反社排除

反社排除法務|反社からの不当要求(有事)への対応マニュアル

今回は、反社排除法務ということで、有事の対応(不当要求への対応)について見てみます。

もし会社に反社会的勢力(反社)が乗り込んできたら?あるいは誠意を見せろと不当な要求を突きつけられたら?想像するだけでも胃が痛くなりそうですが、正しい知識と備えがあれば撃退することができます。本記事では、いざという時にパニックにならないための、具体的な対処法を解説します。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

不当要求とは

反社排除における不当要求とは何かを明確に定義づけたものはありませんが、一般的には、①法的根拠がない要求や社会常識を逸脱した過大な要求、あるいは、②暴力的・脅迫的な態度で行われる要求のことを指します。

政府指針での意味づけ

もう少し詳しく法令やガイドラインを見ていくと、政府指針(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」)では、「不当要求とは〜」といった直接的な定義は設けられていません。

しかし、政府指針の中では、反社会的勢力をとらえる際の行為要件として、「暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求」といった行為に着目することが重要であると示されています(政府指針1頁 脚注)。これらが実質的な不当要求の内容に該当すると考えられます。

また、指針解説では、反社会的勢力による不当要求の手口を接近型攻撃型の2つの類型に分けて、その具体的な内容が説明されています(指針解説⑶)。

  • 接近型:機関誌の購読要求、物品の購入要求、寄付金や賛助金の要求、下請け契約の要求を行うなど、一方的なお願いや勧誘という形で近づいてくるもの
  • 攻撃型企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として公開質問状を出したり、街宣車による街宣活動をしたりして金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合

暴対法など

なお、関連する法律である暴対法(暴力団対策法)14条1項では、不当要求について、「暴力団員によりその事業に関し行われる暴力的要求行為その他の不当な要求」と定義されています。

▽暴対法14条1項

(事業者に対する援助)
第十四条
 公安委員会は、事業者(事業を行う者で、使用人その他の従業者(以下この項において「使用人等」という。)を使用するものをいう。以下同じ。)に対し、不当要求暴力団員によりその事業に関し行われる暴力的要求行為その他の不当な要求をいう。以下同じ。)による被害を防止するために必要な、責任者(当該事業に係る業務の実施を統括管理する者であって、不当要求による事業者及び使用人等の被害を防止するために必要な業務を行う者をいう。)の選任、不当要求に応対する使用人等の対応方法についての指導その他の措置が有効に行われるようにするため、資料の提供、助言その他必要な援助を行うものとする。

また、企業実務における一般的な解釈としては、冒頭のように、①要求内容に法的根拠がない、あるいは社会常識を逸脱した過大な要求である場合や、②要求の態様が暴力的・脅迫的・威迫的である、あるいは執拗で受忍限度を超え不快さを感じる要求などが、不当要求に該当すると整理されています(「企業による暴力団排除の実践」(東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会 編)105頁参照)。

それぞれ言い方は異なるものの大体は同じものを指しており、結局、暴対法でいう暴力的要求行為(いわゆる民事介入暴力)を含みつつ、それよりも広い概念というイメージです

政府指針での対応

政府指針と指針解説によると、有事の対応(不当要求への対応)は、以下のように行うべきとされています。

速やかな報告と組織的対応

政府指針では、反社会的勢力から不当要求がなされた場合、速やかに反社会的勢力対応部署へ報告・相談し、さらにそこから担当取締役等へ迅速に報告することが求められています。不当要求は担当者や担当部署だけに任せるのではなく、不当要求防止責任者を関与させ、代表取締役などの経営トップ以下、組織全体として対応することが基本とされています。

その際、警察や暴力追放運動推進センター、弁護士などの外部専門機関に積極的に相談し、暴追センター等が示す対応要領等に従うべきとされています。ただし、相手の要求自体が正当なものである場合には、法律に照らして相当な範囲では責任を負うことになります。

法的対応については、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、刑事事件化を躊躇しない姿勢が強調されています。万が一被害が生じた場合には決して泣き寝入りせず、不当要求に屈しない姿勢を鮮明にし、更なる被害を防止するためにも積極的に被害届を提出すべきとされています。

▽政府指針 2-⑶

〇 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、当該情報を、速やかに反社会的勢力対応部署へ報告・相談し、さらに、速やかに当該部署から担当取締役等に報告する。
〇 反社会的勢力から不当要求がなされた場合には、積極的に、外部専門機関に相談するとともに、その対応に当たっては、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等に従って対応する。要求が正当なものであるときは、法律に照らして相当な範囲で責任を負う。
〇 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、担当者や担当部署だけに任せずに、不当要求防止責任者を関与させ、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する。その際には、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、刑事事件化を躊躇しない。特に、刑事事件化については、被害が生じた場合に、泣き寝入りすることなく、不当要求に屈しない姿勢を反社会的勢力に対して鮮明にし、更なる不当要求による被害を防止する意味からも、積極的に被害届を提出する。

事実関係の調査

不祥事などを理由に攻撃された場合、事実関係を調査し、その指摘が嘘であれば、虚偽であるとして要求を拒絶します。もし指摘が事実だったとしても、不当要求自体は拒絶し、不祥事については別途、適切な情報開示や再発防止策で対応します。

また、反社会的勢力への資金提供は、弱みにつけこまれた更なる不当要求につながり、暴力団の犯罪行為等を助長して勢力拡大を下支えすることになるため、絶対に行ってはならないと明記されています。

▽政府指針 2-⑶

〇 反社会的勢力による不当要求が、事業活動上の不祥事従業員の不祥事を理由とする場合には、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査する。調査の結果、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。
〇 反社会的勢力への資金提供は、反社会的勢力に資金を提供したという弱みにつけこまれた不当要求につながり、被害の更なる拡大を招くとともに、暴力団の犯罪行為等を助長し、暴力団の存続や勢力拡大を下支えするものであるため、絶対に行わない

アプローチ別の対処法:接近型と攻撃型

冒頭で見たように、不当要求の具体的な手口について、指針解説では接近型と攻撃型の2つの類型に分類して対策を示しています。

接近型に対しては、契約自由の原則に基づき、「当社としてはお断り申し上げます」などと理由を付けずに断ることが重要とされています。断る理由をつけてしまうと、かえって相手側に攻撃の口実を与えることになるため妥当ではないとされています。

一方、攻撃型に対しては、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案の担当部署が速やかに事実関係を調査します。調査の結果、指摘が虚偽であればそれを理由として不当要求を拒絶します。

もし不祥事が真実であった場合でも、不当要求自体は絶対に拒絶し、事案を隠蔽するための裏取引を行ってはなりません。不祥事の問題については別途、事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等によって対応することが求められています。

▽指針解説 ⑶不当要求の二つの類型(接近型と攻撃型)

 反社会的勢力による不当要求の手口として、「接近型」と「攻撃型」の2種類があり、それぞれにおける対策は、次のとおりである。
接近型(反社会的勢力が、機関誌の購読要求、物品の購入要求、寄付金や賛助金の要求、下請け契約の要求を行うなど、「一方的なお願い」あるいは「勧誘」という形で近づいてくるもの)
→ 契約自由の原則に基づき、「当社としてはお断り申し上げます」「申し訳ありませんが、お断り申し上げます」等と理由を付けずに断ることが重要である。理由をつけることは、相手側に攻撃の口実を与えるのみであり、妥当ではない。
攻撃型(反社会的勢力が、企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として公開質問状を出したり、街宣車による街宣活動をしたりして金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合)
→ 反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査する。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。

具体的な対処方法

以上のような政府指針の内容も踏まえつつ、具体的な対処方法についてもう少し敷衍すると以下のとおりです。

不当要求の基本スタンス:組織的対応と記録の徹底

まず、政府指針にもありますが、担当者を一人にせず組織で守ることです。

不当要求は人に不安感や恐怖感を与えるため、担当者一人に任せると、圧力に抗いきれずに要求に応じてしまう危険があります。そのため、不当要求がなされた場合は直ちに情報を担当部署・取締役に報告し、代表取締役などの経営トップ以下、組織全体として一貫した方針で対応することが不可欠です。

そして、従業員の安全確保記録の徹底です。

前提として優先すべきは、矢面に立つ従業員の安全確保です。不安を払拭するために、警察や弁護士などの外部専門機関と素早く連携する体制を整えます。そして、法的措置を見据えて相手の言動をすべて記録することが重要です。相手の名称、連絡先、要求内容、その根拠(5W1H)などを把握し、できる限り、写真・ビデオ・録音・メモなどで客観的な証拠を残すことが推奨されます。

よくある手口と応酬話法

反社は、いかに法律に触れないギリギリのラインで要求を通すかを研究しているプロです。相手のペースに巻き込まれないための、具体的な対応要領を持っておくことが心理的にも有利に働きます。

また、面談は必ず当方2〜3名で対応し、相手の人数合わせ(大勢で囲まれること)には乗らないようにします。

「誠意を見せろ!」「筋を通せ!」と言われたら?

「金を出せ」と直接言うと恐喝罪になるおそれがあるため、彼らは「誠意」という言葉に置き換えて要求してきます。

これに対する対応としては、「誠意を見せろとは具体的にどういうことですか?」と相手に要求を明らかにさせます。それでも誤魔化す場合は、「当社としては、このようにお話し合いをさせていただくことが『誠意』であると考えています」などと返し、相手の攻撃を封じることが考えられます。

「社長(トップ)を出せ!」と面会を強要されたら?

これに対する対応としては、「この件は私に任されていますので、私が対応いたします」とキッパリ断ります。トップに会わせることは避けるべきです。

もし「社長を呼ぶまで帰らない」と居座ったり騒いだりする場合は、不退去罪や威力業務妨害罪として警察に通報します。

大声で怒鳴り散らされたら?

怒鳴るのは相手を脅すための常套手段です。

これに対する対応としては、ひるまず冷静に、「大声を出さなくともお話は伺います」と毅然と対応するか、あえて「怖いのでこれ以上お話できません」と伝え、相手に、脅迫罪になり得ると牽制することが有効です。

やってはいけない対応:裏取引と隠蔽

反社は、企業側の落ち度や弱み(不祥事)を巧妙に突いてきます(攻撃型の不当要求)。もし「お前の会社の不祥事を暴露するぞ」と脅されたらどうすべきでしょうか。

不祥事を理由にされても、裏取引・資金提供は絶対NG

政府指針でも明記されていますが、事案を隠蔽するための裏取引や資金提供は絶対に行ってはいけません。一度でも要求に応じて資金を提供すれば、それが新たな弱みとなり、骨の髄までしゃぶり尽くされることになります。

もし不祥事が事実であったとしても、不当要求自体は断固として拒絶し、不祥事については会社として公明正大に開示し、再発防止策を徹底するという正しいプロセスを踏むべきです。

要求に応じた役員は巨額の賠償責任を負うことも

「会社を守るため」「相手が怖かったから」と弁明をしても、法律上の正当な根拠にはなりません。

過去の有名な蛇の目ミシン事件では、反社から脅迫を受けて約300億円の資金提供を行ってしまった役員らが、株主代表訴訟で善管注意義務違反に問われました。最高裁は「警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できない状況にあったとはいえない」とし(最判平成18年4月10日)、役員らには約580億円という巨額の個人賠償責任が認定されています(差戻後の控訴審判決)。

不当要求に応じることは、会社を滅ぼすだけでなく、経営陣自身の身を滅ぼすことにもなり得ます。

法的手続(民事・刑事)を躊躇しない

断っても断ってもしつこく電話がかかってくるとか、街宣車が会社の前に乗り付けて大音量で批判してくるなどの執拗な攻撃を受けた場合、企業側は法的対抗手段を躊躇してはいけません。

民事上の対抗手段としては、弁護士に依頼して、裁判所に面談強要禁止の仮処分街宣禁止の仮処分を申し立てます。裁判所からの公的な禁止命令が出れば、警察も積極的に捜査に乗り出しやすくなります。

刑事事件化も積極的に検討すべきであり、暴力や脅迫、器物損壊などの被害が生じた場合は、泣き寝入りせずに警察に被害届や告訴状を提出しましょう。

弁護士を代理人に立てた後は、今後の交渉はすべて弁護士を通してくださいとの旨で突っぱね、一切の直接交渉を拒絶するべきです。

結び

反社からの不当要求は恐ろしいものですが、彼らの目的はあくまで経済的利益(お金)であり、警察に捕まるリスクを冒してまで割に合わない要求を続けることはありません。

できないことはできないと毅然と断る・記録を残す・警察や弁護士と連携する、これらの基本を組織全体で徹底すれば、不当要求は解決することができます。いざという時に現場の従業員が孤立しないよう、平時からマニュアルを整備し、防衛体制を固めておきましょう。

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[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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主要法令等

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関連団体

  • 暴追都民センター(「公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター」)
  • 特防連(「公益社団法人 警視庁管内特殊暴力防止対策連合会」)

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