消費者法

特定商取引法を勉強しよう|特商法表記の絶対的表示事項

今回は、特定商取引法を勉強しようということで、特定商取引法に基づく表記のうち絶対的表示事項について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

絶対的表示事項

特商法表記の表示事項には、常に表示しなければならない絶対的表示事項と、特約等がある場合には表示しなければならない任意的表示事項があります。

ここでいう「任意的」というのは、書いても書かなくてもいいという意味ではなく、一定の場合にのみ表示することが義務づけられる事項、という意味です

絶対的表示事項は、以下の5つです。

  • 販売価格・役務の対価(法11①)
  • 代金・役務の対価の支払時期及び方法(法11②)
  • 商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期(法11③)
  • 申込みの撤回又は解除に関する事項(返品特約の内容を含む)(法11⑤)
  • 事業者の氏名又は名称、住所、電話番号(規則23①)

以下、順に見てみます。

販売価格・役務の対価(法11①)

 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料

これは、購入する商品やサービスの価格(販売価格または役務の対価)のことです。

消費税を含んだ価格を意味すると解されています(逐条解説 第11条解説3-⑴)。

この記載事項に関して注意事項が多いのは、販売価格というよりも、送料の部分です。

販売価格に送料が含まれない場合は、販売価格商品の送料の両方を表示する必要があります(括弧書き)。もし販売価格のみの表示であれば、送料はその中に含まれていると推定されると解されています(逐条解説 第11条解説3-⑴)。

送料は、金額をもって表示することとされており(規則24条1号)、例えば”送料実費”といった表示は認められていません。

▽規則24条1号

第二十四条 法第十一条本文の規定により通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、次に定めるところにより表示しなければならない。
 商品の送料を表示するときは、金額をもつて表示すること。

送料は地域別、重量別に細かく定められているのが通例ですが、広告スペースに余裕がある場合は、できる限り詳細に記載する必要があります。

ただ、広告スペースとの関係で、全ての場合を広告に表示させることは実態にそぐわない面があるため、購入者が自ら負担すべき送料についておよその目途を立て得る表示として、例えば、①最低送料と最高送料、②平均送料、③送料の数例などの表示でもよいとされています(逐条解説 第11条解説3-⑴)。

代金・役務の対価の支払時期及び方法(法11②)

 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

これは、代金の支払時期と支払方法のことです。

支払の時期」は、商品等を購入する場合に代金を支払う時期のことです。特に金融機関、コンビニエンスストア等で振込や支払手続を行う必要がある場合には、前払い又は後払いのいずれであるかを明示するとともに、いつまでに支払を済ませる必要があるのかという具体的な時期も表示する必要があるとされています(逐条解説 第11条解説3-⑵)。

支払の方法」は、銀行振込、クレジット、代金引換、現地決済等の支払方法の別のことです。全ての支払方法を表示する必要があり、ほかの支払方法があるにもかかわらず、一部の支払方法しか記載しないということは認められません(特商法ガイドの通販広告表示事項解説編参照)。

商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期(法11③)

三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

これらは、事業者側の履行時期、つまり買ったモノやサービスが提供される時期のことです。例えば、「商品の引渡時期」は、注文を受けた後、商品が手元に届く時期を指します。

商品の引渡し又は役務の提供が複数回にわたる場合は、回数、期間等が明確になるよう記載しなければなりません(逐条解説 第11条解説3-⑶)。

本号については期間又は期限をもって表示することとされており(規則24条2号)、例えば「銀行振込の確認後に商品を発送します」といった記載は認められません。

▽規則24条2号

第二十四条 法第十一条本文の規定により通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、次に定めるところにより表示しなければならない。
 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期期間又は期限をもつて表示すること。

特に前払いの場合には、申し込んでいつ商品が引き渡されるかわからないと購入者の地位が不安定になるので、例えば「代金入金確認次第、速やかに商品を発送します」「代金入金確認後、○○日以内に発送します」といった表示で、明確に記載する必要があります(具体例については特商法ガイドの通販広告表示事項解説編参照)。

申込みの撤回又は解除に関する事項(返品特約の内容を含む)(法11⑤)

 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。)

これは、一見何を書いているのかよくわからない感じもしますが、申込みの撤回等についての特約、つまり返品やキャンセルに関する特約の有無や内容のことです(特に売買契約の場合を指して「返品特約」という言い方をしますが、そういうイメージ)。

つまり、本号は、特に商品やサービスに問題がない・・ケース(事業者に契約違反がないケース)について定めています。

通信販売では、クーリング・オフ制度はありません。そのため、事業者が任意の返品・キャンセルを認めるかどうかはクーリング・オフに代わる重要な取引条件となるので、特約がないのであればないことを表示し、あるならその内容を表示すべし、ということです。

通信販売広告Q&A14|特定商取引法ガイドHP

 返品を認めない場合にも、表示する必要がありますか。

 返品特約(引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しており、販売業者に契約違反のない状態における返品特約)については、種類又は品質に関して契約の内容に適合している商品について返品を認めない場合には、その旨を広告に明示することが必要です。
 返品を認めない場合であれば、具体的には、「商品に欠陥がある場合を除き、返品には応じません。」などと表示して、引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合している場合でも返品を受け付けないことを明確にする必要があります。
 …(以下略)…

表示事項

契約の申込みの撤回又は解除に関して、その条件、方法、効果等について表示する必要があります。

売買契約の場合には、 申込みの撤回等を認めるか否かその際の条件は何か送料の負担の有無等を広告に明示することが必要です(特商法ガイドの通販広告表示事項解説編など参照)。

役務提供契約の場合には、

  • 1回の役務提供を行う契約であれば、申込みの撤回の可否やその方法等
  • 複数回又は一定期間の役務提供を行う契約であれば、契約途中の解約に係る方法等

をわかりやすく表示しなければならないとされています。

また、定期購入契約(販売業者が購入者に対して商品を定期的に継続して引き渡し、購入者がこれに対する代金の支払をすることとなる契約)においては、

  • 解約の申出に期限がある場合には、その申出期限
  • 解約時に違約金その他の不利益が生ずる契約内容である場合には、その旨及び内容

も表示事項に含まれるとされています。

なお、解約に関するトラブルの状況に鑑みれば、解約方法を特定の手段に限定している場合、例えば、

  • 消費者が想定しないような解約方法の限定
    ex. 電話した上でメッセージアプリを操作、追加の個人情報提出
  • 解約受付を特定の時間帯に限定
  • 消費者が申込みをした際の手段に照らして、当該消費者が容易に手続を行うことができると考えられる手段での解約連絡を受け付けない

などの場合には、特に消費者が明確に認識できるように表示することが必要であるとされています(逐条解説 第11条解説3-⑸)。

表示方法

表示の見やすさに関して、規則24条3号に定めがあり、顧客にとって見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示するなど、顧客にとって容易に認識することができるよう表示することとされています。

▽規則24条3号

第二十四条 法第十一条本文の規定により通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、次に定めるところにより表示しなければならない。
 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(法第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)については、顧客にとつて見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示すること。

このうち、売買契約の場合(つまり返品特約)の表示方法については、以下のガイドラインで、広告媒体別に具体例や考え方が示されています。

▽参考リンク
通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン|特定商取引法ガイド(≫掲載ページ

法15条の3第1項但書との関係

「第十五条の三第一項ただし書に規定する特約【=返品特約】がある場合にはその内容を…含む」という、括弧書きは何のことを言っているのかについても、ざっと見てみます。

前述のように、通信販売においてはクーリング・オフ制度はありませんが、一定の場合にこれと似た制度が導入されています。それが法15条の3で、返品特約の表示がない場合には、契約の解除等ができる旨が法定されています(本文の部分。返品特約の表示がない場合の契約解除権)。

この規定は、商品(と特定権利)の場合に限定されているほか、「販売条件について広告をした販売業者」、つまり広告を媒介とした通信販売事業者に限定されています。

また、事業者が申込みの撤回等についての特約(返品特約)を広告に表示した場合には、その返品特約が優先されることとなっています。それが但書の部分です。つまり、クーリング・オフ制度のように、それと異なる特約を無効とする、いわゆる強行法規にはなっていません。

▽特商法15条の3第1項

(通信販売における契約の解除等)
第十五条の三
 通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができるただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約当該広告に表示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律(平成十三年法律第九十五号)第二条第一項に規定する電子消費者契約に該当する場合その他主務省令で定める場合にあつては、当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法により表示していた場合)には、この限りでない

契約不適合責任の特約(規則23条5号)の表示との関係

特商法表記の表示事項の中には、契約不適合責任に関する特約(規則23条5号)というのもありますが、これとの違いを対比的にみると、

  • 本号は商品に契約不適合がない・・(事業者に契約違反がない)ケースの話、規則23条5号は契約不適合がある・・(事業者に契約違反がある)ケースの話
  • 本号は絶対的表示事項、規則23条5号は任意的表示事項

のようになっています。

▽逐条解説 第11条解説3-⑸-注

 本号の規定のうち、商品の返品に係る内容については、引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合し、販売業者に契約違反のない状態において、返品を認めるか否か、その際の条件は何か、送料の負担の有無等の表示を義務付ける規定であり、他方、省令第23条第5号は、引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任について特約する場合にその旨の表示を義務付ける規定である。
 前者は絶対的表示事項であり、後者は民商法一般原則によらず特約する場合のみ表示することを義務付けた表示事項である。

事業者の氏名又は名称、住所、電話番号(規則23①)

(通信販売についての広告)
第二十三条
 法第十一条第六号の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称住所及び電話番号

これは、要するに事業者の表示のことです。事業者を表示するというのは一見当たり前のようですが、けっこう重要です。

通信販売というのは、要するに、遠隔地にいる者の間でのやり取り(=通信)による販売なので、非対面で行われます。そのため、当事者の確定のために(責任の所在を明らかにするために)、この記載事項が重要になるわけです。

氏名」は戸籍上の氏名です。「名称」は、個人の場合は商業登記簿に記載された商号、法人の場合は登記簿上の名称とされています。

通称や屋号、サイト名のみの記載は認められません。

住所」は、個人も法人も、現に活動している住所(営業上の活動の拠点となる場所)を正確に記載します。いわゆるレンタルオフィス等であっても、現に活動している住所といえる限り、法の要請を満たすと考えられるとされています(逐条解説 第11条解説3-⑹-①)。

一方、郵便により連絡をとることはできるといっても、郵便局の私書箱では住所を記載したことにはなりません(通信販売広告Q&A19)。

電話番号」については、確実に連絡が取れる番号を記載する必要があります。

形式的に電話番号を記載していても、使用されていない・一切つながらない・意図的に常に電話を取らない状態にしている場合等は、確実に連絡が取れる番号を記載したことにはなりません。

PF事業者・VO等の利用

 上記のうち「住所」と「電話番号」については、特に個人事業者が通信販売を行う場合等において、プラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所及び電話番号を連絡先として表示することがありますが、一定の措置が講じられ、上記の要請を満たす場合には、「住所」「電話番号」の記載として認められるとされています。

 一定の措置としては、

  • 通信販売に係る取引の活動がプラットフォーム上で行われること
  • 通信販売に係る取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことにつき、PF事業者・VO運営事業者と個人事業者の間で合意がなされていること
  • PF事業者・VO運営事業者が個人事業者の現住所及び本人名義の電話番号を把握しており、確実に連絡が取れる状態となっていること

が挙げられています。

通信販売広告Q&A18|特定商取引法ガイド

 私は個人事業者ですが、バーチャルオフィス等の住所及び電話番号を表示することは可能でしょうか。

 特定商取引法に基づき広告に表示することとされている住所及び電話番号は、事業を行う上で、トラブルが生じた場合や消費者から問合せがある場合の対応等に備えるためのものです。
 そのため、「住所」については現に活動している住所、「電話番号」については確実に連絡が取れる番号を表示する必要がありますが、以下のような措置が講じられ、住所及び電話番号について上記の要件が満たされる場合においては、通信販売の取引の場を提供するプラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられます。

…(略)…

 ただし、個人事業者、プラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実であり、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、特定商取引法上の表示義務を果たしたことにはなりません

結び

今回は、特定商取引法を勉強しようということで、特商法表記のうち絶対的表示事項について見てみました。

絶対的表示事項は、常に表示しなければならない事項なので、

〇販売者はどこの誰?連絡先は?(事業主の表示)
〇代金はいくら?送料は?(代金の額、送料が別途あるなら送料)
〇代金はいつまでに払えばいい?支払方法は?(代金の支払時期と支払方法)
〇いつまでに商品は手元に届く?(商品やサービスの提供時期)
〇返品はできるのか?できるならその内容は?(申込みの撤回・売買契約の解除に関する事項)

といった、まさに根本的な事項の記載が求められるようになっています。

消費者庁の「特定商取引法ガイド」の通販広告表示事項解説編が全体的に充実しており読みやすいので、おすすめです。

通信販売広告について|通信販売|特定商取引法ガイド
通信販売広告について|通信販売|特定商取引法ガイド

www.no-trouble.caa.go.jp

また、郵便局HPにもECサイトに関する特商法表記をわかりやすくまとめたページがあり、こちらもおすすめです。

ECサイトは特商法の対象!特定商取引法に基づく表記の仕方をわかりやすく解説 | 解説法人のお客さま | 日本郵便
ECサイトは特商法の対象!特定商取引法に基づく表記の仕方をわかりやすく解説 | 解説法人のお客さま | 日本郵便

www.post.japanpost.jp

任意的表示事項については、以下の関連記事にくわしく書いています。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

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参考サイト・関連団体

参考文献

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