今回は、暴力団対策法(暴対法)ということで、暴対法で禁止されている行為のうち準暴力的要求行為について見てみたいと思います。
前の記事では、指定暴力団員による暴力的要求行為について解説しました。暴力団員による不当な要求が禁止されていることはわかったとして、では暴力団員でなければ関係ないのでしょうか。
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暴力団対策法|暴対法の中核「暴力的要求行為」(全27類型)の具体的内容を解説
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実は、暴対法には一般人も含めて対象となる準暴力的要求行為の禁止という規定があります(法12条の5)。本記事は、この準暴力的要求行為について、具体的にどんな人がどんなことをすると違法となるのかを解説します。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
準暴力的要求行為とは
準暴力的要求行為とは、簡単にいうと、指定暴力団等の暴力団員以外の者(つまり一般人も含む)が、指定暴力団等の威力を示して、不当な要求をすることです。
不当な要求の内容は、前の記事で解説した暴力的要求行為と同じ全27類型(みかじめ料の要求や下請け参入の強要、不当なクレームによる損害賠償要求など)が該当します。
▽暴対法2条8号(※【 】は管理人注)
八 準暴力的要求行為 一の指定暴力団等の暴力団員以外の者が当該指定暴力団等又はその第九条に規定する系列上位指定暴力団等の威力を示して同条各号に掲げる行為【=暴力的要求行為】をすることをいう。
つまり、「俺のバックには〇〇組がいるぞ」と暴力団の名前をチラつかせたりして、相手を怖がらせて借金を取り立てたり、お金を要求したりする行為のことです
このように、暴力的要求行為は指定暴力団員によるいわゆる民事介入暴力ですが、準暴力的要求行為はこれらを指定暴力団員以外の者が行う場合です。
準暴力的要求行為が禁止される者(法12条の5)
では、一般人が誰でも「〇〇組の者だ」と言えばこの暴対法の規定に抵触するのでしょうか(もちろん、別の法律で恐喝や脅迫になる可能性も高いですが)。
暴対法で準暴力的要求行為をしてはいけないと禁止されているのは、指定暴力団等と一定の関係にある者です(法12条の5)。具体的には以下のような者が該当します。
準暴力的要求行為が禁止される者
- 過去に暴力団を利用して命令を受けた者(1項):
- 指定暴力団員に「あいつを脅してくれ」と不当要求を依頼し、公安委員会から再発防止命令を受けてから3年以内の者(1号)
- 指定暴力団員による暴力的要求行為を手伝って(幇助)、中止命令を受けてから3年以内の者(2号)
- 以前に自ら準暴力的要求行為を行って、中止命令や再発防止命令を受けてから3年以内の者(3号)
- 指定暴力団員から「準暴力的要求行為をしろ」と頼まれ、警察から「やってはいけない」と指示を受けてから3年以内の者(4号)
- 暴力団にみかじめ料などを払っている者(1項):
- 指定暴力団員との間で、組の威力を示すことを容認してもらう代わりにお金(金品等)を支払うという約束(合意)をしている者(5号)
- 暴力団の威力を示すことを常習としている特定の関係者(2項)
さらに、指定暴力団の威力を示すことを常習としている者で、以下のいずれかに当てはまる者も禁止されています- 元組員:その指定暴力団の組員を辞めてから5年以内の者(1号)
- 共犯者:その指定暴力団の組員と一緒に犯罪(暴力的不法行為等)をして刑に処せられ、刑の執行を終えてから5年以内の者(2号)
- 資金提供者:その指定暴力団の組員に対して、継続的に、または反復してお金をあげたり貸したりしている者(密接交際者など)(3号)
- フロント企業関係者:指定暴力団員や上記の特定の関係者が代表を務めたり、運営を支配したりしている会社(法人などの団体)の役員や従業員(4号)
このように、指定暴力団員でない者であっても、特定の指定暴力団等と一定の関係にある者が、その指定暴力団等の威力を示して暴力的要求行為を行うこと(準暴力的要求行為)が禁止されています。
要するに、暴力団を利用してトラブルを解決しようとする一般人や、実質的に暴力団とズブズブの関係にある周辺者(元組員やフロント企業など)が、暴力団の看板を使って悪さをすることを禁止しようとしています
条文も確認してみます。
▽暴対法12条の5(※【 】は管理人注)
(準暴力的要求行為の禁止)
第十二条の五 次の各号のいずれかに該当する者は、当該各号に定める指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等に係る準暴力的要求行為をしてはならない。
一 第十二条第一項の規定による命令【=暴力的要求行為の要求・依頼・教唆に対する中止命令】を受けた者であって、当該命令を受けた日から起算して三年を経過しないもの 当該命令において防止しようとした暴力的要求行為の要求、依頼又は唆しの相手方である指定暴力団員の所属する指定暴力団等
二 第十二条第二項の規定による命令【=暴力的要求行為の要求・依頼・教唆に対する再発防止命令】を受けた者であって、当該命令を受けた日から起算して三年を経過しないもの 当該命令に係る暴力的要求行為をした指定暴力団員の所属する指定暴力団等
三 次条の規定による命令を受けた者であって、当該命令を受けた日から起算して三年を経過しないもの 当該命令の原因となった準暴力的要求行為においてその者が威力を示した指定暴力団等
四 前条第二項の規定による指示を受けた者であって、当該指示がされた日から起算して三年を経過しないもの 当該指示に係る第十二条の三の規定に違反する行為をした指定暴力団員の所属する指定暴力団等
五 指定暴力団員との間で、その所属する指定暴力団等の威力を示すことが容認されることの対償として金品等を支払うことを合意している者 当該指定暴力団等
2 一の指定暴力団等の威力を示すことを常習とする者で次の各号のいずれかに該当するものは、当該指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等に係る準暴力的要求行為をしてはならない。
一 当該指定暴力団等の指定暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
二 当該指定暴力団等の指定暴力団員が行った暴力的不法行為等若しくは第八章に規定する罪に当たる違法な行為に共犯として加功し、又は暴力的不法行為等に係る罪のうち譲渡し若しくは譲受け若しくはこれらに類する形態の罪として国家公安委員会規則で定めるものに当たる違法な行為で当該指定暴力団等の指定暴力団員を相手方とするものを行い刑に処せられた者であって、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しないもの
三 当該指定暴力団等の指定暴力団員に対し、継続的に又は反復して金品等を贈与し、又は貸与している者
四 次のイからハまでのいずれかに掲げる者がその代表者であり若しくはその運営を支配する法人その他の団体の役員若しくは使用人その他の従業者若しくは幹部その他の構成員又は次のイからハまでのいずれかに掲げる者の使用人その他の従業者
イ 当該指定暴力団等の指定暴力団員
ロ 前項各号に掲げる者(当該指定暴力団等がそれぞれ当該各号に定める指定暴力団等である場合に限る。)
ハ 当該指定暴力団等の威力を示すことを常習とする者で前三号のいずれかに該当するもの
準暴力的要求行為の要求・依頼・教唆・幇助の禁止(法12条の3)
準暴力的要求行為について、暴対法は、一般人側だけでなく暴力団員側も規制しています。つまり、暴力団員が一般人に”俺の名前を使え”と頼むのもアウトということです。
指定暴力団員が、他の者(組員以外の一般人など)に対して、自らの組の威力を示して不当要求をしてこいと要求・依頼・そそのかしたり、他の者が準暴力的要求行為を行うのを手助けしたりすることは禁止されています。これは、暴力団が自分たちは表に出ず、周辺の者を使って不当要求をするという隠れ蓑の手口を防ぐためのルールです。
▽暴対法12条の3
(準暴力的要求行為の要求等の禁止)
第十二条の三 指定暴力団員は、人に対して当該指定暴力団員が所属する指定暴力団等若しくはその系列上位指定暴力団等に係る準暴力的要求行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、又は人が当該指定暴力団員が所属する指定暴力団等若しくはその系列上位指定暴力団等に係る準暴力的要求行為をすることを助けてはならない。
違反するとどうなるのか:中止命令と再発防止命令
準暴力的要求行為が行われた場合、暴力的要求行為のときと同様に行政処分の対象となります。
相手方の生活や業務の平穏が害されている場合、公安委員会は直ちに中止命令を出すことができます。また、すでに行為が終わっていても、また同じことをするおそれがあると判断されれば、1年を超えない範囲内で期間を定めて再発防止命令が出されます(法12条の6)。
この命令を無視して、出された命令に違反して再び行為を行った場合は、ここで刑罰の対象となり、3年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金(またはその両方)という刑罰が科せられます(法47条4号)。
結び
暴対法は、暴力団員本人の行動を縛るだけでなく、暴力団の威力を借りようとする一般人や、暴力団の周辺で活動する者にも網をかけています。”自分は組員じゃないから、組の名前を出して脅しても暴対法には引っかからないだろう”という考え方は通用しない仕組みになっているわけです。
企業や市民にできることは、反社会的勢力を恐れない、資金を提供しない、そして絶対に利用しないということです。もしトラブルに巻き込まれそうになったら、警察や暴力追放運動推進センター(暴追センター)に相談することが大切です。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 暴対法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)※法律情報はこちら
- 暴対法施行令(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行令」)
- 暴対法規則(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則」)
- 政府指針(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」)|犯罪対策閣僚会議HP(≫掲載ページ)
- 指針解説(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説」)|犯罪対策閣僚会議HP(≫掲載ページ)
- 組織犯罪対策要綱|警察庁HP(≫掲載ページ)
- 東京都暴排条例|東京都例規集データベース
- 東京都暴排条例Q&A(「東京都暴力団排除条例 Q&A」)|警視庁HP
参考文献
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