法務転職

弁護士の転職物語⑥-インハウス転職のポジティブ面-

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今回はインハウス転職の,ポジティブな面を指摘したい。

それは端的にいうと,「法律事務所ではできない経験ができる」ということである。
(※ここでは「法律事務所」=「紛争処理」という前提)

法務にいくというと,よく周りからある反応は,「紛争のことよくわかってないと法務もできないでしょ」というものであるが,それは違う。

違う,とまでいうと言い過ぎなのだが,法務には法務固有の性質のようなものがあり,紛争からの逆算だけを考えれば良い訳ではない。

トラブルになったときはこうだから…というのは考慮要素のひとつにすぎず,大事なのは,その組織の人数(マンパワー)や歴史(出来てから何年なのかというノウハウの蓄積)等に合わせて,日常的に無理なく合理的に続けられる仕組みを模索し,構築するということである。

こういった仕組み構築に関する法務的アウトプット(成果物)は,社内規程やマニュアルやQ&Aであったり,行政からリリースされるガイドラインであったり,内部監査であったり,全社的な社内ITシステムであったりするので,裁判において必要な技能とはまるで異なる。紛争処理を何年やっていても身につくものではないと思う。

上記の”よく周りからある反応”は,あたかも,紛争に関する経験が多ければ予防も未然にできる,と完結してしまいそうな危うさを感じる。そうであれば歴20~30年の弁護士が法務にいけばすぐベストな働きが出来そうに聞こえるが,とてもそうは思えない。

ちなみに,法律事務所の側から想像するとすれば,私個人の感覚でいうと,法務は,法律事務所でいうと事務局の性質に似ている(ちなみに,法務で働く人と事務局で働く人にはキャラクター的にもよく似た人がいる。そういう風になっていくものなのだろうか)。

法務=法律事務,と考えれば当然かもしれない。細かいルールを把握しておき,都度都度きちんと処理していくのが基本という印象である。

ただ,紛争対応もしなければならないので,そのときは外注の弁護士と協働して対応することになるし,また,社内調査を行う必要が出てきたときは,法務は検察機構に変貌することになる。このあたりは当然ながら事務局にはない作用である。

依頼者側から見る弁護士像や,捜査機関としての活動なども,法律事務所における通常業務ではあまり経験しないことであると思う。

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弁護士の転職物語⑦-訟務と法務の違い-

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