(※【 】は管理人注)

4 第一項又は第二項の規定による定めがない会社又は外国会社の公告方法は、第一項第一号の方法【=官報に掲載する方法】とする。

新聞公告(2号)

新聞公告は、公告方法のうち、

 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法

のことです(2号)。

日刊工業新聞を使っている会社も多いかと思います。

▷参考リンク:法定公告のご案内|日刊工業新聞社HP

電子公告(3号)

電子公告とは

電子公告(3号)については、会社法2条に定義があり、

公告方法のうち、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって法務省令で定めるものをとる方法

のことをいいます(会社法2条34号)。

インターネットによる情報提供措置であり、要するに具体的に想定されているのは、会社のウェブサイトに掲載する方法です。

括弧書きにある電磁的方法の内容は規則222条に、公告のための措置の内容は規則223条に、それぞれ定められています。

▽会社法施行規則222条1項1号ロ、223条

(電磁的方法)
第二百二十二条
 法第二条第三十四号に規定する電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものは、次に掲げる方法とする。
 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
  送信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて情報の提供を受ける者の閲覧に供し、当該情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録する方法

(電子公告を行うための電磁的方法)
第二百二十三条
 法第二条第三十四号に規定する措置であって法務省令で定めるものは、前条第一項第一号ロに掲げる方法のうち、インターネットに接続された自動公衆送信装置を使用するものによる措置とする。

電子公告を選択する場合に、公告ページの具体的なURLなどまで定款に記載する必要はありません(電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる)。

また、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の予備的公告方法(官報公告or新聞公告)を定款に定めておくこともできます。

▽会社法939条3項(※【 】は管理人注)

 会社又は外国会社が第一項第三号に掲げる方法【=電子公告】を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる。この場合においては、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法【=予備的公告方法】として、同項第一号又は第二号に掲げる方法のいずれかを定めることができる。

公告期間と電子公告調査

ただし、電子公告による場合には、官報公告や新聞公告のように1回掲載したら終わりではなく、一定期間、継続して掲載する必要があります。

▽会社法940条1項(※【 】は管理人注)

(電子公告の公告期間等)
第九百四十条
 株式会社又は持分会社が電子公告によりこの法律の規定による公告をする場合には、次の各号に掲げる公告の区分に応じ、当該各号に定める日までの間継続して電子公告による公告をしなければならない。
 この法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合における当該公告  当該特定の日
 第四百四十条第一項の規定による公告【=決算公告】  同項の定時株主総会の終結の日後五年を経過する日
 公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告【=債権者に対する個別催告に代わる公告】  当該期間を経過する日
 前三号に掲げる公告以外の公告  当該公告の開始後一箇月を経過する日

そのため、本当にその期間継続してウェブサイトに記載されていたのかどうかという証明の問題があるので、電子公告調査機関による調査を受ける義務があります(電子公告調査)。なお、決算公告については調査義務は除外されています(以下の括弧書き参照)。

▽会社法941条(※【 】は管理人注)

(電子公告調査)
第九百四十一条
 この法律又は他の法律の規定による公告(第四百四十条第一項の規定による公告【=決算公告】を除く。以下この節において同じ。)を電子公告によりしようとする会社は、公告期間中、当該公告の内容である情報が不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれているかどうかについて、法務省令で定めるところにより、法務大臣の登録を受けた者(以下この節において「調査機関」という。)に対し、調査を行うことを求めなければならない

調査が終わると、抜き打ちチェックを随時行ったような感じの調査結果通知書が送られてきます(▷日本公告調査株式会社のサンプル例)。合併公告等のケースでは、登記申請の際の添付書類として必要になります。

▷参考リンク:電子公告調査結果通知書とは|日本公告調査株式会社

電子公告については、法務省HPに解説ページがあります。調査機関の一覧や、現在公告中の公告ホームページへのリンク集(検索サイト)なども掲載されています。

▽参考リンク
電子公告|法務省HP
登録された電子公告調査機関一覧|法務省HP
電子公告リンク集サイト|法務省HP

公告方法の登記

また、公告方法は、会社の登記事項にもなっています(会社法911条3項)。

定款で公告方法を定めたときは、その公告方法を登記する必要があります(27号)。

そのうち電子公告を選択したときには、さらに、電子公告による情報提供のために必要な事項として、公告ページのURLを登記します(28号イ→規則220条1項2号)。予備的公告方法も、定款に定めがあるときは登記します。

また、定款に公告方法を定めず、自動的に官報公告になる場合でも、官報公告が公告方法である旨を登記する必要があります(29号)。

▽会社法911条3項27号~29号(※【 】は管理人注)

 第一項の登記【=株式会社の設立の登記】においては、次に掲げる事項を登記しなければならない
二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
二十八 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
  電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
  第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定め【=予備的公告方法の定め】があるときは、その定め
二十九 第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

▽会社法施行規則220条1項2号(※【 】は管理人注)

第二百二十条 次の各号に掲げる規定に規定する法務省令で定めるものは、当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合【=要するにURL】であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるものとする。
二 法第九百十一条第三項第二十八号イ 株式会社が行う電子公告

会社公告が必要な場面

これらの会社公告が必要な場面はたくさんありますが、決算公告と、合併公告等(つまり組織再編の際の公告)が、一般的に身近なものかなと思います。

株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、決算の公告をしなければなりません。

▽会社法440条1項:決算公告

(計算書類の公告)
第四百四十条
 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

決算公告については、以下の関連記事にくわしく書いています。

合併公告等の方法は、「官報公告」と決まっています(会社法810条2項)。

また、定款で「新聞公告」か「電子公告」を選択している場合は、それにより債権者への個別催告に代わる公告をすることができます(同条3項)。

これら2つの公告を合わせて、”ダブル公告”と呼ばれたりします(つまり、「官報公告+新聞公告」or「官報公告+電子公告」)。

▽会社法810条2項・3項:合併公告等(※【 】は管理人注)

 前項の規定により消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 新設合併等をする旨
二 他の消滅会社等及び設立会社の商号及び住所
三 消滅株式会社等の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
 前項の規定にかかわらず、消滅株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法【=新聞公告または電子公告】によりするときは、前項の規定による各別の催告(新設分割をする場合における不法行為によって生じた新設分割株式会社の債務の債権者に対するものを除く。)は、することを要しない

公告が必要とされる主な場面のまとめとしては、例えば以下のようなものがあります。

▷参考リンク:法定公告|兵庫県官報販売所HP

結び

今回は、法務の基礎を勉強しようということで、会社公告の種類について見てみました。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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