今回は、商標法を勉強しようということで、商標の機能について見てみたいと思います。
そもそも論として重要な話ですが、抽象的な話で、一般の法務にすぐ役立つものではないので、飛ばしてもよいかと思います(ただ、基本書にも実務本にも普通載っているので、一応)。
ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。
メモ
このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。
商標の機能
商標は、事業者が、自分の取り扱う商品やサービスを他人のものと識別するために使用するマーク(識別標識)のことです。
この自他識別機能から、①出所表示機能、②品質保証機能、③宣伝広告機能の3つの機能が派生する、とされています(茶園成樹「商標法」(第2版)4頁等参照)。
上記①②③は、商標の三大機能と呼ばれています。
商標は、実際の取引において自分の商品やサービスを識別するための標識として使用することによって、出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能を果たすようになる、ということです(特許庁「知的財産権制度入門テキスト」(2022年度)80頁等参照)。
出所表示機能
「出所表示機能」というのは、同じ商標が使用されている商品やサービスは、常に同じ出所から出ていることを示す機能、のことです。
自他識別機能とほぼ同じことを言っているような気もしますが、自分の商品やサービスを他人のものと区別できる(自他識別機能)ということは、自分の商標を付けた商品やサービスは常に自分から出ていることを認識してもらえる(出所表示機能)、ということになります。
同じことを少し違う側面から言っている感じです(管理人的な理解の仕方)。
出所表示機能は、当たり前のことのような気もしますが、逆の場合(この機能が損なわれた場合)を想像してみると、重大なことであることがわかります。
例えば、他人が自分と同じ(または紛らわしい)商標を使って同じ商品を販売した場合、購入者は、思っているのと全然違う商品を購入してしまうことになります。これが「出所の混同」です。
このように、逆の場合を想像すると、出所表示機能は、商標の根本的な機能であることがわかります。
なお、”出所”という言葉からは、商品のメーカーやサービス業者が思い浮かびますが、もちろんこれらに限らず、流通ルートつまり商品の販売業者なども含まれます。
品質保証機能
出所を認識できるようになると(出所表示機能)、購入者は、同じ商標の付された商品であれば、どのような品質のものであるか、商標を見ただけでわかるようになります。
このように、「品質保証機能」というのは、同じ商標が使用されている商品やサービスの品質は、いつも同じであることを示す機能、のことです。
なお、語感が紛らわしいですが、「品質が良いこと」を保証するという意味ではないです。良かろうが悪かろうが、「品質が同一であること」を示す機能、のことになります。
いわゆる"高級品"とか"中級品"とか"廉価製品"とかいった言葉がありますが、どの品質水準であれ、同じ商標のついた商品を買っているのに、買うたびに品質がバラバラということは普通ありません。
出所が同じであれば、品質が良いものはいつも良く、品質が悪いものはいつも悪い、という意味です。
なお、役務の場合は、厳密にいうと”品質”というのはおかしいので、「質保証機能」と呼ばれることもあるようです(小谷武「新・商標教室」(2013年)35頁参照)。
宣伝広告機能
商標を見れば品質を認識できるようになると(品質保証機能)、「あれ良いなあ、欲しいなあ」という形で(あるいは、品質はそこそこでもコスパが良いといった形で)、商標が、その商品やサービスの購買意欲を喚起するようになります。
このように、「宣伝広告機能」というのは、商標がくり返し使用されることにより、需要者に記憶され、商品・役務の需要を増大させる機能、のことです。
事業者は、テレビや新聞等で、自分の商標を付けた商品やサービスをくり返し広告するものですが、これまでその商品やサービスを利用していた需要者に対しては、さらにその信用・信頼を深く印象付けることになりますし、これまでに利用したことのない需要者に対しても、そのイメージを深く印象付けることによって、購買意欲を持たせることになります(特許庁「知的財産権制度入門テキスト」(2022年度)80頁等参照)。
結び
今回は、商標法を勉強しようということで、商標の機能について見てみました。
商標法で法的に保護しようとしている機能はどこまでか、といったような議論もありますが、即戦力的な知識ではないので触れず、さらっと流しています。
[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。
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