商標法

商標法を勉強しよう|商標権の構成

著作者:ijeab/出典:Freepik

今回は、商標法を勉強しようということで、商標権の構成について書いてみたいと思います。

「商標」については前の記事までに書いており、本記事からは「商標権」についてです(▷記事全体についてはこちら)。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 カテゴリー「会社法務」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

商標権とは

商標は、事業者が、自分の取り扱う商品やサービスを他人のものと区別するために使用するマークである。

このマークについて、出願を行って商標登録すると、商標権という独占権が発生する。登録したマークを独占的に使用する権利である。

独占とはどういうことかというと、自分で使用できるだけではなく、他人の使用を排除できる(やめさせることができる)、ということである。

▽法18条1項

(商標権の設定の登録)
第十八条
 商標権は、設定の登録により発生する。

そうすると、商標登録すれば、登録したマークのあらゆる使用を独占できるような気がするが、実はそうではない。

商標権の構成

商標権は、マークと、そのマークを使用する商品・サービスの組合せから構成されている。

商標権の構成

商標権=「マーク(文字・図形等)」+「使用する商品・サービス」

つまり、商標権は、マークだけ・・を登録するわけではなく・・「マーク」+「使用する商品・サービス」のセットで登録される

別の言い方をすると、商標権の権利範囲は、マークと、そのマークを使用する商品・サービスという、2つの要素で決まってくるわけである。

出願を行う際には、商標登録を受けようとする商標とともに、その商標を使用する商品又はサービスを指定し、商標登録出願の願書に記載する(法5条1項)。指定した商品を「指定商品」、指定したサービスを「指定役務」という。

▽法5条1項

(商標登録出願)
第五条
 商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。
 商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
 商標登録を受けようとする商標
 指定商品又は指定役務並びに第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分

このあたりの説明は、特許庁HPの解説やテキストがわかりやすいかと思います。

初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~|特許庁HP
商標制度の概要|特許庁HP
特許庁「知的財産権制度入門テキスト」(2022年度)79頁
など

「指定商品」「指定役務」

指定商品・指定役務が見慣れない言葉なので、商標法の関連部分をざっと見てみる。

商標登録出願は、商標を使用する1つ又は2つ以上の商品・役務を指定して行わなければならない(法6条1項)。指定した商品を「指定商品」、指定したサービスを「指定役務」という(法4条1項11号の中で定義づけされている)。

▽法6条1項

(一商標一出願)
第六条
 商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。

▽法4条1項11号(抜粋)

第四条
十一 …その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又は…

「商品及び役務の区分」とは

また、商標登録出願の願書には、併せて、「商品及び役務の区分」も記載する必要がある(先ほど見た法5条1項3号)。

商品・役務の指定は、区分に従ってしなければならない、とされているからである(法6条2項)。

▽法6条2項

 前項の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければならない。

区分とは、世の中に存在する無数の商品・役務を一定の基準によってカテゴリ分けしたもので、第1類~第45類まである。

第1類~第34類までが「商品」のカテゴリ、第35類~第45類までが「役務(サービス)」のカテゴリとなっている。

指定商品・指定役務との違いが何だかわかりにくい気がするが、指定商品・指定役務は、マークを使用しようとする個々の商品・役務であり、区分は、それら個々の商品・役務が所属するカテゴリ(第1類~第45類までの45種類)のことである。

類似商品・役務審査基準

指定商品・役務や、区分が分かる資料は、特許庁の「類似商品・役務審査基準」になります。


全体は膨大なページ数となっていますが、本記事ではとりあえず、リンクを参考までに貼っておきます。
類似商品・役務審査基準|特許庁HP


掲載ページのなかで、ざっくりと指定商品・役務を眺めることのできる資料は以下の資料です。
▷「各区分の代表的な商品・役務」


また、ざっくりと区分(第1類~第45類)を眺めることのできる資料は、以下の資料です。
▷「各類に属する商品及び役務の概要」


なお、指定商品・役務がいくつの区分にまたがるかによって、商標権をとるときに特許庁に支払う手数料が変わってきます。

商標権が理解しにくい原因(私見)

「商標権」と聞いても、何だかわかったようなわからないような感じになるのは、一見簡単そうに見えて、実はややこしいからではないかと思う(管理人の個人的感想。商標権に限った話でもないかもだが)。

「商標権だから、商標に関する権利でしょ?」と思っても、別に間違ってはいない。名前を聞くだけでも、何となくわかるような気もする。

しかし、本記事で見たように、いろんな細かい話がくっついているので、実のところ非常に理解しづらい。

「商標権」は、本記事で見たように、マーク(商標)と、それを使用する商品・役務(指定商品・役務)との組み合わせによって構成される、独占的な使用権、である。

なので、

  • 「商標」の理解
  • 「商品・役務」の理解
  • 「使用」概念の理解

という風に、複数の概念の理解が実は必要になってくる(実は、商標法では「使用」概念も具体的な内容が定められている。法2条3項)。

結び

今回は、商標法を勉強しようということで、商標権の構成について書いてみました。

本記事のハイライトをまとめます。

本記事のまとめ

  • 商標権とは、指定商品・指定役務について登録商標を独占的に使用する権利、である
  • 商標権は、「マーク(文字・図形等)」+「使用する商品・サービス」のセットで登録される
  • 独占権といってもあらゆる使用の独占ではなく、商標権の権利範囲は、マークと、それを使用する商品・サービスの組み合わせで決まってくる

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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