今回は、インサイダー取引規制を勉強しようということで、情報受領者の禁止行為について見てみたいと思います。
インサイダー取引規制には、大きく「会社関係者」と「公開買付者等関係者」に対する規制がありますが、情報受領者の禁止行為は、これらの者から第1次的に情報を受けた者に対する規制になります。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
情報受領者
情報受領者とは、会社関係者や公開買付者等の関係者から重要事実の伝達を受けた者のことで、例えば家族、同僚などです。
情報自体はいくらでも広がっていくので、
会社関係者からAさん(第1次情報受領者)が伝達を受け、
↓
さらにAさんがBさん(第2次情報受領者)に伝達して、
↓
さらにBさんがCさん(第3次情報受領者)に伝達して、
↓
さらに…以下同じ
というふうに無限に連なっていく可能性がありますが、規制対象となっているのは、第1次情報受領者のみです。
インサイダー取引規制には、大きく「会社関係者」と「公開買付者等関係者」に対する規制があるので、それぞれに、情報受領者に対する規制が設けられています。
以下、順に見てみます。
会社関係者からの情報受領者(法166条3項)
会社関係者からの情報受領者には、
- 会社関係者(元会社関係者を含む)から当該会社関係者が知った重要事実の伝達を受けた者
- 職務上伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、職務に関し当該重要事実を知ったもの
の2つがあります。
①の「伝達を受けた者」は、伝達がなされる関係性には特に限定がなく、仕事上の関係でも、プライベートの関係でも、その他(ex.飲み会の席上)でも、情報受領者として規制の対象とされ得ます。
②の「他の役員等」は、実質的には第2次情報受領者ともいえますが、規制対象となる情報受領者に含めて整理されています。ただ、こちらは、「伝達を受けた者」は「職務上」に限られています。
▽金商法166条3項(※【 】は管理人注)
3 【①】会社関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項において同じ。)から当該会社関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者(同項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知つたものを除く。)又は【②】職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない。
簡略化しつつ分けて読むと、
【主体】
①会社関係者(元会社関係者を含む)から当該会社関係者が知つた重要事実の伝達を受けた者
又は
②職務上伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、職務に関し当該重要事実を知ったもの
は
【行為】
〇当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない
のようになっています。
公開買付者等関係者からの情報受領者(法167条3項)
こちらも、上記の会社関係者の場合とだいたいパラレルです。
公開買付者等関係者からの情報受領者には、
- 公開買付者等関係者(元公開買付者等関係者を含む)から当該公開買付者等関係者が知った公開買付け等事実の伝達を受けた者
- 職務上伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、職務に関し当該公開買付け等事実を知つたもの
の2つがあります。
①の「伝達を受けた者」は、伝達がなされる関係性には特に限定がなく、仕事上の関係でも、プライベートの関係でも、その他(ex.飲み会の席上)でも、情報受領者として規制の対象とされ得ます。
②の「他の役員等」は、実質的には第2次情報受領者ともいえますが、規制対象となる情報受領者に含めて整理されています。ただ、こちらは、「伝達を受けた者」は「職務上」に限られています。
▽金商法167条3項(※【 】は管理人注)
3 【①】公開買付者等関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項及び第五項において同じ。)から当該公開買付者等関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実(以下この条、次条第二項、第百七十五条の二第二項及び第百九十七条の二第十五号において「公開買付け等事実」という。)の伝達を受けた者(第一項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該公開買付け等事実を知つたものを除く。)又は【②】職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該公開買付け等事実を知つたものは、当該公開買付け等事実の公表がされた後でなければ、同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る買付け等をしてはならず、同項に規定する公開買付け等の中止に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る売付け等をしてはならない。
簡略化しつつ分けて読むと、
【主体】
①公開買付者等関係者(元公開買付者等関係者を含む)から当該公開買付者等関係者が知つた公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実(「公開買付け等事実」)の伝達を受けた者
又は
②職務上伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、職務に関し当該公開買付け等事実を知つたもの
は
【行為】
〇当該公開買付け等事実の公表がされた後でなければ
〇公開買付け等の実施に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る買付け等をしてはならず
〇公開買付け等の中止に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る売付け等をしてはならない
のようになっています。
結び
今回は、インサイダー取引規制を勉強しようということで、情報受領者の禁止行為について見てみました。
インサイダー取引規制については、以下のような解説ページがあります。
▽参考リンク
・内部者取引|証券取引等監視委員会HP
・インサイダー取引|日本取引所グループHP
インサイダー取引規制に関する記事は、以下のページにまとめています。
▽インサイダー取引規制
-
インサイダー規制 - 法律ファンライフ
houritsushoku.com
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 金商法(「金融商品取引法」)
- 金商法施行令(「金融商品取引法施行令」)
- 取引規制府令(「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」)
- インサイダー取引に関するQ&A(金融庁、証券取引等監視委員会)
- 情報伝達・取引推奨規制に関するQ&A(金融庁)
日本取引所グループ
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