ここ最近、インサイダー取引に関するニュースが続いてますね。
何というか血の通ってないコメントで申し訳ないですが、インサイダー取引規制をみるときのお手本になりそうな事案だったので、これを題材にさらっと見てみたいと思います。
最近相次いだインサイダー取引ニュース3選
最近相次いだインサイダー取引ニュースですが、主なものは以下の3つかと思います。
▽参考リンク
〇裁判官をインサイダー取引容疑で強制調査 金融庁出向中|日本経済新聞HP(2024/10/19)
〇東証、情報管理に深刻な綻び 社員インサイダー取引疑惑|日本経済新聞HP(2024/10/23)
〇三井住友信託、元社員にインサイダー取引疑い 会社発表|日本経済新聞HP(2024/11/01)
以下、順にざっと内容をまとめてみます。
金融庁出向中の裁判官の件
TOB情報を利用した株取引を行ったことが疑われており、調査の結果、数十万円の利益を得た可能性が示唆されています。
2024年10月、金融庁に出向中の裁判官が、インサイダー取引の疑いで証券取引等監視委員会(SESC)の調査を受けていることが報道されました。この裁判官は、金融庁で上場企業のTOB(株式公開買付)関連の業務に携わっており、未公開情報に基づいて特定銘柄の株式を取引したとの疑いが報道されています。
その後の報道では、総額では数百万円規模の利益を得た可能性も指摘されています。
▽参考リンク
裁判官インサイダー、出向後は担当のTOB関連企業が中心に…株取引の規定なく「不正は想定外」|読売新聞オンライン(2024/11/06)
この場合、裁判官は金融庁に出向中とのことなので、「公開買付者等関係者」(金商法167条1項3号の準内部者)として、インサイダー取引の禁止(法167条1項)が問題となると考えられます。
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インサイダー取引規制|公開買付者等関係者の禁止行為
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東京証券取引所の社員の件
企業のTOB(株式公開買い付け)の未公開情報を親族に提供し、その親族が利益を得たと伝えられています。
東京証券取引所の「適時開示」担当部署の若手社員が業務で知り得た企業のTOB(株式公開買い付け)の未公開情報を親族に伝えたとして、証券取引等監視委員会の調査を受けました。この親族は提供された情報を基に株の売買を行い、数十万円以上の利益を得たとみられていました。発覚後、社員は機密情報を扱う部署から外されたとのこと。
その後の報道では、親族は600万円超の利益を得た可能性も指摘されています。
▽参考リンク
東証社員インサイダー、親族利得600万円超か TOB伝達|日本経済新聞HP(2024/11/07)
このケースでは、社員本人は、「適時開示」担当部署とのことなので、「公開買付者等関係者」(金商法167条1項3号の準内部者)として、情報伝達行為の禁止(法167条の2第2項)が問題となると考えられます。
情報伝達行為の禁止に触れるには、主観的要件(「売買等をさせることにより当該他人に利益を得させ、又は当該他人の損失の発生を回避させる目的」)が必要ですが(通常の業務などに支障を生じないようにするため主観的要件を課している)、ニュースにあるような経緯からすると、世間話であったとか、業務上必要な伝達行為であったとかの可能性は低いように思われます。
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これに対して、親族は情報受領者にあたり、情報受領者の取引禁止(法167条3項。公開買付者等関係者からの情報受領者の禁止行為)が問題となると考えられます。
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三井住友信託銀行の元社員の件
顧客情報を基にしたインサイダー取引の疑いで、複数回の取引を行い、不正な利益を得たとされています。
2024年11月1日、三井住友信託銀行は元管理職社員がインサイダー取引を行っていた疑いで解雇されたと発表しました。この社員は業務を通じて知り得た未公開情報を基に、他社の株式を複数回取引していたとされています。本人が自己申告し、社内調査で発覚したとのこと。
具体的な事情は明らかでないところがありますが、元社員は業務を通じて知り得た未公開情報を利用していたとのことなので、会社関係者からの情報受領者として、情報受領者の取引禁止(法166条3項。会社関係者からの情報受領者の禁止行為)が問題となると考えられます。
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結び
ちょっとややこしいところもありましたが、最近のインサイダー取引ニュースを題材に、インサイダー取引規制についてざっと見てみました。
主体が会社関係者や公開買付等関係者といった内部者なのか情報受領者なのか、対象となった情報が重要事実(決定事実、発生事実、決算情報)なのか公開買付け等事実なのか、などにより、適用法条が異なってきます。
ネット上には以下のような解説もあります。
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情報伝達・取引推奨による内部者取引-東証職員によるインサイダー取引疑惑 |ニッセイ基礎研究所
www.nli-research.co.jp
[注記]
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