今回は、暴対法(暴力団対策法)ということで、暴対法で禁止されている行為のうち暴力的要求行為について見てみたいと思います。暴対法の規制のメインともいえる部分です。
ニュースで指定暴力団員が暴対法に基づく中止命令を受けたと報道される際、その原因の多くはこの暴力的要求行為です。本記事では、具体的にどんな行為がこれにあたるのかを解説します。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
暴力的要求行為とは
暴力的要求行為とは、簡単にいうと、暴力団が持つ威力(組織的な力や社会的威圧感)を背景に、指定暴力団員が行う不当要求行為のことです。必ずしも実際に暴行を加える必要はありません。
定義としては、法9条に違反する行為とされており(法2条7号)、法9条では、1号から27号まで多様な行為類型が禁止の対象となっています。
▽暴対法2条7号
七 暴力的要求行為 第九条の規定に違反する行為をいう。
典型例としては、みかじめ料・寄付金等の不当要求、下請受注や資材納入の強要、事故示談への不当介入、弱みにつけ込んだ口止め料要求などが挙げられます。
暴力的要求行為の要件
上記のように、暴対法において暴力的要求行為となるのは、指定暴力団員が、自分の所属する指定暴力団等の威力を示して、法律で定められた27パターンの不当要求行為を行うことです。
ここでポイントになるのが、威力を示すという点です。「俺は〇〇組の者だ!」と名乗ったり、組の代紋が入った名刺やバッジを見せたりするような明確な言動のほか、暴力団の縄張りであることが知られている場所で「この辺りを仕切ってるもんだ」と凄むなど、相手に暴力団員だと認識させる行為は威力を示したことになります。
また、通常のビジネスのやり取りと区別するため、一部の行為についてはみだりに(社会的妥当性を欠く方法で)行われたり、相手が拒絶しているにもかかわらず行われたりすることが要件となっています。
暴力的要求行為の類型(法9条)
暴対法では、暴力的要求行為を全27類型に分けて細かく規定しています(法9条1号~27号)。
▽暴対法9条
(暴力的要求行為の禁止)
第九条 指定暴力団等の暴力団員(以下「指定暴力団員」という。)は、その者の所属する指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等(当該指定暴力団等と上方連結(指定暴力団等が他の指定暴力団等の構成団体となり、又は指定暴力団等の代表者等が他の指定暴力団等の暴力団員となっている関係をいう。)をすることにより順次関連している各指定暴力団等をいう。以下同じ。)の威力を示して次に掲げる行為をしてはならない。
一~二十七 (略)
代表的な例
ここではまず、企業や一般市民が巻き込まれやすい代表的なものをいくつかピックアップして紹介します(管理人が適宜整理しています)。
- 日常のビジネスや生活に介入してくる行為
- みかじめ料や用心棒代の要求:縄張り内で商売をしているお店に「ここで営業させてやるから」とショバ代(みかじめ料)を要求したり、無理やり観葉植物やパーティー券を買わせたり、用心棒代を要求する行為
- 口止め料の要求:企業のスキャンダルや不祥事につけこみ、「バラされたくなかったら…」と口止め料を要求する行為
- 下請け参入などの強要:建設工事などで、元請け業者が断っているのに「うちの会社を下請けに入れろ」と強要する行為
- 不当なクレーム(因縁つけ):買った商品にケチをつけたり、交通事故の損害を大げさに言って、損害賠償などの名目で金品を要求する行為
- 施設利用の強要:ホテルやゴルフ場の管理者が断っているのに、暴力団の行事(組長の襲名披露など)のために施設を使わせろと要求する行為
- お金や不動産のトラブルに介入してくる行為
- 高金利での取り立て:法定金利を超える法外な利息で貸し付けた借金を取り立てる行為
- 不当な債権取り立てや示談介入:人から頼まれて、乱暴な言葉を使って借金の取り立てをしたり、交通事故の示談交渉に割り込んで損害賠償を要求したりする行為
- 借金の踏み倒し:逆に自分が借りているお金について、「借金をチャラにしろ」「支払いを待て」とみだりに要求する行為
- 不当な地上げや明渡し料の要求:正当な権利で住んでいる人を無理やり追い出そうとしたり、土地を占拠して「立ち退き料を払え」と要求する行為
- 不当な株式の買取要求:企業に対して、不当に自社株を買い取らせようとする行為(いわゆるグリーンメール)
- 行政や公共事業(入札)に介入してくる行為
- 行政への不当な要求:役所に対して、「条件を満たしていないのに許認可を出せ」と迫ったり、逆に「あいつには許認可を出すな」と要求する行為
- 公共工事の入札への介入:国や自治体が行う入札に関して、資格がないのに「自分たちを入札に参加させろ」と要求したり、特定の業者を「参加させるな」と圧力をかける行為
このように、暴力団が資金を得るために昔から使ってきた巧妙な手口(民事介入暴力)が、ズラリと禁止行為として列挙されています。
全27類型の一覧
そして、暴力的要求行為の全27類型を一覧でまとめておくと、以下のとおりです。
暴力的要求行為の類型:法9条1号~27号
| 号 | 行為類型 | 備考 |
|---|---|---|
| ① | 口止め料を要求する行為 | |
| ② | 金品等の贈与を要求する行為 | |
| ③ | 下請参入等を要求する行為 | |
| ④ | 縄張り内の営業者に対してみかじめ料を要求する行為 | みかじめ料:縄張り内で営業を営むことを容認する対償としての金品等 |
| ⑤ | 縄張り内の営業者に対して用心棒代等を要求する行為 | 日常業務用の物品購入、興行の入場券・パーティ券等の購入、用心棒料など |
| ⑥ | 利息制限法違反の債権等を取り立てる行為 | |
| ⑦ | 不当な方法で債権を取り立てる行為 | |
| ⑧ | 債務の免除や支払猶予を要求する行為 | |
| ⑨ | 不当な貸付および手形の割引を要求する行為 | |
| ⑩ | 不当な信用取引を要求する行為 | |
| ⑪ | 不当な株式の買取等を要求する行為 | |
| ⑫ | 預貯金の受入れを要求する行為 | |
| ⑬ | 不当な地上げ行為 | |
| ⑭ | 土地・家屋の明渡し料等を不当に要求する行為 | |
| ⑮ | 宅建業者に対して宅地等の売買等を要求する行為 | 宅建業者以外の者に対する請求、宅建業者に対する賃貸の要求は除外されている |
| ⑯ | 宅地等の売買等を不当に要求する行為 | 上記は「みだりに」を要件として本号で規定 |
| ⑰ | 建設工事を要求する行為 | |
| ⑱ | 施設利用を要求する行為 | |
| ⑲ | 交通事故等の示談に介入し、損害賠償を要求する行為 | |
| ⑳ | 不当なクレーム等により損害賠償等を要求する行為 | |
| ㉑ | (行政庁に対して)許認可をすること等を要求する行為 | 要件該当しないのに許認可等をすることor要件該当するのに不利益処分をしないことを要求 |
| ㉒ | (行政庁に対して)許認可をしないこと等を要求する権利 | 要件該当するのに許認可等をしないことor要件該当しないのに不利益処分をすることを要求 |
| ㉓ | (国等に対して)国等が行う売買等の契約の入札に参加させることを要求する行為 | 入札参加資格を持たずまたは指名基準に適合しないにもかかわらず、入札参加させるよう要求 |
| ㉔ | (国等に対して)国等が行う売買等の契約の入札に参加させないことを要求する行為 | 入札参加資格を持ちまたは指名基準に適合するにもかかわらず、入札参加させないよう要求 |
| ㉕ | (人に対して)入札への不参加等を要求する行為 | |
| ㉖ | (国等に対して)売買等の契約の相手方とすること又はしないことを要求する行為 | |
| ㉗ | (国等に対して)売買等の契約の相手方に対する指導等の要求 | 自己または関係者に下請業務を発注し、物品やサービスを購入するよう指導・助言することを要求 |
以下のページでは、これらをイラスト形式の説明でわかりやすく確認することができます。
暴力団対策法で禁止されている27の行為|警視庁HP
暴力的要求行為の要求・依頼・教唆・幇助の禁止(法10条)
では、自分が暴力団員でなければ暴力的要求行為とは一切関係ないのでしょうか。実はそんなことはありません。
暴対法では、指定暴力団員本人がこれらの要求行為をすることだけでなく、一般市民や企業が、トラブル解決などのために指定暴力団員に”あいつを脅してくれ”と暴力的要求行為を依頼したり、そそのかしたりすること(要求等)も禁止しています(法10条1項)。
また、指定暴力団員が暴力的要求行為をしている現場に立ち会って手助けすること(幇助)も禁じられています(法10条2項)。暴力団の力を借りようとする側にも、厳しい目が向けられているといえます。
つまり、一般人が暴力団に頼むのもアウト、ということです
▽暴対法10条
(暴力的要求行為の要求等の禁止)
第十条 何人も、指定暴力団員に対し、暴力的要求行為をすることを要求し、依頼し、又は唆してはならない。
2 何人も、指定暴力団員が暴力的要求行為をしている現場に立ち会い、当該暴力的要求行為をすることを助けてはならない。
結び
まとめると、暴力的要求行為等としては、
- 指定暴力団員による暴力的要求行為(法9条各号)
- 指定暴力団員に対する暴力的要求行為の要求・依頼・教唆(法10条1項)
- 上記①の援助(法10条2項)
があるといえます。
暴対法が定める暴力的要求行為等の禁止は、暴力団の資金源を断ち、市民の生活を守るための強力な武器です。これらの禁止行為が行われた場合、警察(公安委員会)は直ちに中止命令を出すことができ、行為が終わっていても再発防止命令を出すことができます。そして、この命令を無視すれば刑事罰、という構えになっています。
現在の社会では、暴力団からの要求は一切断るのが基本ルールです。もし、ビジネスや生活の中で不当な要求を受けた場合は、自分たちだけで解決しようとせず、すぐに警察や暴力追放運動推進センターに相談することが大切です。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
主要法令等・参考文献
主要法令等
- 暴対法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)※法律情報はこちら
- 暴対法施行令(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行令」)
- 暴対法規則(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則」)
- 政府指針(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」)|犯罪対策閣僚会議HP(≫掲載ページ)
- 指針解説(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説」)|犯罪対策閣僚会議HP(≫掲載ページ)
- 組織犯罪対策要綱|警察庁HP(≫掲載ページ)
- 東京都暴排条例|東京都例規集データベース
- 東京都暴排条例Q&A(「東京都暴力団排除条例 Q&A」)|警視庁HP
参考文献
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