犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|取引記録の作成・保存

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、取引記録の作成・保存について書いてみたいと思います。

 

ではさっそく。なお、引用部分の太字や下線などは管理人によるものです。

 

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

 

取引記録の作成・保存

特定事業者は、特定業務に係る取引を行った場合、少額の取引などを除き、直ちに、取引記録を作成し、7年間保存しなければならない。

 

これを取引記録の作成・保存義務といい、法7条に定められている。

 

(取引記録等の作成義務等)
第七条 特定事業者(次項に規定する特定事業者を除く。)は、特定業務に係る取引を行った場合には、少額の取引その他の政令で定める取引を除き、直ちに、主務省令で定める方法により、顧客等の確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の主務省令で定める事項に関する記録を作成しなければならない。
2 (略)
3 特定事業者は、前二項に規定する記録(以下「取引記録等」という。)を、当該取引又は特定受任行為の代理等の行われた日から七年間保存しなければならない。

 

なお、2項では特定事業者のうちいわゆる士業者について書かれているのだが、本記事では割愛する。

 

1項は、取引記録の作成について書いている。内容を整理すると、

内容 文言 政令・主務省令
対象となる取引の範囲 「特定業務に係る取引を行った場合」  
  適用除外:「少額の取引その他の政令で定める取引」 令15条、規則22条
作成のタイミング 「直ちに」  
作成方法 「主務省令で定める方法」 規則23条
記録事項 「主務省令で定める事項」
例示①:「顧客等の確認記録を検索するための事項」
例示②:「当該取引の期日及び内容」
規則24条

という感じである。

 

3項は、取引記録の保存について書いている。内容を整理すると、

内容 文言
起算点 特定業務に係る取引の行われた日
保存の期間 「7年間」

という感じである。

 

上記で見たとおり、具体的なところは主務省令つまり犯収法施行規則に定められているので、規則を見ていくことになる。

 

対象となる取引の範囲

特定業務に係る取引

記録の対象となる取引は、先ほど見たとおり、「特定業務に係る取引」である。

 

ここでのポイントは、「特定業務に係る取引」の範囲は、取引時確認の対象となる「特定取引」よりも広い、ということである。
(「特定業務」と「特定取引」は意味が違う。詳しくはこちらの関連記事)

 

ざっくりいえば、「特定取引」は、特定業務のうち本人確認を含む取引時確認が必要とされている取引、という感じだが、取引記録の作成範囲はこれより広い。
(「特定業務に係る取引」とされているように、少なくとも概念的には広い)

 

取引時確認の義務が課せられている取引とは範囲が異なる

 

もうひとつのポイントは、逆にいうと、業務のなかでも、「特定業務に係る取引」なので、もちろん、あらゆる取引の内容を記録せよと言っているのではない、ということである。

 

正式な解説を見てみる。JAFICの解説では、

上記のとおり、取引記録等の作成・保存が必要なのは特定業務に係る取引についてであるため、

特定取引等に当たらない取引も、特定業務に含まれるものであれば、少額の取引等を除き、取引記録の作成が必要となる

特定業務以外の業務に係る取引を行ったとしても、取引記録を作成・保存する必要はない

ことに留意してください。

(※)JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要(令和2年4月1日時点)」40頁

と解説されている。

 

管理人的にひと言でまとめると、当該事業者の全ての取引を記録する必要はないのだが、本人確認が必要な取引の範囲よりは広い、ということである。

 

そんなにいっぱい記録するのか…と思うかもしれないが、実際のところは、以下でみる適用除外という形で、かなり除外される。

 

適用除外(令15条、規則22条)

冒頭で見たとおり、特定業務に係る取引から、「少額の取引その他の政令で定める取引を除き」とされている。

 

そこで、政令を見てみる。施行令15条1項である。
(※なお、2項では特定事業者のうちいわゆる士業者について書かれているのだが、本記事では割愛する)

 

1号と2号は、特定事業者全てに共通の内容で、

  • 財産の移転を伴わない取引
  • 1万円以下の財産の移転に係る取引

が記録義務から除外されている。

 

3号は、特定事業者の種類プロパーの内容である。

 

3号イは、金融業者(1号〜37号の特定事業者)で、3号ロは、宝石・貴金属等取扱事業者(41号の特定事業者)のことである。

 

4号で、その他は主務省令に委任、となっている。

 

(少額の取引等)
第十五条 法第七条第一項に規定する政令で定める取引は、次に掲げるものとする。
一 財産移転(財産に係る権利の移転及び財産の占有の移転をいう。以下この条において同じ。)を伴わない取引
二 その価額が一万円以下の財産の財産移転に係る取引
三 前号に掲げるもののほか、次のイ又はロに掲げる特定事業者の区分に応じ、当該イ又はロに定める取引
 イ 法第二条第二項第一号から第三十七号までに掲げる特定事業者 二百万円以下の本邦通貨間の両替又は二百万円以下の本邦通貨と外国通貨の両替若しくは二百万円以下の旅行小切手の販売若しくは買取り
 ロ 法第二条第二項第四十一号に掲げる特定事業者 その代金の額が二百万円以下貴金属等の売買
四 前三号に掲げるもののほか、財産移転を把握するために法第七条第一項に規定する記録を作成する必要がない取引として主務省令で定めるもの
2 (略)

 

次に、4号から委任されている主務省令を見てみる。施行規則22条である。

 

(取引記録等の作成・保存義務の対象から除外される取引等)
第二十二条 令第十五条第一項第四号に規定する主務省令で定める取引は、次の各号に掲げるものとする。
一 自動預払機その他これに準ずる機械を通じてされる顧客等と他の特定事業者との間の取引(為替取引のために当該他の特定事業者が行う現金の支払を伴わない預金又は貯金の払戻しを除く。)
二 保険契約又は共済に係る契約に基づき一定金額の保険料又は共済掛金を定期的に収受する取引
三 当せん金付証票法(昭和二十三年法律第百四十四号)第二条第一項に規定する当せん金付証票又はスポーツ振興投票の実施等に関する法律(平成十年法律第六十三号)第二条に規定するスポーツ振興投票券の販売及び当該当せん金付証票に係る当せん金品又は当該スポーツ振興投票券に係る払戻金であって二百万円以下のものの交付
四 その代金の額が二百万円を超える法第二条第二項第四十一号に規定する貴金属等の売買のうち、当該代金の支払の方法が現金以外のもの
五 法第二条第二項第四十二号に規定する業務で現金を内容とする郵便物の受取及び引渡しに係るもの以外のものに係る取引
2 (略)

 

5号は、郵便物受取代行業者、電話受付代行業者、電話転送サービス事業者(42号の特定事業者)について書いている。

 

現金を内容とする「郵便物」の受取及び引渡しに係る業務のみを記録義務の対象としているので、結果として、電話受付代行業者、電話転送サービス事業者は記録義務をすべて除外されていることになる。

 

ということで、ここまでの内容を含みつつ整理すると、

特定事業者(法2条2項) 適用除外 令15条1項 規則22条1項
特定事業者全てに共通 財産の移動を伴わない取引(ex.金融業者での残高照会) 1号  
1万円以下の財産の移転に係る取引 2号  
特定事業者の種類ごと 金融業者(1号~37号) 200万円以下の両替
200万円以下の外貨両替
200万円以下のトラベラーズ・チェックの販売・買取
3号イ  
自動預払機その他これに準ずる機械を通じてされる顧客等と他の特定事業者との間の取引
保険契約または共済に係る契約に基づき一定金額の保険料または共済掛金を定期的に収受する取引
宝くじやスポーツくじなどの当選金付証票に係る当選金品または当該スポーツ振興投票券に係る払戻金であって200万円以下のものの交付
  1号~3号
宝石・貴金属等取扱事業者(41号) 代金額が200万円以下の宝石・貴金属等の売買 3号ロ  
代金額が200万円超の宝石・貴金属等の売買のうち、支払方法が現金以外のもの   4号
郵便物受取代行業者(42号) 現金を内容としない郵便物の受取及び引渡しに係る業務   5号
電話受付代行業者(42号) すべて除外
電話転送サービス事業者(42号) すべて除外

という感じである。

 

作成方法(規則23条)

記録媒体

規則23条は、取引記録の作成方法として、記録媒体(メディア)について定めている。

 

(取引記録等の作成方法)
第二十三条 法第七条第一項及び第二項に規定する主務省令で定める方法は、文書電磁的記録又はマイクロフィルムを用いて作成する方法とする。

 

内容を整理すると、

  種類 定義
記録媒体 文書  
電磁的記録 ①電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、
②電子計算機による情報処理の用に供されるもの
(※規則19条1項1号で定義されている)
マイクロフィルム  

という感じである。

 

様式

取引記録の様式については、確認記録と同様、特に制限はないとされている。

 

平成20年1月30日パブリックコメント(43頁)別紙2の2(13)エ|掲載ページはこちら

質問の概要 取引記録等について、様式や書式等はあるのか。

質問に対する考え方 取引記録等については規則第14条に定める事項が記録されていれば足り、様式や書式等は特にありません。

(※)管理人注:規則14条は現在は規則24条

 

記録事項(規則24条)

取引記録の記録事項は、規則24条に定められている。

 

1号~7号までと数が多いが、法7条1項で

顧客等の確認記録を検索するための事項当該取引の期日及び内容その他の主務省令で定める事項

とされているとおり、

 

概ね、

  • 顧客等の確認記録を検索するための事項(確認記録がない場合には、氏名その他の顧客等又は取引等を特定するに足りる事項)
  • 取引の日付、種類、財産の価額
  • 財産の移転を伴う取引にあっては、当該取引等及び当該財産の移転元又は移転先の名義その他の当該移転元又は移転先を特定するに足りる事項

といったグルーピングをすることができる。

 

取引記録の記録事項について、詳しくは以下の個別記事に書いている。

犯罪収益移転防止法を勉強しよう|取引記録の記録事項

続きを見る

 

保存期間

保存期間については、冒頭で見た法7条3項のみで、特に規則などでの定めはない。

 

記録の対象となった当該取引(特定業務に係る取引から少額の取引などを除いたもの)が行われた日から7年間である。

 

 

結び

今回は、犯罪収益移転防止法を勉強しようということで、取引記録の作成・保存について書いてみました。

 

なお、犯罪収益移転防止法の記事については、以下のページにまとめています。

犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ
犯罪収益移転防止法 - 法律ファンライフ

houritsushoku.com

 

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

とある法律職@転職×法務×弁護士

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。経歴:イソ弁、複数社(3社)でのインハウスローヤー、独立開業など。自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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