消費者法

特定商取引法を勉強しよう|特商法表記の任意的表示事項

今回は、特定商取引法を勉強しようということで、特定商取引法に基づく表記(法11条)のうち任意的表示事項について見てみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

任意的表示事項

特商法表記の表示事項には、常に記載しなければならない絶対的表示事項と、特約等がある場合には記載しなければならない任意的表示事項があります。

ここでいう「任意的」というのは、書いても書かなくてもいいという意味ではなく、一定の場合にのみ表示することが義務づけられる事項、という意味です。

どういう場合にどういう表示が必要かという形で並べてみると、以下のようになります。

どういう場合に必要?どういう表示が必要?
事業者が法人であり電子広告をする場合代表者又は通信販売に関する業務責任者の氏名(規則23②)
事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であり日本国内に事務所等を有している場合国内事務所等の所在場所と電話番号(規則23③)
申込みの期間に関する定めがある場合申込みの期間に関する定めがある旨と内容(法11④)
代金・送料以外に必要な手数料等がある場合代金・送料以外に必要な手数料等の内容と金額(規則23④)
契約不適合責任の特約がある場合契約不適合責任の特約の内容(規則23⑤)
商品又は役務を利用するため電子計算機が必要な場合必要な電子計算機の仕様及び性能その他の必要な条件(規則23⑥)
商品の売買契約を二回以上継続して締結する必要がある場合商品の売買契約を二回以上継続して締結する必要がある旨及び金額、契約期間その他の販売条件(規則23⑦)
販売数量の制限その他の特別な条件がある場合特別な条件の内容(規則23⑧)
広告の表示事項の一部を表示しない場合であって、法11条但書の書面を請求した者に当該書面に係る金銭を負担させるとき法11条但書の書面に係る金銭の額(規則23⑨)
通信販売電子メール広告をする場合販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス(規則23⑩)

以下、順に見てみます(※表示が必要な場面は黄色ハイライト)。

代表者又は通信販売に関する業務責任者の氏名(規則23②)

 販売業者又は役務提供事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者又は役務提供事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名

これは、電子広告を行う場合に事業者が法人であるときは、代表者または業務責任者の氏名を表示しなければならないというものです。責任の所在を明確にする趣旨になります。

電子情報処理組織を使用する方法」とは、インターネット上のウェブサイト、電子メール等を利用した広告を指し、要するに電子広告のことです。

代表者」は、代表取締役など、法人の代表権をもつ者のことです。「通信販売に関する業務の責任者」とは、通信販売に関する業務の担当役員や担当部長など、実務を担当する者の中での責任者を指し、必ずしも代表権を有さなくてもよいとされています(逐条解説 第11条解説3-⑹-②)。

国内事務所等の所在場所と電話番号(規則23③)

 販売業者又は役務提供事業者が外国法人又は外国に住所を有する個人であつて、国内にその行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この号、第七十一条第三号及び第百十二条第三号において「事務所等」という。)を有する場合には、当該事務所等の所在場所及び電話番号

これは、海外の事業者が日本国内に事務所を持つ場合、その所在場所と電話番号を表示しなければならないというものです。

通信販売を行う外国法人又は外国に住所を有する個人日本国内に事務所等を有している場合には、消費者からの問合せ等が容易になるよう、国内事務所等の所在場所及び電話番号についても表示することを義務づけています(逐条解説 第11条解説3-⑹-③)。

事業者の属性に関する表示の表示方法

 絶対的表示事項である「事業者の氏名又は名称、住所、電話番号」(規則23①)と合わせて、規則23条1号~3号は、いずれも事業者の属性に関するものになります。

 これらは、消費者が容易に認識することができるような文字の大きさ・方法をもって、容易に認識することができるような場所に表示しなければならないとされています(逐条解説 第11条解説3-⑹-③-注)。

 電子広告では、原則として画面上の冒頭部分に表示すべきであり(画面のスクロールや画面の切替えを要しない)、ただし、やむを得ず冒頭部分への表示を行うことができないときは、①冒頭部分から容易に表示箇所へ到達できる方法、又は②申込画面に到達する前に必ず経由するような方法を、あらかじめ講ずべきとされています。

 ①の容易に到達できる方法の該当・非該当の例として、以下のようなものが挙げられています。前者のリンクが一般的によく見かけるものです。

  • インターネット上のウェブサイトにおいて、広告をする画面上に、これらの事項が表示されていることが容易に判断できる表現(「特定商取引法に基づく表記」「会社概要」等)によりリンク画面切替えのためのタブが用意されている場合
  • インターネット・オークション等において、当該サイト内にこれらの事項を表示可能であるにもかかわらず、当該サイト外の自己のウェブサイトへのリンクを貼り、その中で表示しているような場合

申込みの期間に関する定めがある旨と内容(法11④)

 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容

これは、申込みに有効期限がある場合には、その期限を表示しなければならないというものです。

広告に有効期限が書かれていないので申し込んだものの、有効期限を過ぎており購入できなかったといったトラブルを防ぐ趣旨です。また、期間経過後に購入できなくなると消費者に誤認させるような不当な表示等を防止する観点から、申込期間を設けている場合には正しく表示することが求められます。

そのため、その表示にあたっては、申込みの期間に関する定めがある旨とその具体的な期間が消費者にとって明確に認識できるようにする必要があるとされており、例えば「今だけ」など具体的な期間が特定できないような表示では、表示したことにはなりません(逐条解説 第11条解説3-⑷)。

申込みの期間に関する定めがあるとき」とは、商品の販売等そのものに係る申込期間を設定する場合のことで、例えば、購入期限のカウントダウンや、期間限定販売など、一定期間を経過すると消費者が商品自体を購入できなくなるものが該当するとされています。

これに対して、期間に該当しない条件や、価格その他の取引条件に係る期間限定は対象外とされています。つまり、

  • 申込みについて期間に該当しない・・・・・・・・何らかの販売条件又は提供条件がある場合(ex. 個数限定販売)
    ←販売そのものに関する条件ではあるが、期間を限定しているわけではない
  • 価格その他の・・・・・・取引条件(ex. 価格のほか、数量、支払条件、特典、アフターサービス、付属的利益等)について、一定期間に限定して特別の定めが設けられている場合
    ←期間を限定しているが、販売そのものに関する条件ではない

は本号に該当しません。ただ、後述の「特別な条件」(規則23⑧)に該当する場合の表示は必要になります。

代金・送料以外に必要な手数料等の内容と金額(規則23④)

 法第十一条第一号に定める金銭以外に購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭があるときは、その内容及びその額

これは、代金と送料(=法11条1号に定める金銭)以外に必要な費用があるときは、その内容と金額を表示しなければならないというものです。

消費者が負担するのが当然な負担以外の負担を消費者に求める場合には、それらを全て表示することを要するという趣旨です(消費者が思わぬ出費を強いられることを防ぐ)。

例えば、工事費、組立費、設置費、梱包料、代金引換手数料等であり、表示例としては、

販売価格 ○○○円
送料 ○○円
工事費 ○○○円
梱包料 ○○○円

販売価格 ○○○円(送料を含む)
工事費・梱包料 ○○○円

といったものが挙げられています(逐条解説 第11条解説3-⑹-④)。

契約不適合責任の特約の内容(規則23⑤)

 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容

これは、契約不適合責任に関して特約(期間の短縮など)を設ける場合は、その内容を表示しなければならないというものです。

逆に、特約を設けず民商法の一般原則に従う場合は特に表示する必要はないことになります

特約の有効性については、別途、消費者契約法等の問題もあり得る点に留意が必要です(▷参考記事:契約不適合責任の免責条項)。

返品特約の表示(法11⑤)との区別

 商品の返品について表示するにあたっては、返品特約の有無等(法11⑤)の表示であるのか、契約不適合責任の特約(本号)の表示であるのか、あるいは両者を同時に表示したものであるのかを明確に区別できるように表示すべきとされています。

 例えば、

  • 返品特約の有無等(法11⑤)のみの表示である場合
    1. 「商品に欠陥がない場合であっても、全ての商品について○日間に限り、送料は購入者負担により返品に応ずる。」
    2. 「商品に欠陥がある場合を除き、返品に応じない。」
  • 両者を同時に表示したものである場合
    1. 「商品に欠陥がある場合に責任を負うとともに、商品に欠陥がない場合であっても全ての商品について○日間に限り、送料は購入者負担により返品に応ずる。」
    2. 「商品に欠陥がある場合は責任を負うが、商品に欠陥がない場合は返品に応じない。」

といった例が挙げられています(逐条解説 第11条解説3-⑸-注)。

 仮に両者の区別がつかない表示がなされた場合(ex. 「返品に応じない。」)は、返品特約の有無等(法11⑤)のみの表示と解釈されるだろうとされています。

必要な電子計算機の仕様及び性能その他の必要な条件(規則23⑥)

 磁気的方法又は光学的方法によりプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)を記録した物を販売する場合、又は電子計算機を使用する方法により映画、演劇、音楽、スポーツ、写真若しくは絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞させ、若しくは観覧させる役務を提供する場合、若しくはプログラムを電子計算機に備えられたファイルに記録し、若しくは記録させる役務を提供する場合には、当該商品又は役務を利用するために必要な電子計算機の仕様及び性能その他の必要な条件

これは、いわゆるソフトウェアに係る取引を行うに際しては、これらの商品や役務を利用するのに必要な電子計算機の動作環境を広告に表示しなければならないというものです。

ソフトウェアに係る取引では、当該ソフトウェアの動作環境についての情報を事前に入手できることが不可欠であるという趣旨です。

条文が長いですが、ソフトウェアに係る取引として、順に、

  1. ソフトウェアを記録した電磁記録媒体(CD-ROM、DVD、フロッピー等)を販売する場合
  2. コンピューターを使って映画、演劇、音楽、スポーツ、写真、絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞させたり、観覧させる役務を提供する場合
  3. ソフトウェアをダウンロードさせたり記録させる役務を提供する場合

という場合が並んでいます(黄色ハイライト部分参照)。

仕様及び性能その他の必要な条件」とは、ソフトウェアを利用するために必要な電子計算機の動作環境のことで、OSの種類、CPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量等のことです(逐条解説 第11条解説3-⑹-⑥)。

商品の売買契約を二回以上継続して締結する必要がある旨及び金額、契約期間その他の販売条件(規則23⑦)

 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約を二回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額契約期間その他の販売条件又は提供条件

これは、申込者が商品の売買契約等を2回以上継続して締結する必要がある場合の表示事項になります。

例えば、

「初回お試し価格」等と称して、通常価格よりも低い価格で商品を販売する旨が表示されているが、当該価格で商品を購入するためには、その後通常価格で○回分の定期的な購入が条件とされている

といったケースが挙げられています(逐条解説 第11条解説3-⑹-⑦)。

表示事項は、

  • 契約を2回以上継続して締結する必要がある旨
  • 契約金額
  • 契約期間
  • その他の販売条件
    ex. それぞれの商品の引渡時期や代金の支払時期等

となっています。

期間の定めを設けていない定期購入契約(購入者から解約の申入れがない限り契約が継続されるもの)の場合は、

  • 契約金額
    →例えば、半年分や1年分など、まとまった単位での購入価格を目安として表示するなどして、当該契約に基づく商品の引渡しや代金の支払が1回限りではないことを消費者が容易に認識できるようにすることが望ましい
  • 契約期間
    →当該契約が消費者から解約通知がない限り契約が継続する、無期限の契約である旨を示す必要がある

とされています。

なお、1回の契約で複数回の商品の引渡しや代金の支払を約することとなる場合等は、本号ではなく、法11条1号~3号(絶対的表示事項である、①販売価格/役務の対価、②代金の支払時期・方法、③商品の引渡時期/役務の提供時期)の問題であり、支払金額の総額も含めて、条件を全て正確に表示しなければならないとされています(逐条解説 第11条解説3-⑹-⑦)。

販売数量の制限その他の特別な条件の内容(規則23⑧)

 前四号に掲げるもののほか商品の販売数量の制限その他の特別の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件があるときは、その内容

これは、上記4号~7号以外にも、販売に関して特別な条件がある場合は、その内容を表示しなければならないというものです。

特別な条件」とは、例えば、販売数量に限定がある場合や、販売地域に限定がある場合、支払条件に限定がある場合(ex. クレジットカード限定)などがあります。

法11条但書の書面に係る金銭の額(規則23⑨)

 広告の表示事項の一部を表示しない場合であつて、法第十一条ただし書の書面又は電磁的記録を請求した者に当該書面又は電磁的記録に係る金銭を負担させるときは、その額

これは、広告を一部省略した場合のカタログ等請求料のことです。

特商法に基づく表記は、広告スペースに制約がある場合もあるため、表示事項を一部省略することが認められています(法11条但書)。この場合、消費者の請求に応じて、表示事項を記載した書面・電磁的記録(カタログ等)を遅滞なく交付することが省略の条件となっています。

本号は、その交付にあたってカタログ等に係る金銭の負担(カタログ代や送料)が必要な場合には、その額の表示を義務づけるものです。

販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス(規則23⑩)

 通信販売電子メール広告(法第十二条の三第一項第一号の通信販売電子メール広告をいう。以下同じ。)をするときは、販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス

これは、電子メール広告をするときは、事業者の電子メールアドレスを表示しなければならないというものです。

括弧書きは、電子メール広告におけるオプトイン規制のことを指しています。事業者は、消費者の請求に基づかずに、または承諾を得ないで、通信販売の電子メール広告をしてはならないとされています(法12条の3第1項1号)。

▽法12条の3第1項1号

(承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供の禁止等)
第十二条の三
 販売業者又は役務提供事業者は、次に掲げる場合を除き、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について、その相手方となる者の承諾を得ないで電子メール広告(当該広告に係る通信文その他の情報を電磁的方法により送信し、これを当該広告の相手方の使用に係る電子計算機の映像面に表示されるようにする方法により行う広告をいう。以下同じ。)をしてはならない
 相手方となる者の請求に基づき、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件に係る電子メール広告(以下この節において「通信販売電子メール広告」という。)をするとき。

つまり、本号は、このようにして消費者の請求または承諾を得て電子メール広告をする場合における、事業者の電子メールアドレスの表示義務を定めています。

結び

今回は、特定商取引法を勉強しようということで、特定商取引法に基づく表記のうち任意的表示事項について見てみました。

消費者庁の「特定商取引法ガイド」の通販広告表示事項解説編が全体的に充実しており読みやすいので、おすすめです。

通信販売広告について|通信販売|特定商取引法ガイド
通信販売広告について|通信販売|特定商取引法ガイド

www.no-trouble.caa.go.jp

また、郵便局HPにもECサイトに関する特商法表記をわかりやすくまとめたページがあり、こちらもおすすめです。

ECサイトは特商法の対象!特定商取引法に基づく表記の仕方をわかりやすく解説 | 解説法人のお客さま | 日本郵便
ECサイトは特商法の対象!特定商取引法に基づく表記の仕方をわかりやすく解説 | 解説法人のお客さま | 日本郵便

www.post.japanpost.jp

絶対的表示事項については、以下の関連記事にくわしく書いています。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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参考サイト・関連団体

参考文献

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